私は今日も窓から外を眺めていた。
昨日は綺麗な歌声が聞こえたな…
なんだか、心が安らぐのを感じる。
けど、自分の今の事を考えると、また暗い気持ちが出て来た。
日が変われば、何もかも変わらない日常。
いつもと変わらない風景。
いつもと変わらない音。
いつもと変わらない匂い。
変わるのは……私の病状だけ……
私は小さい頃から病弱だった。
外で遊ぶ事もなかった。
友達もできた事もなかった。
家族と一緒に出かける事もなかった。
成長するにつれて、学校に行くようにもなったが、学校での思い出なんてなかった。
あるのは病院にいる時の思い出しかない。
病院で仲がいい子達もできた。
けど、みんないなくなった。
元気になって退院して、それっきり。
お見舞いも連絡もない。
きっと、私の事なんて忘れてるんだろうな。
もちろん。退院しない子もいる。
………みんな亡くなったけどね。
そして………私も………
「ゴホッ……ゴホッ………!!」
自分の体調は自分でわかる。
自力で歩く事も、起き上がる事もできない。
いつからだろう……両親が来なくなったのは?
いつからだろう……病室から出なくなったのは?
いつからだろう……窓から外を眺めるようになったのは?
いつからだろう……みんなが羨ましくなったのは?
私は思う。どうして私だけ苦しんでるの?
私は思う。どうして私だけ一人なの?
私は思う。どうして私だけここにいるの?
私は思う。どうして私だけこんな重い病気なの?
羨ましいな…すぐ退院する人達が……
羨ましいな…家族に愛されてる人達が……
羨ましいな…周りに恵まれてる人達が……
羨ましいな…普通に生きてる人達が……
ヒューン!!!……ポテッ……コロコロ………
ん?なんだろう?この丸いのは……
歪んだ球体……紫色に輝いて……不気味だけど……綺麗と思ってしまった…
そう思ってると、その丸いのは急に光出すと、私の所へ飛んできた。
不思議と恐怖はなかった。どうせ、私は長くないんだ。何が起こっても動じはしない。
抵抗もできないし。
私が何も抵抗しないでいると、それは私の胸の所に来た。
ズブッ……ズブッ……ズブズブ………
そう気味の悪いと共に、それは私の体に入って来た。
不思議と痛みも苦しみもなかった。
寧ろ、身体が軽くなるのを感じる。
それと共に聞こえてくる。嫉妬に満ちた声が……
妬ましい….妬ましい…妬ましい…妬ましい…妬ましい…妬ましい…妬ましい…妬ましい…妬ましい…妬ましい…妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましいネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイネタマシイ!!!!!!
………そうね。みんなが羨ましい。
起き上がるはずのない身体が動いた。
幸せな人が、愛されてる人が、友達がいる人が、家族がいる人が、健康な人が、苦労をしてない人が…
黒い泥のようなモノが私の背中から出て翼になる。
なら、皆にしらしめてあげようか?
窓に手をかざすと、窓ガラスが粉々にくだけた。
それを妬んで、羨ましがって、足掻いても、足掻いても、掴めない。
私はそこから飛び去った。
そんな不幸で、愚かな人間がいるのを。
教えてあげよう。嫉妬に包まれて、それでしか生きる希望がわかない愚かな人間がいるのを。
ここに一人の≪カース≫が誕生した。
乃々「波よっ!力を貸して!!」
ほたる「嵐よっ!雷よ!力を貸して!!」
『グッ……グガァァォォァォォァァァ!!!』
加蓮「くっ……」
私は黒い盾を生成し、なんとか防ぎながら、仲間達が津波に飲み込まれ、嵐と雷に吹き飛ばされてるのを見ていた。あぁ…その力…妬ましい…羨ましい…
加蓮「相変わらず、ふざけた破壊力ね!!妬ましい…!」
乃々「なんで貴女はいつも無事なんですか……もう帰りたいんですけど…」
ほたる「こんな事はもう辞めてください!そんな事しても誰も幸せなんかになれません!」
加蓮「そんな事を言えるなんて、相変わらず貴女達は幸せ者ね…ナチュルスター」
こっちだって、防ぐので精一杯なのに、元気そうにして私を説得する……妬ましい…羨ましい!!
ほたる「それは違います!私だって…」
加蓮「違う?何が違うの?お説教は聞き飽きたっ!!貴女みたいのを偽善者っていうのよ!」
ほたる「……っ!!……」
乃々「あの、ほたるさん。無駄だと思うんですけど?イヴさんが言うには彼女はもう……」
ナチュルスカイが辛そうに顔を歪め、ナチュルマリンがそれを心配そうにしている。
ああ、妬ましい…この友情がっ!
加蓮「今日は引き上げてあげる!そして、覚えときなさい!!世界には貴女達みたいのに嫉妬する人間がいるっていうのを!!」
ほたる「救ってみせます!!そんな人達も……貴女もっ!!エンヴィー!!」
私は飛び去りながら、心に誓う。
世界に教えてあげるっ!私の……私達の嫉妬を!!!
終わり
余談だが、エンヴィーは普段は普通の人間の姿で、アルバイトしながら生活して、嫉妬を集めているのであった。
最終更新:2013年06月26日 18:11