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世界格闘大会五日目、ラ・ピュセル&トラロック、メイド服にて公園に立つ


「ラピちんってさー、大会の優勝は狙わないの?」
「狙っていますよ。――どうしたのですか、そんな質問をして」
「いや、だってさー、ラピちんのコスモビィィーッム! ならさー?
 クエスト護衛より転校生を自分で直接狙った方が賞金だって稼げるんじゃないかなって思うじゃん?」
「その可能性もありますけれど、どちらにしろ簡単な話ではないですね」
「まあ、そっかー」

世界格闘大会四日目の全試合が終わり、選手達が思い思いの時間を過ごして明日を待つ、夜。
ラ・ピュセルが大会主催側から用意された選手用宿泊施設の一室。
時おり派手な身振りを加え、雨衣が熱く語り、設えられたソファに身を沈めながら、ラ・ピュセルが相槌をうつ。

瞑想を終えたラ・ピュセルと、部屋に遊びにきた雨衣とが、毎夜の事となった安らぎの一時を堪能していた。

「じゃあさじゃあさ、クエストの護衛ってのはどうしてやろうって思いついたの?
 ほら、もっとこうスナイパーみたいに狙った獲物をそっと尾行して、もっと有利な条件で闘うとか――」
「そうですね――大会が始まったばかりの頃は、実際に勝算を重視した試合運びを考えていましたが」
「ふんふん」
「……実は、この大会に出場する直前に、ファンだという男の子から頼まれ事をしましてね」
「おっ! 何かいい話の予感? 聞いちゃうよー!」

ソファの周りや、時にソファの上を賑やかに動きまわり話をしていた雨衣が、ラ・ピュセルの隣にちょこんと座った。
興味津々といった顔つきで上体を寄せてくる雨衣の様子に、ラ・ピュセルが相好を崩す。
風貌こそ似ていないが、体格の違う二人が身を寄せるその光景は、仲の良い姉妹を思わせるものであったかもしれない。

ガラス張りのテーブルに置かれていたティーカップで口を湿らすと、ラ・ピュセルは話を続けた。

「雨衣には以前にも話ましたが、私は母星の姫様の婿候補探しに大会参加を決めました」
「うん、覚えてるよ。――私はあんま話した事ないけど、あの無自覚系プレイボーイ君ねー。
 あははっ。学校で顔をあわせてる男の子がどこかの星の王子様になるかもなんて、凄い話だなーって思ったよ」
「……素行の方は後で厳重に調査しますが。それはまず優勝を果たしてからにしましょう。
 私の目的は優勝賞品ですから、出来る限り有利な試合運びで大会を生き延びようと考えていました。ですが」
「そこでジャーン! とファンの男の子?」
「ええ。その子の友人が近く病気の手術をすると言っていましてね。病気の友人も私のファンだという事で――、
 私が以前に地球滞在していた頃の慈善事業と、そのアニメ化がそんな……こんな縁を創るのですから不思議なものです。
 その友人を勇気づけたいから、私に大会で活躍するところを見せてほしいと頼まれました」
「おおーっ、ドラマチック……」
「始めはそれでも安全な試合運びを考えていました。表に見えるところではアニメのヒーローらしく。
 裏で勝率を計算して立ち振る舞おうかと。けれど、二日目の紫ノ宮選手と相対した時、実感したのです。
 何かを守ろうと闘う者は、強いと。私の本分を、拳でしか語り合った事のない相手から、改めて教えられました」
「うおおカッケー! あ、茶化してるんじゃないよ!?」
「ありがとう、雨衣。それが理由――ですね。ヒーローらしく、そして私らしく、そうやって闘おうと決めたのです。
 優勝は計算高く振る舞うよりも難しいでしょう。ですが、困難は乗り越えるものです。
 ……その男の子にも、そうやって励ましてしまいましたからね。私ばかり困難から逃げる訳にもいきませんから」
「へえー、へえーー……こうやって聞いてるとさ、
 ラピちんってやっぱり本当に本当の『ラ・ピュセル』なんだって思うよ。もちろん褒め言葉だよ!」
「ありがとう。それに――」

ラ・ピュセルの眼差しが、雨衣の目を真正面で受けとめた。

「雨衣の存在も、ですよ。貴女がいるから、私は裏でもヒーローとしていられるのです。もちろん、感謝していますよ」
「――! そ、そっかー。へえー……へへへっ」
「明日も、雨衣の作ってくれた服で闘いますので」
「わほー! ありがとね! ――あっ! そうだ、もっとラピちんが動きやすいようにするからちょっと待ってて!」

毎夜の事となった、賑やかな夜。
今日もまた、雨衣が布を手繰る音が響き。
二人の語らう声が、更ける夜にいつまでも響き続けた。





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