4スレ目>>155~>>182

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4スレ目>>155~>>182」(2016/10/28 (金) 01:54:17) の最新版変更点

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<p>小日向美穂は普通の少女である。</p> <p><br /> 実はあの日、目覚めた能力者の一人で、</p> <p>日夜秘密結社と戦ってるとか。</p> <p><br /> 実は宇宙から来た異星人で、</p> <p>地上を侵略するために活動しているだとか。</p> <p><br /> 実は地下帝国の技術者で、</p> <p>マッドなアイテムやロボットをクリエイトしているだとか。</p> <p><br /> 実は魔界から来た悪魔で、</p> <p>悪意と呪いをばら撒いているだとか。</p> <p><br /> そのような設定はない。</p> <p>取り立てて、ごく普通、一般的な、</p> <p>現代の、地上に住む、能力を持たない、人間の、女子高生であった。</p> <p><br /> 卯月「さっきの授業難しくなかった?」</p> <p>美穂「難しかったねー、茜ちゃんは・・・・・・。」</p> <p>茜「・・・・・・。」 プスプス</p> <p>美穂「だ、大丈夫?」</p> <p>卯月「煙出てるね。」</p> <p>茜「え、Xが少なくなるとYが増えて、そこにZとnがやってきて・・・・・・。」</p> <p>茜「X・・・・・・Y・・・・・XとYの関係・・・・・あれ、Xが攻めでYが受け?」</p> <p>美穂「茜ちゃん、その数学はたぶん戻って来れなくなる奴だからやめた方が。」</p> <p>卯月「Xはヘタレ攻めだよね!」</p> <p>美穂「卯月ちゃんも乗らないで!」</p> <p><br /> ――私達の日常は平和だ。</p> <p><br /> 卯月「そう言えば、」</p> <p>卯月「カースに襲われたって街は大丈夫なのかな?」</p> <p>美穂「今朝のニュースでもやってたけど、救出作戦難航してるみたい」</p> <p>卯月「心配だね。」</p> <p>美穂「うん。」</p> <p>茜「きっと大丈夫だよ!」</p> <p>美穂「茜ちゃん?」</p> <p>茜「ヒーローはもちろんだけど、他にも世界平和のために活動してる人たちはたくさん居ますから!(亜子の事です)」</p> <p>茜「最後に勝つのは、正義の味方です!」</p> <p>美穂「・・・・・・うん、きっとそうだよね!」</p> <p>美穂「GDFとか歌姫さんとか死神さんも居るし!」</p> <p>卯月「私達が明日、能力に目覚めてババンと活躍しちゃうかもしれないし!」</p> <p>美穂「それはどうかな・・・・・・?できたらいいなとは思うけど」</p> <p>卯月「ウサミン、ウサミン、メルヘンチェン~ジ♪」 シュバッ</p> <p>茜「安部菜々さんだね!ポーズそっくり!」</p> <p>卯月「えへへ、いつか私が活躍する時の為に練習したんだー。」</p> <p>美穂「菜々ちゃん、私達と同じ年でヒーローアイドルやってるなんてすごいよね!」</p> <p><br /> ――世間は騒がしいけど、私の周りの世界は相変らず穏やかで、</p> <p>――こんな私も平穏無事に過ごしている</p> <p> </p> <p>――だけどその平和は</p> <p><br /> ――</p> <p>テレビ『こんばんは』</p> <p>テレビ『ニュースの時間です。』</p> <p>テレビ『本日も大量発生したカースに占拠された街の様子をお送りいたします。』</p> <p>テレビ『今映っていますのは、隣街から撮影した映像です。』</p> <p>テレビ『幾つかの機関のヒーローたちが乗り込み、カースを討伐しているようですが、』</p> <p>テレビ『現在もカースは街に溢れているようです。』</p> <p>テレビ『GDFはこの件に関して・・・・・・</p> <p><br /> 美穂「・・・・・・。」