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死後も好きなものは好き



 生前の首無しライダーは、生まれながらの走り屋だった。
 子供の頃、三輪車で坂を下ることが好きだったし、小学生になると、三輪車から自転車になり、高校からは原チャリに変わった。
 地元でも難問と呼ばれるコースを走り、かっ飛ばし、爆走する。
 暴走族に所属し、よく賭けレースもやっていた。
 パトロールの白バイに追われることも数え切れないほどあった。
 危ない橋はいくつか渡ったが、ボロを出して捕まったことは一回もなく、逆に最高のスリルを味わえた。
 「狂走男」他の走り屋から称されたあだ名だ。
 他の誰よりも、群を抜いて、走り好きだったことがわかる。
 地元の白バイ警官たちも、彼の走りテクのあまりの技術に舌を巻いていた。
 地元では知らないものは居ない。
 そんな彼の最後は、意外なほど呆気なかった。

「うおおおおおおおお!?」

「馬鹿!前見ろ!?」

「救急車呼ぶッぺ!!」

 仲間たちの叫び声と怒声が、彼が聞いた最後の声。
 賭けで行われたチキンレース。近所でも最難関と恐れられる急カーブありの、山中で行われたそれ。
 彼は万に一つもないと考えていたミスを犯した。
 凄まじいスピードで地面に投げ出され、首がもげた。




 伝説になりかけていた走り屋は、走りで死んだ。






 そして、生まれ変わった。

 彼が次に目覚めた時、最初に思ったのは疑問だった。
 ここは何処だ?俺はどうなった?あれは夢だったのか?
 なぜか肩から上が軽い気がした。
 おぞましい死の瞬間の記憶はあった。あれで生きているはずはない。
 なんともお決まりなセリフを喋ろうとした。
 彼は喋れなかった。
 異常なほど頭が軽い?当然な事だった。
 首から上がなかったのだ。

 自分が本当に死んだ事に気づき、認めたのはかなり後になってからのこと。

 これが有名な都市伝説『首無しライダー』の始まりだった。

 夜な夜な道を走り、夜明けとともに何処かに消える黒いライダー。
 当初混乱した物の、彼は走り続けることを選んだ。
 幽霊?になってしまったものの、死んだことはこれが初めて。成仏の仕方などわからない。そして頭がない状態じゃああの世の爺ちゃんが腰を抜かすだろう。
 なによりも彼はまだ走りたかった。
 自分を育ててくれた両親や族仲間に影から別れを言い、旅に出ることにした。
 全国の高速道路や、レースコース。峠の道を駆け回る。

 深夜の道を走っていたら、たまにライダースーツを着たバイカーが通り越すかもしれないが、もしかしたら彼かもしれない。

 違う意味で彼は伝説になった。



 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 ほんのりと赤みのある光を反射して光る月の光が照らす中、赤い荒野に響く爆音。
 それはバイクの排気音であり、その音源であるバイクに乗っている者は、生者ではない。
 全身を覆うライダースーツを着用し、頭に乗っている空のヘルメット。
 顔をすべて覆うそれは、表情が読めない物だ……彼に表情はないのだが。
 走りに生き、走りで死に、走りで蘇っだ彼は、殺し合いの場だろうと関係なく走る。
 走るのをやめるのは、彼が走れなくなるまでだ。
 食べることも寝ることも必要なくなり、肉体の呪縛から逃れられた走り屋。
 彼は幸せだ。死後も大好きな走りを続けられるのだから。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 まるで爆弾が落ちたような、爆音な排気音が響き渡る。

 彼は止まらないし、止まる気もない。たとえ今音を鳴らし、自分の存在をまわりにアピールすることが、どれだけ愚かなものだとしても。

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 走ることが、彼のプライドであり、存在理由だから。

【E-9荒野未明】 

【首無しライダー】
【状態】健康、爆走。
【装備】愛用バイク(自前)
【所持品】基本支給品×1
ランダム支給品×3
【思考・行動】
1:爆走、爆走、とにかく爆走。
2:とりあえず走る。
3:殺し合いについては今の所傍観。

【備考】
※バイクは自前の品です。彼が事故死した際に乗っていたもので、エンジンに改造が施されています。
※特性上バイクとは一心同体。あまりバイクとは離れられません。
※E-9に爆音が響いています。だれか聞いたかも?


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