4スレ目>>589~>>600


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名前: ◆zvY2y1UzWw[sage] 投稿日:2013/07/22(月) 19:10:45.95 ID:D9dekgl+0 [2/15]
キヨラは魔界更生施設の職員である。

職員達は皮肉を込めて『魔界の天使』と呼ばれる。…決して天界と因縁があるわけではないのだが。

何故なら彼女を含めた更生施設の職員たちには、全能紳が与えたとされる職員の証というべき持ち物があるからだ。

それは全能紳が決めた罪と善行が個人別に記される裁きのカルテ。その能力は2つある。

「いやだ!二回も死にたくねええええええ!」

「罪人・○○。貴様には『人殺しの罪』『騙した罪』『神を冒涜した罪』『複数の女性との関係を持った罪』等、許しがたい罪を犯した。」

「裁きのカルテは貴様に死刑の判決を下したのだ。」

カルテには今叫んでいる彼の写真。そこに大きく×マークが記されている。

機能その1.すでに捕まった・死んだ魂に近づけるとその対象の罪と死刑判決・刑期の確認。

「お前の処刑人はキヨラだ!…頼んだぞ。」

「お任せください。」

メスを杖のように構えると、キヨラは呪文を唱える。

『汝の悪行、魂の死によって罰せられる。処刑器具の名は『ファラリスの雄牛』!天界の全能神に生まれたことを詫びて死になさい!』

罪人の真横に青銅のような物で作られた牛が召喚される。

背中の扉が開き、中から黒い手が溢れ出し、罪人を中に連れ込み、鍵をかける。

そして牛の真下に炎が燃え上がった。

…あとはお察しください。

職員達は朝の処刑を終え、食堂で食事をとっていた。

「キヨラさん、お疲れ様です。」

「今日の処刑もいい感じでしたねぇ。ファラリスの雄牛はやっぱり悲鳴が醍醐味ですし!」

「ふふ、そうねぇ。」

食事はいたって普通のもの。トカゲや虫を食べたりはしない。

さすがに人間界とは食材が違うが、似たようなものが作られている。

「やあやあ、皆さん。今日も頑張っていきましょうか。」

新聞を読みながら男性職員が話しかけてくる。

一見まともに見える彼も、裏ルートで仕入れているというよく分からない新聞を毎日読んでいる。

そしてそこに載っていた、名前もわからない堕天使のブレまくりの写真に一目惚れしてしまい、毎日彼女をどう処刑するかばかり考えている。

新聞を読む意味も、彼女の情報がないかと探すことになってしまったらしい。

キヨラ達は堕天使の写真など全く興味がないのだが。

食事を済ませた後、施設の裏庭にキヨラはやってきていた。

「ベルフェゴールちゃん、ルシファーちゃん、お仕事の調子はどう?」

「…ハイ、オシゴトシテマス」

「…ちゃんとやってますよぉ?」

少女の姿のベルフェゴールと、怪物の姿のルシファーがひたすら穴を掘っては埋める作業をしていた。

最近はやっと敬語が身についてきたというところか。いや、ベルフェゴールはまだ敬語がぎこちない。

ちなみに…ルシファーには『人間界の崩壊を望んだ罪』『脱走を企んだ罪』が追加されていた。

働くことを喜びとせずに余計な事を考えれば罪となり、刑期は伸びるばかり。ここはそういう仕組みなのである。

「お疲れ様です♪やっぱり体がない魂の状態だとこれしかすることが無いのよね…。」

「…じゃあ体を得たらどういうことさせられるのさ…」

「大半の子は、掃除とか洗濯とか…悪魔の召使いになる修業をするのよ♪…ただの召使いじゃないんだけどね。お給料をくれるのもご主人様の気分次第だし…。」

(そりゃ20時間労働だもんね…絶対召使いじゃすまないよ)