</p> <p><br /> ――その平和は、私たちを守ってくれる誰かが、</p> <p>――私たちの代わりに戦ってくれるから作られていて、</p> <p>――そしてきっと、その裏では誰かが傷ついてて・・・・・・</p> <p><br /> ――そんな風に考えると</p> <p>――この平穏は、いとも簡単に壊れてしまうんじゃないか</p> <p>――なんて・・・・・・思ってしまうことがある。</p> <p><br /> ――それでもいつまでも平和が続くように信じたくて</p> <p><br /> 美穂(私にできることはないのかな。)</p> <p><br /> 美穂(強くなれたらいいのにな。)</p> <p><br /> 美穂(みんなを守れるヒーローみたいに。)</p> <p><br /> 美穂(私もなれならな。)</p> <p><br /> ――</p> <p>――</p> <p>――</p> <p><br /> 美穂の住む街には「万年桜」と呼ばれる、</p> <p>名前の通り、年がら年中、けっして枯れることなく</p> <p>咲き続ける桜の木がある。</p> <p>”あの日”からその桜は、</p> <p>春も、夏も、秋も、冬も、</p> <p>晴れの日も、曇りの日も、雨の日も、風の日も、</p> <p>ずっと、ずっと咲き誇っているのだ。</p> <p><br /> その「万年桜」のある公園に、美穂は来ていた。</p> <p>本日は日曜日。</p> <p>学校は休み。</p> <p>天気は晴れ。</p> <p><br /> すなわち絶好の日向ぼっこ日和なり。</p> <p><br /> 「万年桜」の近くでは、数人の子供達が遊んでいた。</p> <p>すぐそばでは奥様方が談笑している。</p> <p>よくある普通の公園の風景だ。</p> <p><br /> 一年中咲く桜なんてあれば大いに賑わいそうなものだが、</p> <p>実際は、それほど人気のスポットではなかった。</p> <p><br /> いや、「あの日」からしばらくは観光名所になるのではと、</p> <p>思われるほどに賑わっていたのだが、</p> <p>宇宙産の機械だとか、異世界の魔法だとか、特別な能力だとかが珍しくなくなってくると、</p> <p>「一年中咲いてる桜?なんか地味。」</p> <p>と言う理由で飽きられてしまい、</p> <p>気がつけば「万年桜」の公園は、普通の公園の有り様に戻っていた。</p> <p><br /> それでも</p> <p>いや、だからこそ、</p> <p>美穂はこの場所が気に入っていた。</p> <p>一年中うららかであたたかな香りが漂う、</p> <p>この適度に静かな公園の、傍らにあるベンチで、</p> <p>日向ぼっこをするのが、彼女の週末の主な過ごし方になっていた。</p> <p> </p> <p>そんな訳で、本日も、この公園にある特等席にやってきたのだが、</p> <p>「すー・・・・・・・すー・・・・・・・」</p> <p>どうやら今日は先客が居るようであった。</p> <p><br /> 美穂「寝ちゃってるのかな?」</p> <p>「うーん・・・・・・・おじいちゃん・・・・・・・」</p> <p><br /> その少女は頭にスカーフを巻いていて、</p> <p>背に5本の筒の様な袋を背負った、</p> <p>どこか桜が似合う女の子であった。</p> <p>「・・・・・・めんいんぶらっくは・・・・・・・いかすみうどんのことじゃ・・・・・・ないよ・・・・・・・・」</p> <p>「すー・・・・・・すー・・・・・・」</p> <p><br /> 美穂「ふふっ、どんな夢見てるのかな?」</p> <p>きっと彼女も、この場所の暖かさに居心地がよくなり、</p> <p>つい、眠くなってしまったのだろう。</p> <p>美穂は仲間を見つけたような気分で、少し嬉しかった。</p> <p><br /> 美穂「起こしちゃったら悪いよね。」</p> <p>少女を起こさないように、美穂はその場を離れることにした。</p> <p><br /> ――</p> <p>――</p> <p>――</p> <p><br /> 美穂は公園を出て、駅前の方に歩き始める。</p> <p>今日は日向ぼっこの予定を変えて、お買い物にでも行くことにしよう。</p> <p>友達を誘うのもいいかもしれない。</p> <p>卯月ちゃんは、予定あいてるかな?</p> <p>そんな事を考えながら、しばらく進んだ先で</p> <p>彼女は出会うことになる。</p> <p><br /> 彼女の平和を侵すその存在に。