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世界格闘大会三日目、ラ・ピュセル&トラロック、バニースーツにて戦場に立つ


世界格闘大会二日目の全試合が終わり、各選手が明日に向けた準備を始めた頃。
突き指の治療を終えたラ・ピュセルがウサ耳ナースに見送られて診察室から外へと出ると、

「ラピちん、お疲れー」

ツヤツヤと磨かれた通路が真っ直ぐ左右に伸びる、人の気配のない廊下で、雨衣がニコニコと手を振っていた。





「がっかりさせてしまいましたか?」

ラ・ピュセルは指を伸ばし、握り、具合を見つつ、隣を歩く雨衣へ声をかける。

「そんなことないって!」

ラ・ピュセルを見あげ、雨衣が応える。

大会参加者に用意された宿泊施設の長い廊下を、ラ・ピュセルの部屋がある区画へ向かって歩いている途中。
雨衣が小動物じみた動きでラ・ピュセルの周りをくるくる巡り、二人は歩く。
ラ・ピュセルが颯々と歩いていると言うならば、雨衣のそれは身長差の関係でチョコチョコといった擬音がよく似合う。

「だってラピちん、もともとけっこう負けるキャラじゃん!」

指を組み、うーんと両手を前に突き出しながら、雨衣が言う。

「どんなに負けても心が折れない! すぐに再び立ち上がる! それが『ラ・ピュセル』でしょー!」

良い事を言ったというしたり顔で、ラ・ピュセルを見返す。

「――にしても、おこちゃんもやるねえ。あのビームを避けちゃうなんて、髑髏皇帝かって私もびっくりしてさあ」

二人は話しながら宿泊者の部屋が並ぶ区画に入った。床には柔らかい絨毯が一面に敷かれている。
やや光量を落とし、暖かなオレンジ色の電灯が安らぎの空間を演出している。
それらの落ち着きも、壁に掛けられた小洒落たフラワーアレンジメントも、雨衣の元気を抑えこむ枷にはならない。

「――ありがとう」

自分を気遣い、元気づけてくれる雨衣の、その心意気に、ラ・ピュセルは心からの謝辞を述べた。





「……」
「……」
「……」
「……ダメ?」

そんな見送りの時間も終わりを迎え。
ラ・ピュセルが礼を述べて自分の部屋へと入ろうとした時。
そこでようやく、ラ・ピュセルは雨衣がわざわざ部屋の前までついてきた理由に気づいた。

「……それでは、一緒に明日の対策を練りましょうか」
「ぃいよっしゃ!!」

革張りで重量もある、高級感漂う扉の内側へ、部屋の主に続いて小さな身体が滑りこんでいく。
手入れを怠っていない事が伝わる、なめらかな動きで扉が閉まる。その直前、

「ラピちんの衣装だけどさー、たまには気分を変えるのとかどうかな? 変装回もあったしさー。
 ホラ、カジノに潜入する時とか。
 私、さっきイイ格好思いついちゃったんだけど――」

賑やかな夜を予感させる、可愛らしい声が、隙間を縫って廊下へと消えた。





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