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あああっ!くっそ!重めぇんだよ!!!
初夏の暑い廊下を遥達天鬼組は各々、大きな荷物を抱えてよろよろと歩いていた

田中さんが持ってきた謎のDVD、それを全校生徒の前で再生する為に・・・

「ちょっと1年!ぼーっとしてないで視聴覚室からモニターとDVDプレイヤーとスピーカー持ってきて!」

道重さんにそう言われたら仕方が無い。でもなんでスマ高戦の論功行賞上位のウチらがこんな・・・

100インチの液晶TV。なんでこんなデケえの買ったんだよウチの学校は・・・っとっとっ!

「おいはるなん!ふらついてんじゃねー!」
「ご、ごめんどぅー!私箸より重い物持ったことないから」

ふらふらよろよろしながら巨大なモニターを運んでいるのは遥、そして飯窪春菜

「ちょ、無理・・・」

小さな身体で台車に載せた2台のスピーカーを運んでいるのは石田亜佑美
いや、台車使えるだけマシだろ。このモニターなんか台車で運べねーし

「ブフォ、どぅー汗びっしょりだよ?ニヒヒヒヒ」

小型のDVDプレイヤーを小脇に抱えているだけの佐藤優樹が無邪気に笑う
最初のじゃんけんで1人勝ちしやがったコイツが一番軽いのを持ってる・・・ああ、ムカつく!
汗が目に入る。やべえ、アタマがぼーっとしてきた・・・熱中症ってやつか?あー水くれ!

と、優樹に声を掛けようとしたそのとき、先導して背を向けてモニターを運んでいた遥の背中に
どん、と鈍い衝撃と共に柔らかい何かがぶつかった

「痛ってぇなぁ!誰・・・!?」

振り返った遥は目を疑った。汗が入ってハッキリとは見えないが間違いない

「あ、すみません!大丈夫ですか」

その小柄で地味な女はすぐに姿勢を正して遥に丁寧に一礼した

「あ、なんだテメー?ウチの・・・」

啖呵を切り掛けた石田の声を遮るように遥の声が廊下に響く

「拳高・・・なんで拳高の奴がここに居るんだ!?」
「けんこう?健康ランドから来たのこの子?すごーい!」

・・・このアホは論外として飯窪、石田もイマイチ状況が飲み込めていない
モー商の制服ではない生徒がモー商の中に居る・・・

「拳高?どぅー、知ってるのこの制服?」
「どこだか知らねぇがコイツもウチに攻めてきたクチか?どうなんだどぅー?」

そうか、地方、そして東京の田舎から来てる他の天鬼は知らなくて当然だ
波浪区の吐き溜め、全てのヤンキー校の底辺、最後の滑り止め・・・拳修高校
その拳修高校がウチに仕掛けてきた?いや、有り得ない。それに拳高の大物の顔は遥は大体知っているが
ギョロっとした目、浅黒い肌、地味なおかっぱ・・・目の前に居る女、こんな奴は見たことが無い

「誰だテメー?拳高がここで何してる」
「あっ!すみません!何か誤解をされてるようなので自己紹介させて頂きます」

その女はすーっ、と息を吸い込むと爽やかな声でこう名乗った

「本日より、モーニング商業高校に転校してきました。小田さくらと申します」

 

「転校・・・だと?」

『転校』そのキーワードを聞いた遥の目が泳いだ。そして顔がみるみる青褪めていく

「どうしたのどぅー?顔色悪いよ?ねっちゅうしょー?」
「バカ!熱中症なら真っ赤になんだろ」

拳高のクズがモー商に転校?バカな、有り得ない
モー商に途中から転校してきた人間は長い歴史の中でも3人しか居ない

まず、道重さん達の代に居た中国からの交換留学生、李純と銭淋
まぁこのケースはかなり特殊だろう
なんせ交換留学だし『転校』というのとはちょっと違う『試験』も免除だったらしいし
ただそれなりに強かったとは聞いてるけど