</p> <p><br /> ――</p> <p><br /> 美穂(アレは?)</p> <p><br /> はじめは遠くから、少しずつ迫ってくるそれが何かはわからなかった。</p> <p>そして、甘い香りと共にやってきたそれが、</p> <p>”カース”だと気づいた頃には</p> <p>何もかもが遅かった。</p> <p><br /> 『アゲル・・・・・・アゲル』</p> <p><br /> そのカースの、まるで蜘蛛のようなシルエットを認識した途端、</p> <p>美穂は全身から力が抜け、その場にへたり込んでしまった。</p> <p>他に居た通行人達もみな、同じ様に倒れこんでしまう。</p> <p><br /> カースは、倒れ伏した通行者の一人に近づくと、</p> <p>体から黒い糸の様な影を吐き出して、</p> <p>器用に捕らえて、自らの中に引きずり込んでいった。</p> <p><br /> 「た、助け・・・・・・」</p> <p>『イザナッテ・・・アゲル・・・・・・』</p> <p>『ノミコンデ・・・アゲル・・・・・・』</p> <p>『タベテ・・・アゲル・・・・・・』</p> <p>『クスクスクスクスクス!!』</p> <p><br /> 美穂も含めて、周囲に居る人間は誰も逃げようとしない。</p> <p><br /> 美穂「なん・・・・・・で・・・?」</p> <p>美穂(逃げないとダメなのに・・・)</p> <p>美穂(体が動かない!)</p> <p><br /> 逃げないのではなく、逃げられない。</p> <p>『色欲』の大蜘蛛の持つ性質は『捕らえること』</p> <p>そのカースが発する毒の如き”色気”に飲まれれば、</p> <p>その時点で体の自由は奪われ、逃げることは許されず、</p> <p>ゆっくりと影に飲み込まれるだけであった。</p> <p><br /> 大蜘蛛は時間をかけながら、</p> <p>一人一人順番に、周りの人間を飲み込んでいき、</p> <p>そしてようやく、美穂の番になった。</p> <p>『アナタモ・・・・・・ワタシノナカニ・・・・・・』</p> <p>『クスクスクスクス!』</p> <p>蜘蛛が近づいてくる。</p> <p><br /> 美穂(逃げ・・・・・・ないと・・・・・・)</p> <p>そう思いながら足を動かそうとしても、体は言う事を聞かない。</p> <p>美穂「うぅ・・・ああっ・・・・・・。」</p> <p>逃げることも、叫ぶこともできない。</p> <p><br /> 蜘蛛が影の糸を繰り出す。</p> <p>美穂(いや・・・・・・いや・・・・・・)</p> <p>それは美穂の足元まで伸びてきて・・・・・・</p> <p><br /> 突如、上から振ってきた何かがその影に突き刺さった。</p> <p><br /> 『ギャァアア!?』</p> <p>慌てて蜘蛛は自分の体に糸を引っ込める。</p> <p><br /> 美穂(たすかった・・・?)</p> <p>美穂(なにが落ちてきて・・・・・・)</p> <p>美穂(・・・・・・かたな?)</p> <p><br /> 果たして、どういうわけか。</p> <p>美穂の目の前に突き刺さっていたのは、</p> <p>鞘に収まった一本の刀であった。</p> <p><br /> ――</p> <p>ところ変わって、うららかな万年桜の公園では。</p> <p><br /> 肇「ふわぁ」</p> <p><br /> 鬼の孫娘が目を覚まし、大きなあくびをしていた。</p> <p><br /> 肇「よく寝たなぁ・・・・・・あれ?」</p> <p><br /> 目覚めて、すぐに彼女は違和感に気づく。</p> <p><br /> 肇「一本足りない?」</p> <p>寝てる間に、背中にあった刀の数が6本から、5本に減っていた。</p> <p><br /> 肇「・・・・・・『小春日和』、またどこか行っちゃったんだ。」</p> <p><br /> 無くなった刀の名前は『小春日和』。</p> <p>刀匠、藤原一心の作り出した『鬼神の七振り』の一本。</p> <p><br /> 肇の言葉は、</p> <p>そのような大事なものを”どこかになくしてしまった”と言う意味ではない。</p> <p>本当に”勝手にどこかに行ってしまった”のだ。