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「やるべきだって思ってることがあるのなら自分でやるべきじゃないかな?」

ぐぬぬぬぬ!悔しい!
でも何も言い返せずあの人の背中を見送るしかなかった。確かにその通りだ。

ハルは無意識の内に逃げてた。人に頼ってた。
でもそれじゃダメなんだ。そんなんじゃモー商の天下なんて夢のまた夢。
自分の信じる道は自分で切り拓いていかないとダメなんだ!

やるべきこと・・・いや、自分のやりたいことはわかってる。
たとえその力が無くても・・・ハルは道重さんを助けに行く!

「行くぞ!はるなん!」

何の戦力にもならなそうだがハル独りで行くよりマシだ。
ん?・・・あれ?

「やるべきこと・・・私のやるべきこと・・・」

はるなんは座り込んで虚ろな目で、ぶつぶつと独り言を繰り返している
なんだ?いつもの軽い調子で「私は喧嘩はしないから、アディオース!」とか逃げ出すかと思ってたのに
意外とあの人の言葉、コイツにも響いちゃってた?

ガタンっ!いきなりはるなんが勢いよく立ちあがった
おいやめろよ!思わずビビって尻餅ついちゃったじゃないか!

「ごめんどぅー!私、校庭に行く!」

え?何言っちゃってんの?まさかスマ高と戦うつもりか?よせ!お前死ぬぞ!おーい!
・・・はるなんはハルの方を見向きもせず、一目散に走って行ってしまった。
はぁ、しょうがねぇな・・・独りで行くか

 

「ダメよ寝てなきゃ!全身打撲で全治2週間よ!」

地黒の保険医のキャンキャラした声が保健室に響く

「先生、女にはやらねばらならんときがあるのです!」

(スマ高が・・・)
(あのリーゼント強ぇ・・・)
(鞘師はどこ行ったんだ・・・)
(田中さんは・・・)

保健室に次々運ばれて来るモー商生
不穏な会話

こんなときに寝てられるわけがないんだろうね

こんな程度の怪我は何てことはない。
ただ階段で不覚を取って後ろから押されて転げ落ちただけのこと。

ビキっ!、足首に痛みが走る。何てことはない何てことはない。

保険医を振り払って、ガラガラっ!と保健室の戸を開ける

「鈴木香音!行きます!」

どすどすどす・・・いつもより多少よろけ気味だがどすどすと彼女は行ってしまった。

「・・・ふぅ、いいわね。若いって」

地黒の保険医は溜め息を一つついて懐から煙草を取り出した。
アタシ達にもあんな頃があったなぁ・・・モー商の黄金時代・・・(遠い目)

 

「ぐぼぉっ!がはあっ!」
「どうしたぁ!もう終わりかぁ!オラぁ!」

恐れていたことが現実となった。コイツ、強か・・・
生田衣梨奈はリーゼント:田村芽実の伸びのある長リーチの打撃への有効な手立てを見出せないまま打ち合い
蓄積されたダメージとスタミナ切れもあって一方的に打ち負けるようになってきた。
脅威的な筋力を誇るナマタだが、その分燃費は非常に悪い。
短期決戦でカタをつけなればどんどん分が悪くなるのだ。

「オルァ!」

バキッ!田村の荒々しいハイキックがモロに頭にヒットし、足元がふらつく
倒れないのはさすがに鉄人ナマタだったがこのままでは時間の問題・・・周囲のモー商生達もざわめき始めた

(こ、こんなとこで負けるわけにはいかんちゃ・・・新垣さん、えりなに力を貸して下さい!)

一か撥か・・・ナマタは捨て身のタックルでの玉砕を慣行しようとしていた。
倒せなくても、せめてコイツにダメージを・・・

ざわざわざわざわざわ!!!おーっ!!!
突然、モー商生達のざわめきが一際大きくなった

ん?何ね?・・・もしかしてえりなタックルに行くのバレバレ!?

そうではなかった

「あぁん?何だありゃあ?」

田村のその一言で、ナマタは気付き、田村の視線のその先を見る。

「りほ!?」

ゆっくりと、覇者のオーラを纏って彼女は歩いてきた。
固まっていたモー商生達が真っ二つに分かれ、道を開ける

まるで海を割って行進する聖者のように
暗雲を割って射し込む陽光のように
コロッセオの群衆の視線を一身に集める剣闘士のように

鞘師里保、降臨

・・・ぽん、とナマタの肩に手が置かれた。

「えりぽん、下がって。後はウチがやるから」
「でもりほ!」

いっつもそうだ!いいとこに出てきて美味しいところ取りよぅ!
悔しかった・・・でも動けなかった。
何より彼女の顔を見て少し安堵してしまった自分が情けなかった。

「なんだテメェ?その筋肉バカのお友達かぁ?」
「バカはお前だ。自分の置かれてる状況が分かってるのか?」
「なんだとオルァ!!!」

シュッ!伸びのある打撃。ナマタと打ち合ったとはいえその勢いは衰えてはいない。
へっ、貰った!

