5スレ目>>782~>>803

782 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:40:21.25 ID:7bYZ6KqBo [1/22]
イベント「真夏の肝試し大作戦!」
設定お借りして投下します


前回までのあらすじ

『斬っても斬ってもカピバラ』

参考
>>452 (美穂と超ハンテーン)
>>700 (真夏の肝試し大作戦!)

783 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:40:50.32 ID:7bYZ6KqBo [2/22]

私にとって今回の事はそれは一大事だった。


昼間でも、外が夜みたいに薄暗い事だとか

テレビが付かなくなったとか、

電話が使えなくなったとか、

家の外の道で妖怪が騒いでるらしいだとか、


そんな事よりも重大な事だ。


肇ちゃんが倒れた。

784 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:41:16.94 ID:7bYZ6KqBo [3/22]

肇「うぅ・・・・・・・あぅ・・・・・・。」

美穂「肇ちゃん・・・・・・。」


急に倒れたから、今はお布団で寝てもらってる。

病院には電話が繋がらないので、

お父さんが近所のお医者さんを呼んでくると言っていた。

たぶん今頃出かける準備をしているところだと思う。


肇「うぅ・・・・・・。」


前にも妖力の枯渇と空腹で倒れた事はあったけど

今回はそうじゃないのは、すぐにわかった。

だって、苦しみ方が全然違う。


美穂「今朝、起きてきた時は何ともなかったのに・・・・・・。」


いや、何ともなかったはずがない。

きっと、前倒れた時みたいに、何でもない顔で無理してたんだ。


肇「うぁ・・・・・・。」

美穂「どうして・・・・・・」


気づいてあげられなかったのかな。

785 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:41:45.84 ID:7bYZ6KqBo [4/22]


ぴんぽーん


そんな時だ。

玄関の呼び鈴が鳴った。

美穂「・・・・・・・?こんな時にお客さん?」


玄関でお母さん達が話し合っているのが聞こえる。

一体誰だろう?


そんな風に思っていると、足音がつかつかと

私達の居る客間に近づいてきて、

「どうぞ。」

と、お母さんが外からドアを開けた。

786 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:42:12.89 ID:7bYZ6KqBo [5/22]

スラリと長身の和服を着た男の人が部屋に入ってきた。

知らない人だ。

だけど、すぐに肇ちゃんの関係者なんだなってわかった。

その男の人の頭には長い、曲がりくねった角があったから。


「やれやれ、こんな事になっているだろうとは思っていたよ。」

「美穂さんの父君が、出かけてしまう前に来れて良かった良かった。」

「何しろ、外には妖怪悪霊共がうじゃうじゃ居る。人間が不用意に外に出るのはあまりよくない。」

「まあ、おかげで私がここまで来る道を堂々と歩いていても、誰にも不思議がられる事はなかったのだが。」


美穂「あ、ああの、ど、どちら様ですか?」


「ああ、いや失礼。申し遅れた。」

「はじめまして、こんにちは。美穂さん。」

「私は、肇の父だ。」


その人は肇ちゃんのお父さんだった。

787 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:42:54.50 ID:7bYZ6KqBo [6/22]

藤原父「娘が世話になっている身でありながら、不躾なお願いで大変恐縮なのだが、」

藤原父「ほんの少しの間だけ、お母君は部屋の外で待っていて頂けないだろうか。」

藤原父「少し、肇と大事な話がしたい。」


その頼み事にお母さんは少しだけ難しい顔をしたけれど、

すぐに了承して、

「美穂。」

と、私にも部屋の外に出るように促した。


藤原父「ああ、いや。美穂さんはそのままで。彼女はきっと知っておきたい話でしょう。」


お母さんはやっぱり難しい顔をして、

少しだけ考えた後に、私の方を見た。

私が頷くと、軽く溜息をついたけれど、黙ってドアを閉めてくれた。

客間の中に居るのは、私と肇ちゃん、そして肇ちゃんのお父さんの3人だけだ。


それを確認して、肇ちゃんのお父さんが話を始める。


藤原父「さて、まずは美穂さんに、肇が倒れた理由から説明しようかな。」

788 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:43:30.65 ID:7bYZ6KqBo [7/22]

藤原父「原因は今外で起こっている事と、そして刀にある。」

藤原父「『鬼神の七振り』、私の父が作り上げた、妖刀七本。」

藤原父「『小春日和』を持つ美穂さんも知ってのとおり、」

藤原父「この刀達は周囲から負のエネルギーを吸い上げる。」


どうして、この人は私が『小春日和』を持っていることを知っているのだろう。

と言うか、名乗る前から私の名前も知っていた。


藤原父「それについては、肇から何度か便りがあったのでな。」

美穂「えっ、今、私喋ってました!?」

藤原父「すまないが、心の声を聞かせてもらった。」


聞こえちゃうの、これ?


