4スレ目>>104~>>113


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久々に宇宙管理局にネバーディスペアを呼び出し、数日間、とある検査を行っていた。

一見すればただの身体検査だが…本来の目的は奈緒の血を採取することだった。

奈緒は身体にコンプレックスを抱いている。だからあくまで自然に手に入れる必要があった。

加蓮という少女。…彼女は一度死んだそうだ。

物事の本質を常に見ているきらりが言うのだから間違いのはずがない。

しかし、生き返った。その理由が奈緒の血だという。


…血だ。奈緒の血には何かがある。そこで行われた実験で成果を得られたのがとある実験。

2匹のネズミ。1匹は毒で弱り今にも死にそうなネズミ。もう1匹は元気なネズミ。

どちらにも血を飲ませ、放置する。

驚くべきことに奈緒の血は数時間も温度と鮮度を保っていた。この血の温度が失われる頃にまた血を飲ませる。

毒に侵されていたネズミが死んだのと同時に健康なネズミを埋め込んでいた電撃装置で一撃で殺す。

しばらくして毒に侵されていたネズミだけが動き出し、さらに異常な力でケージを壊し、眠っている奈緒の部屋に飛び込んで奈緒に溶けるように同化した。


…自分は極秘に入手されていた奈緒達を改造した研究員のレポート、資料をひっくり返すように調べた。

奈緒の過去をもっと知る必要がある。そう判断したのだ。

一度上層部から与えられた情報では足りない。奈緒が星を食らう怪物と言う事しか知らない。

だから、彼女に無断で彼女の過去に触れることにした。


誘拐され、キメラにされた奈緒。…童話の星を食らう怪物は様々な生物の特徴を持っていたらしい。

奈緒はキメラ化されてから自己再生能力はあった。

しかし、現在の…腕を切っても腕の方から戻ってくるようなものではなく、腕を切ったらしばらくくっつけていれば繋がる程度のもの。

レポートによれば組み込まれた生物の生きようとする意思がそうするらしいが…真偽は定かではない。

しかし、どこまで再生能力があるかを研究員達は奈緒を玩具のように扱って確かめ続けた。

元々キメラ化も不安定なものだったらしく、数日ごとに動物化している部分も変わっていたこともあり、本当に玩具のように思われていたように思える。

斬首、銃殺、毒殺…他にもえげつない物ばかりだ。彼女の無知に付けこんだ虐待をしている時もあったようだ。

最後に猛獣に生きながら食われてついに発狂。研究員の一人に重傷を負わせ、地下深くに閉じ込められた。


…それからかなりの期間が開いてレポートが再開された。

カースの核を埋め込む実験。所長が奈緒に埋め込むことを望んだようだ。

…奈緒自身に暴食への適性はなかった。無理に埋め込まれたせいか、かなりの時間苦しみ続けていたようだ。

しかし、奈緒は組み込まれていたキメラとしてのデータを泥に投影することで生物の生きる事への渇望…食欲で核への適性を得た。

核も内部の生物たちも同時に大人しくさせることで苦しみから解放され、肉体の変化も止まり…異常なカースドヒューマンと化した。

自己再生能力も異常な進化を遂げ、奈緒の意思さえ関係なしに肉体を常に同じ状態に保とうとする。

髪を切っても再生するレベルで肉体の変化を拒んでいるのだ。

それが生きる事への渇望の弊害だそうだ。奈緒自身の変化は望めないとレポートにも残念そうに書かれている。

発狂したままで正気を失っていたが…正気だったならばきらりの浄化もうまくいったかは定かではない。


現在管理局にある情報によれば、暴食のカースドヒューマン3人組は好物を武器にするらしい。それはもちろん料理だ。

しかし奈緒は生物を生きたまま食らい、その生物が激しい感情を発した時に自身の一部とする…らしい。

だから感情の塊であるカースの泥を食らい、さらにその力は膨れ上がる。

その仕組みは解読班も完全に読み解けなかったようではあるが、これまでの読み取れるところから推測すると…

生きたま食らうことで奈緒の内部でその命は死んでしまう。

…しかしその理不尽な死の瞬間こそ、その命はもっとも生きることを望む瞬間ではないだろうか。

カースは感情の塊だから一部になりやすい。

加蓮や先ほどのネズミのように、生きながら死を悟りそして死んでゆく…その時に無意識にでも生きることを強く望むのではないだろうか。

しかし、それでは加蓮が奈緒に同化しなかった理由が分からない。

ネズミと加蓮の違い…核だろうか?

核が文字通りにその取り込まれたはずの者の姿を保つ核になり、取り込まれずに済むのではないだろうか。

あくまで予測でしかない事。まだ分からないことが多い。

例えば…何故奈緒があの生物たちに乗っ取られずにいられるか…とか…


『お兄ちゃんは』

『人間の姿じゃなかったら…』

『化け物だったら今みたいに受け入れてくれたの?』


「!?」

耳元で囁くように幼い少女の声がした。

振り返って、入り口にパジャマ姿の奈緒が…ぬいぐるみを抱きかかえながら虚ろな目をして立っていた。

「…奈緒?どうした!?大丈夫か!?」

慌てて駆け寄り、声をかける。するとハッとするように意識が戻った。

「…あれ?あたしなんでここに…」

「…大丈夫か?」

「うん…多分喉が渇いてたのかも。」

「寝ぼけていたのか…?」

さっきの背筋が凍るような目は何だったのだろう。気のせいだったのか?

「?」

「まぁ…早く寝るんだ。明日地球に戻るからな。」

「うん。きらりが待ってると思うし、戻るよ。」

「奈緒はきらりが好きだなぁ…」

「!?ち、違うし!きらりの方から来るだけだし!」

「はは、取りあえず帰りな。」

「…うん。」

奈緒が帰っていくのを見送り、再び作業に戻る。

さっきの声はきっと幻聴だろう。耳元で声なんて聞こえるはずがないのだから。


部屋の隅で小さな黒い物体が蠢く。

『本当は好きなの』

『眠るときは怖い夢から守ってくれるの』

『素直じゃないでしょ?奈緒はいつもそうなんだ。変だよね?』

『お兄ちゃん?』

『…お兄ちゃん、あたしの声…も、もう聞こえないの…?』

『せっかくひとりぼっちじゃなくなったと思ったのに…』

『寝て起きたらあたしはまた…!』

『やだ、やだ!怖い夢なんて見たくない!』

『奈緒なんて大っ嫌いだ!』

黒い物体は奈緒に引き寄せられるように消えていった。

 


奈緒の中のなにか・3
意識の集合体である「僕ら」「私たち」とは違い、自立した意識を持つなにか。
確かに奈緒の一部のはずなのだが、奈緒にも「僕ら」にも「私たち」にも認識されない異質の存在。
幼い少女のような声と性格で、しかしどこかおかしい感じが漂う。
何事にも素直で、好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。
奈緒の意識が薄いときは肉体をある程度操作でき、数分は小さな黒い泥として分離もできるらしく、「僕ら」「私たち」よりは上位の存在である。
それでも意識が浮上するのは数週間に一度で、その間の意識は「怖い夢」に溺れている。
だがその声と姿は肉体の外の人間にも認識されにくく、常に孤独。
『家族』に憧れており、ネバーディスペアを『家族』と認識している。
その為、自分を閉じ込めてさらには『家族』までいる奈緒を嫌っている。