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「どうしたの?さゆみに喋らせたくないなら殴って黙らせればいいじゃない」
「・・・やめて下さい・・・そういうの」
「さあ!早く殴りなさいよ!さゆみを倒して下の奴らに『道重さゆみを討ち取りました!』って大声で宣言して
 英雄になりなさいよ!アンタは強い・・・陽の当たるとこでも充分やっていける!さゆみとは違う世界の人間よ!」

さゆみはマウントを取られながらも一気に捲し立てた。
乗られている者ではない、まるで上に乗っている者のような迫力で

「お願いだから黙って下さい!!!」

刺客が初めて大きな声を出した。
感情・・・声色も初めて感情を露わにしたように聞こえる。顔は相変わらずあんまり変わんないけど。
肩を震わせながら刺客が呟く

「・・・やり辛いですよ、そういうの。私は英雄になる気なんかありません」
「じゃあなんでここに来たの?」
「・・・スマ高の、みんなの笑顔が見たいと思った。ただそれだけなんです。天下獲りとか、英雄とかそんなの興味ありません」
「みんなの笑顔の為に闇討ちで自分の手を汚す?立派な覚悟じゃない。さゆみ尊敬するわー。さっ、早くやんなさい」
「なんで・・・なんでそんなに他人事みたいに言えるんですか!?貴方が倒れたらモー商の人達が悲しむんですよ!」

この子は優しい子だ。スマ高にはこんなに優しい子が居るんだ。
さゆみも昔はこんなだったなぁ・・・愛ちゃんの為、ガキさんの為、えりの為・・・
こんな子に討たれるならさゆみは本望。でも討たれてやる前に一言だけ言っとかないと

「アンタさ、もっと自分のこと大事にしなよ。誰かの為もいいけど自分の笑顔の為に生きないとさゆみみたいになっちゃうよ?アンタ見てて凄く心配だわ~」
「貴方こそ自分をもっと大事にして下さい!貴方はモー商の大将なんですよ!?敵の大将ならもっと大将らしく・・・」

ガラッ!

「道重さんっ!」

あら、いいとこでタイムアップ。空気読めよ~、1年

マズい、道重さんもうやられる寸前じゃん!ハルはもう無我夢中で教室に突っ込んだ

「勝田ぁあああああああああああああああ!!!」

べしっ!

ハルが走りながら放った飛び蹴りはマウントから立ち上がった刺客のミドルキックで軽く撃墜される

「ぐはっ!」
「アンタ、勝田って言うんだ・・・」
「・・・勝田、里奈です」
「やっと名乗ってくれたね」

???
なんなんだ道重さんは?刺客となんか呑気に会話してるし・・・ってそれどころじゃねぇ!

「うおりぁああああああ!」

立ち上がり、ハルは渾身の右ストレートを勝田里奈に放つ
スッ!しかしその一撃は軽く勝田の腕ガードに受け流される
キラーン!と勝田のつぶらな瞳が光った・・・ヤバい!

シュシュッ!シュッ!シュシュシュシュ!

左右の細かいコンビネーションジャブの連打
ハルのガードはそのコンビネーションにあっという間に突き崩され
まるでサンドバックのように連打を浴びる

痛ぇ・・・痛ぇよ・・・でも・・・ここで負けるわけにはいかないっ!
ビシッ!ハルがヤケクソ気味に放ったフックが油断していた勝田の頬を捉えた
当たりは浅い・・・でも、当たった!このまま!

「うぉおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーー!!!」

ハルが再び放った渾身の右ストレートはピタっ、と勝田の顔面に到達する前に止まった。
ガクッ、と両膝をつくハル・・・畜生・・・畜生・・・

勝田の放ったハイキックがハルの右ストレートよりも先にハルの側頭部を捉えていたのだ

「どぅー、相変わらずだね。弱いくせに無鉄砲すぎるよ」

勝田が呆れたような感じでクールに言い放つ
またぼんやりする視界でこいつの薄ら笑い顔を見ることになるとは・・・ぐぬぬ・・・畜生・・・

「どおっせぇえええ!!!」

その時、いきなり教室の外から突撃してきた太いシルエットの放った強烈な張り手が
バシンっ!と勝田の身体を咄嗟のガードごと窓側に弾き飛ばした

「鈴木香音、見参!ウチはそこのもやしと違って少しは強ぇぞ!がははははは!」

もやし・・・誰がもやしだこの豚肉が!

「もやしじゃねぇえええええええええええ!!!」

ハルは気合いで立ち上がった
もう意地だ、この豚にだけは負けねぇ!勝田を倒すのは俺だ!
勝田の背後は窓・・・逃げらんねぇぞ!

ニヤリ、と勝田がいきなり笑った。そして・・・

「道重さん、今度モー商とやることがあったらちゃんとタイマン申し込みますから」
「はぁ?受けるわけないじゃん。もしかしてさっきの本気にした?そんなお人好しじゃこれから苦労するよ~」

フフっ、と声を出して勝田が笑った
フフっ、と声を出して道重さんも笑った・・・なんなんだよこの2人は!