</p> <p><br /> 肇「『小春日和』は傲慢のカースの核が埋め込まれた、日本一、横暴な刀。」</p> <p>肇「だからプライドが高くて、人に”使われる”ことを極端に嫌う刀。」</p> <p>肇「勝手に動くのは、持ち主探しを”自分でしたい”って事だと思うけど・・・・・・・」</p> <p><br /> 鬼の孫娘は手元から離れてしまった刀に、思いを馳せる。</p> <p><br /> ――</p> <p>――</p> <p><br /> 漆黒に塗られた鞘に収まったその刀は、</p> <p>刃が隠されているその状態にも関わらず、</p> <p>どのようにしてかカースの影の糸を断ち切り、</p> <p>地面を抉って、真っ直ぐと目の前に突き刺さっていた。</p> <p><br /> その奥でカースが蠢く</p> <p>『ユルシテ・・・・・・アゲナイ』</p> <p>『アナタハワタシノナカデ・・・・・・』</p> <p>『カワイガッテアゲル・・・・・・・』</p> <p>『オカシテ、オカシテ、オカシテアゲル!』</p> <p>『クスクスクスクスクスクス!』</p> <p>カースの体から鞭の様な影の糸が、何十本も作り出される。</p> <p><br /> 美穂(私は・・・・・・)</p> <p><br /> 美穂が手を伸ばせば、目の前の刀を鞘から引き抜けるだろう。</p> <p>そのくらいの動作ならば、今の美穂でも出来る気がした。</p> <p>刀の方もまるでそれを待っているかの様に見えた。</p> <p><br /> 美穂(強くなりたい・・・・・・)</p> <p>美穂(自分を、友達を、誰かを)</p> <p>美穂「守れるだけの力が欲しい!」</p> <p><br /> 少女は、目の前の刀の柄を掴んだ。</p> <p><br /> そうして、その妖刀が姿を顕にする。</p> <p><br /> 引き抜かれたその刀は、</p> <p>見た目はごく普通の日本刀であった。</p> <p>燃え盛るような『怒り』も、荒々しい『野性味』も感じさせない、</p> <p>それでもあえて形容するならば「静けさ」であろう。</p> <p>ただ静かに、</p> <p>だが確かに、</p> <p>その存在を主張する。</p> <p>まるでその姿こそが、誇り高き「刀本来の姿」であるのだ。と言うかのように。</p> <p><br /> 美穂「あっ?!」</p> <p>そうして美穂の中に刀から”何か”が流れ込んでくる。</p> <p> </p> <p>『クスクスクスクスクス!!』</p> <p>そうしてる間にも、四方八方からカースの糸が襲い掛かる!</p> <p><br /> 『クスクス・・・・・・?』</p> <p><br /> カースが気がつけばその糸は</p> <p>美穂に届く前に全て、綺麗に切り落とされていた。</p> <p>『ンァアアッ!?』</p> <p><br /> 美穂「・・・・・・・」</p> <p><br /> 美穂「ふはっ」</p> <p><br /> 刀を構えた少女は、どこか獰猛さを感じさせる笑みを浮かべる。</p> <p><br /> ――馴染む</p> <p> </p> <p>美穂「ふふふふっ!」</p> <p><br /> ――馴染む</p> <p><br /> 美穂「あはははははっ!」</p> <p><br /> ――この”身体”は実に馴染む</p> <p><br /> 美穂「あ~はっはっはっはっはっ!!」</p> <p><br /> ――ついに</p> <p>――ついに”私”は</p> <p>――最高の”所有者”に出会えたのだ</p> <p><br /> ――</p> <p><br /> 肇「『小春日和』はおじいちゃんの作った七振りの中でも、最も我が強い刀。」</p> <p><br /> 肇「『刀が人に使われる』ことを極端に嫌っていて、」</p> <p><br /> 肇「むしろ逆に、」</p> <p><br /> 肇「『刀が人を使う』ことを良しとする。」</p> <p><br /> 肇「そのために、刀が所有者の肉体、精神、人格を支配して、制御しようとする。」</p> <p><br /> 肇「だから日本一、横暴な刀。」</p> <p><br /> 肇「どこかで迷惑かけてなければいいけど・・・・・・。」</p> <p> </p> <p>――</p> <p><br /> 美穂「は~はっはっはっはっはっは!!」