wikiの編集方法についてはこちら
左メニューの編集方法についてはこちら
名前: ◆TAACIbOrYU[sage saga] 投稿日:2013/07/25(木) 23:12:10.96 ID:U3cZtNQAo [4/19]未央「藍子ちゃんにさ……」
ピィ「……ん?」
未央「能力をあげた事、ちょっと考えちゃう時があるんだよねー」
――まだ、藍子の来ていない事務所で、
――未央が突然そんなことを呟いた。
周子「なになにー? 後悔とかしてんの?」
未央「んー、まぁね……」
――俺に対しての未央の発言に、
――しかし、俺より先に周子が反応した。
――この二人は最近仲が良い。
――波長が合う、というよりは、
――共通の話題がある、という点で意気投合しているらしい。
周子「わかるわかる、どこまで介入しちゃっていいのかってちょっと悩むよね」
未央「えー、でも周子さんは全部自己責任で済むからその分好き勝手できる部分あるでしょ」
周子「自己責任だからこそ、判断をミスするわけにはいかないんじゃん」
未央「やー、でも背負ってるものが違うよ~」
――その共通の話題というのが、
――どうも、俺たち人間の理解できる範囲を遥かに超えた次元にあるっぽいようで、
――たまに発生する、現実味の感じないぶっ飛んだ会話を実に感慨深げに交わす二人を見る度に、
――いかにも少女然とした容姿とのギャップも合わさって、
――どうにも頭が痛くなる。
ピィ「……俺を置いてきぼりにしないでくれないか」
未央「あっ、ごめんごめん♪ 藍子ちゃんの話だったよね」
――発進した直後の話題を脱線させないでもらいたいものだ。
ピィ「あ、そういえば」
――と。
――せっかく元に戻りかけた話題を、また脱線させるハメになるが、
――以前から気になっていた事を思い出したので、このタイミングで聞いてみることにした。
ピィ「藍子の能力って未央があげたんだよな?」
未央「そだよー」
ピィ「じゃあ、今、未央にはその能力は無いのか?」
――『周りにいる者の心を癒し、優しい気持ちにする能力』
――藍子に備わっているその能力は、未央から与えられたものだ。
――元々は、癒しの天使である『ラファエル』……、
――未央から感じる印象に、それを連想させる物など何も無いが……。
未央「今なにか失礼なこと考えなかった?」
ピィ「……気のせいだ」
――とにかく、
――『癒しの天使』と聞いてイメージする姿と、
――実際に目の前にいる未央との間に、どれほどの乖離があろうと、
――未央が癒しの天使ラファエルであることは事実に変わりないらしい。
――となれば、
――藍子の能力は、本来は未央に備わっていたもの。
――ということになる。
未央「いや、まぁ『分け与えた』わけじゃないから、普通に私にもあるよ?」
ピィ「そうなのか?」
――の、割には、
――未央から藍子のような安らぎを感じたことは無いのだが……。
――一緒に居て落ち着くことはあるが、
――しかし、それは単純に彼女の明るい性格に起因するものだ。
――能力とは関係ない。
――未央の話しやすさ、気楽さは、
――相対する者にまるで緊張を与えず、
――そんな彼女と雑談している間の、肩肘張らない時間というのは、
――……口に出しては絶対に言わないが、
――なかなか居心地がよかったりする。
――それこそが、藍子とはまた違った、未央の魅力でもある。
未央「基本的にOFFにしてるだけで、やろうと思えばできるよ」
未央「ただ、この能力って向き不向きがあるんだよねぇ……」
未央「藍子ちゃんはもう完璧なんだけど」
未央「ほら……、私じゃん?」
ピィ「そうだな」
周子「わかる」
未央「フォローはっ!?」
――言外に、
――自分の性格には合わない能力だと、
――つまりはそういうことなのだろう。
未央「100%は発揮できないからさ、持て余してたんだよねー」
未央「そんな時に目に留まったのが藍子ちゃんよ!」
――色々と回り道をしたが、
――ここにきてようやく本題に入れそうだ。