「ということで!職人さんが特注品の大罪の悪魔さん用の体を作ってくれたので入ってくださいね!」

袋から…山羊・熊・ライオン・犬・狐の小さなぬいぐるみを取り出す。

「そぉれ♪」

熊とライオンのぬいぐるみを掲げると、二人の魂は吸い込まれてしまった。

「気分はどう?」

「…最悪…というかなんで熊?…ですか?」

「可愛くないですよぉ…これじゃあ大罪の悪魔(笑)ですよぉ…」

それは魂を閉じ込める檻。痛覚が魂にリンクされており、ぬいぐるみのような体なのに痛いときは痛い。

しかし素材は魔界で最も強い防具の素材の一つとされている皮で作られており、魔法にはかなり耐性がある。…物理に関しては人並みだが。

万が一破損しても縫えば回復したのと同じ効果を得る。

「大丈夫そうね♪これでみんなと一緒に…」

その時、放送が鳴り響いた。

『今すぐ職員は全員会議室へ集まるように!繰り返す、今すぐ職員は会議室に集まるように!』

呼び出しだ。それもかなり緊急事態のように思える。

「…二人とも取りあえず穴掘り続けててね♪…やらなかったらすぐわかるから…うふふ♪」

「!?」

「は、はい…」

会議室に全員が集まると、施設長は口を開いた。

「全能紳によってカルテが更新された。アップデート内容は罪の追加だ。」

全能紳によるカルテの更新。確かに呼び出されるのも無理はない。

「そして、そのアップデートにより追加された罪の一つ。『実行可能な滅亡を企んだ罪』。これに該当する者が数名いる。」

「え…滅亡ですか?」

「それじゃあ…お仕事がなくなるじゃないですかぁ!」

「それは嫌だな…」

ざわざわと、職員が騒めく。仕事がなくなることは生きがいが無くなる事。一大事な問題だ。

機能その2.罪の内訳人数と一部データ回覧。

これを使う職員はあまりいない。罪が追加された時に施設長がみたり、暇なときに見る趣味を持っているような奴らが見るのだ。

名前も顔もわからないけれど、犯した罪の人数と、その罪を犯した者の他の罪を確認できる検索機能のような物。

その機能経由でカルテを見ても顔写真は真っ黒。名前欄等は真っ白。罪の内容と死刑判決の×マークだけが分かる。

『嘘をついた罪』のレベルでは役に立たない。あまりにも該当者が多いから。

けれど例えば『堕天した罪』を調べれば堕天使が何人いるか分かる。『カースを生み出した罪』なら大罪の悪魔が出るだろう。…その程度の機能。

朝の堕天使に惚れた職員はその堕天使がそれなりの人数がいるカルテからどれが愛しの堕天使のカルテか推理しているらしい。

しかし、キヨラはそんな機能、全く使ったことも無いし興味もなかった。

だが『実行可能な滅亡を企んだ罪』…それを犯した者が数名もいるとなれば騒めくのも無理はなかった。

何故ならカルテに間違いはないから。実行可能な力を持つ者が、世界の滅亡を企んでいる。その事実が実際にあるのだから。

「…人間界にしろ魔界にしろ天界にしろ…滅亡するのはまずい。輪廻の理が崩れる。」

「そこで、最も優秀な職員であるキヨラに、その危険を排除してもらいたい。」

「わ、私に…ですか?」

「他の罪を見るに、人間界で行動しているのは分かる。そしてきっと大事を起こすだろう。そして…それをヒーローという者達が討伐しようとするだろう。」

「その時にキヨラ、君にはそのヒーローたちの手助けという形でその重罪人を倒してもらいたい。」

「危険な任務だ。誰が重罪人かもわからない。潜伏する必要性もある。…それでもやって欲しいんだ。」

「…ヒーローに倒させれば罪に問われることも無い。あくまで補助をすればいい。…やってくれるか?」

一呼吸おいて、キヨラはいつもの笑顔で答えた。

「お任せください。」

人間界。街中にキヨラは居た。

柳清良。それがここでの名前。

清楚な服にオシャレなバッグ。しっかり普通の女性のように見える。

…その両脇に二体の動くぬいぐるみが無ければ。

…まぁ「ぬいぐるみを使う能力者なんだろう」で済むから便利なものである。

「なんでアタシ達まで連れてこられるのさ!」

