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ババッ、バババババババッ!
タッ、タッタッ!

九鬼組と天鬼組~譜久村聖と佐藤優樹の戦場となったモーニング商業1-C組の教室では
拳を捌く音、ステップの音だけが響く静かな攻防が繰り広げられていた

優樹が細かく連打の打撃を仕掛け、聖がそれを捌きながら隙を見て掴もうとする
しかし優樹がステップで逃れる
そんなヒット&アウェイの攻防が延々と繰り返されているのだ

基本的に、譜久村聖の戦闘スタイルは護身術をベースとした「守」の戦い方である
相手の力を利用しての投げ、掴んでの極め技が主な武器なのだ

そんな聖にとって佐藤優樹は最もやり辛い戦闘スタイルの持ち主であった

細かく振りの小さい精確な打撃、軽やかでリズミカルなステップ
生田のように決して力任せには突っ込んでこない掴まえ辛い相手

「はっ!」 バッ!

一瞬、腕を掴みかけた・・・だが強引に捌かれた
膂力も意外と強いのだろうか

(・・・手強い。香音ちゃんがやられたのもわかる)

聖はこの戦闘スタイルの持ち主と一度だけ喧嘩りあったことがあった
汗一つかかず、細かい打撃を繰り出し続け聖に一切の反撃の隙も与えず倒した偉大な喧嘩屋
聖にモー商のレベルの高さを痛感させた人物

(この子・・・似てる。田中さんに!)

勿論、田中れいなに比べればまだまだ未熟。
隙は充分にある・・・が、その戦闘スタイルが聖の中のトラウマを刺激していた

「なかなかやりますわね。でもそんな軽い打撃では私は倒せなくてよ」
「ニヒヒ・・・たおせるよ!だって田中さんもそう言ってたし!」

「「「「えっ!?」」」」

聖だけではない。その場に居る全員が息を呑んだ。
特に驚愕したのは田中れいなに憧れてモー商に入学した遥だった。

「おいまー!今なんて言った!」

遥の方を向いて優樹がニヒヒ、と悪戯っぽく微笑む

「田中さんが言ってたんだよ。この闘り方でたおせないやつはいないって」

嘘だろ!ちょっと学校に姿を見せただけでも生徒達が凍りつく伝説の喧嘩屋
誰とも慣れ合わない一匹狼の田中さんと喋ったのかまーは!?

「・・・その戦い方。田中さんに習ったの?」
「はい!たなさたん、最初は嫌そうにしてたけど結局教えてくれました!」
「いつからだ!いつから田中さんに師事した!」

遥がたまらず背後から聖との会話に割り込む

「どぅーがやられた日からだよ・・・九鬼さんを全員たおすためにね」

横顔だけ向けた優樹の表情はいつもの笑顔と少しだけ違っていた
ぞくっ・・・遥の背中に何か寒気が走る

「なるほど、私の直感は正しかったというわけですね。フフッ、アハハハ・・・」

譜久村聖は不思議な気持ちになった。なんだろう、なぜか笑いがこみあげてくる
田中れいなの弟子・・・面白い!先程のまでの『復讐』とは違う闘志が聖の中に沸き上がってきた。

「でたらめ言っとるんじゃなかとよ!田中さんが弟子なんか取るわけなか!」

ナマタ~生田衣梨奈が立ち上がった。ナマタは田中れいなの同郷、福岡の出身である。
しかし田中れいなはナマタのことを全く歯牙にもかけずスルーしていたのだ。
勿論、それはナマタが田中れいなの仇敵である前総長、新垣に師事していたからという事情もあるのだが・・・

「えりぽん、信じられないけどたぶん本当よ。このスタイル、田中さんしか有り得ないわ」
「なんねあの人は!ウチら九鬼じゃなくて天鬼の味方!?ふざけんじゃなかとよ!うるぁああああああああ!」