</p> <p>少女は高らかに笑う。</p> <p><br /> ――体つきは華奢だが、問題はない</p> <p>――肉体も、刃も、負の念を帯びて、幾らでも強くなれる</p> <p>――必要なのは精神だ</p> <p>――純粋に『誰かを守るヒーローの様になりたい』と言う意思</p> <p>――その意思は”私の人格”として”使う”のに丁度良い</p> <p><br /> 美穂「私は・・・・・・」</p> <p><br /> ――”私”は小日向美穂のヒーローになりたいと言う意思</p> <p>――そして彼女が思い描くヒーロー像を使って</p> <p>――妖刀『小春日和』により作り上げられた人格だ</p> <p>――故に小日向美穂でありながら小日向美穂ではなく、</p> <p>――『小春日和』でありながら、『小春日和』でない。</p> <p>――ならば、新しく名前が必要だろう</p> <p> </p> <p>美穂「私は!『ひなたん星人』ナリ!!」</p> <p><br /> 小日向美穂のヒーロー像から作られたその人格は、自信満々に名乗り上げた。</p> <p> </p> <p>美穂「この街はまるごとつるっと!」</p> <p><br /> 美穂「ぜ~んぶ!私のものひなたっ☆」キラッ</p> <p><br /> さらにチャーミングなポーズを決めて、口上を続ける少女。</p> <p><br /> そこに、カースの足が少女を踏み潰そうと襲い掛かる。</p> <p>『クスクスクスクス!』</p> <p><br /> 彼女はそれを飛び上がってかわした。</p> <p>そしてそのままカースの頭上に着地する。</p> <p>『エエッ!?』</p> <p>カースが驚くのも仕方ない。</p> <p>それはただの人間の少女にはあり得ない跳躍。</p> <p><br /> 美穂「むぅー、ヒーローの前口上に返事もしないで、」</p> <p>美穂「すぐに攻撃するなんて失礼なカースナリ」</p> <p>美穂「そんな悪い子は♪私がお仕置きしちゃうぞひなたっ☆」</p> <p> </p> <p>頭上に立つ少女を振り落とそうと、</p> <p>カースは体を大きく揺さぶるが、</p> <p>彼女は少しも慌てず、飛び上がると</p> <p>バランスを崩さず、綺麗に地面に着地する。</p> <p><br /> 美穂「ひなたん星人の秘密☆その1!」</p> <p>美穂「遠い宇宙の果てからやって来たひなたんは、」</p> <p>美穂「重力を自在に操ることができる!ひなたっ☆」</p> <p><br /> 美穂「そして!」</p> <p>『小春日和』を構える少女。</p> <p>目の前のカースは、前足を振り上げている。</p> <p><br /> 美穂「ひなたん星人の秘密☆その2!」</p> <p>美穂「この星の精霊に選ばれたひなたんは、」</p> <p>美穂「不浄の存在を愛と正義のパワーで浄化することができるナリ!」</p> <p><br /> 美穂「食らえ!」</p> <p>美穂「ラブリージャスティスひなたんビーム!」</p> <p><br /> 『キャアアアアッ!』</p> <p><br /> 見事な”袈裟切り”であった。</p> <p>カースの前足二本が同時に切り落とされる。</p> <p><br /> 妖刀『小春日和』は、その潜在能力を発揮するために、</p> <p>所有者の肉体の動作を刀自体が制御し、</p> <p>さらに刀に溜め込まれた負のエネルギーが、その力を増幅して補う。</p> <p>これによって所有者は、どんなにか弱い人間でも、</p> <p>日本一の剣豪と同等の技術、そして超人的な身体能力を発揮する事ができるのだ。</p> <p><br /> なお重力制御能力だとか、愛と正義の浄化能力は一切関係ない。</p> <p> </p> <p>足を切り落とされて、姿勢を崩したカースは前方に転倒する。</p> <p><br /> 美穂「ひなたん星人の秘密☆その3」</p> <p>美穂「天からの使者に授かった、この千里眼!」</p> <p>美穂「あなたの核の位置もまるっとお見通しひなたっ☆」</p> <p>美穂「きっとそのお腹の中にあるナリ☆」</p> <p><br /> 呪いの刀に埋め込まれた核の、共鳴によって、</p> <p>『鬼神の七振り』の所有者は、カースの核の位置がなんとなくわかる。