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鏑木諒子 一ターン目終了後SS


「んー・・・うーん・・・・・・んあっ!?」
気がつくと諒子はベットに横たわっていた。辺りを見回すと、どうやらホテルの一室のようだ。
ベットから体を起こそうとすると
「気がつきましたか」と不意に部屋の隅の方から人の声がした。
よく見ると黒スーツの男が壁にもたれながら立っている。
諒子はいまいち状況が飲み込めなかったのでとりあえず「あ、ども」と軽く会釈をしてみた。
「ご気分はいかがですか?」と黒服はえらく落ち着いた様子でベットのそばに近ずいた。
「あなたは菊一文字 朱蓮との戦闘に破れ、私がここまで運ばせていただきました。」
「菊一文字?・・・ってまさかあのオバ・・・オネーチャンのこと?」
やたらと動きが速く、奇妙な薙刀を持った喪服姿の女性に襲われたことを諒子は思い出す。
「あのオバ・・・オネーチャンは一体・・・」
身に覚えがあるとするならば、やんちゃな不良共を何度かボコボコにしたことがあった。
「まさかモンスターペアレントってやつじゃ・・・!」と言おうとしたが、
食い気味に「違います」とあっさり否定されてしまった。
「じゃあ一体・・・」と戸惑う諒子に黒服は言った。
「彼女もあなたと同じく大会の参加者の一人ですよ」
「たいかい?・・・って何?」
黒服の言葉を受け、さらに訳が分からなくなってしまった。
自分はただ、出前の注文を受け「ちょっと遠いな~」とも思ったが一度承ったからには責任を持って仕事をやり遂げよう!
と思い、スクーターをかっ飛ばしTOKYOまで来たというのに・・・。「(そういえば岡持ちはどこだろう・・・。)」
困惑した様子の諒子に黒服は説明を始める。
「世界格闘大会―その名の通り世界中から参加者を募り、その中から最も強く美しい者を決める大会です。
連日あらゆるメディアなどで取り上げられているはずですが、本当にご存知ありませんか?」
黒服は少しだけ驚いた表情をした。
「うちテレビないし・・・っていうか!なんで私がそんな大会に出なきゃならないの!?」
体を起こし困惑と怒りが入り混じったような表情で諒子が問いかけると
黒服は無言でポケットから音楽プレイヤーのような者を取り出し、再生を始めた。

―――――――――――――――――――――――――――――――

「はいお電話ありがとうございます。天軸亭です。」
「諒子さんはいますか?」
「私ですけど?」
「注文をお願いできますか?」

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再生されたのは聞き覚えのあるようなないような声の女性と、男性の会話だ。
「これにはあなたが数日前に受けた注文の内容が記録されています。」
唖然とした表情で聞き入りながらも諒子は思った。「(私ってこんな声なんだ・・・)」
二人ともしばらく黙ったまま再生は続き、注文の確認しているくだりで黒服が口を開いた。
「ここです。聞いてほしいのは」

―――――――――――――――――――――――――――――――

「くれぐれも*****までお願いしますよ。」
「ハイハーイ・・・じゃあ失礼シマース。」

―――――――――――――――――――――――――――――――

そこまでで再生は終わった。
「*****って・・・・・・」
電話で届け先に指定された住所の表札は確かこんな苗字ではなかったはずだ。
「誰なの一体?」と尋ねると黒服は「この少年の名です。」と懐から取り出した四つ折の紙を差し出した。
諒子は緊張した面持ちで紙を受け取り、それを広げてみた。
するとそこには赤いリボンを巻きつけられ全裸で座り込む少年の写真が載っていた。
急いで紙を二つに折り畳み、黒服に向き直った。
「うわっ!ちょっ!なにこれ!?変態!?」
「ではありません。彼は今大会の優勝賞品です。」
慌てふためく諒子とは対照的に黒服は落ち着いた様子で答える。
「優勝賞品って・・・」
「私達監視員に詳しいことは知らされてはいませんが、とんでもない能力持った魔人である、とのことです。」
「全裸の男の子を優勝賞品にするあんたらの方がとんでもないわ!」
キレ気味にツッコミを入れる諒子に対し相変わらず冷静な口調で黒服は言った。
「・・・ともかく、あなたが注文を届けなければならないのはこの少年である、そうゆうことです。」
「そ、そんなん別に大会に出なくても・・・!」とどうにか話の隙を突こうとする諒子だったが、
「不可能です。彼は大会運営によって厳重に警備されています。」とすぐに潰されてしまった。
「つまり、大会で優勝する以外に彼に会う方法はない、ということです。」
とどめを刺された諒子は二秒ほど天を仰ぎ、その流れでベッドに倒れこんだ。
「ぅ゛あ゛~なんでこんなことに・・・・・・」
少女らしからぬ低い声でうめく諒子に黒服は意外な言葉を口にした。
「断っておきますがこれは強制ではありませんよ。」
寝そべった姿勢のまま首だけを黒服に向け「え?」と驚く。
「ただ・・・一度引き受けた仕事を簡単に投げ出すなど、名店の名折れだとは思いますが・・・。」
「!」
諒子はガバッと起き上がり、透かさず言葉をぶつけた。
「誰が何を投げ出すって?そんなこと一言も・・・一言も言ってないんですけど!」
あっさりと挑発に乗ったのは、天軸亭の看板に泥を塗る訳にはいかない!という彼女なりのプライドからであった。
諒子はベッドから降り、壁のそばに置いてあった岡持ちを見つけると、軽々と持ち上げて底を黒服に向ける様に構えた。
「仕事を投げ出すなんて真似は絶対にしない!!この岡持ちに誓って!!!」

鏑木諒子にとっての本当の戦いはここから始まる。
                                               終
※黒服・・・・・・鏑木諒子の監視員。クールな白髪。どこからともなく拡声器を取り出すことができる。
※天軸亭・・・・・・隠れた名店。諒子の実家。
※岡持ち・・・・・・諒子の岡持ち。破壊不可能。赤く〝天軸〟の文字が刻まれている