パシッ

優樹に殴りかかろうとするナマタの手首を後ろから聖が掴んだ
同時に、素早く優樹の前に立った人影がナマタの拳を掌で受け止めた

「先輩、タイマンの邪魔とか粋じゃないですよ?何なら私が代わりにお相手しましょうか?」

ナマタの拳を受け止めたのは青ジャージの石田亜佑美。

「その通りですわ。気が合いますわね、貴方。えりぽん、この方に相手して貰ったら?」

速い・・・一瞬にして間に入った。この子も只者ではない。
天鬼組、なかなか面白いじゃない!聖の心に更に闘志が沸き上がった

「なんねチビ!ええっちゃ!お望み通り粉々にしちゃるけん!」

ナマタのもう片方の大振りの拳がブン!と石田を襲う

しかしフッ、と一瞬にして石田の姿がナマタの視界から消え、拳は大きく空振りする

「えっ!?」
「ここです、先輩」
「!?」

真下から声が聞こえた・・・ガガガガガガガガガっ!
次の瞬間、ナマタはマシンガンのような石田の連打をボディにモロに受ける

「うぉおおおおおお!?」

やばか!懐に入られた・・・けど

「そんなん効かんっちゃ!」
「おおおっとぉ!?」

ナマタの丸太のような蹴りが石田の身体を横薙ぎに吹っ飛ばし、壁に叩き付ける

やはり・・・相性は悪いか。できればやりあいたくなかった。
ギリギリでガードしたものの、壁に叩き付けられた石田亜佑美はそれなりのダメージを受けていた。
流石鉄人ナマタと呼ばれるだけのことはある。あれだけの連打を受けながら蹴りを放ってくるなんて常識の範疇を超えている。
あまりの腹筋の固さにこちらの拳が痛む。まだ、九鬼とやり合うつもりなんて正直なかった・・・
しかし、優樹の戦いぶりを見て、そして田中れいなの話を聞いて気持ちが昂ぶってしまい、つい間に入ってしまった。

「だーいし!大丈夫か!」

遥が間に割って入ろうとするのを石田は手で制した。

「言っただろう!タイマンに手ぇ出すのは粋じゃねぇって!」

ばっ、と石田がメガネを捨て青ジャージを脱いだ
青ジャージの下から体操着の信じられないぐらい絞られた引き締まった身体が露わになる。

「だっさっ!なんねそのボロボロの体操着!何年前から着とぅと?」

確かに『1-C 石田』と大きく書かれたゼッケンが縫われた体操着はかなり年季が入ったものに見える。
しかし、ナマタのこの一言が戦いの行方に大きな影響を与えることになる・・・

びゅんっ!と遥の視界から石田が消えた。尋常ならざるスピードを活かした攻撃が石田の真骨頂だ
メガネとジャージを捨てて更にその機動力が増している・・・いわゆる本気モードだ
しかし、遥の目には今日の石田の動きはいつもより更に速いものに見えた。というか目で追えないレベルである。

ドガッ!

「おごぉおおっ!」

先程と同様、石田は一瞬でナマタの懐に入り込んでいた。
しかし、今回は拳の連打ではない。

肘・・・全身を預けて一点に力を集中させた肘の一突きがナマタの鳩尾に突き刺さっている。
これは・・・さすがに効いている!

「人の貧しさを笑う心!そっちの方がダサいだろうが!」

だーいしが・・・キレた。
今日は何だかおかしな日だ・・・優樹も・・・だーいしも皆おかしい。
天鬼組ってこんなんだったっけ!?

遥は、ようやく気付きつつあった。入院中の一か月で自分が大きく出遅れていたこと
そして天鬼の皆は思っていたよりずっと強いこと(飯窪除く)

「が、があああああああっ!」

ぶんっ!ナマタがまた大振りの拳を繰り出した
嘘だろ・・・さっきの肘食らってまだ立ってんのかよ!

パシパシパシっ!ぶんっ!

