勝者なき戦い

――これは聖獣の物語ではない。



「いやぁ、やっぱ男なんてちょろいわ~! ちょろあまだわ~!」

マンイーターは調子に乗っていました。
自らの手の内を知っており、もっぱらの脅威だったギリメカラ。
彼を出し抜けたことが嬉しくて貯まらないと嘲笑い続けていました。

「褒めてくれるよね、迎えてくれるよね、ブリーダーさん、ブリーダーさん」

ハムライガーは盲目でした。
心壊された彼には、最早ブリーダーのことしか見えていなくて。
目の前の敵に手を抜かれていることも知らずに、自身が優勢だと勘違いしていました。


ああ、なんて愚かなことなのでしょう。
きっとこの光景を見たなら、神にも悪魔にも立ち向かったただの人間は顔をしかめたことでしょう。
アンタら、そいつを舐めすぎてるぜ、と。
ギリメカラのサマナーだけではありません。
神魔をぶん殴るジャックフロストのサマナーも、ジャックフロスト自身も、その意見に同意したでしょう。
いえ、ある程度の実力のあるサマナーや悪魔使いなら、誰しもが口を揃えて忠告したはずです。
最も油断のならない悪魔、それがギリメカラだと。

彼は多くのサマナーたちにとって恐怖の対象でした。
歴戦のサマナーたちでさえ、いいえ、歴戦のサマナーたちだからこそ、彼の存在をトラウマとして心に刻んでいます。
どれだけレベルが上がろうとも、どれだけ強力な悪魔と契約を結ぼうとも。
彼らの中ではギリメカラが畏怖すべき存在であることには代わりません。
そういう意味ではギリメカラは、正しく、“悪魔”なのでしょう。
悪しき存在であり、邪神として崇められることもあるほどの超越者。
契約すれば心強いが、生半可に手を出せば身を滅ぼす力の具現。

そうです、彼は悪魔なのです。
どれだけ理性的でも、どれだけ頼り甲斐があろうとも。
彼は生来の悪魔であり、中道とはいえ悪魔の中でも特に破滅的なDARK属性の悪魔なのです。
そんな悪魔を、あろうことか、彼と彼女は敵に回してしまいました。
攻撃を躱していく中で、ギリメカラはハムライガーのことを見極めたのでしょう。
ハムライガーは丈夫さ・ライフと引き換えに攻撃を当てる力に優れており、ライガーにしては力もあります。
ガッツの回復速度も速く気合い溜めの如くガッツを最大までためて技の威力と命中率を上げ、ラッシュを仕掛けてきます。
その上このライガーはブリーダーによく育てられており、何度も大会に出て相当な人気を誇っています。
クリティカルだって中々の確率で出せるのです。
脆いけど早い上に高火力――つまりこのハムライガーは、ギリメカラにとって“最高に相性のいい相手”なのです。
ハムライガーの牙が一度でもギリメカラに触れたが最後。
反射によってハムライガーは致命傷を負うことでしょう。
ハムライガーは遠距離攻撃として冷気だって操れはします。
しかしギリメカラの性質も強さも知らず、己の有利と過信したハムライガーが、わざわざ逃げられるリスクを犯してまで距離をとることはありません。
ひどい、酷いデジャビュでした。
幼き獣が狂う原因になった戦いの一幕の再現。
悪夢に囚われ、虚無をたたえ、ギリメカラに襲いかかる一匹のモンスター。
変わって欲しくなかったと涙したモンスターの変わり果てた姿。
帰る所を失い、みんなの恨みを抱かえ、人間を憎悪したモンスターは死にました。
人間を愛し、帰る所のために、みんなを殺すモンスターが生まれました。
悲劇は、連鎖するのです。
でも、それもここで打ち止めです。
だってここには、もうハムライガーを止めてくれる優しい誰かはいないのです。
いるのはただ一匹の悪魔だけなのです。