</p> <p>当然だが、彼女に千里眼のような能力はない。</p> <p><br /> 転倒したカースの足の再生が終わる前に、</p> <p>少女は刀を振りぬいて、その腹を裂く。</p> <p>『キャァ・・・アアアア』</p> <p><br /> その時、彼女のアホ毛が揺れ動いた。</p> <p><br /> 美穂「むむっ、レーダーが生命反応をキャッチしたナリ」</p> <p><br /> 呪いの刀が、カースの内部に居る人間の負の感情を感知したのだろう。</p> <p>もちろん、彼女にレーダーなんて搭載されてない。</p> <p> </p> <p>切り裂いた大蜘蛛の腹を横に大きく広げ、</p> <p>少女はするりとその中に入り込む。</p> <p><br /> 蜘蛛の内部には、ドーム状の空間になっており、</p> <p>泥の肉壁には、蜘蛛に取り込まれた人間が</p> <p>まだ生かされた状態で埋め込まれていた。</p> <p><br /> 美穂「・・・・・・今助けるからね」</p> <p><br /> 少女は刀を、空間の中心に宙吊りにされている桃色の核に向ける。</p> <p>泥の壁から何百本もの触手が産まれる。</p> <p>『コロシテ・・・・・・アゲル』</p> <p>それらは一斉に彼女に向かって襲い掛かってきた。</p> <p><br /> 美穂「ひなたん星人の秘密!その・・・・・・幾つだっけ?」</p> <p>美穂「まあいいひなたっ!」</p> <p>美穂「この刀は、人の為に作られた呪いの刀『小春日和』!」</p> <p>美穂「斬ったものや周囲の感情から負のエネルギーを吸い取って、」</p> <p>美穂「自分のものにする、『傲慢』なる刀ナリ!」</p> <p><br /> 日本一、横暴な刀はこの空間に満ちるあらゆる負の感情を、</p> <p>己のエネルギーに変えてゆく。</p> <p>美穂の体から黄色いオーラが迸る。</p> <p>美穂「はぁああ!!」</p> <p><br /> 少女は襲い掛かってくる触手を全て薙ぎ払いながら、突き進み、</p> <p>そして、核に向けて刀を振り上げる。</p> <p><br /> 美穂「でこぽぉんんっ!!!」</p> <p><br /> 桃色の核が砕かれる</p> <p><br /> ――</p> <p><br /> 『ンァアアアアアアッ!!???』</p> <p><br /> 核の破壊によって、</p> <p>大蜘蛛の体は泥の様に崩れ、じょじょに溶けていく。</p> <p>そうして最後は何も無かったかのように、消失した。</p> <p><br /> その場には倒れ伏す人々と</p> <p>刀を持った少女が残される。</p> <p><br /> 美穂「は~はっはっはっはっは!!」</p> <p><br /> カースに勝利した少女が高らかに笑う。</p> <p><br /> 美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人に敵うものはいないナリ!」</p> <p><br /> 美穂「今日もまるごとつるっとぜ~んぶ!守ってみせたひなたっ☆」 キャピピーン</p> <p><br /> 最後に勝利のポーズ。</p> <p><br /> そして、少女は足元に落ちてた刀の鞘を拾い上げて、</p> <p>『小春日和』を収めた。</p> <p><br /> 美穂「・・・・・・。」</p> <p><br /> 美穂「・・・・・・はっ!」</p> <p> </p> <p>美穂「い、今・・・私何をして・・・・・・。」</p> <p><br /> 刀を浄化の鞘に納めたことで、『ひなたん星人』の人格が引っ込んだ。</p> <p>今ここに立っているのは紛れも無い小日向美穂、本人そのものの人格だ。</p> <p><br /> 美穂「・・・・・・。」</p> <p><br /> 記憶が無いわけではない。</p> <p>彼女ははっきりと覚えている。</p> <p>刀のおかげで、まるでヒーローのようにカースを討伐できたも覚えているし、</p> <p>自分が何を喋っていたのかも、一語一句はっきり思い出せる。</p> <p><br /> 黙って周囲を見渡す。</p> <p>状況を見れば、どうやら先ほどまでの事は夢ではなかったようだ。