5スレ目>>452~>>505

452 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:30:52.95 ID:ZwWek3zwo [1/56]
調子乗って長くなってしまった感はあるが投下します。

 

前回までのあらすじ

『カピバラさんを斬撃耐性ごとぶった斬る日が来たナリ』


参考
>>5 (美穂と肇)

453 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:31:18.53 ID:ZwWek3zwo [2/56]

 

 

生まれてからずっと、聞こえていた信号が一つ途絶えた。

 

 

454 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:31:47.20 ID:ZwWek3zwo [3/56]

――アレから何度も生存確認信号を送ったが、

――結局のところ、返事は一度も返ってこなかった。


ハンテーン「はん・・・・・・。」

――やられちまったんだな、兄弟。


ハンテーン「・・・・・・。」

――おれは臆病だから、仇をとってやるなんて事はできないけどよ。


ハンテーン「・・・・・・。」

――俺達の生まれた理由・・・・・・《マムからの指令》は果たして見せるぜ。

――ヒーロー達を混乱に陥れて、データを集めて送って、


――そして、マムの元に無事帰る。


ハンテーン「・・・・・・。」


――お前に出来なかった最後の使命を果たすことが、お前に出来る唯一の弔いになる気がするからよ。


ハンテーン「てぇぇん!!!」


――ゆっくり眠りな、兄弟。

 

GDF隊員B「アイツ、なんか悲しそうな声で鳴きましたね。」

GDF隊員C「昨日見た感動巨編の内容でも思い出してるんじゃねぇか。」

455 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:32:20.98 ID:ZwWek3zwo [4/56]

ハンテーン「はんっ!」

――おっと、つい柄にもなく感傷に浸っちまったぜ。


隊員A「動くなよ!怪人!」

隊員A「お前は既に包囲されている!大人しく投降しろ!」


ハンテーン「はーん?」


しかし実際、もう潮時であろうとはハンテーン自身感じていたことだ。

活動を始めてから知名度は鰻登り。

今やちょっとした有名人・・・・・・いや、有名カピバラだ。


有名になって得した事はない。

ラブリーでキュートな姿を見て集まってくる、女子供はもはや居なくなり。

気づけば筋肉隆々の軍隊員に囲まれていた。

どうせ集まるならカワイイ方がいいに決まってる。


ハンテーン「ふはぁぁん。」


隊員B「・・・・・あいつ欠伸してません?」

隊員A「舐められてるな。」

456 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:33:08.85 ID:ZwWek3zwo [5/56]

隊員A「どうやら、こちらの言葉は通じないらしいな。」

隊員A「捕獲作戦開始するぞ。」

隊員A「総員、ゴム弾用意。」


今回の怪人騒動にとりあえず用意した武装。

防御力が高く、刃物は通じないと言う噂から、害獣駆除用の銃を使うことになりました。

ゴム弾と侮ることなかれ。囲まれて撃たれるとめちゃくちゃ痛いぞ。


隊員A「撃て!」

ハンテーンに向けて、ゴム弾の雨が放たれる。


ハンテーン「はんてんっ!」

ハンテーンは全身の毛並みを硬質化し、迫り来る銃弾を防御。

銃弾に対する耐性は、斬撃耐性と違って特にはないが、

元々ハンテーンの毛はめちゃ硬いのだ。

流石にプラズマバスターはどうにもならないが、このくらいの銃弾の雨なら防いでみせる。


そしてさらに、

ハンテーン「てぇん!」

隊員F「うわっ、こいつ、いつのまに近づいて!」


ハンテーンの逃げ足はめちゃ速い。

短い手足のずんぐりした体系からどうやって出るのか分からないスピードを出すのもあるが、

なにより判断力と瞬発力が、一味違う。


逃げ足が速い、と言うのはそれ即ち、

人の隙を突くのが上手い、と言う事なのだ。

457 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:34:05.98 ID:ZwWek3zwo [6/56]

毛並みを硬質化させ、銃弾の雨を潜り抜けながら、

包囲網の甘い部分を見つけ出し、ささっと近づく。

そしてプスリと、まずは一発。

彼らは発射される毛針対策にシールドを持っていたが、

不意を突き、近づいて指す分にはあんまり関係ない。


隊員F「地球の未来なんかどうでもいいわーいっ!」 ポーイ


隊員D「お、おい!陣形を崩すなっ!」

一人が仕事を投げ出せば、誰かがフォローせざるを得ない。

どうしてもそこには隙が出来てしまい、さらにプスリとやっちゃう。


隊員D「仕事とか正直やってられんよね・・・・・・印税生活とか目指したい」 ガクッ


隊員J「なんだなんだ」

隊員K「何が起こってる?」

後は芋蔓式だ。

ハンテーン「はん♪はん♪」

まあまあ、反転針どうぞ

458 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:34:53.06 ID:ZwWek3zwo [7/56]

隊員J「ひゃっはー!世界を混沌に落してやる!」 ズダダダダ

隊員K「汚物は消毒だぁぁぁあ!!」 ズダダダダ


隊員A「お、おい!!こっちに向けて撃つんじゃない!!」


正義感に溢れ、仕事熱心。平和を愛して、人を愛する。


そんな彼らが反転してしまえばこんな感じだ。

その場はあっと言う間に混乱の渦に飲まれる。


ここまで包囲網が崩れてしまえば、彼らの持っているシールドも特に効果を発揮しないだろう。

ダメ押しに反転針の毛弾を周囲に撒き散らすように発射する。


隊員H「この世に煩悩は不要だと悟った。」

隊員M「これが気持ちいいのか?んん?」

隊員S「もっと踏んでください!もっと踏んでください!」


ハンテーン「♪」


その混乱を尻目に、カピバラ怪人は短い足で器用にスキップしながら逃げ去るのだった。


隊員A「ま、待て!!逃がすな!追え!!追えー!!」

ハンテーン「はんっ!」

待てと言われて待つ怪人がいるものかっ!

ここは退散させて貰うぜ、あばよ、とっつぁ~ん。

459 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:36:17.56 ID:ZwWek3zwo [8/56]


「 は ~ は っ は っ は っ は っ は ! ! 」


そんな時、突如響いた高笑い。


ハンテーン「!?」

隊員A「!?」

ハンテーンにとってどこかで聞いた高笑い。


ハンテーン「はんっ!? はぁん?!」


どこだ!どこにいる!!

左か! 右か!?


いや!!


隊員A「上だっ!!」


傍に建っていた建物の屋上、

そこには漆黒のアイドル衣装に身を包み、美しき刀を手に持った一人の少女が立っていた!


美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!」

美穂「ひなたん星人ナリっ!!」

美穂「この街はまるごとつるっと!ぜ~んぶ!私のものひなたっ☆」 シュパァァン!