田村芽実はその不意打ち気味に放った打撃が、偉そうなモー商の新手にクリーンヒットすると確信した
その蛇のようなフリッカーパンチが容赦なく牙を向いてまだ構えも取っていない鞘師に襲い掛かる

無防備

誰の目にもそう見えた。毒蛇に噛み付かれ、英雄は非業の死を遂げる。
・・・でもそうはならなかった

フッ

「何っ!?」

当たったはずだ!でも手応えが無い・・・スレスレで避けられた!?
まぐれだ!実際当たる寸前だった。もう一発!
シャアッ!田村芽実は先程とは逆手の左パンチを連続で放つ

フッ

しかしまたパンチはギリギリで避わされた・・・ならこれでどうだぁ!!!

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!!!」

左右連続、上下左右あらゆる方向からの高速フリッカーパンチ連打。
その八岐大蛇のような残像にスマ高、モー商両陣営から驚嘆の声が上がる

「なんじゃありゃあ!!!」
「いくら鞘師でもアレは・・・」

「アフターの動き・・・」

両陣営の驚嘆の声の中、ナマタが1人ボソっと呟く。

「オルァ!」

連打で足を止めてからの強烈なトドメの一撃・・・誰の目にもそう見えた。
しかしその一撃は鞘師の身体を捉えず、見事に空振りする。

肩で息をしながら田村芽実が吐き捨てるように吼えた

「な・・・なんだテメェはぁ!!!」

再び、両陣営から驚嘆の声が挙がる

無傷・・・鞘師里保は無傷!!!

「なん・・・だと?」
「まさかアレを全部避けたのか!?」

ナマタは心の中で両陣営のその驚嘆の声に答える

(りほは・・・敵の攻撃を目を背けずに全部見とぅよ。ギリギリまで見て見切っとう。
 見てからギリギリ最小限の動きで避わす・・・それがりほのアフターの動きっちゃ)

あのアフターの動きにはかつてナマタも苦杯を嘗めた。
実際のところ、入学式の日に初めて闘って以来ナマタは鞘師に一度も打撃をヒットさせたことがない
やけど・・・えりなはえりなの打撃が単純やから見切られてると思っとった・・・やけど違う!

ピッ!

突如、田村芽実の目の下の皮膚が裂け一筋の血がツーっと頬を垂れた

「なっ!?・・・テメェ!何をした!?」

ふぅ、と一息ついて鞘師が答える

「調整」

・・・は?何だって?

「挑戦って言ったか?今?」
「いや、調整だ。大体わかった」

調整?ウォーミングアップとでも言いたいってか!

 

(じゃあ朱莉ちゃん、行くわよ・・・)
(おっけー聖ちゃん・・・)

くんずほぐれつの掴み合い(のフリ)をしていた譜久村聖と竹内朱莉は
おもむろにバッ!と離れお互い構えを取った

「竹内流奥義!龍撃虎!」
「譜久村流合気柔術奥義!虎破龍!」

おーっ!と両陣営から歓声が挙がる。お互いに向かって駆け出す2人
 
「おおおらぁああああ!!!」
「とぉりゃあああああ!!!」

ぶんっ、と竹内が背を向けながら譜久村の懐に入った
スマ高陣営から歓声が挙がる・・・勝った!!!竹内さんの十八番!!!

鉄山靠

八極拳の流れを組む竹内流拳法の奥義。重心が低く、筋力のある朱莉が最大限の力を発揮出来る技だ

どごおっ!

重心を預けての背中からの体当たりをモロに食らった譜久村はそのまま吹っ飛ぶ・・・かに見えたが

「ぬぅん!」

譜久村は踏みとどまり、両腕で背を向けた竹内の身体をガシッとホールドすると上体を思いっ切り後ろに逸らした
今度はモー商陣営から歓声が挙がる・・・譜久村の投げ技!!!あれ?スープレックスって柔術なんだっけ?