</p> <p><br /> 気絶して倒れてる者も少なくはなかったが、</p> <p>目覚めている者は全て、彼女に目を向けていた。</p> <p><br /> 「ありがとう」</p> <p>誰かが言った。</p> <p>「ありがとー、ひなたん星人!」</p> <p> </p> <p>「ひなたん!ありがとう!!」</p> <p>「カッコよかったよ!ひなたん!!」</p> <p>「ひなたん星人って、ウサミン星人と関係あるの?」</p> <p>「ひなたん!ひなたん!ひなたん!」</p> <p><br /> 彼女に助けられた大勢の人から称賛の声があがる。</p> <p><br /> 美穂「は・・・・はは・・・・・・」</p> <p><br /> 美穂「はずかしぃいい!!!!」</p> <p><br /> たまらず小日向美穂はその場から逃げ出した。</p> <p>その腕に呪いの刀を抱えたまま。</p> <p><br /> 少し離れた場所からその様子を見守る者が居た。</p> <p><br /> 肇「・・・・・・。」</p> <p>肇「お爺ちゃん、『小春日和』はいい持ち主を見つけたみたい。」</p> <p>肇「彼女ならきっと、あの子を正しく使って・・・・・・いや、使われて?」</p> <p>肇「・・・・・・。」</p> <p>肇「たぶん大丈夫だよね。うん。」</p> <p>どこか自分に言い聞かせるように呟いて、鬼の少女は美穂を見送った。</p> <p><br /> ――後日</p> <p>卯月「そう言えば、最近この辺りで新しいヒーローが活躍してるらしいよ。」</p> <p>茜「へぇー、どんなヒーローなの?」</p> <p>卯月「ひなたん星人って言うんだって」</p> <p>美穂「ぶふっ!」</p> <p>卯月「ど、どうしたの美穂ちゃん!?急に吹き出したりして!?」</p> <p>美穂「な、なんでもない!!なんでもないよ!?」</p> <p><br /> あの時以来、美穂は何度かカース討伐を行っていた。</p> <p>拾った刀、『小春日和』と言うらしいが、</p> <p>あの刀を持っていると、時々、『カースを狩らなければならない。』</p> <p>と言う焦燥感に襲われる。</p> <p><br /> 美穂(カースからみんなを守れるヒーローに憧れてたから、その事はいいけれど)</p> <p><br /> 戦うために刀を抜けば、『あの人格』が出てくるのが問題なのだ。</p> <p><br /> 卯月「みんみん、うっさみーん♪」</p> <p>美穂「菜々ちゃん、って本当にすごいよね。」</p> <p>卯月「?」</p> <p>茜「あっ、そう言えば、最近美穂ちゃん木刀の袋持ってるよね!」</p> <p>卯月「剣道でも始めたの?最近物騒だもんね!」</p> <p>美穂「そ、そんなところ・・・・・・かな?あの、できれば気にしないで。」</p> <p>美穂(あの姿、友達だけには見せられない!)</p> <p><br /> ――</p> <p><br /> 刀を手放すことも考えたが、結局それはできなかった。</p> <p>と言うより一度、何処かに置き忘れて、</p> <p>家に帰ったら、『小春日和』が先に部屋に帰っていたので、</p> <p>たぶんずっと手放せないのだろう。</p> <p><br /> 今日も街の何処かで、刀を持った少女のアホ毛が揺れ動く。</p> <p><br /> 美穂「カースの気配ナリ」</p> <p><br /> 美穂「私は愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人!」</p> <p><br /> 美穂「カースはまるごとつるっとぜ~んぶ!私が倒しちゃうひなたっ☆」キラッ</p> <p><br /> 美穂「あ~はっはっはっはっはっ!!」</p> <p> </p> <p>それから、街のあっちこっちで</p> <p>「ひなたん星人」を名乗り、カースを狩る少女が目撃されてるとか。</p> <p><br /> おしまい</p> <p> </p> <p> </p> <p><br /> 小日向美穂</p> <p>所属:高校生<br /> 属性:人間<br /> 能力:特になし</p> <p>最近まで普通だった女の子。<br /> 友達を守れる力を持ったヒーローに憧れていた。