美穂「トウっ!」

おなじみの台詞とキメポーズを決めたあと、地上に飛び降りるひなたん星人!

そしてスタッ、っと見事に着地!


と言うか結局降りてくるなら、屋上に立ってる必要なかっただろ。

460 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:36:58.51 ID:ZwWek3zwo [9/56]

美穂「ついにカピバラさん発見ナリっ☆」

ハンテーン「はん、てーん・・・・・・。」

またお前かよ、とでも言いたそうなカピバラ怪人。


以前、戦った時は、

ハンテーンの毛ばりは、ひなたん星人には通じず。

ひなたん星人の斬撃は、ハンテーンには通じず。


お互い、相手の攻撃は通じないのに有効打はない。

居留守VS新聞勧誘の如き、不毛な戦いを繰り広げた因縁の相手だ。


美穂「だけど、あれから私はつよくなったひなたっ☆」

美穂「そして今日こそ一刀両断にしてみせるナリっ♪」 キュピーン

可愛くポーズを決めて、バイオレンスな宣言をしてみせる少女。


ハンテーン「・・・・・・。」

思わず呆れてしまうハンテーン。

これまでの地上の活動で、ハンテーンが学んだことは幾つかあるが、

その内の一つがこれだ。

”この星のヒーローと呼ばれる奴らはとにかくしつこい”

461 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:37:43.61 ID:ZwWek3zwo [10/56]

ハンテーン「はん・・・・・・。」

ハンテーンにとって、この少女は相手にするだけ無駄な敵。

ならば、さっさと逃げるに限る。


しかし、このひなたん星人とか言う少女、前回逃げられた反省もあってか、

なかなかハンテーンに逃げる隙を伺わせない。


逃走と言うのはスタートダッシュが肝心だ。

相手の虚を突き、走り出したならば。それだけで追いつくのは難しくなる。

逆に言えば、獲物が逃げてしまう事を警戒している捕食者の前で、

何も考えずただ走り出すのは愚作なのだ。


シマウマは、自身を狙うライオンから逃げ出す瞬間と言うのを必ず見極めている。

その駆け引きが出来なければ、弱肉強食のサバンナを生き残ることなどできないのだから。


まあ、別にハンテーンはサバンナ出身でもなんでもないが。


美穂「今日の私は最初からクライマックスナリっ!」


ひなたん星人は刀を構え、

そして、その刀を引くようにして身を下げた。

美穂「ラブリージャスティスっ・・・・・・」


――ここだ。


ハンテーンの直感が言う。

462 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:38:43.78 ID:ZwWek3zwo [11/56]

攻撃の瞬間と言うのは、別の行動に転じるのが最も難しくなる瞬間。

それも相手は体を少し後ろに下げたのだ。

ならば、”追いかける動作を行うのが難しくなる”のは道理と言うもの。


ハンテーンはすぐさま身を翻して駆け出した。


美穂「ひなたんスターシューターッ!!」


そんな彼の頭を何かがかすめ、

自慢の毛並みが抉れるようにハゲた。


ハンテーン「ははは、ははは~ん!?!?」


――お、俺の毛がハゲただと?!

――なんだ、なにをしたんだ。この女。

ハンテーンは思わず振り返る。


少女は先ほどの位置から、ほとんど動いておらず、

ただ刀を突き出した状態で止まっていた。

美穂「あっ、外してしまったナリ。」

美穂「やっぱり、慣れてない攻撃はむずかしいひなたっ☆」 テヘッ

463 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:39:25.59 ID:ZwWek3zwo [12/56]

隊員A「私は見ていたからわかるっ!」

隊員A「今のは突き技!!」

隊員A「刀を突き出し、放たれる突撃だったっ!!」


ハンテーン「は、はん!?」

お前が解説するのかよ、と言う突っ込みは置いておいて、

それはおかしいと思うハンテーン。

突に特化している槍などならまだしも、

刀と言うのは短い、リーチがない。

ひなたん星人の体格はごく普通の少女のものだ。

少女の手から刀で突きを放ったとして、その攻撃距離はたかが知れている。


どう考えたってハンテーンが逃走をはかり、離れた分の距離が埋まるはずがない。

そう、明らかに攻撃が届く距離ではない。

464 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:40:13.16 ID:ZwWek3zwo [13/56]

隊員A「だが、ただの突き技ではなかったっ!」

隊員A「漫画では、剣士が飛ぶ斬撃なんてものを放つ事があるがっ!」

隊員A「今のはまさしくそれに類する技っ!!」

隊員A「飛ぶ斬撃ならぬ、飛ぶ突き技だったっ!!!」


ハンテーン「は、ははん!?!」

そんな、バカな。


美穂「ラブリージャスティスひなたんスターシューターっ!!」

驚いてる間に第二撃が放たれる。


突きの動作から放たれるは、螺旋に回転する漆黒のエネルギーの塊。

負のエネルギーを放出する技術、そして負のエネルギーを形にする技術の応用技!

負のエネルギーを纏いし刀の突きから放たれるは高速回転する弾丸!!


ハンテーン「は!?ははんっ!?」

間一髪、第二撃を回避する。もう一瞬遅ければ危なかった。


今回、ひなたん星人が放つ新必殺技であるところの、

ラブリージャスティスひなたんスターシューターは

突撃か射撃に属するもの。

それ故に斬撃耐性を無効化し、ハンテーンの毛の鎧を貫くことが出来たのだ。


ハンテーン「はははん!!はんてはんててん!!」


え?聞いてない?

一刀両断宣言しておいて刺突かよって?ドンマイ。


ハンテーン「はんてんんんん!!」

こうなれば、自棄だ。

とばかりに、ハンテーンは何も考えず走り出し逃走を開始する。


美穂「待つひなたっ!」

そしてそれを、追いかけるひなたん星人!!

465 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:41:04.55 ID:ZwWek3zwo [14/56]

そんな怪人とひなたん星人の様子をみて、

周囲でパニックに陥っていたGDF隊員達も立ち上がりはじめた!