「すまない……」

ギリメカラは謝りました。
ハムライガーの目に映る深い絶望。
その正体が分からないながらも、彼にも理解できることがありました。
それは自分ではハムライガーを救えないということでした。
同じ虚無の瞳でも、トンベリの目にはハムライガーが映っていました。
過去に囚われ、憎しみに呑まれながらも、彼女は今を見ていたのです。
ですが、ハムライガーの瞳には、ブリーダーしか映っていません。
悪夢に侵された彼は現実を見ず、血まみれの未来の為に、涙しながらも歓喜に溺れて殺すのです。
褒めてくれるよ、喜んでくれるよね、ブリーダーさん、ブリーダーさん……。
ギリメカラはそんなハムライガーを哀れには思います。かわいそうだとも感じます。
けれど彼は悪魔です。邪悪なる鬼なのです。
誰かに感化されようとも、誰かを気に入ることがあっても、誰かを愛することはできません。救うこともできません。
そのことを痛感してしまったから、そのことを理解してしまったから。

「すまない……」

ギリメカラは謝ります。
トンベリに謝ります。ハムライガーに謝ります。知りもしないブリーダーとやらに謝ります。

「恨みたければ恨むがよい」

このまま戦い続ければ、いつか、ギリメカラはハムライガーの命を奪ってしまうでしょう。
かわし続けるには限度があります。
相手の疲労を待てば待つほど、自分も疲労し、回避動作の精細が欠け、勝ってしまう確率が大きくなります。

「呪いたければ呪うがよい」

だから、そう、この戦いを引き分けで終わらせるには、最早これ以外方法はなかったのです。

「だが、その悲しみだけは置いて逝け」

こうして、ハムライガーの悪夢は終わりました。
彼はこれからは幸せな夢を見続けることでしょう。
ずっと、ずっと、永遠に。




●ハムライガー×邪鬼ギリメカラ●(■■■■■■■)





――これは聖獣アイラーヴァタの物語ではない。

反射邪鬼ギリメカラの物語である。





   反     

   射     

   邪     
        始
   鬼     

   軍     

   曹




邪鬼の物語が始まり、幽鬼の物語は終わりを迎える。
触らぬ邪神に祟りなし。
幽鬼の浅はかな行いは、邪鬼の邪鬼たる所以を目覚めさせてしまった。

「……は? ちょ、ちょっと、何よ、何なのよ、アンタ。なんで、なんでここにいるのよ!?」

何を不思議がることがあるのだろう。
時は夕暮れ、逢魔が刻。
森に堕ちし影より滲み出て、悪魔がその姿を現そうとも何らおかしなことはない。

「……見ての通り、ワシの鼻は長いのでな。おヌシの腐りきった心身の匂いを追うなど造作もないことだった」

ぎょろぎょろと単眼を動かし、咆哮するギリメカラの姿がマンイーターには一回り大きく感じられた。
慌ててマンイーターは首を振る。
錯覚だ。ありえない。悪魔の強さは固定のはずだ。
そうだ、きっとそれはアイツが持っている獲物のせいだ。
アタシを刺しやがったにっくき女が持っていた氷の刃。
そんなものを手にしているから、トラウマが刺激されただけなのだ。
そうに違いないと何度も、何度も言い聞かせる。

「フ、フン、アタシが聞きたいのはそういうことじゃないわ。あの坊やはどうしたのよ?
 って、聞くまでもないわよね。あーあ、かっわいそ~!
 あの子、大好きな人に会いたかっただけなのにな~」

マンイーターはギリメカラのことを甘ちゃんだと認識していた。
合理的な相手ではあるが、こいつは自分たちを襲ってきたトンベリをも救おうとしたのだ。
埋葬時にさえそれを悔いていた。なら、そこをつけば、隙くらいは生じるはずだ。
爪もカミツキもガトリングも反射されるが、それなら魅了でもしてやればいい。
心の隙をつき誘惑することこそ自分の十八番じゃないか。
そう、彼女は高をくくっていた。
それがいかに愚かなことか、甘いのはどちらだったのか、数秒後、我が身をもって思い知ることとなる。