藤原父「聞こうとしてるのではなく、聞こえてしまうものなのだ。」

藤原父「私は肇よりも二倍鬼に近いからな。体質的なものだ。」

藤原父「悪気はまったくないので、許して欲しい。」


そう言われても、心の声まで聞かれてしまうのはなんだかむず痒い。

789 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:44:11.91 ID:7bYZ6KqBo [8/22]

藤原父「話を続けよう。」

藤原父「今現在、この街は祟り場の影響下に入っていてな。」

美穂「祟り場?」

藤原父「すまない、聞きなれぬ言葉であったな。」

藤原父「何らかの原因で特定地域の妖気が爆発的に増幅して出来る領域でな。」

藤原父「このような人里で、ここまで広範囲に祟り場が出来ることは珍しい事なのだが・・・・・・。」

私達が知らない間に、なんだか外はすごく大変な事になっていたらしい。

藤原父「なんにせよ、おかげで妖気に汚染された負のエネルギーが大気に満ちているのだ。」

藤原父「それが周囲から負のエネルギーを吸う、刀達に良くない・・・・・・。」

藤原父「いや、良すぎる影響を与えてしまうのだ。」

美穂「良すぎる影響ですか?」

そう言えば、今朝からヒヨちゃんはすごく元気な気がする。

カピバラさんと戦った時に、負のエネルギーをたくさん使ちゃったせいで、

最近は少し弱っていたのだけど。

790 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:45:00.19 ID:7bYZ6KqBo [9/22]

藤原父「例えば『戟王丸』」

藤原父「日本一、キレるこの刀は周囲から常に『怒り』のエネルギーを吸い取っている。」

藤原父「祟り場の影響下ではな、その吸い取る速度が凄まじく速い。」

藤原父「鞘に収めて一週間で溜まる分の怒りが、わずか一日で溜まるほどにな。」

藤原父「負のエネルギーを汚染する妖力の影響でだ。妖刀であるが故の相乗効果と言う奴だな。」

藤原父「浄化の鞘による負のエネルギーの浄化速度などは、もはや焼け石に水であろう。」


淡々と、肇ちゃんのお父さんは話しているが、

つまりそれは、


美穂「刀の感情を制御できない・・・・・・。」

藤原父「そうだ。負の感情を吸いすぎれば、刀に取り付けられた核が暴走してしまう。」

藤原父「まあ、刀が一本であるならばどうにか制御できるだろう。」

藤原父「しかし、肇は、数本の刀を所有している。」

藤原父「祟り場の影響下でこれらの刀、全ての面倒を見切るのははっきり言って不可能に近い。」


藤原父「ならば、肇はどうしたか。」

胸がざわめく。嫌な予感がする。

藤原父「刀に流れるはずの、負のエネルギーを自らが引き受けたのだ。」

791 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:45:50.00 ID:7bYZ6KqBo [10/22]

