トラロックVSラ・ピュセル


 ラ・ピュセルが会場の一、公園に着いた時そこに「トラロック」らしき姿は無く、天王星ちゃんと宇多津泡沫の試合が始まるところだった。
敵前にてまさかの昼寝を始めた泡沫に天王星ちゃん(彼女も何故かパジャマである)も傍で見ていたラ・ピュセルも困惑したが、直後それどころでなく驚くべき事態が起こる。なんと、眠っていた泡沫がまばゆく輝く黄金の竜・リオレイア希少種へと変身したのだ。
参加選手に人外どころか完全なモンスターがいた時にも驚いたが、それに化けることが出来るとは。あの巨体を相手に天王星ちゃんはどう戦うのか、そう思って見ていると……

「ウラヌスタックル!!」

「ガーーッ!!」

 開始早々天王星ちゃんはリオレイアへと体当たり。圧倒的体重差でそれは話にならないと呆れたが、なんと微動だにしないと思われたリオレイアが吹き飛ばされる。ひっくり返った巨体で遊具を押しつぶし、ピクピクと泡を吹いて痙攣した後、元の泡沫の姿へと戻る。今度は寝ているのではなく吐瀉物をまき散らして気絶していた。どうやら決着のようだ。試合時間は10秒も無いだろう。

(一体どういう原理で……重力を操作する宇宙テクノロジー……?)

 泡沫をよいしょと起こし、背中を叩いて出かかった内容物を全て吐かせてやる優しい天王星ちゃんの姿を見ながら、今の技の分析に努めるラ・ピュセル。テクノロジーかは怪しいが宇宙というのは正解だった。

「地球にもあんな力が……不思議ですね」

「不思議だニェ~」

「ひゃあっ!?」

 突如耳元で猫撫で声。そこにいたのは1人の少女だった。脇の下から小さな手を回し、豊満な胸をさわさわと撫でる。

「お~、おっきぃ……」

「なっ……せいっ!」

 これが萌えアニメなら「あんっ……やめっ」などとあざとい嬌声を発して身を捩らせるところだが、そうはいかなかった。ラ・ピュセルが背後の少女の服の襟を掴むと、直後少女の身体は宙に綺麗な弧を描く。ラ・ピュセルは優しく落とすつもりだったが、少女がその前に受け身を取った。

「お姉さん、揉んじゃってごめんね。大きい胸見ると触りたくなっちゃうの」

「な、何ですあなたは……? もしかして……」

 制服に身を包んだショートカットの小柄な少女。触りたくなるのは平坦だからだろうか。そんな外見ながら今この公園にいることと、そして身のこなし。ただの女子高生には見えなかった。

「そう……ホリラン4の参加者。お姉さんが『ラ・ピュセル』でいいんだよね?
 すっごい美人さんだな~今度コスしない? あともっかい揉ませて?」

 グイグイと擦り寄ってくる少女を制しつつ、しかしこんな子いただろうか、という疑問が浮かぶ。開会式で一堂に会しているはずだが、見覚えが無い。

「『こんな子いたっけ?』って顔だねー。じゃ、見せてあげるよ。これならわかるでしょ」

 そう言うと少女は腰の前で両腕を交差した奇妙なポーズを取って叫ぶ。

「変身!!」

 その言葉と共に少女の制服が、ソックスが、ハイカットスニーカーが淡い光に包まれる。そしてそれが晴れた時にはそれまでと全く別の、ラ・ピュセルにも見覚えのある姿があった。

「『トラロック』選手……?」

「そう、私がトラロックなのだニャ―」

 天地魔闘の構えを崩し、おどけたポーズを取って彼女は言う。

「ならば私もお見せしましょう。戦う姿を……」

 淡麗な目鼻を覆っていたアンダーリムの眼鏡を外すと、先ほどのトラロック同様、全身が光を放った。

「ニャ、ニャッ!?」

 数瞬後、そこに顕現していたのが護王の戦士・ラ・ピュセルの真の姿。白く豊満な肢体にきらびやかな銀の鎧を身につけ、『水晶谷の雪華』を象る髪留めが輝いている。

「ほ、本物のラ・ピュセル!? スゲー!! ファンだったんスよー!!」

 興奮の余り口調が元に戻り、変身前以上の勢いで擦り寄って強引に手を握るトラロック。一瞬警戒するラ・ピュセルだが、敵意からの行動で無いことは明らかだった。

「サイン貰っていいスか!? 後、写真も!!」

「試合が終わったらね……」

 握った手をブンブンと振って、冷静になったトラロックは少し恥ずかしくなったのか、ササッと後退する。そして再び、ラ・ピュセルに対する構えを取った。その長い袖が幾つにもわかれてうねうねと生き物のように動いている。

(憧れたヒーローとの戦い……王道じゃ無いっスかー。こういうイベントはもうちょい強くなってからが良かったけど、でも、勝ちに行かせてもらうじぇ!!
 今日、私はラ・ピュセルを超える!!)

 ラ・ピュセルも、ファイナルスター護……アイキの構えを取った。

(初めての、悪では無い敵……けれど今の私は正義のヒーローじゃない。姫様のためにも全力で)

「ラ・ピュセル――――推参(おしてまいる)!」

「おうっ! 来い!!」

「敵をつらぬけ!! コスモビィーーーーーーム!!」

「えっ!? ちょ……ギャーーーー!!」

トラロック:再起不能(リタイア)

To be continued.



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最終更新:2013年11月11日 00:07