「……そうだな。アヤツには悪いことをした」
「ふふ~ん、そうようね、そう思うわよね! 
 だってあの子は何も悪くない被害者! たとえその牙が血に塗れてようが被害者は被害者!
 加害者だろうが被害者ぶれるなんて素敵な犠牲者さん!
 悪いのは全部、ア・タ・シ。後ついでに人間! そしてアンタ! 坊やを殺したアン「いっそ、殺してやれば、良かったのやも知れぬな」……は?」

影が、落ちる。
赤い、赤い世界に、影が落ちる。
陽が沈みきったのではない。
太陽が、食われたのだ。
陽を背に直上より飛びかかる獣によって。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
「ひっ!?」

狂った獣の牙が、爪が、マンイーターを引き裂く。
ギリメカラに気を取られていた彼女には、その襲撃をかわすことなど不可能だった。
いや、たとえ周囲を警戒していたとしても、この展開は予想外だったであろう。
あまりにも理解不能すぎて動きを止めてしまったに違いない。
それほどまでに、今、己に起きたことは、己を襲った相手は、マンイーターにとって信じられないことだった。

「いっぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!
 ハ、ム、ライ、ガー……? タ、タンマ! マジタンマ! 何やらかしてんの、何しやがるんだ、この尻振りワンコがああ!
 ちょ、腕、アタシん右腕がああああ! どうすんのよ、どうしてくれんんのよ!
 これじゃああんなことやそんなことできないじゃない! 繋げればいいの!? ゾンビだから縫合!?
 それとも今度は隻腕フェチの男どもでも狙えってわけ!?
 じゃなくて、それもあるけど、なんでコイツまでここにいんのよ!? 
 なんでアンタの側についてんのよ!? 何を仕込んだわけ、アンタ!?」

マンイーターを襲ったのは彼女が手駒としたはずのハムライガーだった。
それだけならまあいい。よくはないが理解はできる。
殺して殺して殺せと煽ったのは他ならぬ彼女だ。
死んだということにして実は生きていた自分を何の疑問もなく襲ったのは気になるが、今は置いておく。
それよりも無差別殺戮者として仕立てあげたはずのハムライガーが何故、ギリメカラに使われてるのか、何故ギリメカラを襲わないのか。
それが心底理解できず、腹立たしくて、マンイーターは痛みにのた打ち回りながら訴える。

「ふん、何を仕込んだ、か。ワシの方からももう一度聞き返そう。おヌシ、コヤツに何をした。
 セクシーダンスのような魔法による一時的なものではあるまい。もし、“そういう異常系ならこの結果にはならなかった”」
「ばーか、自分の手のうちを明かすわけ、ない、でしょうが……」
「それでいてワシには喋らそうとは、つくづく身勝手な女よ。まあよい。コヤツと、コヤツを愛した者たちへのけじめだ。
 隠しはせずに、白状しよう」

その巨大な鼻から大きく息を吸い込むギリメカラの姿に、マンイーターの背筋が震える。
は、なに、なんで、なんでアタシ、こんなヤツに気圧されてるわけ?
そう自分の心に怒鳴りつけても、震えは止まらない。

「何、簡単な話だ」

直感した、これから語られるのは、彼女をしても、おぞましい話なのだと。

「パニックボイス。おヌシが言葉で狂わせた此奴を、ワシは更に術で狂わせ、心にとどめを刺したまでに過ぎぬわ」

そんなおぞましい行いを簡単な話だと語ってしまうコイツは、正真正銘の、悪鬼なのだと。

実際、行いだけを見れば、それはマンイーターがしたことの、何倍も簡単だ。
鍛え上げた誘惑技術や口車によるものではなく、魔法の咆哮による強制での狂化。
既に狂乱していた幼き心の背を押すだけだったのだから、実に簡単だった。
しかし簡単ながらも、果たして、真っ当な心を持ったものにこのような非道が行えるだろうか。
壊れた心を更に壊す。狂った心を更に狂わす。
今のハムライガーは死んでいないだけで、その精神はどこまでも崩壊しきっていた。

