白木屋


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なあ、お前と飲むときはいつも居酒屋だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。

俺が入社してまだ3年で給料23万だったとき、 お前は月60万稼ぐんだって胸を張っていたよな。
「毎晩残業で休みもないけど、フリーランスは金がすごいんだ」
「常駐先の会社の新入社員どもに、エンジニアとは何たるかを聞かせるんだ」
「社長の息子も、俺に頭上がらないんだぜ」
そういうことを目を輝かせて語っていたのも、居酒屋だったな。

あれから十数年たって、リーマンショックも切り抜けて、今こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり居酒屋だ。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。
別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。
なあ、別に女が居る店でなくたっていい。
もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店を いくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?

でも、今のお前を見ると、 お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、
俺はどうしても「もっといい店行こうぜ」って言えなくなるんだ。
お前が契約を切られたのを聞いたよ。お前が体壊したのも知ってたよ。
新しく取った契約先でで、一回りも歳の違う、20代の若いエンジニアの中に混じって、
うんちくだけ垂れる癖に実は使えない粗大ゴミ扱いされて、それでも必死に卑屈になってプログラマー続けているのもわかってる。
だけど、もういいだろ。
十年前と同じ居酒屋で、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ。
「技術」、「技術」って、それはビジネスマンの「技術」じゃないんだよ。
そんなのは、隣の席で浮かれている新入りどもだけに許されるなぐさめなんだよ