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『One for family,family for one』


 不幸中の幸い、という言葉はどんな時にも見つかるもので。
 ある魔人一家の隣家が既に家主が引っ越して久しい空き家であった事も、丁度その時間帯に人通りが無かった事も、どちらも幸運に分類されるだろう。
 だが、それはあくまでも不幸中の、という但し書きが付くのは冒頭の通り。
 そしてその不幸を被ったのは──────────。

 「…………あー、もう。折角の休暇だったのに」
 崩壊した家屋の中から愚痴を零しつつ、渋い表情で出て来た一人の美女。残念ながらその服装は流麗な顔立ちに似合わずボロボロになっており、更に残念な事にぎりぎりの部分は辛うじて隠れていた。
 家屋の倒壊に巻き込まれた彼女──────────より正確に言えば、彼女と家屋との激突がこの無残な惨状を生んだのだが──────────は、半ば癖になっている自らの境遇に悪態をついた。服装はともかく、身体の方に何の欠損も怪我も見られないのは流石というべきか。何しろ彼女は──────────。
 「やあ、流石は姉さん。伊達に国際魔人刑事警察機構の捜査官を勤めちゃいないね」
 崩れたブロック塀に腰を下ろしていた眼鏡の少女が、感心したように拍手を送る。
 「何処がよ? 見ての通りこてんぱんだわ…………っていうか、見てたなら加勢しなさいよ」
 「そうは言うけれど、姉妹喧嘩に他の家族が割って入るのも良くないし、闘えない子が巻き添えにならないようにもしないと」
 姉妹喧嘩。崩れ去った家屋にブロック塀、それにクレーター状に穴が開いた道路を前に、随分牧歌的な表現である。
 「止めなきゃ、と思ったけど…………あの子、強いわ」
 懐から愛用のポケットウィスキーを取り出したものの、既に中身は先程の戦闘中に飲み干してしまっていた。酔拳使いの彼女にとって武器であり生命線でもある酒だが、戦いの後では単なる嗜好品。それを切らしてしまい、彼女は軽く舌打ちした。
 「しかも、まだ本調子では無かったようだね。…………さて、どうしたものか」
考えるそぶりを見せる眼鏡の少女。だが、それがポーズに過ぎない事を酒豪の美女は知っている。
 「まぁ、あっちには可愛い可愛いぼくの妹でもあり愛弟子でもある彼女もいるし、心配はないか。こっちはこっちでやるべき事を続けよう」
 こういう時、彼女は既に行動を決めているのだ。
 軽快に地面に降り立つと、眼鏡の少女は動き出す。
 相変わらず何を考えているのか分からない、人を喰ったような性格だが──────────仮にその行動理念を尋ねれば、彼女はきっとこう答えるだろう。

 「家族は一人の為に。一人は家族の為に、さ」

                                             <了>