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STRIPPED GIRL


部屋に日差しが差し込む。窓から見える空はもう赤く染まっている。
右足が切断され、気を失った数胴兵香はそのまま病院に運び込まれた。
幸いにも切断された足はすぐにひっついたが、先程まで意識はなく今目覚めたところだ。
いつもは三つ編みにしている髪も今は下ろしたままである。

「入りますよ」
声と共に扉が開かれ、操女が室内に入ってくる。
「キミか…」
直前まで泣いていたのか兵香の目が赤く腫れている。
公園で晒した無様を考えれば不思議なことではないだろう。
「先輩なら先程までいましたけど帰りましたよ。ずっと兵香のことを心配してましたけど」
「そっか」
兵香の先輩の少女もあの後、最終的にルーシーに裸に剥かれた。
そのあと操女がどこかから適当にもって起きたと思われるシートを服の代わりにして兵香をここまで一緒に運んできた。全裸は全世界に中継されたが。
「格闘大会なのに服を剥ごうとするのはおかしい」「風紀が乱れすぎている」と言ってはいたが、それを敗北の言い訳にする気はないらしい。
彼女が目指している護身術のことを考えればそれは当然のことなのだろう。

「先輩は乱入した目的は大会の参加者が風紀を乱すのを粛清して、ついでに賞品の少年を開放することだって言ってましたけどあれは逆ですね。本人は気づかれてないつもりみたいでしたけど」
「先輩の知り合いなの?」
初耳だ。賞品の少年については義妹の兄だというとしか認識していなかった。
「クラスメイトらしいですよ。先輩が言うには」
なおこの件に関しては操女と衛子の間でいろいろなやり取りがあったのだが、今はまだ語るべき時ではないだろう。
「このままだと桜ちゃんに続いて先輩まで取られちゃうかもしれませんねぇ」
ニヤニヤとこちらを見つめながら言う。
「ボクは先輩にキミが考えているような感情は持っていない」
「そういうことにしておきましょう」
「そういうこともなにもないと言ってるだろう!」
「冗談ですよ♥ふふふ」
少しからかい過ぎたかなと反省しつつも言葉を続ける。
「それにしても兵香が思ったより元気そうで安心しました」
正直、操女は兵香がここでリタイアするといってもおかしくないと思っていたのだ。事実参加者の中には心が折れたのか大会初日以降見かけなくなった者もいる。
「だって、ここで引くわけにはいかないだろう」
彼女の目的もそもそも賞品の少年を助けることなのだ。義妹の家族であるということもあるが、そもそも人間を賞品にするなんて彼女の倫理観にもあわない。
まして、彼が先輩の知り合いだとわかったのだからなおさらだ。
「そうですね」
ひと呼吸して操女が言った。

「これなら私が作ったこの特別プロモーションビデオ『ひょうかちゃんのメイド初体験記~おかえりなさいませごしゅじんさま~』も安心して流せそうですね」
「ちょっと待て!なんだそれ!」
「兵香のメイド喫茶での奮闘を描いた秘蔵VTRです。こんなこともあろうと用意しておきました♥」
「なんでそんな映像があるんだよ!」
確かに以前先輩にどうしてもと頼まれてメイド喫茶でアルバイトをした事実は存在する。
だが、なぜその映像がある。そもそもあのことは誰もいっていないはずだ。
「美保先輩達には快く協力してもらいました♥」
「あの人は……!」
つまり、知らないうちに盗撮されていたということだ。というかそもそもそれが目的だった可能性が高い。
「ちゃんとお客様とかには加工を施してるので安心してくださいね」
「どこが安心できるんだよ!!」
怪我をして、殊勝な態度を見せているのかと思ったらこれだ。全く油断ならない。

「あっ兵香さんめざめたんですね。よかったです」
二人の会話を聞きつけた讓も部屋の中に入ってきて、病室が俄かに騒がしくなる。
窓の外の夕日はもうすぐ月夜に変わるだろう。

そしてまた、明日から彼女たちの戦いが再び始まる。