隊員P「みんな、ひなたん星人が来てくれたぞ!」

隊員I「ひなたん星人を援護するんだ!」

隊員G「ひなたんっ!ひなたんっ!」


ハンテーン「!ははんっ!」


カピバラ怪人はニヤリと笑う。

ハンテーンには爪や牙の様な攻撃的な力はないし、

後ろの少女には、ハンテーンの反転針は効かない。

しかしイコール攻撃できない、と言うわけではなかったようだ。


駆けつけてくれたヒーローの援護をしようと、

再び立ち上がったGDF隊員たちに反転針を射出する。


隊員P「ひなたん星人は我々の敵だっ!!」

隊員I「ひなたん星人を撃てっ!!」

隊員G「ひなたんっ!ひなたんっ!」

反転針が刺さった、彼らの狙いがハンテーンからひなたん星人に変わる。


ハンテーン「ははーん♪」


うまくいったようだ。

こいつらはきっと足止めに使えるだろう。

466 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:41:48.52 ID:ZwWek3zwo [15/56]

彼はこれまで何度も反転薬を撃ってきた事で、その特性をおおよそ理解していた。

どう言う人物に、どの程度撃てば、どのくらい反転するのか。

そのサンプルを得たことで、このように都合のいい程度に反転させる事ができるようになった。

この期間の間に、ひなたん星人が成長したのと同じ様に、

ハンテーンもまた成長していたのだ。


ひなたん星人の前に、反転させられてしまったGDFの隊員が立ちふさがる。


隊員A「お、お前達やめるんだっ!!」


隊員P「撃てええぇぇ!!」

隊員I「うひょぉおおお!!」

隊員G「ぶひぃいいいい!!」


弾丸の雨が少女に降り注ぐ。

美穂「効かないナリッ!」

だが、ひなたん星人もまた、ハンテーンと同じく銃弾の雨を物ともしない。

彼女の着るアイドル衣装風の、負のエネルギーの鎧だって、

ハンテーンの毛の鎧に負けないくらいに丈夫なのだから。

肌が露出してる部分への銃弾は、『小春日和』を使って防ぐ。


美穂「・・・・・・ラブリージャスティスっ」

銃弾の雨をあびながら呟く少女。

467 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:42:43.59 ID:ZwWek3zwo [16/56]

美穂「ひなたんみねうちっ!!」


放たれた技は、彼女の必殺技の一つである”不殺の一撃”


隊員P、I、G「あひぃいいん!」 バタリ


瞬く間に立ち塞がった隊員達を全員気絶させてしまう。

ちなみに、ひなたん星人が負のエネルギーの扱いを覚えた事で、

この技もより洗練されており、

”本当に痛くなく、体に傷痕も残さずに、相手を気絶させるだけのみねうち”が可能になりました。

その証拠にほら、見てください。


隊員P「幸せだ・・・・・・。」

隊員I「きもちよかっ・・・た・・・。」

隊員G「ぶ、ぶひひ・・・・・・。」

彼らの幸せそうな表情を。


ハンテーン「はんてーん♪」


だが、そんなやり取りの隙にハンテーンは遥か先の方まで逃げてしまったようだ。

彼らを足止めに使う、カピバラ怪人の作戦は見事に成功してしまったらしい。

468 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:43:20.89 ID:ZwWek3zwo [17/56]

ハンテーン「てーん♪てーん♪」


――なんだ、他愛無い。

――突き技を習得して来た事には少し焦ったが。

――なんて事はない。攻撃の当たらない位置まで逃げてしまえばそれで終わりだ。


のっしのっしと、だが痛快な速度でハンテーンは道路を走る。

もう、あの少女とは数百メートルは距離を離したはずだ。

ここまで離れてしまえば、もうハンテーンの速さに追いつくことも出来ないだろう。


ハンテーン「ははん♪」


走ってるうちにたどり着いたT字路

ハンテーンが、そこを右に曲がると、

 


目の前には刀を持った少女が構えていた。


美穂「ラブリージャスティスっ」

ハンテーン「ははん!?!」


突然現れたひなたん星人に、飛び上がって驚くハンテーン。


追いつかれるどころの話ではない。

なんと待ち伏せされていた。


美穂「ひなたんスターシューター!!!」

ハンテーン「てぇんっ!?」


またも間一髪かわす、どうにか急所は外したハンテーンだが、

しかし右肩部分の毛の鎧がごっそり持っていかれた。

469 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:44:00.91 ID:ZwWek3zwo [18/56]

ハンテーン「はんてんっ!!」

どうやって先回りできたのか、まるで理解には及ばないが、

とにかく目の前に居る少女から逃げなくてはと、

慌てて身を反転させて、元来た道を戻るハンテーン。

スタコラサッサと走り去る。


背後から漆黒の弾丸が飛んできて、

それが掠める度に毛の鎧が削られるが気にしてはいられない。


とにかく一心不乱にハンテーンは走る。

――こんな所で倒れるわけにはいかない。

――俺はマムの元に無事帰らねばならないのだ。

――そうだ、友にできなかった使命を、果すためにも!

470 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:44:29.53 ID:ZwWek3zwo [19/56]

全力で走り抜けて、

しばらくすれば、後ろから、漆黒の弾丸が飛んでこなくなった。

誰かが追ってきてる様子も無い。


今度こそ逃げ切れたのか?


ハンテーン「は、はぁん・・・・・・。」


少し安堵しながら、

そこの曲がり角を曲がれば、

 

やはり、刀を持った少女が先回りしていた。

美穂「ラブリージャスティスッ!」


ハンテーン「てぇえんっ!!」

――もうやだ、こいつ。

471 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:44:59.09 ID:ZwWek3zwo [20/56]

美穂「ひなたんスターシューターっ!!」


今度はモロに左上腕部に突き技がヒットしてしまう。

穿たれた風穴は大きく、こうなれば左腕は使い物にならないだろう。


ハンテーン「はんてんっ!」


だが足が動くならば、逃げることに支障はない。

腕が取れても問題ない、この身は半分機械のようなものだ。


すぐさま来た道を引き返す、

後ろから飛んでくる漆黒の弾丸は、本能でギリギリかわして

急所に当たりそうな物はなんとか外す。

しかし、完全にはかわしきれず掠める弾丸によって、またも毛の鎧は剥ぎ取られてしまった。

472 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:45:39.39 ID:ZwWek3zwo [21/56]

ハンテーン「はんてんっ・・・・・・。」

ここまで来れば、少女の狙いにも気づくと言うもの。

あの刀使いは、こちらの消耗を狙っている。


こちらの心臓部に刺突が一発でも当たればそれで終わり。


そして、かわされても、その攻撃が毛の鎧にかすめさえすれば良い。

回転する刺突の弾丸はハンテーンの毛を巻き込むように剥いでしまう。

つまりその部分の斬撃耐性が剥ぎ取られてしまうのだ。


一度の攻撃で、剥ぎ取られる鎧はわずかでも、

この攻撃がずっと続き、ハンテーンの毛の大部分がハゲてしまった時は、

ハンテーンは本当に一刀両断にされてしまうだろう。

473 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:46:23.63 ID:ZwWek3zwo [22/56]

少女の斬撃は、先ほどから放たれている刺突のように溜めの動作は一切なく、

その正確性も、攻撃力も、刺突よりずっと上だ。

ハンテーンの瞬発力でもかわすことはできないだろう。


ハンテーンに残された道は二つ。

飛んでくる刺突をかわせずに、急所となる部分を穿たれ倒れるか。

このまま毛の鎧を剥ぎ取られ続け、最後に鬼神の如き斬撃を身に受けて真っ二つにされるか。

二つに一つ。

そうなるまで追い詰められてしまった。

 