「ブリーダーさん! やった、やったよ、追手の悪い人間を倒したよ! あ、でもこいつ、マンイーターさんに似ているね、ね!」
「ああ、よくやったな、ハムライガー。けど、マンイーターさんは死んだんだろ?
 そいつは偽物だよ。お前を騙そうとしている悪い、悪い、偽物さ。人間の女が化けた偽物なんだよ」
「そっか、偽物なんだね! マンイーターさんを騙るなんて酷いよ! 死ね、死ね、死んじゃえ!」

馬乗りになったまま、ハムライガーはマンイーターに爪を振り下ろし、その喉元に牙を食い込ませる。
マンイーターが悲鳴をあげようが、ハムライガーの耳には入らない。
彼にはもう、ブリーダーの声しか聞こえないから。
ブリーダーに扮したギリメカラの声しか聞こえないから。

「いやあああああああああ! 止めて、止めてよ! ほら、そのくりんくりんとしたお目目を見開いてよく見なさいよ!?
 アイツは悪魔よ!? てか象よ!? これっぽっちも人間じゃないじゃない!」
「ブリーダーさんを悪魔みたいだなんて言うなああ! ブリーダーさんは、ブリーダーさんは悪くないんだ!
 拷問されて仕方なくボクの誕生日を聞き出されただけなんだ! あんな、あんな、悪魔みたいな人間たちとは違うんだ!」

もしかしたら、いつか。いつかハムライガーは救われたのかもしれない。
望んだ未来のとおりに、殺して、殺して、殺し尽くして、ブリーダーの元へと帰れたのなら。
それでもブリーダーが暖かく迎え入れてくれてたなら。彼は報われ、狂気からも解放され、長き時を経て心の傷も癒されたかもしれない。
だけど。今となってはそれこそ夢のまた夢だ。
ハムライガーは、望んでいた未来を“通りすぎてしまった”。
混乱により狂乱を加速された彼は、行き着くところまで行き着いてしまったのだ。
即ち、夢の終わり。悪夢の終点。
マンイーターが設定したそれは、全てのモンスターを殺しつくし、家へと帰り着くというエンディング。

ギリメカラにはハムライガーがどうマンイーターにたぶらかされたのかは分からなかった。
だが、ハムライガーがどうすれば止まるのかだけは理解していた。
何故かは分からないが、ハムライガーはこの殺し合いに乗って、最後の一匹になろうとしている。
なら、悪魔らしく、“その願いを叶えてやればいい”。
パニックボイスにより混乱したハムライガーに、古のギリメカラならではの幻覚を操る力を駆使しながら、悪魔は囁いた。
もうよい、終わったのだと。おヌシが、ユーが勝者だと。
倒れ伏せるギリメカラ、始まりの場にいたモンスターたち、称えるモリー、それら偽りの記憶を裏付けるかのように展開される幻。
狂乱し、混乱していたハムライガーは、それをフラッシュバックとして受け入れた。
受け入れたなら、そこにはいなければならない存在があった。

――ブリーダーさん……、ブリーダーさん?

頑張った、頑張ったんだ。
心も、身体も、痛くて、苦しくて、血を流していて、涙して、殺して殺して殺し尽くしたんだ。
そこにブリーダーさんがいなくちゃいけない。
ブリーダーさんが迎えてくれなくちゃいけない。
全てを殺し尽くしたのなら、そう、こうして、ボクを迎えてくれたこの人が、ブリーダーさんで、なくちゃならない。

