お似合い


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 ニア 這い上がる

  
  埋まる
 
 
***
 
 
「……ったく、いきなり原子爆弾は卑怯でしょうが……」
 
 
アタシが目覚めたのは広い草原。
先程神々から告げられた事をしばらく考えていたが、あまりの理不尽さに頭を抱える事しかできない。
アタシ、別に神様裏切った事なんかないし、そう悪いことをした覚えも無いの。
それなのにこんな殺し合いの参加者になるなんて、本当どうかしてる。
まあ、殺し合い……っていうか、命の奪い合いなら日常茶飯事だったんだけど。
だけど、それと今回とは相手にするものが違うわ。
元のイルヴァの時は、アタシの相手は大概がプチとかのモンスターか、実践慣れしてなさそうな人間だった。
それに対して今回、アタシが戦うことになるのは自分と同格、もしくはそれ以上の冒険者達だ。
最初に集められた場所に居た奴らの中には、アタシなんかが絶対に手を出しちゃいけない感じのオーラを纏っている者も居た。
きっとこんな殺し合いもエンターテインメントだって受け取れそうな、そんな奴。
そういう奴らと比べて、アタシは相当不利な立場にいる。
なんでかって言うと、アタシはまだまだ駆け出しの魔術師。
そりゃかなり経験は積んだつもりだけれど、それじゃやっぱり足りない。
それにアタシは、一人で戦う戦法に慣れていない。
いつも、仲間との共同作業でなんとかしていた。
戦闘ではパワー重視の奴に近接攻撃は任せて、自分は背後から援護射撃をする。
そんな、戦法をずっと取っていたから。
けれど、今は頼れる仲間は居ない。
居るのは、アタシだけ。
どう考えても、望み薄だ。
 
 
じゃあ、諦める?
 
 
そんなことは御免よ。
どんなに、自分が他と比べて非力だって、アタシにはやめられないものがある。
アタシはまだ、あの世界でろくに足跡を残せていない。
アタシの歩いた軌跡は、地図に描かれていない。
そんな状態で、終われるもんですか。
アタシに力が無くても、アタシに望みが無くても、それを補うだけの意地がアタシにはある。
その意地で、アタシは必ず生き残る。
生き残って、堂々と仲間の下へ帰るの。
そしてアタシは、胸を張って人に語れるぐらいの足跡を、生きていた証を、あのイルヴァに残すの。
どんな手を使ってでも、アタシはその使命を果たすの!
 
アタシは杖を持った手を大きく振り上げ――
 
 
「アタシ、は、負けないん、だ、から……!!」
 
 
――勢い良く振り下ろした。
 
飛び出たのは、鋭い魔法弾と、
 
 
「うわっ何これ痛っ!」
 
 
――聞き慣れない声。
 
 
 
*** 
 
 
 
ボクが目覚めたのは広い草原だった。
所々草むらもあって、身体を隠す場所には困らない。
さっき開いた鞄には武器も入っていたし、まあ不便ではない。
左手に握る大剣の柄は、握り慣れたもので、しっくりくる。
そう、この大剣はボクが使っていたものという事になる。
神もボクを見捨てた訳じゃないんだな、と思うと、思わず口元が緩む。
それでも、仲間と引き離したことに対する恨めしさは消えるもんじゃないけど。
ああ、会いたいなあ、ボクの愛しのLittle Girl!
早く帰って、そうしたら、結婚しよう!
 
……なんて事は正直どうでも良くて、ボクにはもっと大きな問題があるのだ。
バックパックの中に入っていた、いかにも不味そうな食料。
料理なんてろくにしたこと無い自分をこの時ばかりは罵りたくなった。
まあ食べれるだけマシなんだけど、ボクが食べたいのはこんな物じゃなくて、そう、もっと魅力的な物。
初めてそれを食べたボクはすっかりその虜になってしまった。
それ程の食べ物だ。
中でも特に、あれだ。
ヨウィンは最高だ。
 
 
「あああ……グウェンちゃん、食べたいなあ……」
 
 
草むらに寄りかかり、空を見ながらボクは願う。
ヨウィンに居るあのいたいけな少女は非常に美味だ。
考えるだけで涎が垂れそうになる。
もしも今願いが叶うなら、ボクは狂喜して叫ぶだろう。
 
 
グウェンちゃんの、お肉!!
 