美穂「えっ、そんな事したらっ・・・・・・」

今にも叫びそうになったけど、肇ちゃんが傍で眠っている事を思い出して、グッと堪えた。

そんな事してしまえば、どうなってしまうのかまではわからない。でも、すごく無茶しているのはわかった。

藤原父「引き受けているのは妖力に近い負のエネルギーだ、肇にもそれほど悪い影響は与えないよ。」

藤原父「それに、その判断はおおむね正しい。おかげで刀達を暴走させずにすんだ。」

美穂「悪い影響は与えないって言うなら・・・・・・じゃあ、なんで肇ちゃんは倒れたんですか?」

私の知りたかった事にようやく答えが出る。

藤原父「妖力の溜め込みすぎだ。」


藤原父「妖力の枯渇を空腹とするならば、食べすぎて苦しんでいるようなものだな。」

藤原父「極端な子だ、まったく。」

藤原父「さて、美穂さん。ここまで聞いて何か質問はあるかな?」

美穂「・・・・・・。」

美穂「あのっ」

質問と言う訳ではないが、

ただ冷然と話し続けた彼に、私は一言だけ言いたかった。

美穂「肇ちゃんの事、心配じゃ無いんですか・・・・・・?」

美穂「肇ちゃん・・・・・・こんなに苦しんでてっ」

私の言葉に彼は少しだけ驚いた顔をした、

けれどすぐ真面目な顔になって

藤原父「・・・・・・勿論心配だとも。だからここまで駆けつけたんだ。」

そう言ってくれた。

792 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:46:38.52 ID:7bYZ6KqBo [11/22]

藤原父「もし私が冷然と話している様に見えたなら、それは慌てる必要が無い事を知っていたからだ。」

美穂「えっ?」

藤原父「ちゃんと解決策がある。すぐに良くなるのだ、この症状は。」

美穂「あ、あれ?そうなんですか?!」

もしかしたら、とんちんかんな事を聞いてしまったのかもしれない。

藤原父「けど、そうだな。私にとっては大したこと無い症状に見えていても」

藤原父「知らない美穂さんにとっては一大事だった。そこには気づけなかったな。すまない、謝ろう。」

美穂「い、いえ!わ、私の方こそ、な、なんか失礼な事言っちゃってすみません・・・・・・。」

美穂「あっ!そ、それより解決策があるなら、肇ちゃんを!」

藤原父「そうだな、美穂さんへの説明も終えたし、寝ぼすけを起こすとしよう。」

そう言って、肇ちゃんのお父さんは、

寝ている肇ちゃんのところに近づいて、腰を下ろし、

肇ちゃんの頬をペチペチと叩きながら言った。

藤原父「ほら、起きたまへよ。肇。」

美穂「あ、あの、もう少し優しく起こせませんか?」

藤原父「これでも優しくやっている。」

この人は鬼なんだろうか、あっ、鬼だった。

793 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:47:25.42 ID:7bYZ6KqBo [12/22]

肇「う、うーん。むにゃ・・・・・・あ、あれ?お父さん?」

藤原父「気がついたか?」

肇「・・・・・・?でも、ここ美穂さんのお家・・・・・・・あ、そっか夢か・・・・・・ふにゃ。」

藤原父「ニ度寝は感心しないぞ。」

そう言って再びぺちぺち頬を叩く。

鬼なのかな、この人。あっ、鬼だ。

肇ちゃんが今度こそ起きる。

肇「えっ・・・・・・嘘?本当にお父さん?でもなんで?」

藤原父「お前が倒れたから、お邪魔させていただいてるのだ。」

肇「あっ・・・・・・そっか。私、妖力を・・・・・・。」

藤原父「溜め込みすぎた妖力を少しだけ叩き出した。」

藤原父「しばらくは大丈夫だろう。」

どうやら、頬を叩いていたのはそのためだったらしい。

淡々と振舞っているけど、ちゃんと肇ちゃんのために行動してくれてるとわかって、安心する。

美穂「肇ちゃん、おはよう。」

肇「あっ・・・・・・えっと、おはようございます、美穂さん。」

そして、ちゃんと返事がかえってきてくれたのが、何より嬉しい。

794 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:47:58.79 ID:7bYZ6KqBo [13/22]

藤原父「しかし、まったく妖力の貯めすぎで倒れるものなどそうは居ないぞ。」

肇「うっ・・・・・・。」

肇ちゃんがすごくばつの悪そうな顔をした。

私が、肇ちゃんのお父さんの言葉の意味を考えていると、

藤原父「美穂さん、溜め込みすぎた力は使えば良いのだ。」

彼自身から説明してくれた。そっか、心が読めるんだった。

藤原父「何だって消費するのは大して難しいことではない。」

うーん、お金みたいな感覚なのかな?

貯めるのは難しいけれど、使っちゃうのは簡単みたいな?

