名文抄
暗記確認練習プリントで抜けている部分のみ下線記載
「土佐日記」 門出 紀貫之
- 男もすなる日記といふものを、女もしてみむとて、するなり。
それの年の、十二月の、二十日余り一日の日の、戌の時に門出す。
そのよし、いささかに、ものに書きつく。
「徒然草」 つれづれなるままに 兼好
- つれづれなるままに、日くらし、すずりに向かひて、
心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうことものぐるほしけれ。
「方丈記」 ゆく河の流れ 鴨長明
- ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。
「平家物語」 祇園精舎
- 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
婆羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
「奥の細道」 序 松尾芭蕉
月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。
舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして旅をすみかとす。
徒然草
「丹波に出雲といふ所あり」
重要語句
語句 |
意味など |
めでたし |
素晴らしい。見事である。 |
しる |
「領る」領有する。 |
あまた |
=「ここら」「そこら」。たくさん。数多く |
具す |
連添う。 |
ゆゆし |
程度が甚だしい。 |
御前 |
貴人や神仏の前。 |
殿ばら |
皆さん |
殊勝のこと |
素晴らしいこと |
あやし |
不思議だ |
つと |
土産 |
ゆかしがる |
見たがる。聴きたがる。知りたがる。 |
おとなし |
大人びている |
さがなし |
いたずらで手に負えない |
奇怪なり |
けしからぬことである。もってのほかである。 |
いたづらなり |
無駄である。 |
敬語
敬語 |
敬語の種類 |
敬意の方向 |
意味 |
拝む |
謙譲語 |
しだのなにがし→神仏 |
参拝する。礼拝する。 |
召す |
尊敬語 |
しだのなにがし→聖海上人ら |
召しあがる。 |
ご覧ず |
尊敬語 |
聖海上人→殿ばら |
ご覧になる。 |
はべり |
丁寧語 |
聖海上人→神官 |
ございます。 |
承る |
謙譲語 |
聖海上人→神官 |
うかがう。 |
候ふ |
丁寧語 |
神官→聖海上人 |
ございます。 |
つかまつる |
謙譲語 |
神官→神社(獅子) |
~してさしあげる。「す」の謙譲語 |
重要文
「いざ、たまへ、出雲拝みに。かいもちひ召させん。」【(二)2行目】
- 「さあ、いらっしゃい、出雲参拝に。ぼたもちをごちそういたしましょう。」
- 「たまへ」は尊敬の補助動詞。「いざ、たまへ」で『さあ、いらっしゃい』と勧誘、呼びかけを表す。
- 拝む、召すの敬語に注意。
- 「いざ、たまへ、出雲拝みに。」は倒置
- 「せ」は使役の助動詞「す」の未然形。「ん」は意志の助動詞「ん(む)」の終止形。
上人なほゆかしがりて、おとなしくものしりぬべき顔したる神官を呼びて、【(三)3行目】
- 上人はいっそうわけを知りたがって、年配のものを知っていそうな神官を呼んで、
- 語句の意味に注意
- 「ぬ」は強意の助動詞「ぬ」の終止形、「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形。
「知りぬべき」で『知っていそうな』
- 「たる」は存続の助動詞「たり」の連体形。
「この御社の獅子のたてられやう、さだめて習ひあることにはべらん。【(三)4行目】
- 「このお社の獅子のお立てになり方はきっと由緒があることでございましょう。
- 「られ」は尊敬の助動詞「らる」の連用形
- 「に」は断定の助動詞「なり」の連用形
「ある人、弓射ることを習ふに」
重要語句
語句 |
意味など |
たばさむ |
手に持つ、手に挟む |
なほざり |
「なほざりなり」の語幹。いい加減。おろそか |
おろかなり |
「疎かなり」。おろそかだ。いい加減だ。 |
解怠 |
「けだい」と読む。仏教語で怠けるの意味。対義語は「精進」 |
戒め |
教訓。師の言葉、教えを指す。 |
道を学する人 |
仏教を修行する人 |
ねんごろなり |
熱心だ。 |
期す |
「ごす」と読む。心に思い定める。心づもりする。サ行変格活用動詞 |
