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金の恨みは恐ろしい




「うっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」

 くるくるくるターンを決めて、地獄の光景を楽しそうに眺める星形の瞳の子供。  
 白と赤のしましまタイツとセーター。
 お揃いの濃い緑色をしたガーターベルトとジャケット、
 ショートヘアーの金髪に、ちょこんと乗ったテンガロンハット。
 服装に緑が多いこの少女、実は人間ではなく、217年の時を生きるアイルランドの妖精、レプラコーンである。

「ここがジゴクってところ?変わったところだね!うっひゃひゃひゃひゃひゃ」

 赤い空、空よりも真っ赤に煮えたぎるマグマの海。
 草一本生えていない赤土の荒野。
 一見つまらない光景に見えるが、今まで森の奥深くに住んでいたレプラコーンには、なかなか新鮮味があって面白い。

「ふんふんふん~♪カメラがあれば写真を撮りたいくらいだね」

 森の奥に住む妖精と言っても、全く無知ではない。
 カメラの存在くらいは知っている。
 星形の瞳を輝かせ、純粋な笑顔を浮かべるその姿は、とても200歳を超えた存在には見えない。
 これが合法ロリなのか?

「あっ!!!」

 ふと、外国の旅行者のように騒いでいたレプラコーンが、突然犬のような仕草で鼻を嗅いだ。
 彼女は、先程の二十倍ほどの笑顔を浮かべる。


「金の香りがする!」


 どうやら彼女の驚異的な嗅覚は、この近くに金の存在を感じ取った。
 妖精種族レプラコーンは金が大好き。
 彼女は母親の代から、叔母、祖母の順に、先祖代々金を溜め込んでいる。

「金!金!金!うっひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

 妖精としての本能か、それともただガメついのか、猛烈な速さで走り出すレプラコーン。
 まるで漫画のように、背後に土埃を起こしながら。

++++++++++

「ここから金の香りがする」

 走り出して数分、現在レプラコーンの目の前に横たわる巨大な物体。
 マグマの海の浜辺に眠る、赤錆びた難破船だ。
 殺し合いにて、最初の犠牲者の出た場所でもある。

「くんくんくん……なかなかの大物がありそうな予感♪」

 ここまで来たらはっきりわかる。
 この船にはなかなかの大物がある。
 レプラコーンの財宝に加わる程の価値あるものが。
 頭の中に、船に眠っている財宝の姿を想像し、うきうきと興奮する。

「(ご先祖様、お母様、新しい財宝が手に入りますよ♪極上の金の匂いがします)」

 これまで財宝を貯めてきた先祖の顔と、尊敬する母を思い浮かべるレプラコーン。
 立派に独り立ちしていると、祖先と母に胸を張れる。
 人間の基準で言えばお年だが、妖精の基準で言えばまだまだなレプラコーン。
 一人前にまた一歩近づいた事で、喜びを隠しきれないようだ。

「(さて、どこから入るんだろう?これ?)」

 このまま何もしなければ、取らぬ狸の皮算用。
 財宝を入手(強奪)するため、錆びた船に入れる場所を探す。

「(待てよ?)」

 どこか船体に穴でも空いていないかと、観察していたレプラコーンの脳裏に、ふとアイディアが浮かぶ。

「(まずは、ご先祖様達の財宝を鑑賞して、英気を養うってのはどうだろ?)」

 これから新しく財宝を加えるんだ。
 これまでの一族の宝を見てからでも良いだろう。
 何よりもこの場所!こんな面白い場所で、マグマの海を見ながら宝をじっくり鑑賞ってのも、なかなかオツじゃないか?
 思い立ったら前は急げ。
 レプラコーンはスキップを踏みながら、そこらの地面に座る。
 そして、代々受け継がれてきた財宝を収納した、木製の宝箱をポケットから取り出そうとする。
 物を広く収納出来るように、魔法をかけられているポケット。
 レプラコーンの指先に、適当に放り込んでいたガラクタやらが触れる。