――おかえり、ハムライガー

ああ……

――ただいま、ブリーダーさん……

その一言に、ハムライガーは悪夢の終わりを受け入れた。白昼夢の始まりを受け入れた。
ギリメカラがしたことは、マンイーターに比べればなんともおざなりで力任せのものだったけど。
ハムライガーが心から望んだものだったから。彼に難なく受け入れられた。
あのサバイバルの支配人であるモリーたちが次の企画にも前回の優勝者であるハムライガーを参加させようと襲ってきたという嘘八百も疑わなかった。
守らなくちゃ。ボクがブリーダーさんを守らなくちゃ。取り戻したぬくもりを、もう二度と手放しはしない。
そのためなら。ボクは、誰だって、何度だって、殺してみせる。

「はは……、あはは。違わない、わ。ソイツは、悪魔よ。いい子ぶって、話が分かるようなふりをして。
 でも、アタシなんかの数倍は、悪魔じゃない。あー、そういうこと。アタシに追いつけたのも、その子を足にしたって、わけね。
 つくづく他人を、利用するのが、お得意じゃない……」
「おヌシにだけは言われとうないがな」
「いつか……報いを受けるわよ?」
「おヌシはそうは思ってなかろう」
「当たり前だろ、ヴァアアカ!」
「っ!? 避けろ、ハムライガー!」

息も絶え絶えながらも生にしがみつき、隙を伺っていたマンイーターが跳ね起きる。
獣姦の趣味も、逆獣姦の趣味もないが、この際贅沢は言っていられなかった。
狙ったのは悪魔のキス。
エナジードレインを察したギリメカラの命でハムライガーは大きく飛び退き事なきを得たが、それでいい。
元より手の内が読まれていることを逆用して、敢えてハムライガーに避けさせることで身体の自由を取り戻すことが狙いだったのだ。

「これで形勢逆転よ! 男に奴隷を奪われた挙句、逆に食い物にされるなんてあっていいわけないじゃない!
 だからね、ここで華麗に変身して、この恥を帳消しよ!
 ムーンライトなんちゃらメイクアーップ! 月齢? 知るかああ!」

手にしたのはブイモンを進化させた一振りの杖。
手の内を読まれているというのなら、このままでは勝てないというのなら、“変異”してしまえばいい。
人間の男どころか、悪魔のオスをも喰らい尽くす、そんな悪魔に。
噂ではどこぞの屍鬼の小娘が魔人と化して我が物顔をしているという。なら、アタシだって!

「キタキタキタキタキタアアアアア!」

マンイーターの中を万能感が支配する。
レベルアップ時、進化時にお約束な回復により、食いちぎられた腕が生え、より強く美しく進化していくのが分かる。
これなら、勝てる。
“万能”なのだ。反射できようはずがない。
マンイーターは全力で、自らの両腕をギリメカラへと叩きつけた。

「勝ったッ! クロスオーバー・モンスター闘技場完!」















結末は語るまでもない。

女の最後はあまりにもあっけなく、どこまでも皮肉に満ちたものだった。
反射。メダパニの杖。眠ったままで。ハムライガー。男。
人を呪わば穴二つ。
これまで利用してきたもの、食い物にしてきたもの全てが、マンイーターの死因に繋がった。
当然の末路だ。
ここに立つ悪魔の名前はギリメカラ。
世に名高き反射を司る邪鬼。
誠意には誠意を。
狂気には狂気を。
悪意には悪意を。
彼を敵に回すというのは、つまりはそういうことなのだ。

「……無様なものだな」

反射により砕けた腕と、ちぎれたまま在りもしない腕を、嬉々として振り下ろし続けるマンイーターを哀れにでも思ったのだろうか。
或いは、トンベリへの手向けか、ハムライガーを狂わしたことへのせめてもの贖罪か。
こおりのやいばにてマンイーターを介錯したギリメカラは独りごちた。
嘲笑ったのは今仕留めた女のことではない、自分自身だ。
もっと上手くやれたのではないか。どうしてもそう思わずにはいられない。
ああ、自らの意志でなした非道を悔いるなど悪魔らしくない。これはまるで人間のようだ。
よもやここまで人間に感化されたか……。
否。