一方で譜久村さんと優樹は相変わらず地味ぃ~な攻防を繰り返してる
しかし先程までと違うのは優樹だけでなく譜久村さんからも笑みがこぼれていることだ

マジで何なんだよ・・・今日はみんなおかしいだろ

そのとき、ぴろり~んと、音が教室の後ろの方で鳴った
遥は音の方をふっ、と見る

倒れた戸の下から手が伸びている・・・携帯を持った手
飯窪?さっきのはメールか何かの着信音か・・・潰されてんのにメールするなんて余裕あんな?
つーかこの状況で誰にメールしたんだよ?

遥は、飯窪の手から携帯を取り上げ着信画面を見る

From:あやちゃん

あやちゃん?誰だ?コイツの沢山居るお友達か?

Sub:Re:Re:救援求む!

救援?誰かに助けを呼んだのか?
人のメールを読むなんて不謹慎だが遥は興味にかられ、そのメールを開いた

To:はるなん

到着したよ~!今校庭だよっ!
どこに居るか教えて
すぐいくから!

校庭・・・?他校の生徒にわざわざ助けを求めたのか?
社交モンスターとか言ってるけどコイツ実は友達少ないんじゃね?

ばしっ!

遥が呑気にメールを見ている間に二つの戦いは佳境を迎えていた。

「取った!」

遂に譜久村さんが優樹の腕を掴んだ!これは譜久村さんの粘り勝ちだ
優樹が打撃で抜け出そうとするがさっ、と打撃を繰り出させないよう譜久村さんが身体をぴったり密着させる
そしてもう片方の腕で優樹の腕を掴んだ・・・フクムラロック!
単純なパワーだけでは絶対に抜け出せない必殺のホールド

「んぎぎぃいいいいいいっ!」

優樹が激しく暴れて、強引に抜け出そうとするが無駄だ
かつてモー商でアレから抜け出せた奴は居ない

一方でナマタとだーいしは距離を取って対峙していた・・・2人の間に物凄い殺気が漲っている
次の一撃で・・・決まる!

「かのんちゃんのこと!謝りなさい!」
「やだぁ!まーは悪くない!」
「謝らないとこのまま折るわよ!」

ギギギギ、と譜久村さんが優樹の腕を捻じり上げる
勝負あったか!?つーか折れるぞ!

「うるぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

ナマタとだーいしが互いに雄叫びを挙げて全力でダッシュを始めた。こっちも決着・・・

ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

 

遥も聖も、教室の全員がその音の方を向いた
笛の音・・・その笛の持ち主は笛から手を離すとパンパン、と手を叩いて軽い調子で言い放った

「はいはいそこまで~、続きはWebで・・・っていうのは冗談だけど」

教室の入り口に立っていた長身の生徒に向かって、聖は力なく放心したように呟いた

「道重・・・さん・・・」

笛を吹いた人物、道重さゆみ・・・現モーニング商業高校の総長。
かつての総番、高橋愛や新垣里沙らと共に無敵のプラチナ期、と呼ばれたモー商の一時代を気付いた1人である。

「なんで邪魔すっと!コイツら〆てるとこやけん!」

生田が道重に食ってかかる・・・が生田が言い終わるか終わらないかと同時に道重がかぶせる

「生田ぁ、この私に楯突くつもり?ガキさん悲しむだろうなぁ~。縦の礼儀を守らない奴、あの人嫌いだよ?」

決して喧嘩は強くない。しかしその堂々とした佇まいや言葉には妙な説得力がある。
道重が総長になった後、他校からいささかナメられているのは事実だが、モー商内の人間は誰も認めている。
『道重しか総長やれる奴は居ない』と

「でも・・・」
「でもじゃない!っていうかそれどころじゃない!アレを見なさい!」

聖の言葉を遮って道重はつかつかと窓の方へと歩き、校庭の方を指差した
戦いの途中は誰も気付いてなかったが、何だか校庭の方から騒がしい声が聴こえる気がする
皆、窓際に集まり校庭の方を見る・・・見えたのは、驚くべき光景だった

「「「「「ス・・・スマ高!!!?」」」」」

 

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