5スレ目>>63~>>72

63 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:09:43.76 ID:ofTpPcLJo [2/12]

──諸々の勢力が憤怒の街に乗り込んでいるその頃──

GDFの三人は協力要請をした『プロダクション』の事務所へと向かっていた。
その道中、司令から通信が入った。

椿「作戦の変更?」

詩織「なんでまた……」

司令『作戦区域上空に、大型の飛行能力を有したカースが確認されたのだ』

司令『我々の防衛線にまで出張ってきて、軽微ではあるが損害も出ている』

椿「飛行能力って……厄介ですね」

司令『飛行能力に加え、体表が硬い鱗状の物質で覆われており、我々が現状持ち得る火器のいずれも大した効果が無かった』

司令『知っての通り、現地では電子機器の類は謎のジャミングを受け使えない』

司令『航空機はおろか、ミサイル等の誘導兵器も使い物にならないのだ』

司令『奴を撃破するまでは、一般人を伴って街に侵入するなど危険すぎる』

志保「そうは言っても、どうするんですか?」


司令は一呼吸置いた後に本題を切り出した。

司令『現在開発中の新兵器を以って、飛行型カースの撃破を試みる』

司令『君達には、その新兵器の護衛を頼みたい』

詩織「(また新兵器ね……)」

志保「(護衛……か……)」

椿「了解しました」

64 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:11:36.58 ID:ofTpPcLJo [3/12]

椿「という訳で、我々の街への突入は一時中止となります」

『プロダクション』に着いた三人は、内部の人間に憤怒の街の状況を説明する。

椿「折角ご協力頂けるという事でしたが……もうしばらくお待ち下さい」

椿の話を聞いて、『プロダクション』のメンバーは安堵したような、何も出来ないことが無念であるような、複雑な表情を浮かべた。

椿「それでは、我々は別件の任務がありますので、一旦失礼します」

ピィ「待ってください」

ピィ「私も、あなた方に同行させてもらえませんか?」

椿「えっ?」

ちひろ「ピィさん、何を!?」

突然のピィの提案に、GDFの三人も『プロダクション』のメンバーも目を丸くする。

ピィ「私は『プロダクション』の……彼女達の身を預かる者として、あなた方の実力を知っておく必要があります」

ピィ「あの街に皆を連れていって果たして無事で済むのか、見極めさせてください」

ちひろ「ピィさん、危険ですよ!」

ピィ「……」

椿「……少々お待ちください」


椿「どうします? あの街に突入するよりはずっと安全な任務ですけど」

詩織「彼の言い分は筋は通っているけれど……」

志保「いいんじゃないですか? 信用されていないみたいで癪ですけど」

椿「それはしょうがないですよ、先日の爆弾投下以来、世間からの風当たりは強くなっていますし」

詩織「……」

椿「ここらへんでちゃんと仕事をしているところを見せて、信頼を回復しないと……」

詩織「……二人とも、本部の許可が取れたわ」

志保「いつの間に!? 仕事速いですね!」

椿「本部の許可が出たなら大丈夫ですね」


椿「お待たせしました、上に許可は取りましたので、そちらの……えっと」

ピィ「ピィです」

椿「(ピィ……? ピィって何!?)ピィさんの同行を認めます」

ピィ「それはよかった……どうぞ、よろしくお願いしますね」

藍子「ピィさん……気を付けてくださいね?」

ピィ「ああ、ありがとうな……行ってくるよ」

65 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:13:25.04 ID:ofTpPcLJo [4/12]

GDFの三人とピィは、憤怒の街郊外の山中を走る高速道路の上に来ていた。
ここからは憤怒の街が一望できるらしい。
ちなみに、道路は封鎖されているため一般の自動車は見当たらない。

椿「私達の任務は、もうじきここへ到着する新兵器の護衛になります」

ピィ「新兵器?」

椿「その新兵器を使って、先ほど説明した、あの街にいる大型のカースを撃破するのです」

志保「あ、噂をすれば来ましたよ」

志保の目線の先には、はしご車のような大型の車両があった。
はしごの代わりに四角い筒状の物体が積んである。


ピィ「あれが……新兵器……ですか?」

ピィ「(新兵器って……例の爆弾みたいに周りに凄い被害出したりするような物じゃないだろうな)」

志保「えっと……一般向けに公開予定の資料によると……O型レールキャノン」

志保「正式名称『オミクロン型電磁加速砲(試作)およびその運搬システム』って書いてありますね」

志保「『電気の力で弾を飛ばして攻撃するよ!』『性能諸元は機密ミ☆』……だそうです」

詩織「機密って……なんだか大仰ね……」

椿「折角だから、写真撮っておこうかな」

志保「そんなの撮ったら怒られるんじゃないですか?」

詩織「撮った画像はウィキリ○クスにアップしましょう……」

椿「それ私がやったってバレバレじゃないですか!」ヤダー

ピィ「(この人達なんか全体的にノリが軽いけど、大丈夫か……?)」


志保「あ、そうだ」

志保「一応この兵器機密扱いなんで、ここで見たことは忘れちゃってくださいね」

ピィ「え?」

椿「まあ、形式的な物です、あんまり気にしなくて大丈夫ですよ」

ピィ「あ、はい……」

ピィ「(大丈夫なものかよ……適当過ぎるだろう)」

66 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:14:47.54 ID:ofTpPcLJo [5/12]