藤原父「だから普通なら、自分自身が倒れてしまうまで妖力を溜め込むことはまず無いのだ。」


じゃあ、どうして肇ちゃんはそうなってしまったのだろう。

藤原父「一つは、刀達に流れる妖力を引き受けた事で、肇に流れる妖力の供給量が莫大になってしまったこと。」

藤原父「消費するのは簡単だが、急に供給量が膨れ上がると使い切るのは大変だからな。」

お金で例えるなら、

急にお小遣いが十倍になったら何に使っていいのかわからなくなるのと同じ、かな?

うーん、ちょっと違う気もする。

藤原父「まあ、これだけならば、大した問題ではないのだ。」

藤原父「妖力をしっかり使っていれば、倒れるまでの事にはならないだろう。」

795 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:48:58.73 ID:7bYZ6KqBo [14/22]

藤原父「問題はもう一つ、肇は溜まった妖力を一切使おうとしなかったことだ。」

美穂「えっ?」

藤原父「普段よりも数倍に供給量の増えた妖力を、少しも使おうとしなければ、それは倒れるだろうな。」

肇「お父さんっ・・・・・・。」

知られたくない秘密を知られてしまったみたいに、

肇ちゃんはちょっと怒りながら、言った。

美穂「肇ちゃん、どうして?」

だから、私は肇ちゃんに向き合って、肇ちゃん自身に聞くことにした。

肇「それは・・・その・・・。」

肇ちゃんが目をそらして、言いにくそうにしている。

なんだか珍しい光景で、不謹慎だけど、ちょっと可愛い仕種だと思った。

藤原父「美穂さん達に、迷惑をかけたくなかったのだろう。」

肇「お、お父さんっ!」

なかなか肇ちゃんが理由を話さなかったので、結局、彼が答えを出したのだった。

796 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:49:29.39 ID:7bYZ6KqBo [15/22]

美穂「迷惑だなんて・・・・・・どうして?」

藤原父「祟り場において、妖術の行使と言うのはな。」

藤原父「我々にとってなかなか、どうしようもなく抗い難い一種の高揚感を生むのだ。」

藤原父「具体的に言えば、感情が昂ぶり、テンションが上がって、色々とやり過ぎてしまう。」

藤原父「そして、それは妖力を使えば使うほどに顕著だ。」

藤原父「どうしても近くに居る人間には、多少の、良くない影響を与えてしまうだろうな。」

肇ちゃんは、妖力を使う事で、私達に危害が及ぶことを気にしていたらしい。


藤原父「だが、かと言って、肇は美穂さん達から離れることも出来なかった。」

藤原父「祟り場と言うのは妖怪にとっては良い場であっても、人間にとっては運気を下げる領域でな。」

藤原父「ああ、今思えばそれも悪かったのかもしれない。肇は一対三で人間に近い側だからな。」

藤原父「とにかく、そう言うわけで美穂さん達にも、どんな危険が及ぶかわからない。」


藤原父「付くべきか離れるべきか迷い、付いて我慢しようと決めて、結果倒れてしまったと言う訳だ。」

美穂「それじゃあ、肇ちゃんが倒れちゃったのは私のせい?」

肇「それは違いますっ!」

私の言葉は、肇ちゃんに強く否定された。

797 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:50:19.50 ID:7bYZ6KqBo [16/22]