しかし、どうしてだ。

どうして、少女はハンテーンを先回りできたのだ。

ハンテーンは逃げる時、街に張巡らされた道をランダムにジグザグに走り回っている。

だから追いかける側は少しでも距離を取られて、

一度でもハンテーンを見失えば追跡は不可能なはずだ。


だと言うのに、あの少女は先回りしていた。

まるでハンテーンの逃げる位置、方向を完全に予測しているようだった。

未来予知能力でもない持っていない限り、そんな事できるはずがない。

474 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:47:11.47 ID:ZwWek3zwo [23/56]
――


リン「未来の予知なんて、たぶん出来ないけれど」

リン「データがあれば、予測なら結構簡単にできるんだよね。天気予報みたいに。」

そう言って端末を操作するリン。

その端末の画面には、ハンテーンの現在の位置情報がリアルタイムに送られてきている。


リン「二丁目の通りを曲がったね。」

リン「じゃあ、次は△×町交差点かな。」

肇「・・・・・・機械と言うのは凄いですね。これほど正確に位置を特定してしまえるなんて。」

機械音痴の肇にはリンのやってる事が、まるで魔法の様に見える。

リン「そう?肇が能力使ってやってる事の方が凄いと思うよ。」

肇「故郷では誰でも出来た事なので、あまり実感はないのですが。」


そう言って、目を瞑る肇。


肇(美穂さん、次は△×町交差点です。)


神通力による、口にする言葉を必要としない、伝達術。

俗に言う”テレパシー”を使って、美穂にハンテーンの向かった先を伝える。


美穂(わかったひなたっ☆すぐに向かうナリ!)

475 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:47:51.63 ID:ZwWek3zwo [24/56]

そして肇は目を開く。

肇「はい、伝え終わりましたよ。」

リン「便利だね、それ。」


鬼の孫娘とテクノロジストの少女が出会った経緯はほんの少し前にさかのぼる。


ハンテーンの足取りを追う形で、洗脳を解いて回っていた肇は、

その途中、同じくしてハンテーンを追う少女、リンに出会った。


ハンテーンを斬るために追っているのだが

騒ぎを聞きつけ、駆けつけても既に逃げられた後で、

なかなか追いつけず、困っている。と言った肇に対して、


リン「へえ、じゃあ、それ手伝ったら斬った後の怪人の残骸は貰ってもいい?」


と、言った事から共闘が成立したのだった。

476 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:48:26.97 ID:ZwWek3zwo [25/56]

リン(本当は無傷がいいけど、私一人だと捕まえるのも大変だし、)

リン(斬撃耐性を持つ怪人を斬りたがっている。って言うのも興味深かったしね。)


リンは以前、ハンテーンに襲われた際に、抜け目無く発信機を取り付けており、

その協力を得たおかげで、肇達はスムーズに逃走する前のハンテーンを発見することができた。

そして、今もハンテーンを追い詰めるために協力してもらっている訳である。


リン「それにしても、面白い刀だよね。」

リン「カースの核を浄化もしないままに、加工して妖刀の材料にしちゃうなんてね。」

浄化後の核を使ってなら、似たような、感情エネルギーを利用する武器は作ったことがあるリンではあるが。

リン「どうなってるのかな?」

肇(この人、目が怖いなぁ・・・・・・。)

彼女の眼鏡の奥の眼光はやけにギラギラしている。

なんだか狙われているのは、ハンテーンだけでないような気がした肇であった。

477 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:49:10.88 ID:ZwWek3zwo [26/56]

――


美穂「あ~はっはっはっはっは!!」


肇から送られてきた情報を元に、

ひなたん星人はハンテーンの向かおうとしている先に、急ぐ。


もしこれが、

平坦な、例えば陸上競技場などで行われる、追いかけっこであったならば、

ひなたん星人がハンテーンに追いつくことは難しかっただろう。

なにしろハンテーンの足は速い。とにかく速い。

ただしそれは”地上で”の話だ。


地上を走るハンテーンが街の中を逃げ回る場合、

その逃走ルートを道路の上と言うフィールドに限定されてしまう。

478 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:49:54.64 ID:ZwWek3zwo [27/56]

その一方で、ひなたん星人は、


美穂「ひなたんスカイハイ☆」


車の走る道路や家屋をジャンプで飛び越える。


美穂「ひなたんムーンウォーク!」


垂直に聳え立つ建物の壁に、足をつけて疾走する。


美穂「ひなたんカワイイポーズ♪」 シャーン!


電柱の上の様な、高く狭い足場の上でもバランスを崩さずポーズを決めてしまう。


などなど、まるで忍者のように縦横無尽かつ立体的な機動によって、

街の至るところにある障害物を跳び越えていく。


移動速度ではなく、機動力の差で、

二次元的な移動力と、三次元的な移動力の差で、

それに加えて、リン達からの情報によって、

ひなたん星人は、ハンテーンよりも先回りする事ができていたのだ。

479 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:50:35.07 ID:ZwWek3zwo [28/56]

指定の交差点にたどり着いた、ひなたん星人は『小春日和』を構える。


何も知らないハンテーンは、予想通りその場所にのこのことやってきた。

ハンテーン「ははん!?」

美穂「ラブリージャスティスひなたんスターシューター!」


ラブリージャスティスひなたんスターシューターは今度はハンテーンの胴体にヒットする。

何度も放っているうちに、徐々に精度が上がってきたようだ。


ハンテーン「はんっ・・・・・・てんっ!!」


手痛い一撃を受けながらも、歯を食いしばって、何とか持ちこたえたハンテーンは、

再び振り返り、逃走を開始する。

だが、その足取りはおぼつかない。

どうやら、これまでの攻撃の積み重ねで、随分消耗してしまったらしい。


こうなってしまえば、もう狩られるのも時間の問題であろう。

480 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:51:11.91 ID:ZwWek3zwo [29/56]

――情けねえ

――本当に情けねえ

――俺はこんなにも弱い

――マムから与えられた能力も最大限に活かすことさえできず、

――終には、先に倒れた相棒に果たしてみせると誓った、

――最後の指令さえ達成できそうにない。

――ここで俺が倒れてしまえば、

――マムからの期待も、相棒への誓いも、裏切ることになってしまうと言うのに。


背後から飛んでくる漆黒の突きは一向に止みそうにない。

全力で走っても距離が開いていないのだ。


――ああ、どうして俺はこんなにも

――臆病で、弱くて、情けねえんだ


そう思えた事が逆転の目であった。

ここしばらくの活動で、調子に乗っていたハンテーンが、

追い詰められることで、自分の弱さを改めて自覚したこと。

自分が強くないと、知ることが、可能性を生み出した。

481 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:51:53.03 ID:ZwWek3zwo [30/56]