未央「天使だからさ、色々とわかっちゃうんだ」
未央「皆が笑顔になれますように、ってお願いをする人が必ずしも心の綺麗な人とは限らない」
未央「根底に、良く思われたいって打算のある人が殆どでねー」
未央「でなければ子供か、自己心酔してる人ばっか」
未央「本気でそんなことを考えてる人はなかなかいないんだよね」
未央「でも、藍子ちゃんは違った」
未央「本気で、強い想いを持って、純粋に願っていた」
未央「皆が優しい気持ちになれますように、皆が笑顔になれますように、って」
未央「私、もう心を打たれちゃって」
未央「自分で持っていても意味のない物を、それを求めていて、なおかつ相応しいと思う人にあげようと」
未央「そう思っちゃうのも仕方ないっしょー?」
未央「だからあげたの」
未央「無責任に……、ね」
――無責任、と未央は言った。
――藍子に能力を与えた事を、
――そんな風に悩んでいたのか。
――見れば、
――周子の表情にも、何か神妙なものが浮かんでいる。
――そういえば、俺は周子の事もよく知らない。
――どうやら人ではないらしい、ということと、
――強い力を持っている、ということ、
――そして、永い時間を生きている、ということ。
――ここまでは、社長に聞いたら案外すんなり教えてもらえた。
――だが、過去の事や詳しい素性については教えてもらえなかった。
――未だに謎の方が多い周子だが、
――今の未央の話に、何かしら感じる部分があったのだろうか。
未央「だってさ、一方的じゃん?」
未央「私は藍子ちゃんの事を知ってるけど、藍子ちゃんは私を知らない」
未央「私は能力をあげた事を知ってるけど、藍子ちゃんはそれを知らない」
未央「いや、普通に会えばよかったんだけどね」
未央「でも、見てみたかったんだよ」
未央「藍子ちゃんにこの力をあげたら」
未央「世界がどう変わっていくのかを」
未央「藍子ちゃんの能力が私と違って常時型(パッシブ)なのもそのせいだったり」
未央「知らない内に手に入れた力なんてコントロールできないでしょ?」
未央「割と強力な力だけど、地味だからバレないと思って」
未央「ま、結局バレちゃったからここに来たんだけどね」
未央「迂闊だったなー、まさか藍子ちゃんの方からカースに接近するなんて」
未央「ああ、でも、あれはミカエルが――」
未央「……ううん、何でもない」
未央「で、その常時型(パッシブ)なのが問題で」
未央「いわば藍子ちゃんを能力垂れ流し状態にしてしまったワケですよ」
ピィ「垂れ流しって……」
――もう少し言い方という物があるんじゃないかと思ったが、
――しかし、同時にしっくり来る表現だとも感じてしまったので文句は言えない。
未央「反省している部分と言いますか」
未央「あの」
未央「藍子ちゃんは、凄くいい子で」
未央「優しいし、可愛いし、笑顔が素敵だし」
未央「一緒にいたいな、って思う子で」
未央「みんなも藍子ちゃんの事大好きだと思う」
未央「でもさ」
未央「藍子ちゃんも、周りのみんなも知らなかったけど」
未央「藍子ちゃんからは常時癒しオーラが振りまかれているわけで」
未央「当然、藍子ちゃんの側にいれば落ち着くわけで」
未央「そりゃあ、みんな藍子ちゃんに良い印象を持つわけで」
未央「それってさ……」
未央「藍子ちゃんの事が好きなんじゃなくて」
未央「みんな、藍子ちゃんの『能力』が好きなんじゃ無いか、って」
ピィ「それは違う」
未央「え……?」
――未央は、
――『周りを癒し、優しい気持ちにする』能力が、
――常時藍子から発生しているために、
――彼女に安らぎを求め、
――周りに人が集まってくるのではないか。
――皆、藍子自身の魅力では無く、
――ただ、藍子の能力に惹かれているだけで、
――藍子本人を見ている訳では無いのではないか。
――もしそうなら、
――それは、自分のせいなのではないか。
――と、言いたいのだろう。
――だが、それは違う。
ピィ「藍子はさ」
ピィ「よく、疲れてる時に肩を揉んでくれるんだ」
ピィ「飲み物が無くなったら、何も言わなくても注いでくれるし」