「あんたらが護衛をしてくれるっていう連中だな、よろしく頼むぜ」

四人の近くまで来た車両から、新兵器のオペレーターと思われる隊員が顔を出す。

「全く運が良いぜ? コイツのお披露目に立ち会えるなんてな!」

椿「この新兵器の活躍如何によって、あの街の奪還作戦の趨勢が決まりますからね」

志保「頑張ってください!」

「おう、期待していてくれよ!」

ピィ「(……やっぱり、いまいち緊張感に欠ける)」


ピィ「(それにしても)」

ピィ「(新兵器っていう響きは、なんかワクワクしてくるな)」

ピィ「(でも、この車? が新兵器って言われてもなあ)」ジーッ

ピィ「(もっとこう……なんというか、アヴァンギャルドなヤツを期待してたけど)」ウーン


ピィ「(ん……あの三人随分と大人しくなったな……何やってるんだ?)」チラッ

 


椿「んー、やっぱり市販の切り餅はこんな物ですかね」モグモグ

志保「えー? 杵つきと違いがあんまりわからないんですけど」モチモチ

詩織「……」ウニョーン

 


ピィ「」

67 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:16:15.91 ID:ofTpPcLJo [6/12]

ピィ「あんたら何食ってんですかァー!!」

椿「え? お餅ですけど、食べます?」

ピィ「いや、"何を"食べてるのかっていうんじゃなくて!」

ピィ「何で今そんなん食ってるのかって!!」

椿「いやあ、カビが生えちゃいそうだったので、処理しておこうかなーと」

志保「カセットコンロ持ってきて正解でしたね!」

詩織「んぐ……っ!?」

ピィ「えー……」


ピィ「というか、あの車の護衛をするんでしょう?」

あまりの適当っぷりに、ピィは口を尖らせて三人に詰め寄る。

ピィ「そんな体たらくで、いざっていう時大丈夫なんですか?」

椿「うーん……あの車を護衛してほしいっていうのは、実は建前なんですよ」

ピィ「……建前?」

椿「実際は、GDF機甲部隊の示威行為っていうか……」

椿「さっき乗員の人が『お披露目』って言ってましたよね? まさしくその通りなんです」

ピィ「……?」

68 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:17:09.75 ID:ofTpPcLJo [7/12]

志保「ピィさんは、GDFの戦車とかが戦っているところ、見たことありますか?」

ピィ「戦車……? そもそも、そんなもの持ってるんですか?」

椿「やっぱり、一般の人からするとそういう反応になりますよね」

志保「戦車とか装甲車とか、そういう兵器も保持してはいるんですけど」

志保「大抵GDFが出動する場所って人の多い街中じゃないですか」

ピィ「はぁ……」

志保「だから、戦車なんかを派遣してドンパチやると、むしろ被害が拡大しちゃうんです」

椿「要するに、機甲部隊は滅多に出番が無いってことですね」

椿「税金泥棒だとか揶揄されることも多い集団なので、こういう任務があると張り切っちゃうんですよ」

志保「だからって、ほとんど見せつけるためだけに私達を呼びつけてくるのは面倒臭いですけどねー」

椿「まあ、それなりに頼りにはなりますけど」

志保「って、こんなこと外部の人に言う事じゃないですね」アハハ

ピィ「……」

ピィ「(なんだかよく分からんが、要するに俺達がここにいる必要は無いって事?)」

69 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:19:09.29 ID:ofTpPcLJo [8/12]

その頃はしご車の中では、数人の隊員が装置の確認をしていた。

「本部、現地に到着しました、これより発射体制に入ります」

司令『本部了解だ』

司令『今回使用する兵器だが、冷却装置が未完成につき、発射出来るのは一度きりとなる』

司令『しくじるなよ』

「了解!」

「砲身の展開、開始します」

「マイクロフュージョンバッテリーからの電力供給、異常無し」

「エネルギー充填開始」

「今のところは問題は無いな」

 