 
つまりは、ボクは人肉という禁忌の虜なのだ。
あれに勝る食材はありはしない。
少なくとも、ボクにとってはそうだ。
だけれど、今グウェンちゃんは居ない。
この神々が創り給うた箱庭の中では、ボクのささやかな楽しみ(グウェンちゃん食い)は許されないのだ。
ああ、なんて残酷な神よ!
今は、我が愛しの少女よりも、あの幼女に会うことがボクの望みになってしまいました!
しかしながら、グウェンちゃんは諦めるしかないとしても、ボクの希望は絶たれた訳ではない。
この世界にも、人間は居る。
ボクみたいに、運悪くこの殺し合いに呼ばれてしまった奴が居る。
たぶん、不味くは無いはず。
少なくとも、このけちくさい食料かは、ずっと美味しいと願いたい。
 
 
ふふふ、呼ばれて来た冒険者さん達はどんな味がするんだろう。
 
 
そんな事を考えていると、背後に微かな悪寒。
しまった、すっかり油断していた。
急いで振り返ったボクの視界に飛び込んで来たのは、水色の何かもこもこした物と、
 
 
「うわっ何これ痛っ!」
 
 
――鋭い魔法弾。
 
 
 
 
*** 
 
 
アタシが振り下ろした杖はマジックミサイルの杖だったようで、アタシが不注意にも攻撃してしまった人は、前方の草陰からよろよろと姿を現した。
見るとそいつはアタシより二つか三つ程年上に見える、大剣を持った青年だった。
幸いにも、初めの場所でアタシが危険だと判断した奴ではないようだ。
しかし、やっぱり油断は禁物だ。
もしかしたら、こんな優男でも、超の付く危険人物かもしれない。
それか、場合によっては、こいつはアタシの仲間――と書いて道具と読む――になる可能性も無くはない。
チャンスなのだ。
アタシが、生き残るための。
ここは、か弱い女の子でも演じよう。
敵対心を見せ、下手に刺激してしまうのはマズい。
 
 
「あ、あの、す、すいません!アタシ、まさかこの杖がマジックミサイルの杖だとは思わなくて……
 というか、あなたがあんな所に居るなんて考えてもみなかったから……」
 
 
アタシの出せる精一杯の可愛い声で、しどろもどろに目の前の男に謝る。
そいつは鬱陶しい深い青色の前髪をかき上げて、にっこりと笑う。
 
 
「いえいえ、まさかボクも近くに人が居るなんて思いませんでしたし」
 
 
いかにも優男と言う様な返事をそいつは返してくる。
少なくとも、今こいつからは殺気は感じられない。
なかなか、良いんじゃない?
これは一押ししたら簡単に騙されてアタシの道具になってくれるパターンかもしれない。
 
 
「でも、良かった……初めに会った人があなたで!アタシ、殺し合いとか、駄目で駄目で、
 怖い人に会っちゃったらどうしようって思ってて……」
 
「それは良かった、安心して頂けたようでこちらとしても嬉しい限りです。……あの、一つお願いがあるのですが」
 
 
来た、と思った。
全く、アタシは運がいいわ。
早いうちからこんなチャンスに出会えるなんて!
アタシは最高の笑顔で返事を返す。
 
 
「なんでしょうか?」
 
 
目の前の男も最高の笑顔で答える。
 
 
「あの、もし宜しければ、どうかボクの食料になってくれませんか?」
 
 
 
*** 
 
 
「……え?」
 
 
目の前の少女はボクの言葉を理解できていないようだ。
全く、ボクは運がいい。
早いうちからこんな良い食料に出会えるなんて。
 
せめてもの情けだ、すぐ終わらせてあげよう。
大剣を振り上げ、少女の驚きに染まった瞳に笑みを向け。
ごめんね、と口を動かして、腕を振り下ろす。
そしてそこには美味しそうなエレアの少女の死体の出来上がり。
 
