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Wire-puller


いつもなら閑散とした時間も近づいた公園に出来た列。
その最前線ではリベンジにやってきた天王星ちゃん、その後襲いかかってきた墓森アラシ、鏑木涼子の三人との戦闘を終えた数胴兵香が握手会の準備をしていた。
並んでいるのは操女がばらまいた握手券で集まったファンたちである。
時間にはまだ早いが、待ちきれずに来た者たちである。

「どうしてボクがアイドルの真似事を…」
作業をしながら不満げにブツブツとつぶやく兵香
「ファンからプレゼントをもらっているのですから還元するのは当たり前じゃないですか」
「それはそうだけど」
「そうでしょうそうでしょう」
それでも釈然としない様子の兵香に操女が更にいう。

「それでは、私はしばらくゆずのパソコンを借りてこの場を離れますのであとはよろしくお願いしますね」
「えっ…は、はいわかりました」
「お、おい、キミは何処へ行く気なんだよ」
行き先もつけずにどこかへ向かう操女に兵香が言った。
「それはひ・み・つです♥」
悪戯っぽく笑うとなおもまだ納得していない兵香を無視して、操女は握手会の会場から離れていった。


◆◆◆◆◆◆◆


兵香達と別れた操女公園のすぐそばのカフェテラスに座っていた、
目の前には讓から借りたパソコン。

「ふう」

溜息とともに運ばれてきたコーヒーを飲む。
「もう少し積極的になっても良いと思うんですけどね」
同じ大会参加者の芦原美代子のように。
先輩のこともあるとは言え、あの調子では少年を誰かに取られてしまう。
尤も、恋愛の経験もほとんどない兵香にそれを望むのは酷だとも思うが。

「やはりこちらでいろいろセッティングしていくのが一番良いですかね」

相手に好かれなくては意味がない。
少年に兵香の魅力が伝わるようにいろいろ準備していくのが良いだろう。
一緒に何かをさせてみるのも良いし、デートスポットでデートのセッティングをしてみるのも良いだろう。
といっても主なものは大会が終了してからになるだろうが。

「それにしても…兵香も厄介な相手を好きになってしまいましたね」

そう言うと操女は目の前のパソコンの画面を見る。
そこには操女が集めた少年の情報が映し出されている。差し込んだメモリから読み込んだものだ。
その中には機密指定されているものもあり、普通の中学生が扱うような代物ではない。
操女が彼女が持つ情報網を駆使したものだ。
これは二人には今のところ見せる気はない。だからあの場を離れたのだ

大会の賞品となった少年。
それに価値を認めている様々な機関。
その理由はどうでもいい。些細なことだ。
いかなる理由であれ、乙女の恋を邪魔する輩は馬に蹴られて死んでしまえばよい。

だが、彼らが少年に興味を持ち続けている以上、大会終了後も面倒なトラブルに巻き込まれるのは確実だろう。
誰の手に渡ったとしてもそれで諦めるとは思えないからだ。
そして彼らは少年だけを狙うとも限らない。
兵香の家がが少年の家と関係があることも考慮すれば、それは考えるまでもない明白な話だ。

「そもそも、この大会が平穏無事に終わるとも限らないですしね」
主催者は落ち度のない少年を監禁し賞品にするような連中なのだから信用などできない。
そして、彼らの目的はいまいち見えてこない。
だが、何かを企んでいる可能性の方が高いと考えたほうが良いだろう。
ただ世界大会を開催することが目的というのなら少年の意志を無視して商品にする意味など薄い。
それなら高額の賞金だけで十分だ。
だあら裏があると考えた保が良いだろう

「実に気に食わない状況ですね」

別にトラブルに巻き込まれることそのものがではない。
彼女はむしろトラブルを愛しているといっても良い。
そもそも彼女自身本質的には彼らの側に近い人間だ。
ただ、自分の手から離れたところでいいようにされるというのならそれは気に食わない。
なぜならば――――

「傀儡師はあくまで裏で糸を引く人間ですからね」

トラブルは自分の思い通りにならなければならない。
主導権を握るのはあくまで自分なのだ。そうでなくてはつまらない。
誰かの掌で踊るのなんてごめんだ。
それが総合メディア研究会部長であり『傀儡師』甲藤操女の生き方なのだから。

故に策が必要だ。政府さえ動かす彼らに抗うための策が。
彼女の大切な親友のためにも。


「では、ひとまず戻りましょうか。二人も待っているでしょうし」

すでに準備も終わっているだろうし。
そして冷め始めたコーヒーを飲み干すと操女は立ち上がる。
レジで代金を支払うと傀儡師は親友たちの待つ公園に歩みを進めていった。