藤原父「そう、肇の言うとおり。美穂さん達のせいではない。」

藤原父「今回の失敗は、肇の判断の誤りに他ならない。」

藤原父「迷惑を掛けたくなくてやった行動で、結果、迷惑を掛けてしまっているのだからな。」

肇「うっ・・・・・・・。」

痛いところを付かれたようだ。

藤原父「そして、このままでは同じ失敗を繰り返し、またすぐに倒れてしまうだろうな。」

藤原父「頑固者のお前はまた、我慢しようとするのだろう。」

肇「うぐっ・・・・・・・。」

しかも図星らしい。

美穂「肇ちゃん、私達の事を思ってくれるのは嬉しいし、」

美穂「それを迷惑だなんて私は思えないけど、でも無理しちゃダメだよ。」

肇「・・・・・・ですが」

それでも、肇ちゃんにも譲れないところはあるみたいだった。


藤原父「まあ、今回の件、肇一人では落とし所を決めるのはなかなか難しいことだ。」

藤原父「祟り場の発生などは、想定外の緊急事態であるしな。」

藤原父「そこで私が、この板挟みの問題を解決するために、急遽駆けつけたのだ。」

肇「解決?お父さんが?」

藤原父「ああ、そうだ。」

つまりは肇ちゃんの事が心配で飛んできてくれたのだろう。

そんな彼が、肇ちゃんを悩ます問題の解決策を話し始めた。


藤原父「まずは、肇の持つ、『鬼神の七振り』だが。」

藤原父「私が預かろう。」

肇「えっ。」

藤原父「いや、お前の使命を奪おうと言う訳ではない。刀の使い手を探すのはお前の役目だ。」

藤原父「だが、何も全ての使い手が見つかるまで無休で探す事も無いだろう。」

藤原父「いい機会だ、少し休め。」

798 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:51:22.68 ID:7bYZ6KqBo [17/22]

肇「休むって言っても・・・・・・。」

藤原父「発生した祟り場を収束させようと活動している者達が居る。この事体もじきに収まる。」

藤原父「それまでの間だ。」

祟り場が発生している間、肇ちゃんには刀の使い手探しを休暇させるつもりらしい。

藤原父「刀を持っていなければ、刀に流れる妖力をお前が引き受ける必要も無い。」

藤原父「つまり、これで一つ目の問題は解決だ。」


肇「でも、それだとお父さんが。」

藤原父「私が刀の面倒を見切れぬのではと心配しているのか?」

藤原父「なら、それは要らぬ心配だな。伊達に人と鬼の世、半々の道を歩んで来てはおらんつもりだ。」

藤原父「刀達の面倒くらい見切って見せるとも。」

藤原父「それに私はお前の二倍鬼だ。つまりお前の二倍は凄いし、二倍は無茶できるぞ。」

その言葉に、肇ちゃんはムッとした。

また珍しい表情を見れたな。

肇「でも私は、お父さんより一倍半、人としては凄いよ。」

肇ちゃんが対抗して言う。

こんな肇ちゃんが見れるなんて思わなかった。

藤原父「そうだな、だから祟り場での不運の影響も、私はお前の三分の二ですむ。」

言い返す言葉がないのか、肇ちゃんはさらにむぅーっとした。

美穂「ふふっ」

そのやり取りをみて私は思わず笑ってしまった。

それに気づいた肇ちゃんは少しだけ顔を赤らめていた。

799 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:52:14.67 ID:7bYZ6KqBo [18/22]

藤原父「さて、もう一つの問題の方だが、」

藤原父「刀が無くても、貯めてしまった妖力が無くなる訳ではないし、吐き出さねば同じ事だ。」

藤原父「そこで、」

まさか、また叩き出すのだろうか。

藤原父「いやいや私はそこまで鬼畜ではない。」

藤原父「流石に娘を何度も叩くのは人として心が痛むよ。」

藤原父「だから別の方法、もっと簡単な解決法だ。」


藤原父「肇、外で遊んでくるといい。」

肇「えっ。」

美穂「えっ。」

なんだか想像していたよりすごく簡単な解決法だった。

あ、でも今外は確か、

藤原父「そう、妖怪悪霊どもがうじゃうじゃいる。」

藤原父「しかし、私達にとってはお祭り騒ぎのようなもの。」

藤原父「そんな中で遊ぶのは楽しいぞ。」

藤原父「肇もお祭りは好きだっただろう?”おじいちゃん”がよく連れて行ったものだったな。」

肇「お祭りは確かに好きだけど・・・・・・。」

美穂「えっと遊ぶだけで、肇ちゃんの中に溜まってる妖力がどうにかなるんですか?」

藤原父「ああ、言ってみればストレスの発散のようなものだ。」

藤原父「外の連中がドンちゃん騒ぎしているのも、そのような理由もある。」

藤原父「妖力が漲って仕方ないから、その力を存分に使って楽しんでいる訳だな。」

800 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:53:00.01 ID:7bYZ6KqBo [19/22]