「…………アレ?」

 不思議と、手に馴染んでいた箱の感触がない。

「アレ?アレ?アレ?」

 どこに行ったのかな?そう思いながら、ポケットの中身を漁る。
 その過程で、徐々にレプラコーンの表情が変化する。
 悪戯っ子のような笑顔を浮かべていた顔が、段々と無表情に、
 額に汗が浮かび、猛烈な速さで血の気が引いていく。

「アレ?アレ?アレ?アレ?アレ?アレ?アレェェェェ?」

 最後の声は絶叫に近かった。
 現実を認めたくなく無いのか、ポケットの中味を手当り次第に掻き出す。
 ビール瓶の蓋。大昔の硬貨。
 ムカデの死骸。蛙の干物。
 謎の生き物の頭蓋骨。菓子のおまけの玩具。
 くしゃくしゃの紙。古びた携帯時計。
 割れた鏡。木の枝。靴紐の破片。
 仕舞っていたデイバック。
 何やら訳の分からない物まで、ありとあらゆるガラクタが、レプラコーンの周辺に小山を作る。
 だが、無い。
 ポケットの中身をすべて出しても、無い、無くなっている。
 一族に代々受け継がれている、金の財宝の入った宝箱がーー


ーーー無くなっている。


「ぴぎゃあああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 喉から出せるとは思えない絶叫が響く。

「(無い!無い!無い!無い!無い!無い!無い!無いぃぃぃぃ!!!?)」

 絶賛混乱中。
 彼女の頭には、ご先祖様の顔が入れ替わり立ち代わり浮かんでは消える。

「ぴゃああああああああああああああアアアアアアアアアアアア」

 レプラコーンが正気に戻るのは、もう少し時間が経ってからだった。


 打ち捨てられた船の横。
 最初に浮かべていた笑みもすっかり消え、代わりに浮かぶは般若の形相。
 頭からは綺麗に、船の財宝のことは消えている。
 それよりも、遥に大事な用がある。
 デイバックから引きずり出すは、巨大なチェーンソー。
 星形の瞳を真っ赤に染め、レプラコーンは呟いている。

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

 前言撤回、全然正気に戻っていない。
 彼女は怒っていた。
 自分を殺し合いに呼び、あまつさえ財宝をぬすんだであろう閻魔と部下の死神に。

「内臓引きずり出してやらァあぁぁァ!!!」

 直感で、エンジンの紐を引くレプラコーン。
 燃料に火がつき、火花を散らしながら刃を回すチェーンソー。
 それは、レプラコーンの怒りを表しているようだ。

「宝を返せぇぇぇぇぇ」

 ポケットから掻き出したガラクタもそのままに、チェーンソーを構え走り出すレプラコーン。
 デイバックを回収する理性は残っていたのか、それは持つ。
 彼女は闇雲に走っているわけではない。
 その鋭利な嗅覚に感じる、もっとも嗅ぎなれた匂い。
 それを辿っている。

「ぎょおあああああああああああああああああああ!!!」


 レプラコーンから、宝を盗んではいけない。
 命が惜しかったら、覚えていたほうがいいだろう。
 八つ裂きにされたくなかったら。


【I-4錆びた船付近/未明】

【レプラコーン】
【状態】健康、怒り状態、ほぼ発狂。
【装備】巨大なチェーンソー
【所持品】基本的支給品×1 ランダム支給品×2
【思考・行動】
1:財宝の匂いを辿り、取り返す。
2:財宝の所有者を誰であろうと殺す。


【備考】
※財宝の匂いを嗅ぎ取れます。
※財宝を回収できれば、落ち着くでしょう。
※ポケットが4次元仕様。
※I-4にガラクタが大量に放置されています。
※本表体人が離れたあとに来ました。
※I-4に絶叫が響き渡りました。
※怒り状態で見境がなく、かなり危険な状態です。



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