ハンテーン「ははん」


乾いた笑いを漏らすように鳴くハンテーン。

一か八か、そんな賭けであるが、

どうやらもう、このくらいしか手はないらしい。


外れ掛けていた左腕の毛を逆立て、

それを右腕で取り外すハンテーン。


取り外した左腕を、自分の胸倉、

胴体に空いてしまった穴の部分に持っていき、


ハンテーン「はんっ!」


そして勢い良く突き刺した

482 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:52:22.48 ID:ZwWek3zwo [31/56]

――


リン「?」

リン「止まった?」

ハンテーンの位置情報が変わらない。

どうやら逃走をやめて、立ち止まっているらしい。


リン「・・・・・・やけになった訳じゃ無さそうだね。」

リン「肇、ひなたん星人からの連絡は?」

肇「・・・・・・。」

肇「様子がおかしいみたいですね。」

肇「全身の毛が逆立って、今までとはまるで別人。」

肇「いえ、別カピバラの様な雰囲気になってるそうで・・・・・・。」


『 テ ェ エ エ エ エ エ エ ン! ! !』


リン「!」

肇「・・・・・・凶暴な雄たけび、ここに居ても聞こえるなんて。」

リン「逃げてばかりの臆病な怪人が、凶暴にか・・・・・・。」

リン「って事は、”自分自身を反転させた”のかな。」

483 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:53:00.51 ID:ZwWek3zwo [32/56]

――


『ハァァァアアアアアアアンッ!!』


怪人ハンテーンは半分機械で出来ているような存在であったが、

もう半分はと言うと、作られた怪物であるとは言え、血が通う生物である。

血が通っていると言う事は薬が効く。


フグが自分の毒にやられてしまうようなマヌケな事がないようにと、

外皮は反転針が刺さらないようになっていたし、

口腔や呼吸器などから薬が流れ込むことも無い様に作られてはいたが、

胴に穿たれた穴から注入することで、無理やり反転薬を体の中に流し込んだのだ。


そして、ハンテーンは狙い通り、

己の性質を都合よく反転させることができた。


臆病でこすく、弱くて情けない怪人は

凶暴で、粗暴で、獰猛で、勇猛な怪人と化した。


穏やかだったカピバラは

友の死を、あるいは自分の弱さを、きっかけとして怒りに目覚めた

スーパー
さしずめ、”超”ハンテーンと言ったところであろう。

484 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:53:52.85 ID:ZwWek3zwo [33/56]

超ハンテーン『テェエエエン!!』

雄たけびと共に振るった怪人の右腕は、建物をプリンのように抉る。

美穂「な・・・・・・なんて怪力ひなたっ」


突如として、強暴に化した怪人の姿に、民衆達は慌てて逃げ出す。


反転薬は精神の性質を反転させる薬品。故にハンテーンは凶暴化した。

そしてさらに、

ハンテーンが0から作られた人造生物であるがためか、

その精神の変化は肉体の変化にも及んだ。

わざわざ取り除かれていた、攻撃性を作り出すため、

ハンテーンの細胞は自らを活性化させ、機械部分は自らに凶悪な改造を施し、より戦闘向きな肉体へと作り変えたのだ。

さらには、


超ハンテーン『テェン!!』 モワッ

マッスルポーズをとると同時にハゲていた毛の鎧が復活する。


美穂「なん・・・・・・だと・・・・・・・ナリ」


地道に剥いだ毛の鎧が瞬時に復活した事で、ひなたん星人はショックを受ける。

戦闘向きに作り変えられた肉体が瞬時に毛の鎧の再生を可能とした。

その上、その硬化能力と、斬撃耐性は変わらずに健在。


攻撃力と防御力、”超”ハンテーンはそれらを両立した形態なのだ!

485 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:54:57.03 ID:ZwWek3zwo [34/56]

超ハンテーン『ハンッ!テンッ!』


戦闘準備は整ったとばかりに、ハンテーンはひなたん星人に向き合う。

ムキムキになってしまった肉体は、これまでよりもずっと体が大きくなっていた。


美穂「かわいさゼロナリ・・・・・・・。」


超ハンテーン『ハンテェェェン!!』

その巨体が、タックルの姿勢でひなたん星人に走り出す!

これまでの形態よりも少し速度は落ちたようだが、

それでも、その巨体からは想像できない速度で迫ってきた!


美穂「ラブリージャスティスぅっ!」


しかし、的が大きくなって向かってくると言うならば、迎え撃つまで!


美穂「ひなたんスターシュータァア!!」


黒い螺旋の突きが、超ハンテーンを貫こうと差し迫る!

が、その一撃は

ハンテーン『テェンッ!!』

超ハンテーンの毛の鎧に弾かれた!


美穂「う、うそナリっ!?」


慌てて上空に飛び退くひなたん星人。

ほんのわずかに遅れて、ひなたん星人の立っていた場所にハンテーンが突っ込んできた!

その勢いのままに、たまたま後ろに放置されていたトラックに突っ込むハンテーン。

ゴォオオウン!と大きな音が鳴り、トラックは大きくひしゃげ、突き飛ばされる。

486 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:55:45.98 ID:ZwWek3zwo [35/56]

超ハンテーン『テェェン・・・・・・』

のそりと、起き上がる超ハンテーン。

彼の逆立つ毛は凶暴化の影響によって、さらに硬度に磨きがかかったらしい。

突きの一撃も弾き、トラックにぶつかっても平気。

もはや『斬撃耐性』などと言う生ぬるいものではなく、『物理耐性』とでも呼ぶべきであろう。


美穂「・・・・・・。」


この時のために習得した『ひなたんスターシューター』はもう通用しない。

凶暴化した超ハンテーンにはあらゆる物理攻撃が通じなくなっていた。

しかし、それでも別に絶望的な状況と言うわけではなかった。


ひなたん星人はここで戦わずに逃げれば良いのだ。


幾らか速度が落ちた超ハンテーンからであれば、

立体的な機動力によって、ひなたん星人は容易に逃げ去ることができるであろう。


『反転薬』の効果は無限ではない。

待っていればそのうち、薬の効力は消えるのだ。

超ハンテーンは、その時が来るまで力任せに暴れ回り、

薬の効果が切れたと同時に、勝手に疲弊によって倒れるだろう。

そうなれば、ひなたん星人の勝利である。

487 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:56:34.31 ID:ZwWek3zwo [36/56]