いはんや |
まして |
一刹那 |
仏教語で短い時間をいう。一瞬。 |
重要文
道を学する人、夕べには朝あらんことを思ひ、朝には夕べあらんことを思ひて、【(二)2行目】
- 仏教を修行する人が夕方には翌朝があるようなことを思い、朝には夕方があるというようなことを思って、
- 「ん」の下に「こと」「人」「もの」といった名刺が伴った場合は婉曲であることが多い。連体形。
なんぞ、ただいまの一念において、ただちにすることのはなはだ難き。【(二)5行目】
- なんとまあ、ただ今の一瞬間において、すぐに実行することはひどく難しいことなのだろうか。
- 「なんぞ」は疑問、反語の副詞だが、ここでは詠嘆。
- 「なんぞ」などの疑問、反語の副詞がある場合は、警女子がなくても結びは連体形となる。
文学史
三大随筆
時代 |
作品名 |
作者 |
内容 |
平安 |
枕草子 |
清少納言 |
日本最初の随筆文学 「をかし」の文学 |
鎌倉 |
方丈記 |
鴨長明 |
仏教的無常感(暗い) |
鎌倉 |
徒然草 |
吉田兼好 |
仏教的無常感(明るい) |
死諸葛走生仲達
重要語句
語句 |
読み |
意味 |
数 |
しばしば |
何度も |
巾幗 |
きんかく |
女性の装飾品 |
戎事 |
じゅうじ |
軍事。 |
夙 |
つと |
朝早く。 |
寐ネ |
いネ |
寝る。 |
親ラ |
みずかラ |
自分で。 |
噉食 |
たんしょく |
食べる |
篤シ |
あつシ |
病気が重い。 |
芒 |
ぼう |
彗星の長い尾 |
幾 |
いくばく |
どれほどの |
卒ス |
しゅつス |
死ぬ |
百姓 |
ひゃくせい |
人民 |
逼ル |
せまル |
迫る |
為リテ |
つくリテ |
作って |
料ル |
はかル |
推し量る |
重要文
乃遺以巾幗婦人之服。亮使者至懿軍。【(一)2行目】
- 乃ち遺るに巾幗婦人の服を以てす。亮の使者懿の軍に至る。
- そこで(諸葛亮は)女性の装飾品や衣服を送った。諸葛亮の死者が司馬懿の軍に到着した。
- 「乃」の読みと意味に注意。「すなはち」と読む字について区別をはっきりとさせる。
懿告人曰「食少事煩。其能久乎。」【(二)2行目】
- 懿人に告げて曰はく、「食少なく事煩はし。其れ能く久しからんや。」と。
- 司馬懿は周囲に告げて、「食事は少なく、仕事は忙しい。どうして長く生きることができるだろうか。いや、長くはないだろう。」
- 「能く」が可能の意味を表す
- 「ンや」で終わるため反語。
姜維令儀反旗鳴鼓若将向懿。【(三)2行目】
- 姜維儀をして旗を反し鼓を鳴らして、将に懿に向かはんとするがごとくせしむ。
- 姜維は楊儀に軍旗をひるがえし、進軍の太鼓を鳴らし、今にも司馬懿に向かおうとするようにさせた。
- 「A令BC」AはBヲシテCセしむ。AはBにCさせる。の形。
- 再読文字「将」や助動詞「若」などに注意。
身体、この遠きもの
要約
身体は魂や心と対照されることが多い。だが、身体の固有のあり方は、物体と対照することでより明らかになる。
身体はそれが正常に機能している場合は殆ど意識されない。それでいて、疲労や病に捉えられた身体はよそよそしい異物として迫ってくる。
何かを自分のものとして「もつ」というとき、身体はそれのための「媒体」としてはたらく。だが痛みや倦怠に襲われるとき同じ身体が思い通りにできないものとして現れる。
身体はわたしそのものなので、「わたしは身体をもつ。」というよりは「わたしは身体である。」といった方がぴったりくる。
身体のしめる空間は、杖や靴を通して拡張される。他人の身体が自分のテリトリーへと拡張されて不快感を覚えることもある。
身体は物体としての表面を超えて伸びたり縮んだりする。身体空間は物体としての身体が占めるのと同じ空間を構成するわけではない。
身体は時間的な現象でもある。また身体は記憶する。いま・ここの経験にも物質的な空間にも限定できないのが身体の存在といえる。
物質としての身体は不完全にしか知覚出来ない。自分の顔を直に見ることはできない。そのため、表情を繕い、化粧をする。顔を調整するのである。
自分の存在を確固としたものとして感じられるように絶えず身体を確認する。身だしなみを整え衣服という囲いの中に身を挿入する。
プロポーションを気にし容貌に悩むのは。身体が知覚される物質体であるより想像される「像」であるからだ。
身体との関係の不全は身体が自分から遠く隔てられているということに由来する。
最終更新:2013年04月29日 21:44