1スレ目>>725~>>731


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 ビルの隙間をバイクが高速で駆け抜ける。運転している人物はライダースーツにフルフェイスメット、革手袋に安全靴まで履いた完全装備だ。素性を隠すかのように全身を固められているためその正体は知れないが、スーツによって強調されたボディラインで女性ということだけは判る。
 前後を走る車は無く、対向車線は渋滞気味。やや離れた位置に見える黒い巨人、カースが原因だ。
 
 距離が詰まってくると、妙な気配を感じ取ったのかカースがこちらを向く。
 女はバイクの前輪を浮かしウイリー状態になると……ハンドルを手放した。
 体をバイクから離し、空中で大の字になって
 
「 転 身 !! 」
 
 と叫ぶと、ウイリーのまま走り続けていたバイクが突如バラバラになった。
 その原型を想像できないほどに細かくなった部品は吸い寄せられるようにライダースーツに張り付いていき、装甲に変わる。タイヤのゴムですら、関節部を守るラバー素材となった。
 そうして一呼吸の間に変身を終えると今度は膝を抱えて回転し、勢いそのままにカースの巨体目がけてドロップキックをお見舞いした。
 
 
「オ゛ッ」
 
 とカースが声にならない悲鳴と共に吹き飛ぶのを尻目に着地をしっかりと決め、
 
カミカゼ「覚悟完了、カミカゼ参上!」
 
 ポーズと共にセリフを決める。セリフが響くとどこに隠れていたのやら、そちらこちらから野次馬が現れ「カミカゼー!」と声援をよこす。
 もう慣れたものだから、簡単に手だけ振って応えてやると、カースが起き上がるのを確認して臨戦態勢を取る。
 起き上がったカースはキッとカミカゼを睨み、
 
「ハラダタシイィ!」
 
 と叫び横薙ぎに殴りつけた。カミカゼは質量差に負けて5~6メートルほど横に押されたが、攻撃はしっかりと防御している。
 横滑りが止まったと見るやカミカゼは飛びかかり、カースの顔面を殴って再び倒れさせる。
 
 
 野次馬からはワッと歓声が挙がるが、直後それらは悲鳴でかき消された。
 異変に気付きカミカゼが振り返ると、野次馬のすぐ向こう側に新手のカース、しかもその足元には転倒した親子が居た。
 新手の腕がゆっくりと持ち上がる。
 
カミカゼ「まずい!」
 
 カミカゼは逃げる野次馬に気を付けながら親子の元へ駆ける。しかし先ほどまで相手取っていたカースが起き上がると、一直線にカミカゼに向かう。
 カミカゼが親子の元へ辿り着くと、それを待っていたかのようにカースの腕が振り下ろされ、追ってきたカースも追従して腕を振るった。
 
――ズガン、と衝撃音が響き、静寂が訪れる。
 
 
野次馬「カ……カミカゼー!」
 
カミカゼ「おう、呼んだか?」
 
 悲痛な叫びが木霊するも、あっけなく返事が返ってくる。
 カミカゼは両の腕でしっかりと攻撃を受け止めていた。
 そしてカースの腕をがっしと掴むとその巨体を軽々と振り回し、二体纏めて斜め上へと放り投げた。
 
――説明しよう!
 カミカゼのスーツに搭載された謎テクは「決死の覚悟」をエネルギーに変えることができる為、窮地に陥るほど強力なパワーを発揮するのだ!
 
 カミカゼは放り投げた二体の落下地点に先回りすると、拳を構える。
 
――滾る力が拳に集う!
 
――拳の唸りが風を生む!
 
カミカゼ「歯ぁ喰いしばれッ! 必殺! スマッシュハリケーン!!!」
 
 
 カミカゼ必殺の拳によって錐揉み回転しながら再び打ち上げられた二体のカースは、上空で爆発四散した。
 浄化され色を失った核の欠片はキラキラと太陽光を乱反射させながら散り、地表に届くことなく消滅する。
 カミカゼは先の親子のところへ行くと、子供の頭にポンと手を置き、
 
カミカゼ「危ないから見物はこれっきりにしような」
 
 というとわしゃわしゃと少々乱雑に撫でる。
 感謝の意を述べる母親に背を向けると、カミカゼは変身を解いて元に戻ったバイクに跨り、ただただ黙って去っていった。
 
 
 
 
 
 ライダースーツを脱いでシャワーを浴び、私服に着替えた向井拓海が作業場を訪ねると、既に原田美世はバイクのメンテナンスを始めていた。
 
美世「お疲れー。今回はダメージ少なかったみたいだね、無事でなにより」
 
拓海「ばーか、アタシを誰だと思ってるんだよ、たかだか二体くらい余裕だっつーの」
 
美世「あたしとしては余裕なら無傷で返ってきてほしいんだけどね、あーほらこんなにサスが痛んで」
 
拓海「毎度思うんだけどよ、どーいう理屈で腕のダメージがサスにくるんだよ」
 
美世「知らない」
 
拓海「知らないっておまえ、作ったやつの言うことか?」
 
美世「だって作業中のことよく覚えてないんだし仕方ないでしょ? メンテはできてるんだから問題なしっ」
 
拓海「……あーそうかい。おまえがいいならそれでいいや」
 
 
 会話を打ち切ると拓海は作業場の端に腰かけ、友人の仕事ぶりを見守る。
 突然体が力に目覚めて、点検に預けたバイクを改造されて。なし崩し的に、やけっぱちに始めたヒーロー活動は、どうやら性に合ってたらしい。
 いつ終えるともしれないこの生活がいつまでも続けばいいと、拓海は考えていた。
 
    了
 
 
――次回予告――
 
美世「た、拓海! ヒーローに怪我させたって、何やってんの!?
   責任取って同盟に加入……アイドル!?
   ちょっと、もっかい最初から説明してよ!
 
   あっじ、次回の特攻戦士カミカゼは
   『アイドルヒーロー同盟』です!
   覚悟、完了!」
 
※予告なく内容が変更されるおそれがあります