殺戮人形は祭りの時を待ち望む

苛立つ。
チャッキーの生きる意味とは殺戮である。
殺戮という概念に命を与えたものがチャッキーである、そう言い換えても構わない。
より多くの死を産むために、彼は生きている。
ならば、今の状態は彼にとって非常によろしくない。
彼の人生を否定していると言っても良い。
何時間歩いただろうか、何度手に持つグラディウスで獲物を刺し殺す感覚を思っただろうか、
最後に会った魔物を殺してから八時間――今日という日の三分の一もの時間、彼は獲物に出会えていない。

かたかた――と、音が鳴る。苛立ちが体に現れている。

誰かを殺せば、追手が来るのが当たり前だった。
そして、その追手を殺せば、また追手が来る。
そうやって、日常的に――息を吸うように、息を吐くように、殺人衝動を満たすことが出来た。
だが、今はどうだ。
殺し合い――モリーはそう言った。
足りない。たった、50の命では、とてもこの飢えを――狂おしい程の飢えを満たせない。

しかも、獲物達はわざわざお互いに喰らいあって、自分の取り分を奪い合っている。
その証拠に、歩く途中に幾つかの死体を確認している。
己に殺されるべき命が、誰かに奪われている。
腹立たしい。その上、そのストレスを解消しようにも殺すべき相手が見つからない。
負の連鎖である。

かた、かた、かた、かた。
音が鳴る。憤怒の音色が奏でられる。だが、チャッキー以外にその音色を聞くものがいない。

死体への八つ当たり、それも考えた。
だが、死んだ命は最早殺せない。
うんともすんとも言わぬ物を斬るなど、刺すなど、抉るなど、木を相手にしているようなものだ。つまらない。満たされない。

羨ましい、下山途中に見た死の十字架の記憶が蘇り、チャッキーは心の底からそう思った。
あれを受ければ、何者も死なずにはいられない。
死だ、あれは死そのものだった。

――嗚呼、欲しいな。

最早、今更にあの山に、山だった場所に向かおうとも全ては終わっているだろうと考え、あそこには向かわなかった。
だが、現状の不作を考えるに、例え無駄だとわかっていてもあの場所に、死の残滓を浴びるべきなのでは、という考えが鎌首をもたげる。

だが、結局その考えを実行に移すことはなかった。

チャッキーの目が、そして耳が、肌が、その存在を感じ取った。
意思とは無関係に頬が緩む。

『ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう』

上空――明らかに、この闘技場主催者の飛空艇。
そして、声は忘れもしない――モリーと名乗る男。

待たされたかいがあった。
これからだ、これから真の自分の証明が始まる。


何匹殺せるだろう。
何人殺せるだろう。

最早、モリーの声など聞こえない。
ただ、人形の身体で刻まれるはずのない心臓の鼓動がどくんどくんと聞こえたような気がした。

かた
かた

かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた
かたかたかたかたかたかたかたかたかたかたかた

【G-5/草原/二日目/深夜】

【チャッキー@モンスターファームシリーズ】
[状態]:頭部左端欠損、歓喜
[装備]:グラディウス@ファイナルファンタジーシリーズ
[所持]:ふくろ(ブイモンの遺体)
[思考・状況]
基本:いつもどおりに殺戮する
 1:獲物を探す

No.79:蛇足 時系列順 No.83:先見えぬ王道
No.81:闘技場完成 投下順 No.83:先見えぬ王道
No.64:不定形の王道 チャッキー No.87:It's Time to Play