 
の、はずだったのだが。
 
 
「――魔法の矢!」
 
 
放たれた矢が当たり、手元が狂ってしまう。
刃は空を切り、足元の地面に突き刺さる。
目の前には彼女が片手をこちらに突き出し、荒い息で立っていた。
 
 
なんだよ、魔術師かよ。
 
 
「ちょ、ちょっと待ってください!私に考えがあります!」
 
「……何ですか」
 
 
ボクは邪魔されるのが嫌いだ。
今も、大剣を地面から抜き追撃を放とうと思ったのに。
こいつ、初心者じゃないな。
 
 
「あ、あなたが求めているものは分かりました、でも、もっと良い方法があるんです」
 
「方法なんてどうでも良いんですよ」
 
「違うんです、今、このノースティリスには色んな人が集まっていると思うんです。
 もし、その人たちを、全部あなたが好きにできるとしたらどうですか」
 
 
 
***
 
 
「……どういうことですか」
 
 
少し警戒しながらも、目の前の男はアタシの投げた餌に食いついてきた。
二度目のチャンスは、逃さない。
 
 
「簡単な事、です。あなたとアタシで、手を組むんです」
 
 
男は訝しげにアタシの言葉を聞いている。
できるだけ平静を保ち、慎重に言葉を紡ぐ。
 
 
「あなたも分かっていると思うんです、ここに呼ばれた人たちの中には、敵わない相手も居るかもしれないって」
 
「……」
 
「だからこそ、協力するんです。あなたにはその剣が、アタシには呪文があります」
 
「……協力すれば、生き残ると?」
 
「そういう事です」
 
 
男は暫し押し黙ると、アタシの目を見て、言った。
 
 
「いいでしょう、その方法、受け入れましょう」
 
 
 
 
*** 
 
 
ここに、一風変わった二人組みが誕生した。
 
 
「自己紹介がまだでしたね、アタシはアリア。魔術師をやっています」
 
(ま、せいぜいアタシの役に立つことね。さっきはどうなるかと思ったけど、案外ちょろい男ね)
 
 
少女は生き残る為に男を利用する。
 
 
「ボクは戦士をやっています、カインです」
 
(どうやらさっきの怯えた少女は演技か。まあいい、全部終わったら、その時は)
 
 
男は自らの欲の為に少女を利用する。
 
 
両者に共通する感情はただ一つ。
 
 
『いずれは、この手で、終わらせてやる』
 
 
彼らの進む道の先は、まだ見えない。
 
 
 
 
 
 
 
【G-3/中央/一日目・朝】
 
 
 
【アリア@エレア】
【職業:魔術師】
【技能・スキル:料理、交渉、魔法の矢2/3】
【宗教:元素のイツパロトル】
[状態]:健康
[装備]:マジックミサイルの杖(残り9回)
[所持]:基本支給品、形見の鞄(不明アイテム2個)
[思考・状況] 基本:生き残る
        1:とりあえずはこの男を利用する
【備考】
モコモコの水色の髪、赤の瞳を持つエレアの少女。わりと女王様タイプ。
 
【カイン@ジューア】
【職業:戦士】
【技能・スキル:解剖学、鍵開け】
【宗教:地のオパートス】
[状態]:健康
[装備]:☆うつろいなき大剣『巨人のような玩具』
[所持]:基本支給品、形見の鞄(不明アイテム2個)
[思考・状況] 基本:人肉食いてえ
        1:とりあえずはこの少女を利用する
【備考】
濃い青色の髪、緑の瞳を持つ二十歳ぐらいに見える青年。基本敬語。
人肉大好き。
 
 
【エンチャント紹介】
 
☆うつろいなき大剣『巨人のような玩具』
・それはダイヤで作られている
・それは鍵開けの技能を上げる
・それはアイテムを盗まれなくする
・それは恐怖を無効にする 
 
 
 
Buck :4 Next
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