勝田がいきなり構えを解いた
そして、倒れている道重さんの方を向く

ペコリ

なんだ?勝田は姿勢を正して丁寧に道重さんに一礼した

「お前何を・・・」

豚が言いかけたところで勝田はハル達に背を向けて窓に向かって走り出す
おい!何を・・・ここ3階だぞ!

勝田は床を蹴り、窓に向かってダイブした

「ちょ!何!?」

さすがの道重さんも慌てて飛び起きる
ハル達も窓へとダッシュする

ばふっ!

窓から乗り出して下を見る
・・・体育マット。何重にも重ねてある。
ぴったりそこに、勝田は飛び降り身を沈めた。
アイツ、脱出経路まで先に用意してたのか・・・
さすが元チームエッグの『サイレントアサシン』全く抜かりがない。

勝田は何事も無かったかのようにマットから起き上がると、スマ高本陣の方へ駆け出して行った

「鈴木!それから1年!」

ハル達は道重さんの声でハッ!と我に返る

道重さんがジッとハル達のことを睨んでる・・・あれ?あれ?もしかして・・・

「アンタ達ねぇ、いいところだったのにちょっとは空気読みなさいよ!」

え?え?空気読めって何?怒ってる?ハル達道重さんのこと助けたよね?

(どういうことっスか?)
(知るか!こっちが聞きてーよ!)

「・・・でも、まぁ一応礼は言っておくわ。有難う鈴木、それから・・・えっと?」

とんっ、デヴがハルの背中を小突いた
口パクで何か言っている・・・な・・・ま・・・名前か!
オホン!っと大きく咳払いしてからハルは名乗った

「天鬼組、工藤遥です!」

・・・道重さんがハルを見つめた後、口の端を上げてニヤっと笑う

「工藤、有難う。アンタ糞弱い割には気が利くわね。まぁもしかしたら校庭行くのが怖くて戻ってきただけかも知れないけど」

ちょ!この人は!

「違いますよ!ハルは必死で・・・」
「コイツが道重さんのピンチを教えてくれたんです!」

デヴ・・・否、鈴木さんがフォローを入れてくれた。
あれ?もしかしてこの人すごくいい人か?

「分かってる!冗談よぉ~冗談。でも工藤、ここでやってくならもう少し鍛えないとね。腕力なしでやれるのはさゆみぐらいだから」
「ガハハハハハハハ!信じられないぐらい糞弱いからな、何なら一緒にちゃんこ食うか?先輩が鍛えてやるぞ?」

あー前言撤回。やっぱこの人糞デヴだわ。何がちゃんこだよ、もう!

 

ごめんなさい福田さん。
道重さゆみを・・・あの人を私はどうしても殴ることが出来なかった
刺客の、あんなセコい仕掛け方した私にちゃんと人間として話をしてくれたあの人を殴るなんて出来ない
我が軍は・・・やっぱり劣勢か。ヤバいなぁ・・・

シュッ、シュッ、シュッ

音も無くモー商の雑魚達を倒して、里奈は敵陣を駆け抜ける

「おいっ!」
「何だアイツは!」

今はモー商の制服を着ている・・・これも不意打ちになるのか
セコいな、私

「なんねお前!」

確か・・・アレは生田衣梨奈。モー商では少しは名を知られてる奴。
私は初めて・・・

「スマ高2年、勝田里奈!生田衣梨奈、勝負!」

私は初めて敵に名を名乗った
正々堂々の勝負、これでいいんですよね?道重さん

「スマ高!?お前ぇえええええええええええええええ!!!」

ぶんっ!
シュッ!

コイツ隙だらけ・・・私は生田の大振りのパンチを軽く避けて
擦れ違いざま延髄にチョップを叩き込んだ
どんな筋肉バカだろうと、そこは鍛えられない

「ちょ、な・・・」

どさっ!生田が2、3歩前に歩いた後、つんのめって地面に倒れる

しかし里奈はもう生田のことを見ていない
そのまま前へとモー商生達を倒しながら風のように駆け抜ける

「めいめいっ!」
「うぉ!?りなぷー!おめぇ何してんだぁ!?」

めいが驚くのも無理はない、モー商の制服着てるし・・・
めいやタケちゃんは私が潜入していたことを知らない
知っているのは福田さんだけだから。

めいと対峙しているモー商生。
その背中がゆっくりと振り向き、鋭い眼光を里奈に向けた。
・・・・ぞくっ、何コイツ?凄い殺気、只者じゃないっ!
コイツは・・・ここで私が始末するっ!