ぽーんと後方に投げられた竹内の小さな身体が宙を舞い、背中から地面に叩き付けられる
ほぼ同時に、譜久村が大の字になってどーん!と地に倒れる・・・そのまま両者とも起きない・・・えっ!?相討ち!?

「マズいっ!」

戦場の動きに真っ先に敏感に反応したのは福田花音であった。
タケちゃんがやられた!?・・・でもモー商側もなんかざわついてる?
めいめいの方はモー商側からもの凄い歓声が挙がってる。あっちもなんか起きてる!?

「余所見すんなって言ってんだろおかめ!お前の相手はこの石・・・」

ぶっ!

福田が有り得ない角度で放ったトラースキックは石田何とかの顔面をモロに捉えた
なかなか素早いけど動きが単純。コイツごときは敵じゃない。でも・・・

「オルァ!」

ととっ!背後からバットで襲い掛かってきた雑魚に足払いを食らわせる
どんどんモー商の雑魚がこっちに侵入してきてる・・・やはり戦力差的に厳しいか

「・・・うぉお!おかめー!」

バキッ!

再び起き上がってきた石田何とかに廻し蹴りを食らわせ福田花音はニヤリ、と笑った。
プーーーーーーーーーーーーーーーン!遠くから軽くて乾いたエンジン音が聞こえる
戦力差を考えればこの展開は想定の範囲内。助っ人ぐらいはちゃんと呼んであるんだよ
とびっきりの凄腕をね

プーーーーーーーーーーーーーーーン!
そのスクーターはモー商の校門を通り抜け、和田の横を横切り、福田の間近まで迫ってきた
とうっ!フルフェイスのヘルメットを被ったスクーターの主が飛び降り、福田の目の前に着地する

主を失ったスクーターはそのまま暴走し、前方のモー商の一団に突っ込み何人かの生徒に激突して煙を吹いて止まった。

 

おおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!

窓の外から歓声が聞こえる・・・りほりほ、かな?それともれいな?
バシいっ!

強烈なローキックが鞭のようにさゆみの腿を叩き、思わず膝から崩れ落ちそうになる

「ふふふ・・・」

それでもさゆみはニヤニヤと笑っていた。はっきり言ってキモいよね、さゆみ。
ボッコボコにされてるのにこんなに笑ってるなんて

「・・・」

そんな不気味なさゆみを見てか単純な焦りか、刺客の顔に明らかな動揺が浮かんでいる
もう一押し、してみますか

「ふふふっ、外も盛り上がってきたね」
「・・・」

再びローキック、払うように放たれたそれに耐え切れず、さゆみは遂に床に無様に転倒する

「ここまできてまだアンタは気付かないの?」
「・・・?」
「さゆみはね、結局一度も主役になれなかった・・・」

ガッ!マウントを取られた。刺客が拳を振り上げる

「やっと総長になったと思ったら下に凄いのが入って来てね・・・今外でスポットライト浴びてんのが多分そいつ」
「・・・」
「笑えるでしょ?何が総長だよ。どんなに裏で上手く立ち回っても結局主役は強くて目立つ奴じゃん。フフフっ・・・アハハハハハハっ!」
「・・・黙って下さい」

 

急げ!急げ!遥は廊下を全力で走り、階段を駆け上がる。
途中、よろよろと階段を降りてくる影と擦れ違った
・・・今は構ってる暇は無い!

「おい1年!外はどうなってる!」

クソデヴ・・・そんな身体で何しに行こうってんだよ

「知るか!こっちはそれどころじゃねーんだ!」
「そもそもお前こんな時に何してんだ?まさか逃げんのか?」

ムカッ!ハルの決死の覚悟も知らねーで何ほざきやがる

「逃げるわけねーだろ!命懸けて闘いに行くんだよ!」
「ハァ?上で誰と闘うっていうんだ?どう見ても逃げてんだろーが」

『逃げねーよっ!!!』

もんの凄くムカついた。だからもんの凄く大きい声で叫んだ。
・・・一瞬の間の後、デヴがニヤっと笑った。

「そうだな、お前は逃げるような奴じゃない。ウチに向かってきて大怪我するバカだからな」
「うるせー!今はアンタと世間話してるどころじゃねーんだ!じゃあな!」

とっ!無視して階段を昇ろうとしたがデヴに掴まれ、ガッ、と肩を組まれた
やめろ暑っ苦しい!そして離せ!

「いいから先輩に話してみろや。力貸してやっから」

あああ!もうっ!めんどくせーなー!

 

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