美穂「けど、そんなかっこ悪い事はできないナリ。」

美穂「だいたい、ここでカピバラさんを放って私が逃げたら、」

美穂「誰がこの街を守るひなたっ」


ここで、ひなたん星人が去れば、

超ハンテーンはただ暴れ回り、周囲の建物を破壊し続けるだろう。


美穂「それじゃあ守ったことにならないナリっ!」


超ハンテーンの背後に着地した、ひなたん星人は高らかに告げる。


美穂「私は愛と正義のはにかみ侵略者!ひたなん星人ナリっ!」

美穂「この街は、まるごとつるっとぜんぶ私のものひなたっ!」

美穂「他の誰にも、たとえカピバラさんにも好き勝手に壊させることはできないナリ!」

488 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:57:07.05 ID:ZwWek3zwo [37/56]

超ハンテーン『ハァァァァン!!!!』


超ハンテーンはひなたん星人に振り向き、再び突進を行う。


超硬度と超速度から行われる突進。

その破壊力は、先ほどトラックが破壊されたのを見ての通りだ。


ひなたん星人は今度は避けない。

『小春日和』を両手で構え、その攻撃を待ち構える。


超ハンテーンの巨体がひなたん星人に襲い掛かる。

大量の負のエネルギーを『小春日和』に纏わせ、

少女を押し潰そうと前進してくる頭にぶつける様にして、

ひなたん星人は超ハンテーンの突進を受け止めた。


美穂「きついナリっ!」

あまりの衝撃に歯を食いしばるひなたん星人。


巨大カピバラの突進の勢いは止まらない。

刀を支える体が折れてしまわないように、吹き飛ばされてしまわないように、

全身にこれまで集めた負のエネルギーを流し巡らせる。


それでもひなたん星人の身体は押し出され、支える足が道路をズザザと削る。

数メートルほど押されたところで、なんとか巨体の前進は止まった。


超ハンテーン『ハァァァァアアアン!!』

489 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:57:57.16 ID:ZwWek3zwo [38/56]

――

『ハァァァァアアアン!!』


遠くから、怪物の雄たけびが聞こえる。


リン「さっき凄い音してたけど・・・・・・ひなたん星人は大丈夫かな。」

肇「美穂さん、ご無事で!」


肇とリンは、ひなたん星人がハンテーンと戦う現場へと急ぐ。

何かできるかはわからないが、それでも駆けつけなければ、と気持ちがはやる。


肇「まさか『ラブリージャスティスひなたんスターシューター』(突き技)も効かないなんて・・・・・・」

リン「その長い名前、何とかならなかったの?」


ひなたん星人からのテレパシーで、肇達はおおよその現状は理解していた。

ハンテーンが凶暴化して、ひなたん星人の切り札が効かなくなったこともだ。


肇「突きの一撃に代わる、何か良い方法があれば・・・・・・。」

リン「・・・・・・。」

リン「私としては、あまりやって欲しくない手だけど、そうも言ってられないよね。」

リン「あの毛の鎧、弱点があるよ。」

リン「ひなたん星人に、その弱点を突けるかどうかはわからないけど。」

肇「・・・・・・聞かせてもらってもいいですか?」


――

490 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:58:39.37 ID:ZwWek3zwo [39/56]

超ハンテーン『ハァァアアン!!』


超ハンテーンは雄たけびとともに、飛び上がって少女から離れる。

そしてまた、突進の姿勢で駆け出した。


しかし、今度はひなたん星人とは逆方向にだ。


美穂「ま、待つひなたっ!」


このまま逃げて、別の場所で暴れるつもりか。

と思ったが、その心配はどうやら杞憂であったらしい。


超ハンテーン『テンッ!!』


適度に距離を開けた超ハンテーンは、手ごろな電柱を右腕で掴むと、

それを支点に、クルリと時計回りに半回転、身体の向きを反転させる。


そうやって、助走距離を増やし、

突進の勢いを増加させて、再びひなたん星人へと向かってきた。


美穂「・・・・・・来るナリ。」


そんな時だ。

肇(美穂さんっ!)

肇から伝達術による言伝が届く。

ハンテーンの毛の鎧の弱点が、ひなたん星人に伝えられた。

491 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 17:59:22.74 ID:ZwWek3zwo [40/56]

――

肇(と、言う訳です。出来そうですか?)

美穂(何事もチャレンジひなたっ☆)

肇(頼もしいですが、あまり無茶はしないでくださいね。)

美穂(わかってるナリ、けど、後は目の前の戦いに集中するひなたっ)

美穂(肇ちゃんは結果を楽しみにして、応援していて欲しいひなたっ☆)

肇(・・・・・・はい。健闘を祈ってます。)


伝達術による通信を終え、肇は目を開く。

肇「弱点は伝えました。後は美穂さん次第です。」

リン「心配なのは、それを実行するのに、核に蓄えられてる負の感情エネルギーが足りるかだよね。」

リン「『ラブリージャスティスひなたんスターシューター』(突き技)を何発も連射してたけど、」

リン「アレを一発使うのにも、かなりエネルギーを消費するよね?」

リン「おまけに超人的な身体能力を発揮するのにも、使うだろうし・・・・・・。」

リン「カースを狩って集めてたって言うエネルギーだけじゃ足りないんじゃない?」

カースの核の感情エネルギーについて独自に研究し、

そのエネルギーの利用を考え付いたリンならではの、気がかりであった。

肇「それについては大丈夫だと思いますよ。」

肇「『小春日和』が使用できる負のエネルギーはカースを狩って、蓄えたエネルギーだけじゃありませんから。」

492 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:00:11.81 ID:ZwWek3zwo [41/56]
――


少女は刀を構え、目を瞑り集中する。

目前には今にも彼女をぺちゃんこに潰そうと、強暴な破壊の塊が迫ってきているのだが、

それでも少女は静かに、その感覚を研ぎ澄ませる。

この街に満ちる、負の感情を拾い集めるために


美穂「実は今日の私、結構無茶してるひなた」

美穂「せっかくカースを狩って集めた負のエネルギーはもうほとんど使っちゃったナリ」

美穂「だけど、まだ全然戦えるひなた」

美穂「カピバラさんには、どうしてかわかるナリ?」


独り言の様でもあり、迫ってくる怪物に言い聞かせるようでもあり、

そんな風に、彼女は言葉を呟く。


美穂「これから私が使うのは、この街に満ちる負のエネルギー。」

美穂「人に隠したいこと、触れられたくない弱さを知られてしまう怖さだとか。」

美穂「本当に伝えたいことを曲げられて、間違った事をさせられてしまう苦しさだとか。」


『小春日和』に埋め込まれた核は、そんな数多のマイナス感情を拾い上げ、自分の力とする。


美穂「カピバラさん、あなた達のせいで、まだ街には、たくさん悲しい感情があって」

美穂「その心から聞こえる悲痛な声が」

少女の身体からは、黄色いオーラが吹き上がっている。


超ハンテーン『ハンテェェエン!!!』

鉄の塊の如き、怪物の突進がひなたん星人にぶつかろうとする。


美穂「私を強くするひなたっ!!!」

『小春日和』がその突進を受け止めた。

493 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:00:50.39 ID:ZwWek3zwo [42/56]