熊のぬいぐるみのベルフェゴールが文句を言うも、笑顔で窘められる。

「貴方たちは私が担当なんだから当たり前でしょう?それに終われば一世紀分の刑期免除でしょう?」

「そうだけど…ですけどさー経験値ゼロの呪いの装備をしているアタシ達じゃ戦力にならないでしょう?」

「能力の制限はある程度解いたじゃない。情報収集能力だって今までのデータも使えるんだし、わがまま言っちゃダメよ。」

「えー…」

キヨラの情報を見ようとしてもできない。逃げようとしても次の瞬間には頭が飛んでいる。

…ベルフェゴールはどうしろととしか思えなかった。

ライオンのぬいぐるみのルシファーは、どこからか手鏡を取り出すと雪菜の姿へ変化した。

「ちゃんと変身できますねぇ…感覚的に数分程度かしらぁ。」

「レベル1ってことはMPもほとんど無いからねぇ…」

そのままショーウィンドウを見つめていると、背後に黒い泥が生まれたのが見えた。

『ドウシテドウシテドウシテエエエエ!』

『メンドクサイヨォ…ハタラキタクナイヨォ』

「あら?」

「高慢のカース…操作はできないわねぇ…なんか腹が立たない?」

「あー怠惰もだ。操作できないとかマジ…?キヨラさん、どうするのさ?」

「…」

バッグから明らかに入らないであろうサイズの医療用ノコギリを取り出すと、にっこりほほ笑んだ。

「悪い子はオシオキしないと♪」

ふわりとキヨラの周りにはメスが浮かび、指で示したカースに一直線に飛んでいく。

『イウトオリニシヤガレェ!』

ドロドロの腕を振り回して高慢のカースがメスを受け止める。

『汝、我が魔の力を受け、呪われよ。その呪いの名は【死の癒し】!毒を薬に、薬を毒に!呪われた哀れな者となり、性質よ反転せよ!』

キヨラの右手に持っていたメスから黒い光が怠惰のカースに飛び、呪う。

『光よ!大いなる我が力に従い、その優しい微笑みのような力で我が示す者を癒せ!ヒーリング!』

連続で回復魔術を怠惰のカースへ発する。

死の癒しの呪いによって、痛みはないのに内側から崩壊する。

『ア、アア、アアアア』

核が飛び出すと、その手からメスが飛び出し、貫いた。

『ムシスルナアアアア!』

「ベルフェゴールちゃん!」

「ちょ!?ぎゃああああああああああああ!」

『!?』

キヨラがベルフェゴールを高慢のカースが伸ばしてきた腕に投げる。もちろん正面衝突だ。

カースもさすがにそっちに気がとられる。

「…余所見しちゃ駄目よ?」

声はさっき立っていたところの真逆の方向から。

投げた時に一個だけ軌道をずらし、背後で空中に浮かんでいたメスの上に器用に立っていた。

次の瞬間にはさっきまで全く使っていなかったノコギリでカースを真っ二つにしていた。

『ゴア、グアアアア!』

しかし核を砕かなければ意味がない。二つに切り裂いた体の片方が再生を始めていた。

…抜かりはない。

『汝は悪の塊。我ら、悪は滅するのみ。処刑器具の名は『鉄の処女』!天界の全能神に生まれたことを詫びて死になさい!』

カースの真上に大きなサイズのその処刑器具が召喚される。

棺が開き、中から無数の黒い腕が伸びてカースを中へと連れ込んだ。

扉が閉まる。

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

耳をつんざく程の音量。ルシファーは耳を覆っている。

「ふぅ…。」

しかしキヨラは満足気な表情をしていた。

カースに殴られ気絶したものの、すでに体は自分の能力で回復しているベルフェゴールを回収する。

「…」

ルシファーも無言でぬいぐるみの姿に戻ると、キヨラに回収された。

「…誰が重罪人かはさっぱりわかりませんし…まずは姫様やユズちゃんから探しましょうか!」

「え!?あの死神に会う!?」

「…ダメですか?」

ぬいぐるみを引き連れた女性は、そのまま人ごみへ消えていった。

 

 


裁きのカルテ
全能紳が決めた罰と善行をした者が記録されるカルテ。
罪の判定が厳しいことに定評があり、『全能紳はいつまで知恵の実を食べる前のアダムとイヴに固執しているんだよ』とまで言われる。