ピィ「ちょっと用事を頼んでも、嫌な顔一つしないで、優しく返事をしてくれる」
ピィ「人が困っていたら必ず声をかけて手伝ってあげてるし」
ピィ「藍子の口から出てくるのは、どんな時も労いの言葉や感謝の言葉で」
ピィ「人の悪口を言っている所なんて一度も見たこと無い」
ピィ「そして何より、いつも笑顔だ」
ピィ「今のは全部、能力とは関係ない、藍子自身の魅力だろ?」
ピィ「俺達はみんな、そんな藍子の事が好きなんだ」
ピィ「確かにあの能力は藍子を好きになるきっかけになるかもしれない」
ピィ「でも、もし藍子自身に何の魅力も無ければ、きっと皆離れていくよ」
ピィ「大げさに考えすぎだ」
ピィ「能力なんていっても大したことは無い」
ピィ「藍子に沢山ある素敵な部分のうちの一つ」
ピィ「その程度のもんさ」
未央「あぁ……、まったく」
未央「これだから人間が好きなんだ……」
周子「そうだね、本当そう」
――いや、そんな大層なことを言ったつもりは無かった。
――確かに全部本音ではあるが、
――「今ちょっと初めてプロデューサーっぽかったかも」
――みたいなくだらないことを考えるレベルには、
――軽い気持ちで喋っていたのに対し、
――何やら予想以上の未央の真面目な反応に、
――若干照れてしまう。
――周子も未央に同調しているし、
――だんだん恥ずかしくなってきた。
未央「ピィさんっ!」
ピィ「な、何だ?」
未央「いいとこあんじゃん☆ ちょっと見なおしたぞっ♪」
ピィ「む……、そうか?」
――どうやら未央の真面目モードは終了したらしく、
――すっかりいつもの明るい彼女に戻っていた。
周子「いやー、前からあたしは見どころがある男だと思ってたよ」
未央「えー? 本当にそう思ってる?」
ピィ「おい」
周子「ま、でなけりゃあの社長が声を掛けたりなんかしないからね」
ピィ「……なんだよ二人して気持ち悪いな、そんなに褒めても何も出ないぞ」
周子「えー、ピィさんあたしお腹すいたーん♪」
未央「私も私もーっ♪」
ピィ「家に帰って家で食え!」
周子「いいじゃんいいじゃん、お昼食べに行こうよ4人でさ」
未央「あ、そっか忘れてた」
ピィ「あぁ!? まだ増えるのか!?」
未央「藍子ちゃーん! 隠れてないで出ておいでよーっ♪」
――え、何? 藍子?
――隠れてる?
――どういうことだ?
――混乱する俺をよそに、
――未央と周子の二人がなおも囃し立てると、
――事務所のドアが、ガチャリと遠慮がちに開けられ、
藍子「あ、あの……、おは、ょぅございます……」
――顔を真赤にした藍子が、おずおずと現れた。
ピィ「な、何で……?」
藍子「あの、隠れるつもりは無かったんですけど……」
藍子「ドアに手を掛けた瞬間に私の名前が聞こえて」
藍子「何となく気になってしまって、その……」
ピィ「い、いつから……?」
未央「最初からだよねー?」
周子「ねー?」
藍子「うぅ……」
――こいつらの仕業か。
周子「藍子ちゃんが来た瞬間に話を切り出してたよね」
未央「いやぁ、趣味が悪いかなーとは思ったんだけどね?」
ピィ「悪いってレベルじゃねーよっ!!」
藍子「あ、あのっ、ピィさん!」
ピィ「な、何だ藍子?」
藍子「えっと……、あの……」
藍子「ぁ、ありがとう、ございます……」
ピィ「ありがとう……、ってなに……が……」
――自分で言ってたことを思い出す。
――めっちゃ褒めた。
――それを全部藍子に聞かれてた。
――先ほどの比ではない恥ずかしさが、
――カァっと押し寄せてくる。
――顔が真っ赤だということは、
――聞いていた方の藍子も、
――相当恥ずかしかったに違いない。
――俺と藍子の間に気まずい沈黙が流れる。
――そんな俺たちを、ニヤニヤと笑いながら、
――さっきと同じセリフを、別のニュアンスで用いて、
――未央と周子がからかう。
未央「まったく、これだから人間が好き♪」
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。