「スマ高2・・・」
「お前が刺客か!」

名乗りながら襲い掛かろうとした・・・
しかしそいつの言葉、そして殺気に里奈の言葉は遮られた
マズいっ!里奈は直感で踏み止まり、後ろへと飛び退く

ビッ!
モー商の制服のネクタイの切れ端がふわっ、と宙を舞った

まるで、居合斬りのような手刀
モー商生が繰り出したその手刀にネクタイは途中から寸断されたのだ
危なかった。アレをモロに食らったら・・・

 

突然の闖入者、煙を噴き出すスクーター、スクーターに轢かれ倒れた者達
モー商陣営は騒然となった。クレイジーだ・・・なんだアイツは

「遅い~っ!」
「ゴメンゴメン、バイトで次のシフトの奴が来なくて・・・って!あぁ~っ!原チャが!」

福田に声を掛けられたフルフェイスヘルメットの助っ人は頭を抱えてガックリと項垂れた

「バイト代溜めて買ったばっかりだったのにぃ・・・」
「ちょっとアンタ、ククククク!相変わらずバカ!ククククク」

爆笑する福田を無視して、フルフェイスは立ち上がった

「モー商、絶対許さない!よくも私の原チャを!」
「いや、だからアンタが無茶するからでしょうが!ククククク!」

ヘルメットを脱ぎ捨て、走り出す助っ人。豹柄のパーカー、黒いキュロット。制服は着ていない
そして、背中から2本の真っ直ぐな棒を取り出し、クルクルクル!と回転させ始めた。
その回転する棍にビシバシと打たれ、次々と倒れていくモー商生達

「アイツ!」
「ミラクルスピンバトン!?」
「まさか・・・」

かつて、スマ高が周辺区域を席巻した時代。特攻隊長としてピンチケを率いて非道の限りを尽くした悪童が居た。
少し・・・いや、かなりその非道が過ぎ結局彼女はスマ高を退学となった。
非道な悪党ではあったが、その洗練された格闘センスと実力は周辺校の誰も認めるものだった。

『芸術家(アーティスト)』和田彩花
『聖拳』前田憂佳
『神童』福田花音

彼女らと並び称された・・・『天才』小川紗季である

 

「わ~い!」
「ちょ、待ちい!それは大事な旗や!返さんかい!」
「嫌です~、これはまーの物です~」

佐藤優樹は戦局を全く無視してスマ高旗を振り回しながら走り回っていた。
そして中西香菜はそれを取り返すべく、息を切らせながら後を追いかけていた。

「ん?」

どんっ!

「きゅ、急に立ち止まんなや!痛ったいわー!」

佐藤優樹が急に立ち止まり、中西香菜はその背中にモロにぶつかった

「うわぁ・・・」

どこか遠くを見つめる優樹の目がキラキラ輝き始める

「アンタなぁ!何考えとんねん!旗は返してもらうで!」

ポンっ!佐藤優樹は無造作にスマ高旗を放り投げた
うわぁああああ!香菜は慌ててそれをキャッチする

「アレ欲しい!まーにもくれよーーーーーーーーーーーー!」

ぴゅ~、と佐藤優樹は例によって風の如く走り去ってしまった

これがこの戦いにおける福田花音最大の誤算だった。
助っ人を呼んだことによって、とんでもない奴を戦場に復帰させてしまった。

そして本陣中央、和田への風穴を開けてしまうのである。

 

はぁ、はぁ、はぁ・・・息を切らせながら飯窪春菜が走る。ちょっと、私滅多に走らないんだけど・・・
幸いなことに、モー商が優勢、敵に襲われることなく春菜はスマ高本陣前に辿りついた。
しかし、ここからである。

「ヒャッハァ!!!お前ら皆殺しだぁ!!!」

な、なにアレ?謎のバトンを振り回して戦う凄腕の人物によって
モー商生達がまるでゴミのように蹴散らされている・・・でもあそこを突破しないと!
だーいしは?まーちゃんは?居ないっ!見つからないっ!
大暴れするバトントワラーによってモー商前線が大混乱に陥っている
くっ、一か撥か・・・抜けられるか!春菜は覚悟を決めて、前線に突撃する。しかし・・・

「ハァ!そこのゴボウ、どこに行きやがるぅ~?行かせねぇよ!!!」

ちょ!見つかった!ヤバいヤバいヤバい!ええっとええっと・・・

「わ、私は親善大使です!和田さんのお友達の・・・」
「うるせーーー!誰だろうがモー商は皆殺しだぁ!!!原チャの仇ぃ!」

あわわわわ・・・この人話が通じない。話が通じないトチ狂った相手には春菜の話術は無力だ。
ぶんっ!春菜に向かって回転しながら振り下ろされるバトン
はうぅ!!!春菜は覚悟を決めて目を瞑る

・・・

あれ・・・?私、生きてる?何で?

「な、なんだテメーは!コラっ、離せ!」
「それ、まーにもくれよぉおおおおおお!!!」

まーちゃん!?まーちゃんがバトンを掴んで止めてる!ただのアホだと思ってたけど何ていい子なの!

 

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