2スレ目>>584~>>591


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竜族と魔族の戦争。そもそも始まりは何だったのか、知っている悪魔はもうほとんど生きていない。

そして、竜族と魔族はかつてはライバルのような関係だったと知っている悪魔はもうほとんどいない。

…ましてや、お互いの長である、竜帝と魔王が親友だったと、知っている者はもう本人以外いない。

かつて魔界を襲った危機を相手に二人で先陣に立ち、勝利をおさめ、お互いがお互いの種族の王となってもその関係は続いていた。

お互いに部下や自らの力を磨くことを好み、手合せと称した決闘も行い、いつも引き分けに終わっていた。

…ある日、竜帝がおかしくなった。まるで理性など無くしたかのように凶暴になり、その力に煽られた若い竜達がとある魔族の集落を滅ぼした。

魔族は怒り狂い、竜族も王が狂いだしたのが原因か、全ての竜が暴れ出した。

お互いにお互いを迫害し、殺し、呪う。

それが戦争の始まりだった。


魔王はユズから送られてきた報告書に目を通していた。

そこに、扉を開いて一人の女性が入ってくる。

黒いチョーカーを付けた、ただならぬ雰囲気を纏った女性だ。

「…すまない、今回も成果は得られなかったよ。」

魔王を相手に唯一敬語を使わない魔王の部下。

「…仕方のない事だ。貴様が気にすることではない。キバよ。」

「おっと、一応マナミと呼んでもらわないと困る。誰が聞いているか分かったものではないだろう?」

「盗聴の類、魔術であろうと機械であろうと、我が見逃すと思うか?『竜帝キバ』。」

彼女はかつて…戦争の原因であり、一人の妻と娘をもった竜帝だった。


…戦争が始まったばかりの頃、魔王はある女を拾った。

見た目は全く魔族に見えず、人間かと思ったが、その体内の年齢の割には異常な量の魔力を感じ取り、保護した。

そして…長い戦いの末、魔王がかつての戦友の命を奪い、帰ってきた魔王城で死神たちから報告があった。竜帝の魂が見つからないと。

魔王もその部下も探したが、竜帝の魂とその子竜にいたっては亡骸すら見つからなかった。

そしてその晩、彼女は魔王の間にやってきて魔王を驚愕させる一言を放った。

「サタン、私が竜帝だ」と。

何をふざけているのかと魔王が珍しく怒り狂ったように彼女を掴み上げ、その首に竜族しか持ち得ないはずの、憤怒を司る生物、竜帝の証であるルビーのように光る逆鱗を見つけた。

魔王はいったん開放すると、何度も彼女に問いかけ、彼女は何度も答えた。

そして、魔王は目の前の彼女がかつての親友だと確信した。

翌日から、彼女は魔王の側近となった。他の誰も彼女の真の姿をしらないまま。


彼女は戦争に関する殆どの記憶を失っていた。…いや、知らないと言った方がいいのだろうか。

彼女の竜としての最後の記憶は何かに襲われた事。

それから竜帝はこともあろうに人間の女性となっていたのだ。

しかも、竜帝の肉体が死ぬまで記憶はさらに曖昧なものだった為、自らが竜であることすら忘れていた。

そして現在彼女は、魔王の呪いを解呪する方法を必死で探していた。

親友に死の呪いをかけたのが己と知って、世界中を探し回っている。


「ユズが管理塔の魔術書を漁っても解呪方法など見つからなかった。我は死ぬのだ。諦めろ。」

「…ユズが調べられるのは魔術の範囲だ。…まだ方法はあるはずだ。」

「相変わらずあきらめの悪い奴だ。…聖水でも使う気か?このレベルの呪いを解ける聖水、我が死ぬぞ。」

「…」

マナミが黙ったのを見て、サタンが続ける。

「…それよりも聞け、我が娘と貴様の娘が接触した。…生きていたのだな。」

「!?」

驚愕する。殆どの記憶を失っていても、娘の記憶はしっかりあるのだから、親として反応してしまう。

「…言わぬ方がよかったか?」

「…いや、生きていると聞けて良かった。」

「そうか。貴様も母性があるな。」

「そういう性別を使ったジョークは止めろと何回も言っているだろう?」

「ふん、今の貴様ほどからかって面白いものはいないからな。そして…ユズはベルフェゴールに負けたようだ。」

「そんなに強いのか?」

マナミが問いかける。彼女には他の大罪の悪魔の知識は殆どない。

「…たった一つの弱点以外ほぼきかぬ。」

「弱点があるのか。なら何故…ああ、君はそういう悪魔だったな。」

マナミがあきれたように溜息をつくが、サタンは笑って答える。


「フハハ、相手の体質を見て対策方法を編み出せない程ユズも愚かではないだろうからな。」

「…それで、その弱点は?」

「一度戦争で死んでいるのだから、竜族の誰かは知っていると思っていたが…まぁいい。」

サタンが手を振ると植木が現れる。

「僅かではあるが、自らの傷を再生できる魔界の樹木だ。これをベルフェゴールと見立てよう。」

再び腕を振ると、ナイフがどこからともなくあらわれ、傷を木に負わせた。

しかし、その木はその僅かな傷を癒し、元の綺麗な木に戻った。

「これが自己再生能力。ベルフェゴールのは遥かに上位の再生能力だがな。しかし、致命的な弱点がある。」

『地よ、我が魔の力を受け、魔の地となれ。その呪いの名は【死の癒し】!毒を薬に、薬を毒に!呪われた土地となり、性質よ反転せよ!』

魔王の手から呪いが放たれ、その木の付近が呪われる。

すると、分かりやすい異変が起きた。木が異常なスピードで枯れ始めたのだ。

「…なるほど、反転か。自動自己再生能力者にとってこれは恐ろしいな。」

「そうだ。全てのベルフェゴールは死の癒しによってその魂を抵抗することもできない苦しみによって散らしてきた。怠惰故に逃げる事も間に合わずにな。」

「…」

「だが…いま奴は人間に憑依しているようだ。故に、知っていたにしろ、知らなかったにしろ…ユズは魔術を使えなかった。」


フン、と報告書を燃やす。そこにマナミが問いかけた。

「…人間に憑依?」

「そうだ。元の人間の意識を完全に乗っ取っている。」

「…そうか。それは分かりやすいのか?」

「ああ、ユズは元は魂を狩る死神。そういう物には敏感だ。」

「大罪の悪魔は肉体をどうしているんだ?憑依というのは魂のみで行う物だろう?」

「さぁな。人間界に持ってきているか…魔界に放置してあるのかもしれん。そもそも肉体と魂が曖昧な者がいたらこんな考察、意味がないがな。」

そこに、いつもの配下が慌てて入ってきた。

「大変ッス!練武の山がなんかものすごい霧に覆われてるッス!」

「…ほう。ユズか。」

「わかるのかい?」

「そんな芸当ができる悪魔、魔力管理人であるユズ位だ。そうか、山籠もりか…。」

嬉しそうにクククと笑うサタン。そしてマナミに一つの提案をした。


「そうだ、貴様にしばらく人間界に留まる許可をやろう。」

「…ユズの変わりに?」

「いや、ユズは任務を放置するような奴ではない。…気まぐれだ。そこで我の呪いを解呪する方法でも探していればいい。」

「…ありがたく行かせてもらおう。」

マナミは真意を察してはいたが…どうするかはまだ悩んでいた。

取りあえずは親友の解呪だ。他の全てよりも、何よりも優先してしなければならない。

マナミは魔力で構成した竜の翼で、人間界へ向かって飛び出した。