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隠れます!!ビビってるわけではない!!




 ある所に、妖怪と人が共存する都市がありました。
 そこに、三兄弟の鬼妖怪がおりました。

 長男はしっかりものですが、とっても強く、暴れることが大好きな性格でした。
 その体はとっても大きく、まるでローマの彫刻のようでした。


 次男は、些細なことでも怒り出す短期な性格でした。
 長男の次に強く、怒ると手がつけられませんでした。
 その体は長男のように大きく、同じく彫刻のようでした。

 三男は、二人の兄たちと違い、体は大きくなく、力も強くありませんでした。
 自分に自身がなく、自分より強い相手にはとっても弱腰になる悪い癖がありました。
 三男は、兄達を心から愛し、尊敬していましたが、偶にその強さに嫉妬することもありました。
 なぜ自分の体は、兄達と違って大きくもなく、筋肉もないのか?
 真剣に悩んだことも、数え切れないほどありました。
 兄達は、悩む彼を慰めました。
 適材適所、それぞれ得意なことや苦手な物があるのだから、それを極めれば良いじゃないかとーー
 三兄弟は、都市のヤクザ……喧嘩屋として働いていました。
 只のヤクザではありません。妖怪が多く在籍する仁義ある妖怪ヤクザです。
 主に妖怪と人間の小競り合いやトラブルを解決するのが、彼らの仕事。
 長男、次男は、その妖怪としての能力と、腕っ節の強さから、荒地を収める仕事を主に請け負いました。
 しかし、三男は兄達の言葉通り、自分の能力に適した仕事ーー情報屋を始めました。
 仕事上危ない目にも合うことが多いですが、妖怪だって霞を食って生きているわけではありません、仙人ではないので。
 三男はそうでもないのですが、兄達ふたりはサイズ的にかなりの大食漢。
 日々消費される膨大な食費を稼ぐため、毎晩の鍋の材料費を作る為、三兄弟は働いていました。
 今日も、ヤクザ間の抗争を沈め、クタクタになった兄たちと共に、我が家にて晩の鍋を囲んでいます。
 三男は、兄達の前に置かれた。2つのタライいっぱいに盛られたご飯を尻目に、できる限り食費の2文字を頭から叩き出し、これまたジャンボどころかウルトラサイズの鍋に煮える野菜をほそぼそと食べていました。

 もっと食べないと大きくならないぞ……家庭の食費事情をわかっている兄達は、流石にそんな空気の読めない事は言いません。
 そんな事よりも、口いっぱいに食糧を詰め込むことに忙しかったので、注意する余裕がなかったからかもしれないが……
 無言で飯をかきこむ兄達の姿を前に、三男は品よく箸を使い、まず白菜を取ろうとしてーー

 次の瞬間、まったく見たこともない場所にいた。
 目の前で煮えていた鍋も、見慣れた我が家でもない。
 三男ーー隠れん坊は、夕飯前にこの殺し合いに参加させられた。
 エレキシュガルと名乗った自称死神と、どことなく投げやりな印象を持った閻魔なる人物。
 隠れん坊は唖然とした。呆然とした。ムンクの叫びのごとく口を開け、見事に放心した。
 妖怪だって心はある。理解不能な状況に驚きもするのだ。

「≪それでは今からもう一度、みなさんの意識をシャットダウンしたあと首輪を付けて会場に送りまぁす。
首輪はコレです! 外そうとしたりあんまりゲームの進行を邪魔するようなことしたら、こうですよん?≫」

 放心しているうちに、エレキシュガルの殺し合いの説明が終わる。

 しまった……!放心し過ぎて話まったく聞いてなかった……。
 隠れん坊がそう後悔するのは、会場に送られた後からだった。

+++++++++

 目が覚めたら、何やら見慣れぬ荒野に置き去りにされていた。
 目が覚めたら、何やら見慣れぬ荒野に置き去りにされていた。
 大切なことなので、二回言わせてもらった。
 見事に何も無い、ペンペン草一本すらも生えてない。あるのは赤い地面だけ(あと石とか)
 何やら明後日の方向に、白いクレバスが見える。雪だろうか?
 なぜか後方から甘い匂いがする……これは、チョコの香りか?
 まわりに他者の気配は確認できない。
 頭を働かせ、まわりの状況を判断する隠れん坊。
 地面に置かれていたデイバッグを手にしっかりと持ち、とりあえず安全だと判断する。
 仕事上だからか?それともそれなりに肝っ玉がでかいのか?一応この異常事態に対応はできている。

「無理だァァァァァァァ!!!無理無理無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だ無理だァァァァァ!!!」

前言撤回。
 なんでか知らないが、酷く怯え、叫び始めた。
 人影が無いからといって、叫ぶのは如何なものか?目立つだろうに。

「殺し合いッてお前!シュガルこら!閻魔こらぁ!!無理だッて!
 俺は兄貴たちと違ってよぉ、喧嘩は強くねぇんだよ!
 無理だって!俺はどっちかって言えば、情報戦とかが専門なわけ!
 こんな自体は想定してないんだよぉ!わかる?わかるかってんだ!!
 俺は弱いんだよ!雑魚なんだよ!ドラクエで言えばスライム並なんだよぉぉぉ!」