<br /> 鬼神の七振りの一本『小春日和』に所有者(使われ手)として選ばれたせいで、<br /> 刀に振り回される毎日を過ごしている。</p> <p><br /> 『小春日和』</p> <p>『鬼神の七振り』の1本で、日本一、横暴な刀。<br /> 黒一色に三輪の菊が描かれた鞘には、見た目には地味でごく普通の刀が納まっている。<br /> 『傲慢』のカースの核が埋め込まれているためか、プライドが高く<br /> ”刀が人に使われる”のを良しとせず、”刀が人を使う”関係を理想とする。<br /> そのために使われ手(使い手ではない)は『小春日和』自身が選び、<br /> 所有者の中に新たな人格を作り上げて、内側から支配する。日本一、横暴な刀である所以。<br /> 所有者は刀に精神的にも肉体的にも支配され、体の動作を刀の作った人格に行わされるために、<br /> 例え刀の扱いを知らない少女でも、日本一の剣豪と同等の技術を発揮することができる。<br /> また精神的に支配されるために、他の精神攻撃をシャットアウトできるのも特徴。<br /> カースを斬れば斬るほど、刀に負のエネルギーが溜まる。<br /> これにより肉体動作を補うエネルギーは増えるので身体的にはより強くなるが、<br /> 刀の精神支配力も強まるので、浄化の鞘に収めないまま長時間の使用は望ましくない。</p> <p><br /> 『ひなたん星人』</p> <p>日本一、横暴な刀『小春日和』によって、小日向美穂の中に作られた人格。<br /> 小日向美穂の考えるヒーロー像をベースにして作られており、<br /> 美穂が『小春日和』を鞘から抜いた時のみ、ひなたん星人の人格は現れる。<br /> 「愛と正義のはにかみ侵略者」を自称。戦闘中に自らの「設定」を語るが、<br /> 彼女が語る「設定」はどれも明確には定まっておらず、ヒーローか侵略者なのかも曖昧。<br /> これでも一応はカースを狩るために作られた人格だと言う自覚はあるらしい。<br /> 彼女の人格は小日向美穂のものなのか、『小春日和』のものなのか、彼女自身よくわかっていないようだ。<br /> 趣味は高笑い、侵略、カース狩り。あと日向ぼっこ。<br /> 中でもカース狩りに関しては、刀に溜まっている負のエネルギーが尽きると人格消失さえありえるため死活問題。<br /> そのため、鞘に『小春日和』が収まってる間も、積極的に美穂をカースの下に連れ出そうと誘導する。<br /> 戦闘スタイルは負のエネルギーを肉体と刀に纏わせて、敵を「斬る」だけ。<br /> 『小春日和』の精神支配によって日本一の剣術使いと同等の能力を持つが、やはりやる事は「斬る」だけ。<br /> ちなみに彼女の人格が出ている間、小日向美穂の意識と記憶が消えたりすることはない。</p> <p><br /> 『万年桜』</p> <p>名前の通り、ずっと花が咲き続けてる桜の木。<br /> 雨で萎れようが、風で散ろうが、虫に食われようが、人が枝を切ろうが、<br /> 次の日には満開の桜を咲かせてると言う、ヤバいくらい気合入ってる木。<br /> なぜこの桜だけずっと咲き続けてるのか、原因も原理も未だに不明。<br /> この桜のある公園は一年中あたたかな空気に包まれている。</p> <p>(小日向ちゃんに外で日向ぼっこさせたかったけど、<br /> 季節を温かい時期に限定したくなかったから作った設定。)</p> <p><br /> 『大蜘蛛のカース』</p> <p>ただのやられ役の癖に妙に強い能力と高い知能を持った蜘蛛型の『色欲』のカース。<br /> 体から人間の思考力を麻痺させるフェロモンを出しており、<br /> 獲物がその毒にやられてる隙に、糸状の影を絡めて捕らえる。<br /> 捕らえた獲物は体内に貯蔵しつつ、快楽を与えてやることで、<br /> 生じた『色欲』の感情を自らのエネルギーにする。<br /> フェロモンの影響を受けない機械などにはめっぽう弱い。<br /> 美穂は『小春日和』によって精神を支配されていたために、フェロモンが効かなかった。<br /> 何者かに作られたものなのか、感情由来のカースが独自に進化したものか、詳細は不明。</p> <p> </p>

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