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とあるお嬢の中指直立(とあるおじょうのファックですわよ)~~最終話『とあるお嬢の中指直立(とあるおじょうのファックですわよ)』



物語も終わりを迎える。

これは、少女達の戦いの軌跡。

少女は戦う。勝利の美酒に酔いしれるまで。
少女は戦う。敗北という泥を啜ってまでも。

ある者は欲望のため
ある者は名誉のため
そしてある者は、誰かのため

これは、とある少女の物語

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~~とあるお嬢の中指直立(とあるおじょうのファックですわよ)~~

最終話『とあるお嬢の中指直立(とあるおじょうのファックですわよ)』

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勝利を確信したのは、膝に確かな手応えを感じたからだった。
零距離からの膝蹴りが、女王蜂の膝蹴りが。
超時空軽空母『綾鷹』DEATHの顎を撃ち貫いた感覚が確かに残っていたからだ。

「貴方は強く、聡明で。 確かにランカー1位に恥じない方でしたわ」
「それでも……。それでも、”女王”を名乗るには、些かおこがましいのではなくて?」

糸の切れた人形のように力無く崩れ落ちる、超時空軽空母『綾鷹』DEATH。
一瞥も無く彼女に背を向けたのには理由があった。
『綾鷹』に、問いに返答する意思も意識も無い事も理由の一つではあったが――――。
乱れた髪を。
乱れた服を。
乱れた呼吸を整える間も無く。
――――見知った少女が眼前に立ちふさがっていたからだ。

「おー。シノミヤ。また会ったな」
「……ええ。随分と早い再会でしたわ。鏑木さん」
「ははは。そう言うなって。それじゃ、始めようか? 最強のバカ決定戦だ」

荒い呼吸を隠そうともせずに、眼前の少女は続けた。
乱れた髪。
血で塗れた服。
ひしゃげた岡持ち。
彼女もまた、数多の傷を負っているのだろう。
――――恐らく自分よりも。

きっと、これが彼女の最後の戦い。
だから、きっと、これが彼女の最後の一撃。
だから、私は、彼女の一撃に真正面から応えなければならない。

「ははは。流石シノミヤ。やっぱりバカだなー。 ……サンキュ」

岡持ちを握る手が。
鞘に納められた足刀が。

僅かな沈黙。
抜かれるは同時。
ぶつかり合うは一瞬。

決着もまた――――。

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傍らで眠る少女に、僅かばかりに頭を下げる。
気を失っているのだろう。
だが、その顔は満足そうだ。
見入る気持ちを邪魔するかのようにかけられた声は、酷く、

「緒子…………?」

酷く、懐かしく感じられた。


「え……緒子? どうして……?」
「えー、えー。 緒子ですわよー。 緒子ちゃんですわよー」

弾む心を抑え、冷静ぶろうとする自分が、今は怨めしい。
本当は――――。

「まったく。 いつの間にかどこかに行ってるだなんて。 ファックですわ、マジファックですわ」
「あ、あはは……。お、緒子、怒ってる?」
「激おこですわ。全く」

――――本当は、泣きそうな位に嬉しいのに。

「緒子……。ただいま」
「う”…………」

全く。
こいつは。
可愛い顔して。
女の子みたいな顔して。
でも、強くて。
そこはやっぱり男の子で。
いつの間にかドアをノックしてきて。
いつの間にか心に入り込んできて。
トランプが強くて。
トランプが楽しくて。
一緒に居ると楽しくて。
それでも、一緒に居たいと感じさせて。
それでも――――。

「……約束しましたものね。”守る”って」
「ふふ……。それじゃ、帰りますわよ。もう一つの約束……私達と天奈さん、3人でおにぎりを食べるんでしょう?」
「…………うん!」

そういうと少年は。
子犬のような笑顔で手を差し出してきた。

「……なんですの?」
「えへへ。手、繋いで帰ろう?」
「ふぇっ!? な、何言ってますの!?」
「……だめ?」

お願いだから。
お願いだから、そんな捨て犬のような目で見ないで欲しい。

「……急にそんなこと言われても、あ、いや、ダメって訳では無いのですがそれでも……」
「ふふふ……えいっ!」

胸の前で弄んでいた指を強引に掴まれる。
少年の、その見た目には似つかわしくない強引さで。

「ふぇえっ!」
「嫌だったら、振りほどいてもいいからね」

卑怯だ。
この少年は卑怯だ。
答えなど、分かりきっているくせに。

熱い。
顔がやけに熱い。
こんな顔、見られたくない。
だから。
だから、ふいに投げかけられた言葉は、冷水で顔を洗ったみたいに頭をスッキリさせてくれた。

「せんせー。こっちも手、つなぎますー?」
「この戦いが終わったらね」

ランカー2位。アン・ラクシー。
かつて、緒子に敗北を植え付け。
かつて、緒子の左足を破壊した女医。

「どうやら勝ち残ってるのは私達だけみたいだからね。ラストバトルだ」

震える。
手が震える。
勝てなかった。
勝つことが出来なかった。

「……緒子」

強く。
繋いだ手が、強く握られるのを感じる。
そうだ、今は違う。
今は――――2人だから。


繋がれた手が解かれ。
硬く握られた拳から、真っ直ぐに中指がそそり立つ。
そして、その手を包むように、少年の手もまた、ゆっくりと中指が――――。


これが紫ノ宮 緒子の最後の試合
これが紫ノ宮 緒子の最後の戦い

これが最後の――――

「ファックですわよ!」


~~これは、とある少女の物語~~
~~これは、とある少女と少年の物語~~

<完>