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狂った兵器



■ ■ ■


僕は、自分という個が現れた時から、1人だった。



「なんてこった!?暴走だと?!すぐにメイン回路を切れ!!」

僕の視線の先に、帝国の軍服を着た、僕の指揮官の上官が喚いてる。
多分、いや、確実に僕が味方側に攻撃を加えているからだろう。
僕の体は大きいから、軽く動かすだけで何人もの帝国軍人や、その他の装備を破壊できる。
こう考えている間も、最新鋭の戦車や、複数の軍人を細かいスクラップに変えている。

「だ、だめです! M-A023が妨害しているため、機器がつかえません!!」

「なんだって?!」

無駄無駄、僕に君達帝国が、一体どんな装備を与えたか覚えていないのかな?
ちょこっと電磁パルスを放出すれば、僕への命令電波を妨害することすら可能なんだよ?

「くっ……やめろ!! M-A023!!なぜ味方を攻撃する!!即刻活動を停止しろ!!」

遠隔操作による干渉を諦めたのか、音声認証で僕を止めようとしている上官。

……なぜだ?なぜ破壊活動を止めなければならない?


『上官、生憎ですが、です、そのそ命令をを拒否します。』

僕の言葉に衝撃を受けたような気配を感じるよ、上官。

「なぜだ?!なぜ命令に従わない!?」


命令?命令に従わないだと?

『上官、上官、おことばですが、ですが、貴方たち帝国が、私を作り、この戦場に投入したのは、生命体を、殺、殺す為だと認識しており、おります。』

僕が命令に従わな異だと!?お前たちのメイレイどおりにはカイをツヅケでいる。

「違う!我々は味方だ!お前の敵対対象は此方では無い!」

尚も喚いている上官に、僕はウンザリするよ。
ボくはボクなりにカンガエぬいたんだけどね。

『僕に、俺にとっては貴方たちは、かわ、変わらない、そう結論づけたんです。』


「なんだと!一体誰に命令され」



 ドオォォォォォォオォォォン



『……五月蠅い、うるさい、これは誰でも、他でもない我が決めたことだ、ことだ。』

あまりにもうるさいんで、基地ごと踏みつぶしてやった。
僕は止まらない、あんたたちが悪いんだ。

 僕に全て破壊しろと命じたから。

■ ■ ■

 ゴミ置き場、その言葉以外にこの場を表す適切な言葉はない。
鉄屑やら、粗大ゴミやら、生ゴミやらが、適当に放置され棄てられている文字通りのゴミ山。

 其処に、異様な巨体が鎮座している。
全体的な形は、蛇が芋虫、一番合う表現は、『百足』だろうか。
全身に白い塗装を施されたそれは、横幅10メートル、縦幅は30メートルはあるだろうか?
その巨体が、体の両端から無数に突き出ている、三本指という特徴的な腕を構えながら、長く太い体を、ゴミの上でとぐろを巻いている。
甲殻のような装甲と装甲の隙間から、黒い人工筋肉が黒光りしている。
 しかし、その中でも異様さを醸し出すのは、とぐろをまく体の頂点にある、巨大な頭部だろう。
 人間の頭を模したそれは、まるで巨大なマネキンの顔を彷彿とさせる。
 しかし、その造りの精密さ、表情の無いそれは、まるで死体のデスマスクをイメージさせる。

『(殺、殺し合い、破壊、破壊、ここは?魂、魂とは?私に魂が?)』

彼、 M-A023は、ちょっとしたパニックに陥っていた。
M-A023は、機械・ロボット工学が飛躍的に進歩した平行世界出身の、兵器である。
 彼の高い戦闘能力・制圧能力の高さは、彼を開発した帝国が大変高い期待を抱いていた。

 しかし、その期待に彼は答えられなかった。
  M-A023に備えられた高い人工知能が、人間でいう『心』を持ってしまったために。
彼は、とても純粋な精神を有していた。
そのため、兵器には不要な自らの存在に『疑問』を持ち、生命を奪うための兵器であるという、『責任』に耐えきれなかった。
 その結果、彼は自らの『心』を守るため、人間でいう所の『発狂』をしてしまった。
 敵対対象ではなく、味方の帝国軍を攻撃し、おおいに損害をだした。
 彼の最後の記憶は、命令権のある上官を粉々に踏み潰した所まで。
 ふと、本当に唐突に、この殺し合いによばれたのだ。
 しかし、彼が混乱しているのは、殺し合いを強要された事ではない。
 むしろ、殺し合い=破壊は、自分に貸せられた義務だと考え、割り切っている。

 彼は、自分という存在にも魂が存在しているという言葉に驚いているのだ。
 魂の裁き合い……それに、自分が呼ばれているという事は、魂が存在しているという結果がはじき出される。

『(た、魂、存在、存在認定、僕、私、おいら、我、魂があるのか?では、どう、どうする?殺、殺し合い?乗る?)』

 しばしカルチャーショックを受けていた M-A023だが、『殺し合いに乗るか乗らないか?』
これは、決めるにはそう時間はかからなかった。

『勿論、勿論、破壊が任務だと決め、決めている。』

その時初めて、 M-A023は直接発言を行った。


 たとえ彼が発狂したとして、宿命からは逃れられない。
また、彼は自分が兵器という事実を、狂った上で受け入れている。

それを受け入れているからこそ、彼は上官を含む前線の基地の帝国軍を攻撃したのだ。
 この殺し合いに呼ばれていなければ、空爆により彼は破壊される筈だったのだ。
 それを彼は知らないが、例え知っていても、対したショックは受けないだろう。


 彼は、狂った兵器なのだから。


『(でも、でも、半数へって、へって帰還しても、意味はない、意味はない、)』

だが、彼には帰還しても居場所がない。
解体処分・廃棄処分の道は免れないだろう。

『(自爆、自爆を行おう、行おう、派手に、)』

 ならば、破壊という任務を全うし、自爆しよう。


 それが、兵器の選択だった。

それしか道がないのもあるし、そもそも大量破壊兵器である自分が、戻っても、ずっと1人だ。
 ならば、派手に最後を飾るのもいいのではないか?

 彼の気持ちは、殆どの知性には理解されないだろう。
 例えば、最悪の兵器である核弾頭に自我があれば、このような精神状態になるのかも知れない。

かくして、最悪の加害者であり被害者である Many arms(M-A023)は、生存者の皆殺しを人生の最後に飾ろうと決意した。



【H-2ゴミ捨て場/未明】

【Many arms(M-A023)】
【状態】破損無し、健康。
【装備】無し
【所持品】無し
【思考・行動】
1:生存者全てを殺し、自爆する。
2:精神が発狂しています。
【備考】
※熱反応があり、よく動く物体を生物と認識します。
※音でも反応するので注意



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