超ハンテーン『テンッ!!?』


動かない。

超ハンテーンの凶暴性をただ勢いよく、真っ直ぐに込めただけの凄まじい破壊の衝動。

その巨大な衝撃を、刀一本で受け止めたはずの少女は

ただの1ミリも突き動かされることはなく、

超ハンテーン突進の勢いは完全に殺されていた。

その事実に超ハンテーンは脅威を覚える。

さらに、

美穂「ラブリージャスティスひなたんフラッシュっ!!」


そのまま刀を少し振り上げ、振り下ろす所作から放たれる、必殺の斬撃。


当然、超ハンテーンの毛の鎧は斬撃を無効化する。

が、

超ハンテーン『ハングァッ!?』


斬撃とともに、零距離からの負のエネルギーの放出が行われ、

毛の鎧を貫くまでには至らなかったが、その衝撃が超ハンテーンの頭を揺らす。

494 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:01:19.87 ID:ZwWek3zwo [43/56]

超ハンテーン『て、テェェンッ・・・・・・』


物理耐性の毛の鎧を持つ超ハンテーンであっても、

今の一撃には思わず怯む。

ほんの僅か怯んだだけで、その身体は無傷だ。


だが、その一瞬の間に、少女は、街に満ちる負の感情から、

次の一撃のための、

最後のトドメの一撃のための、

斬撃を無効化する怪物を一刀両断にするための、


黒く燃え上がる力を練り上げる。


美穂「本当はこう言うのは『戟王丸』の領分なんだろうけど、ひなた」

美穂「でも、私だってカピバラさん達には怒ってるナリ」

495 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:01:57.06 ID:ZwWek3zwo [44/56]

美穂「そして、この”怒りの炎撃”は、」

美穂「街のみんなの思い、そのものひなたっ!」


彼女が手に握る、『小春日和』からは黒い炎が立ち昇る。


超ハンテーン『テ、テェエン!?』


負の感情から練り上げられ、刀が纏うエネルギーは、

まるで本物の炎の如く、熱く、迸る、感情のエネルギー。

そして、その刀が振るわれる。


美穂「ラブリージャスティスひなたんインフェルノぉおっ!!」


怯む超ハンテーンに、業火の如き、横薙ぎの斬撃が放たれた。

超ハンテーンの毛の鎧は刀の纏うエネルギーに触れた途端に燃やし尽くされ、

露になった、胴体に『小春日和』の刃が食い込む。


そのまま、刀は毛の鎧をバチバチと焼き切りながら、

胴体を左から右になぞり、そして再び、逆側から刀身が露になる。


刀がその胴体を、斬り抜けたのだ。


『小春日和』は、見事に超ハンテーンを真っ二つにした。


超ハンテーン『はん・・・・・・』

全身が燃え盛り、上半身と下半身が、別たれた超ハンテーンは、

超ハンテーン『てぇん・・・・・・』

そのまま崩れるように倒れ、


ドォオオオオオン!と爆散した。

爆発を背景に少女の高笑いが響く


美穂「は~はっはっはっはっ!!」

美穂「ひなたん星人の大勝利ナリッ♪」

496 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:02:49.06 ID:ZwWek3zwo [45/56]

――

――


――マム


――マム、指令を果せず、ごめんなさい。


――それと、アバクーゾ


――すまねえな、俺もやられちまったよ。


――やっぱり弱虫は弱虫のままなのかもしれないな。


――けど、悔いはねえさ。


――やれることはやりきったしな。


――待ってろ、兄弟。いまそっちに・・・・・・


「行かせないひなたっ☆」


――はん?

497 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:03:14.15 ID:ZwWek3zwo [46/56]

ハンテーン「はっ?!」


カピバラ獣人は目を覚ました。

――目を覚ましただと?

――なんだ、これは?一体どう言う状況だ?


美穂「うわっ、本当に目覚めたひなたっ」

肇「その状態でも生きてるなんて、摩訶不思議ですね・・・・・・。」

リン「まあ、ロボットって言うかサイボーグみたいなものだからね。」


ハンテーンはあの爆発の中、なんと奇跡的に生きていた。

元々、人造生物かつ、大半が機械でできた怪人。

故に普通の生物が死ぬような状況でも、おおよそ大丈夫ではあるが、


美穂「流石に生首で生きてるのはドン引きナリ・・・・・・。」

ハンテーン「てっ、てぇんっ」 ガビーン


体はほとんど爆散してしまったため、残ったのはその首ひとつである。

498 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:03:55.30 ID:ZwWek3zwo [47/56]

ハンテーン「はんっ」

しかし生きていただけでも運が良かったのだろう。

もしかしたらマムの元に無事・・・・・・ではないが帰る事もできるかもしれない。

頭が生きてるなら通信機能も生きてるはずだ。

早速、マムに現状を報告しようとして


リン「あ、通信機能なら取り外してるから。何処に連絡しようとしたのかは知らないけど。」

ハンテーン「はぁんっ?!」

いきなり希望を挫かれた


と言うか、頭の中の通信機構をどうやって外したのだ、この眼鏡。


肇「アレは・・・・・・ちょっとした衝撃映像でしたね。」

美穂「しばらくハンバーグは控えたいナリ・・・・・・。」

ハンテーン「てぇんっ!?」

二人の反応を見るに、唯一残った頭部さえ、意識が無い間にヤバい弄られ方をされていたようだ。

499 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:04:30.51 ID:ZwWek3zwo [48/56]

リン「それにしても、燃える斬撃が出来るなんてね。」

リンは感心したように呟く。

リン「油に引火して、胴体部分が爆発しちゃったのは残念だけど。」

リン「その刀の能力を見れただけでも、お釣りが来ちゃうかな。」

そう言って彼女は微笑んだ。


リン「・・・・・・本当にどうなってるんだろうね、それ」

少女の表情が捕食者のそれに変わる。

美穂「ひっ」

美穂「こ、怖いひなたっ、肇ちゃん守ってひなたっ」

肇「えっ、ちょっ、ちょっと美穂さん、私の後ろに隠れないで」

ある意味『小春日和』そのものであるひなたん星人には、彼女は恐怖の対象であろう。

肇でさえ冷や汗がずっと出ている。おじいちゃんの刀を分解(バラ)されてはたまらない。

500 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:05:04.14 ID:ZwWek3zwo [49/56]