「あの男は後悔だけはしていなかったな……」

所詮は人の身。神魔に抗う気概はあろうとも、あのサマナーも何度も過ちを犯し、その度に辛酸を嘗めた。
それでもあの男は、抗うことを止めなかった。
抗うとはそういうことなのだ。
圧倒的理不尽を前にしても、辛い失敗を経験しても、それでもと、それでもと進み続けることなのだ。

「なら、ワシも自らのなしたことの責任は取らねばならぬな。
 ワシの失態で命を落とした者たちに、せめて、元凶たる人間たちの慌てふためく姿でも捧げねば気がすまぬ」

マンイーターからふくろを回収し、マグネタイトを取り込んだ後、こおりのやいばをさっと振るう。
幽鬼を切った所で血がつくわけでもないが癖みたいなものだ。
と、ハムライガーが虚ろな目で刃の軌道を追う。

「それってトンベリさんの……」
「ああ、形見だよ」
「そっかぁ」

一瞬沈んだように顔を伏せるハムライガー。
しかし、次に顔を上げた時には、そこには満面の笑みが浮かんでいた。

「トンベリさんもきっと喜んでくれるよね!」
「……」
「あ、あれ? ボク何かおかしなこと言った?
 悲しまないで、悲しまないで、ブリーダーさん。
 ブリーダーさんが喜ぶよう頑張るから。ブリーダーさんの言うことはなんだって聞くから。
 もうわがままなんて言わないよ。ボク、もっともっといい子になるから。大きく、強くなるから。
 だから、だから、だから、ボクを、売ったりしないで、ブリーダーさん!」

ギリメカラはその笑みに答える言葉を持っていなかった。
ただ、何者をも拒絶するその腕で、できるだけ優しくハムライガーの頭を撫でた。
それだけが、ハムライガーを壊したギリメカラが与えることのできる、ほんの僅かな救いだった。



【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ 死亡】
【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ 精神崩壊】
【邪鬼ギリメカラ@真・女神転生シリーズ 反則負け】


【F-5/森/一日目/夕方】
【邪鬼ギリメカラ@女神転生シリーズ】
[状態]:疲労(小)
[装備]:こおりのやいば@ファイナルファンタジーシリーズ
[所持]:ふくろ×4 (1つだけ、使用済みのわざマシン50『あくむ』が入っている)
    MPSマシンガン&ショットシェル(70/100)@真・女神転生  メダパニの杖@ドラゴンクエストシリーズ(3/5)
[所持]:
[思考・状況]
基本:この殺し合いに反抗する
 1:みてろよあのハゲ
2:ハムライガーをはじめ、責任はとる。
 3:金の子牛が気にかかる

[備考]
オス。真・女神転生2の仕様。
そのため、初期の反射の仕組みである幻覚も使える。


【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】
[状態]:刺傷、疲労(小)、狂気(永)、PANIC、精神崩壊
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(中身無し)
[思考・状況]
基本:もうワガママななんて言わない。ブリーダーさんのためにいい子にする
 1:ブリーダーさんの言うことを聞く

[備考]
オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」
マンイーターのあくむによって、精神を追い込まれ、ギリメカラのパニックボイスでとどめを刺されました。
本来のPANICは一時的な症状ですが、マンイーターの悪夢による狂気を加速させる方向で使われたため、実質永続しています。
ギリメカラによる幻覚も合わせて、ギリメカラをブリーダーと認識して、殺し合いの先の未来の夢に囚われています。

※ホイミスライムとハムの持ち物は時間と余裕がなかったため麓に置いてきたままです。



No.61:ありがとう 投下順 No.63:心蝕
No.56:色鮮やかな結末若しくはマンイーターちゃんのパーフェクト誘惑教室 ハムライガー No.69:黒く蝕み心を染めん
No.56:色鮮やかな結末若しくはマンイーターちゃんのパーフェクト誘惑教室 幽鬼マンイーター 死亡
No.56:色鮮やかな結末若しくはマンイーターちゃんのパーフェクト誘惑教室 邪鬼ギリメカラ No.69:黒く蝕み心を染めん