自分で言ってて悲しくならないのか?彼は。(キートン風)


 隠れん坊は、実力的に言えば兄達より劣っていた。
 体格は元より、筋肉、パワー、スタミナ、それらが、圧倒的に差がある。
 まだ一度も、喧嘩で隠れん坊は兄達に勝った事はない。
 が、別にそれは隠れん坊が弱いから……というだけではない。
 兄弟的なレベルに差があるのは、妖怪としての特性の違いによるもの。
 大抵の妖怪は、普段人間の姿に擬態し、人類社会の中に溶け込んでいる。
 しかし、一度擬態を解除し、妖怪本来の姿に戻った時、その姿の固有能力的な特性を得る。
 長男は、変身すると鋼鉄のような頑丈さを持つ巨体の鉄鬼になり、
 次男は、変身すると長男よりは劣るが、それでも遥かに頑丈な、岩石のような巨体の岩鬼になる。
 いかにもタイマン向けな能力をもつ兄達。
では隠れん坊はどんな能力を持つ妖怪なのか?
 それは"隠れること"に特化した能力と言えるもの。

「はぁはぁ……へへ、俺としたことが、つい取り乱しちまッたぜ」
 ようやく落ち着きを取り戻し、静かになった隠れん坊。

「殺し合いがなんだ……用は、隠れきれば良いだけじゃねえか」


その言葉とともに、隠れん坊の体が『溶けた』
 比喩ではない。意味通り個体から液体化した。
 右手に持ったデイバッグと、着ている衣服ごと、スライムのような水色の液体の姿に変身した隠れん坊。

 隠れん坊は、隠れ鬼の妖怪。
その特性は、体を液体化し、あらゆる場所に入り込み、自在に隠れることができること。
 兄達と違って、攻撃には直結しないが、兄弟たちの中では一番応用が効く能力。

「(この姿になりゃあ、とりあえずこっちのもんよ)」

 ただ液体に変えるだけではない。
まるで水溜りのように薄くなった隠れん坊。
 そして、表面の色を、荒野の赤い地面と同じように変化させた。
 一瞬で水色だった体色が変わり、代わりに地面と見分けがつかないように、保護色を作り出した隠れん坊。
 流石に直接触れればばれるかもしれないが、視界で確認する限り、もはや地面と隠れん坊との区別がつかないほどに『隠れ』ていた。
 擬似的な透明状態になった隠れん坊は、液体状のまま這う様に移動を始めた。
 進む先はーーチョコレートの香りのする方角。
 待ちに待った夕飯を食べる直前に拉致された為、妖怪と言えども飢えている。

「(とにかく何処かに擬態して隠れてりゃあ、どうにかなるだろ)」

 全然区別がつかないが、隠れん坊は這いずりながらそう思考する。

「(今は何より……腹が減ったよ)」

 液体化しても空腹は変わらないので、暴れる腹の虫に新鮮な食事を与えるため、飯を求める隠れん坊。

 隠れん坊以外に、上の兄達はこの場に来ているのか?
 それはまだ、わからない事。


 隠れん坊は、兄弟の中では、一番戦闘能力が低い。
 だが、本人の能力の質は、兄弟中では最高レベルだと言える。
 体を液体化した状態だと、普通の刃物は勿論、銃弾なども受け流せる回避性。
 体を保護色にし、流動体の特性を生かし、不可視の状態になれる隠密性。
 液体から個体ーー元の体に戻ることもすぐできるので、
 細かい機械類は無理だとしても、刃物などの単純な武器に変化することも可能であり、
 衣服や持ち物などにも能力は作用する為、携帯性も高い。
 体積が同じなら、表面の形を調節することにより、ほぼ完璧に他人に擬態することもできる。

 隠れん坊は、某近未来の液体金属ロボット並のチートなのだ。
 奇襲、暗殺、闇討ち……この殺し合いという状況には、あまりにも有利な能力……!!

 少々自分を低く見過ぎだと言える。
隠れん坊的には、弟として上の兄二人を脚色し過ぎている部分がある。
 しっかりと能力を活かす方向を決め、それを極めれば、兄よりも上のレベルに行けるだろうに。
 当然、一般人は対応できない程、現時点でも強い。

 例えるなら、ティラノサウルスの子供が、二頭のゴジラを兄に持つイメージ……そう言えば、わかりやすいだろうか?
 ティラノはティラノで凄いんだが、ゴジラと比べると劣る。
 要するに比べる対象のレベルが高すぎているだけ。


 只、それだけのことなのだが……


彼がその事に、気づく日は来るのだろうか?


【B-8 荒野/未明】

【隠れん坊】
【状態】健康、液体化、保護色により不可視状態。
【装備】無し
【所持品】基本支給品、ランダム支給品×3(液体化し隠れん坊と同化)
【思考・行動】
1:とりあえずどこかに隠れる。
2:甘い香りがする方角に向かう。(チョコレート工場)
【備考】
※液体化しています。
※B―8に隠れん坊の絶叫が一部響きました。誰かが偶然聞いたかも……
※夕飯の鍋を食べる直前に呼ばれたので、空腹です。
※もし兄達が参戦した場合、直感でお互いの危機を感じ取れます。



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