ピィ「(まだ攻撃始めないのかなあ……ダレてきたぞ)」

ピィがそんなことを考えていると、車両の方から「ガシン」と金属を打ち合わせたような機械的な音が連続して聞こえてきた。

ピィ「(うわっ!? 何事だ?)」

驚いて音のした方を向くと、車両に積まれた筒状の物体から二本の板が伸びていくのが見える。
続いて、甲高いモーター音のようなものが響いてきた。

ピィ「(なんだあれ……変形した?)」

志保「おっ、そろそろ撃つみたいですね」

志保「あれは発射体勢に入った感じですよ!」

椿「ピィさんにこれ、渡しておきますね」

ピィ「これは……耳当て?」

ピィの訝しむような視線に椿が答える。

椿「発射音で耳を傷めたら困りますから」

ピィ「(少し物々しくなってきたな)」

椿「詩織ちゃん、目標は確認できました?」

椿は、双眼鏡で憤怒の街を監視していた詩織に尋ねた。

詩織「ええ、ここからでも見えるわ」

この場所から憤怒の街の中心部までは20㎞程の距離がある。
その中心部のビル群の一棟の屋上に、目標の飛行型──『憤怒の翼竜』は居た。

詩織「アレ、結構大きいわね……」

70 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:21:52.00 ID:ofTpPcLJo [9/12]

同じ頃、車両の中の隊員達も赤外線カメラで目標の映像を眺めていた。

「暴れ疲れて羽根休めってか? ……呑気なもんだ」

「まあ、こちらにとっては好都合だがな」

理由は分からないが、目標はここ暫く動く気配が無い。
攻撃をするなら絶好の機会だ。

「発射準備完了しました、本部の指示を待ちます」

司令『いいぞ! 我々を地べたを這いつくばる者と侮るとどうなるか、敵に教えてやれ!』

「了解!」

「目標、敵飛行型! 諸元入力完了!」

「レールキャノン、発射!」

 

突然、辺りに眩い閃光と共に耳当ての上からでも響く衝撃音が轟く。

ピィ「うおっ、まぶしっ」

ピィ「って……え……あれ?」

何が起こったのかと、ピィは辺りを見回すが静寂に包まれている。
いつの間にやら、車両から発生していたモーター音は聞こえなくなっていた。

ピィ「今……撃ったんですか?」

椿「はい、撃ちましたよ……詩織ちゃん、どうですか?」

ピィ「(えっ……弾とか、何にも見えなかったぞ)」

椿が双眼鏡を覗いて着弾観測をしていた詩織に尋ねる。

詩織「命中はしたわ……したけど……」

 

「弾道が少し逸れた! 撃破ならず!」

「クソッ! 砲身の調整が未完全だったか!」

司令『我々に二の矢は無い、諦めろ』

浮足立つ隊員を司令が諌める。

司令『あの忌々しい飛行型を叩き落としてやったんだ、十分な成果だ』

司令『後は現地の地上部隊に任せればいい』

「……」

司令『作戦は成功だ、帰還しろ』

「了解しました」

71 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/07/28(日) 05:23:39.72 ID:ofTpPcLJo [10/12]

志保「あ、引き揚げるみたいですね」

椿「私達も戻りましょうか」

椿「今度こそあの街へ突入するために計画を練らないと……」

詩織「まだ、あの飛行型も倒せたわけではないけれどね……」

志保「私達が着く頃には退治されてるといいですねー」

ピィ「……」


ピィ「(あんなすごい大砲をぶっ放されても、顔色一つ変えないとは……)」

ピィ「(こういう事に慣れてるっていうことなんだろうな……)」

ピィ「(うちの事務所のメンバーともそう歳が離れていなさそうな子達が……やっぱり世界が違うな)」

ピィのGDFの三人に対する第一印象はアテにならない連中というようなものだったが、少し心境に変化があったらしい。


ピィ「(俺にとっては訳のわからない出来事ばかりだったが、日々戦い続ける彼女達にとってはこれが日常なんだろう……)」

ピィ「(これなら……『プロダクション』の皆を任せても大丈夫かもしれないな)」

ピィは、年頃の少女よろしく談笑をしながら帰途につく三人の背中に、なんとなく頼りになりそうだという感想を抱くのだった。

72 名前:@設定 ◆lhyaSqoHV6[saga sage] 投稿日:2013/07/28(日) 05:26:08.67 ID:ofTpPcLJo [11/12]

※レールキャノン[オミクロン型電磁加速砲]

対カース用装備第二弾、いわゆる電磁投射砲と呼ばれる類の兵器。
例によって異星人の技術が多く使われている(具体的には、電源に小型核融合電池と砲身部分にウサミニウム)。
射出された弾頭は凄まじい飛翔速度を誇る。40kmくらいまでなら発射とほぼ同時に着弾するくらい。
未だ試作品の域を出ないので、正式採用と配備はまだまだ先になりそう。

 

イベント情報

・GDFの新兵器により『憤怒の翼竜』を地上に落としました。
・弾は掠っただけなので与えたダメージ自体は少ない模様。
・翼が再生し、再び飛び立つ前に畳みかけることが出来ればあるいは?
・新兵器はまだ試作段階なので、憤怒の街の攻略が終わるまでは再使用は無さそうです。
・『プロダクション』のメンバーとGDFが顔合わせを済ませました。今後協力して行動することがあるかも知れません。

 

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最終更新:2019年03月18日 02:38