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『The Unhappy Prince』


 「何ですって?」
 今後の大会進行の計画を纏めていた私は、部下からの報告を受けて書類業務の手を止めた。
 「申し訳ございません」
 施設の警備と対象の監視を命じていた職員はこの大会の為に雇われた人員だったが、魔人自衛官出身という事で任務遂行能力と身分については日本政府の保証付きだった。私自身も正式に雇用する前に面談を行ったが、信頼に足る人物だと判断している。怠慢や油断が理由とは考え難い。
 そんなプロフェッショナルが監禁していた対象を逃してしまうという失態を犯してしまったというなら、その原因は恐らく別にあるのだろう。
 「まだそう遠くへは逃げていない筈です。追っ手も手配済みです」
 私への報告と同時に打てる手は全て打っているようだ。一分一秒を争う事態において、上司の判断を待っていては取り返しの付かなくなる事態がある事をよく知っている。
 「表沙汰にならないよう内々に処理する必要があると判断し、政府に働きかけて警察や公安を動かしてはいませんが……如何されますか」
 困った事になった──────────と私は一瞬困惑するも、しかしよくよく考えて見れば。
 予定外ではあるけれど、この展開は決して悪いものではない。寧ろ、考えようによっては都合が良いとさえ言えるかもしれない。
 「どうせなら、手伝ってもらいましょう…………彼女たちにも」
 答えた私の脳裏には、既に次のプランが描かれていた。

                                              <了>