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『毒蛇』




北欧神話をご存知だろうか?
世界三大宗教の
キリスト教
イスラム教
仏教
それらよりは、詳しく詳細を知っている人間は少ないだろう神話。
様々な者達が集められているこのバトルロワイアル。
その北欧神話が現実の出来事として存在し、世界誕生の基礎となった世界が、無数に存在する平行世界にはある。
その世界から、ひとりの呼ばれし参加者がいる。
その参加者の出身世界は、偶然にも有名な小説『フランケンシュタイン』の出来事も同時に起こったという、稀な世界。
その世界からの参加者はーー

「あのツインテールの雌豚め…天才であるこの!この私にぃ、あろう事か首輪をつけるなんて……許さないわ!!」

ーーかなり性格と口が悪いお人だった。
癖のないサラサラな長髪、お世辞にも澄んだ瞳とは言いにくい程の、鋭くギラギラした目つきの女性。
顔は美人さんなこの人の名は、
カーミラ・『フランケンシュタイン』
人造人間を作り出した科学者ビクター・フランケンシュタインの末裔。
近代学会にて、突如現れた遺伝子学の権威である。
もっとも、現在は孤児などで人体実験を行っていたことが学界にばれ、追放されてしまったが。

「午後の紅茶を嗜みながら、新しい実験体の強化方法を模索していたのに……おのれ、ゆるすまじ」

本人はまったく清々しいほどこりておらず、今も元気に実験を行っている。
それも、新薬だとか病原菌の研究だとか、社会に役立つ類の物ではない。
彼女の祖先、ビクター・フランケンシュタインの悲願『究極の人類の建造』。
彼女はばっちりとそれを受け継いでいる。
日々ひっそりと屋敷にこもり、ホラー映画さながらに盗み、又はその筋から買い取った死体を切り刻む。
最近のカーミラのライフワークはそんな感じだ。
カーミラの憤りは尋常ではない。
フランケンシュタイン家にして、高いプライドを持つ彼女は、服従の印とも言える首輪を付けられた事に、大変ご立腹している。

現在、カーミラは赤の街にあるホテルの一室にいる。
15階建ての大型のホテル。エレベーターが完備してあり、実に美味しそうな香りが漂う大型バイキングもある。
観光客が気に入りそうな良いホテルだ。
本来は人が泊まるための施設なのに、やや不自然なほどこの場にはその痕跡がない。
現在カーミラが居る部屋もそうだ。
キチンとベッドメイキングされており、床にはゴミ一つ落ちていない。
なかなかに豪華な内装。ぱっと見ると、泊まる場合には幾らか諭吉さんが必要があるだろうとわかる。
そう、最上階のスイートルームです。

「まあ良いわね、私は寛大にもこの首輪については目をつぶりましょう」

ひとしきり主催側(主にエレキシュガル)に対しての溢れんばかりの愚痴を零し尽くし、すっきりしたのか落ち着くカーミラ。

「さてっと……」

ベッドに腰掛けながら、自身のデイバッグを開け、やっとこさ支給品の確認を行う。
そこで、彼女はぽつりと呟く。

「別に大した物がなくたって、私は大丈夫なんだけどね」

カーミラには、ある秘密がある。
北欧神話には、ラグナロクと呼ばれる概念が存在する。
その筋の専門家により、各種分かれるが、主に世界の誕生と滅亡に関する記述と考えば、概ね合っている。
カーミラの世界のラグナロクとは、

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

その昔、世界が誕生する遥か以前。

邪悪の化身ロキと、それに従う魔の眷属たち。

それらに対し、絶対神オーディンに使える北欧の神々による、無限にも思える長い長い戦いが続いていた。

その両者の戦いは苛烈を極め、お互いを憎み合い、根絶やしにするまで続いた。

結果、北欧の神々、邪神及び眷属たちは、戦いによってほぼ全てが滅び去った。

それとともに、その時点の世界は滅び、残った無の世界から、人間の暮らすこの世界が誕生したーー

しかし、全てが滅んでいた訳ではない。
その痕跡は、遥かに長い時が流れ、薄まってもなお、脈々と継承されていた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆


邪神ロキ側に従っていた眷属のうち、ロキの子どもたちと呼ばれる二体の眷属が存在していた。
一人は『フェンリル狼』
全狼男の始祖であり、非常に凶暴でいて残忍な存在だったと伝えられている。
もう一体は『ミッドガルドの毒蛇』
フェンリル狼と同じく、多くの神々を葬り、死を司ると伝えられている伝説の毒蛇。

この二体は、主であるロキと、敵対する北欧の神々も滅んだあとも、生き残っていた事は、あまり知られていない。
無から世界が誕生し、人間が群れをなし、社会を形成したあとも、この二体の血筋は続いていた。
彼ら二体は、失った種族たちを再び繁栄させるため、人間と交わった。
ふたりの血筋は、現在までしっかりと受け継がれている。

「私は神の血をひく者よ……エレキシュガル、貴方が私と同じような存在だとは、直感でわかったわ」

カーミラはその二体の内の一体、ミッドガルドの毒蛇の末裔である。
彼女の血液は死肉を蘇らせ、望めばその体を巨大な毒蛇に変身させる事ができる。
吸血鬼とも、妖怪とも違う、邪悪の血筋ーーそれがカーミラだ。
もっとも、あくまでもその末裔だというだけ。
本家そのもの、遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い、遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い遠い
……気が遠くなるほど遠い先祖の、ミッドガルドの毒蛇ほどの力は有さない。
長い時のうちにその血も薄れ、一応はその権能を一部使えばするが……

カーミラはズバリといえば、『悪魔』のカテゴリーに属する。
死神であるエレキシュガルの同類なのだ。

ひとしきりデイバッグを漁りながら、カーミラは薄く微笑んでいる。
背筋が凍りつくような笑みを。
彼女には野望がある。
祖先の主であるロキを現代に蘇らせ、『自分を認めなかった学会』諸共、世界を滅ぼすこと。
その後、忠実なる完璧な人類を建造し、新たな世界の支配者になること。

非道な人体実験の果てに、その実験帯をすでに創り出していたカーミラ。
悪魔とは言え、その狂った野望を叶えるためには、些かの躊躇も存在しない。

「私が死ぬはずだったのは……恐らくは本当でしょうね……ならなおさら…」

「殺さなきゃね」

人間ではない。




彼女の瞳は、蛇そのものだった。





【F-8赤の国にあるホテル/未明】

【カーミラ・フランケンシュタイン】
【状態】健康、白衣姿。
【装備】無し
【所持品】基本的支給品×1 ランダム支給品×3
【思考・行動】
1:殺し合いに乗る。
2:私に首輪をつけるなんて……許すまじ!!

【備考】
※巨大な毒蛇に変身できます。
※血に死肉を活性化させ、蘇らせる効果があります。
※ふとした事で一部(瞳など)が蛇化するようです。
※エレキシュガルを直感で本物の死神と判断しました。


聖書の世界では、神が作りし最初の人間。
アダムとイブに、知恵の実を食べさせたのは、蛇の姿をした悪魔だった。
蛇とは、因果な生き物。
最も高い種族的死亡率が、同族による捕食。




ーー毒蛇は、全てを喰らう

ーーそれでもなお、飽き足らず、

ーー根絶やしにするのみ。




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