藤原父「だから肇も、その妖力を使って存分に遊んでくればいい。」

肇「でも、私がこの家を空けてしまったら・・・・・・。」

私達家族に、どんな危険があるのかわからない。

肇ちゃんはそれを心配しているのだろう。


藤原父「ああ、そうそう。遊びに行くのは美穂さんも一緒だぞ。」

美穂「えっ。」

肇「えっ。」

急にお鉢が回ってきた。

美穂「えっと、それはどう言う理由で?」

藤原父「決まっている、『小春日和』も漲って仕方ないはずだからだ。」

そう言えば、肇ちゃんの事で気が回っていなかったけど、

私の刀、ヒヨちゃんも、今日はずっと元気を持て余しているんだった。

確かに、このまま引きこもっていると不味いのかも。

801 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:53:34.10 ID:7bYZ6KqBo [20/22]

藤原父「安心したまへ。美穂さんが外に出ても、危険はずっと低い。」

藤原父「この環境は『小春日和』にとっては、得意な環境。水を得た魚だ。」

藤原父「故に、肇の妖力の行使で、美穂さんに危険を及ぼす事もない。『小春日和』が守ってくれる。」

藤原父「妖怪悪霊共が襲ってきたとしても、お前達二人ならどうとでもなる。」

藤原父「むしろ襲ってきた妖怪達とも、一緒に遊ぶつもりで楽しめばいい。」


藤原父「この家の事なら心配するな。私が残っているからな。」

藤原父「美穂さんの父君、母君とも、大人同士、親同士、積もる話もある。」

藤原父「肇が世話になっているお礼もしなければならないだろう。」


藤原父「では、そう言うわけだ。」

一通り解決策を話し終えた彼は、立ち上がった。


藤原父「私はここまでの経緯を、美穂さんの父君、母君に説明してくるとしよう。」

藤原父「二人とも、”夏休み”と”夏祭り”。存分に楽しんで来い。」

そう言い残すと、私達の返事も待たずに、部屋に置いていた刀達を持って、客間から出て行った。


肇「な、なんだかすみません・・・・・・勝手な父で。」

美穂「ううん。ちゃんと肇ちゃんの悩みも、私の心配も全部解決してくれたよ。」

美穂「良いお父さんだね。」

肇「そ、そうかな?」

肇ちゃんは、照れたように笑った。

802 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:54:32.93 ID:7bYZ6KqBo [21/22]

美穂「肇ちゃん、もう体は大丈夫?苦しくはない?」

肇「大丈夫と言うか、体の調子はもうずっといいです。」

肇「ご心配を掛けてしまい、すみません。」

美穂「ううん、いいよ。でも悩みがあったら、これからは相談して欲しいな。」

肇「・・・・・・はい。ありがとうございます、美穂さん。」

肇「ふふっ、なんだか、今日の美穂さんはすごくヒーローって感じですね。」

美穂「えっ、あ、そ、そうかな?」

美穂「けっ、結局、私自身は何にもできてない気がするけど。」

肇「いえ、美穂さんに心配して貰えて、私はすごく嬉しかったですよ。」

美穂「なっ、なんか照れくさいな。」

でも、人の悩みを聞こうとするなんて、今まで出来なかったかも。

ちょっとセイラさんっぽかったかな。あの人に近づけてるなら、ヒーローっぽくなれてる?

そうだったらいいなあ、って思う。


美穂「えっと・・・・・・それじゃあ、肇ちゃんも大丈夫みたいだし。」

美穂「一緒に遊びに?行こっか?」

肇「はい、是非。お供させていただきます。」

薄暗い街の外には、何が待ち受けてるのかわからないけど、

とりあえず楽しんでみようかなって思います。肇ちゃんと一緒に。


おしまい

803 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:55:18.56 ID:7bYZ6KqBo [22/22]

藤原父

職業:鬼の刀鍛冶の息子。肇の父。
属性:鬼と人のハーフ
能力:妖術、神通力。

藤原肇の父。鬼と人間のハーフ。娘の窮地に駆けつけた。
妖怪と人間の間を生きているためか、誰に対しても遠慮なく要求するタイプ。
たぶん出番このイベントだけ。


◆方針
小日向美穂・藤原肇 → 妖怪が跋扈する街の外に、特に目的もなく遊びに出るみたいです。


肇ちゃんにとってはちょっと悪い要素が重なってた。
そんなピンチにお父さんが襲来してきたお話でした。
『鬼神の七振り』はこのイベントの間だけ、お父さんに預けてます。

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最終更新:2019年04月27日 20:27