リン「ふふっ、冗談だよ。」

美穂「な、なんだ冗談ひなたっ」

リン「いずれ機会があれば、”よく”見せて欲しいとは思ってるけどね。」

美穂「ひっ!」

カピバラさんよりこっちの方がよっぽど怖い。

リン「今日のところはコレで我慢しておくよ。」

ハンテーン「はんてん・・・・・・」 ←コレ


リン「そろそろ騒ぎを聞きつけた人が集まって来そうだし、私は帰るね。」

リン「今日はありがと、またね。肇、ひなたん星人。」

美穂「こ、こちらこそありがとうナリ。」

肇「い、いずれまた」


そうして、テクノロジストの少女は、カピバラの生首を袋に入れて去って行った。

リン「帰ったら、まずは・・・・・・して・・・・・・次は・・・・・・・まで・・・弄って・・・」

ハンテーン「はぁん!?はぁーん!!」


肇「行ってしまいましたね・・・・・・。」

美穂「カピバラさん・・・・・・生き残れた事が必ずしも幸せな事とは限らないナリ。」

何処からかドナドナの音楽さえ聞こえてくる気がする。

二人はハンテーンの行末を祈り、暫し合掌するのだった。

501 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:05:44.59 ID:ZwWek3zwo [50/56]

美穂「・・・・・・まあ、どうにか最初の目的は果たせたナリ。」

肇「ひなたん星人さんのリベンジ、そして『鬼神の七振り』による斬撃耐性の突破。」

肇「最後の局面、負のエネルギーに炎の如き性質を持たせる技術。」

肇「本当に、お見事でした。」

美穂「あの怪人達に対する”怒り”が街に満ちていたおかげなり☆」


周囲に満ちる負の感情エネルギーから性質を得て、斬撃に他の『属性』を付加する術。

それもまた、負のエネルギーの扱いに長ける人格を作りだす、『小春日和』の真価の一つであった。


美穂「けど、二つ目の目的は『戟王丸』の方が楽だったナリ?」

なんとなく思いついた疑問を口にするひなたん星人。

肇「確かに『戟王丸』のあれは斬撃や打撃と言った次元にはありませんからね。」

何しろ『戟王丸』から放たれるのは怒りエネルギーによる超極太ビームである。

肇「しかし、それではひなたん星人さんのリベンジにはなりませんし、」

肇「ハンテーンをあそこまで追い詰める事ができたのは『小春日和』だからこそですよ。」

肇「もっと誇ってもいいと思いますよ、美穂さん。」

美穂「そうナリ?えへへ♪」

502 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:06:27.39 ID:ZwWek3zwo [51/56]

肇「それに、『戟王丸』は街中で振るうのはあまり向いてませんからね。」

肇「周囲に被害を出しすぎてしまいます。」

美穂「・・・・・・周囲に被害って言うなら、今回の戦闘は結構出してる気がするひなた。」


ハンテーンを追い詰める時に、撃ったラブリージャスティスひなたんスターシューターは、

人には当たらないようにしていたが、避けられた突きが壁くらいは粉砕してるし。

特に超ハンテーンと戦ったここ一帯は、ひしゃげたトラックをはじめに破損が大きい。

 

美穂「う~ん、これはどうするナリ?」

肇「・・・・・・後始末が大変そうですね。」


隊員A「それは我々に任せてもらおう。」

彼女達の後ろから、一人の男がやって来て言った。

503 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:06:57.91 ID:ZwWek3zwo [52/56]

隊員A「随分遠くまで怪人は逃げたのだね、ようやくここに辿り付けたよ。」

肇「あなたは」

美穂「かまs・・・・・・かませ犬さん!」

隊員A「どうして一度言いなおそうとした事をそのまま口にしたっ!」

美穂「いや、よく考えたらどこの組織の誰だか知らないナリ」

隊員A「それでも、もう少し言い方があるだろう。」

美穂「じゃあ解説役さん?」

隊員A「大して変わってない!」

美穂「でもいい解説だったナリ」

隊員A「こう言う立場に付いていると、自然とヒーローの活躍を解説する事も多くなってな・・・・・・。」

肇「苦労されてるんですね。」

隊員A「・・・・・・話を進めても良いかな?」

504 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:07:33.41 ID:ZwWek3zwo [53/56]

隊員A「怪人は爆散してしまったのだな。」

美穂「あっ、うん、そうナリ。」

肇(首だけ持って帰った人が居るとは言えませんよね。)

隊員A「そうか、状況を見るに君達が退治してくれたのだろう?」

隊員A「それにそちらの子は、能力を使い私達に掛かった”反転”を解いてくれた。」

美穂「肇ちゃん、そんな事してたナリ?」

肇「美穂さんがハンテーンを追ってる間、何もしてないのも、と思ったので」

隊員A「本当に感謝する。ありがとう。」

隊員A「後始末の事は、我々GDFに任せてくれ。」

肇「いいんですか?」

隊員A「もちろんだ、これくらいの仕事はさせてくれよな。」

美穂「かませ犬さん・・・・・・」

隊員A「今、GDFだって言ったよね。」


肇「では、これにて今回の怪人騒ぎも一件落着と言ったところでしょうか。」

美穂「じゃあ、いつものやるひなたっ☆」

そう言って、少女は刀を頭上に掲げる。

美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人!」

美穂「今回もまるごとつるっとぜ~んぶ!守ってみせたひなたっ☆」 キャピピーン


そして最後に勝利の決めポーズ。


美穂「めでたしめでたしナリ♪」

505 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/07(水) 18:08:24.79 ID:ZwWek3zwo [54/56]

――

――


『ニューヒーローひなたん星人、カピバラ獣人撃破でお手柄!』

―とある地方新聞 朝刊より―

 

美穂「全然めでたくなかったっ・・・・・!!」


肇「美穂さんがハンテーンを追ってる姿撮られてたんですね。」 モグモグ

美穂が頭を抱え、肇がパンを齧る。そんな小日向家の朝の風景であった。

肇「あ、こっちの写真。カワイイポーズですね。」 ムシャムシャ

美穂(なんで、そんなポーズしたんだろ、私・・・・・・)

美穂「あぁぁ、どうしよう・・・・・・!」

美穂「こんなの絶対クラスのみんなに知られてるよ!もう隠しようがないっ!」

美穂「肇ちゃん・・・・・ど、どうにかならないかな?」

肇「・・・・・・残念ですが」

美穂「おかーさん・・・・・・私、もう学校やめてもいいかな・・・・・・」

「なに言ってるの、アイドルヒーローになるんでしょ。胸張って行ってきなさい。」

美穂「うぅぅ、ダメッ!恥ずかしいっ!」


今回の騒動、小日向美穂のアイドルヒーローへの道、その一歩となったようですが、

やはり本人は、まだ自分の中の人格を受け入れがたいようです。


美穂「熊本に帰るぅう!」


おしまい

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最終更新:2019年04月24日 23:44