そしてもう1人、長いモー商の歴史の中でただ1人実力で編入試験を突破して転校してきた人物

『狂犬』藤本美貴

あの田中さんですら恐れていたというモー商のレジェンドヤンキーの1人だ

「・・・お前」
「はい?」

おずおずと口を開く遥、物怖じせずに応える小柄な女、小田さくら
嘘だろ、こんな弱そうな奴がまさか

「『試験』は受けたのか?」

一瞬、小田さくらの口の端がニッと吊り上がったような気がした
コイツ、やっぱり

「はい。なかなかハードでしたが何とか合格を頂きました」

全てが遥のアタマの中で繋がった
他の1年、スマ高との戦いから日が経っているにも関わらず
より怪我が悪化したように多かった理由

「あ、運が良かったんだと思います!何でも皆さん他校との戦いの後で手負いだったとかなんとか」

全く話についていけていない遥以外の天鬼組3人の頭の上に???マークが浮かんでいた

「どぅー、何の話?」
「同じだよ」
「えっ?」

飯窪の問いに遥が震え声で答えた

「ウチらが過酷な入学試験を突破したようにコイツも編入試験を突破したんだ」
「ん?編入試験ってどんな試験なんだ?1人じゃバッジの取り合いとかバトルとかできねぇだろ」

石田の問い、それはもう答えを言っているようなものだ
そしてそこには目を背けてはいけないもう一つの真実がある

「あ、はい。現1年の皆さんと100人組手をやらせて頂きました」

小田さくらが目を輝かせて、嬉しそうに答える
目を背けてはいけない事実。それは入学試験よりも編入試験の内容の方が遥かに厳しいものであること。
恐らく、編入試験の相手として選抜された100人は1年の中からランダムに選ばれた100人
だからハル達は恐らく『たまたま』呼ばれなかった。

(運が良かったな)

本当はコイツにそう言ってやるべきなのだろう
でも遥はその言葉を口にすることが出来なかった
タイマンの連続とはいえモー商生100人を倒す実力、もし100人の中にハルが選ばれてたら・・・

「あ、あのすみません・・・一つお願いがあるのですが?」
「あ?こっちは忙しいんだ。それどころじゃねーよ」

つっけんどんな返事をする石田を無視して小田さくらがお願いを続ける

「職員室がどこか教えて頂けないでしょうか?なぜか校内にどなたもいらっしゃらないようで・・・」
「あー今みんな全校集会してるからねー、あ!そうだ!さくらちゃん」

飯窪!いきなりフレンドリー、流石だなおい!

「一緒に全校集会に来ない?職員室はその後教えるから。いいでしょ?」
「は、はい!是非ご一緒させてください!」

ダメだ小田さくら、その女は絶対何かを企ら・・・

「じゃあモー商最初の仕事!私の代わりにコレ、運んでくれる?はいはい、さっさっ」
「え、えっ!?あ・・・はい?」

言わんこっちゃない・・・気を付けろよ
モー商は魑魅魍魎の巣窟なんだ

強いだけじゃ、生き残れない

「あの、工藤さんですよね?」

モニターのもう片方の端、対面を持つことになった小田さくらが遥に話掛けてきた
つーかなんでハルの名前知ってんの???

「金子さんが宜しくって言ってました。あ、あとななみさんも!」

おいおい懐かしい名前だな、師匠、それに田辺。アイツら元気にやってんのか
ひととき、固かった遥の表情が綻んだ。いつか、ハルがモー商で天下獲ったら胸を張って会いに行きてぇなぁ

 

現実というものは往々にして思った通りにはならない
思い描いた夢、それを越える運命の歯車が急回転していることを遥はまだ、知らない

数日前、キュー学近くの港の倉庫

「あれ、かりんじゃない?それにさゆきも」

勝田里奈は指定場所の倉庫内に既に居た先客が宮本佳林、高木紗友希であることに一瞬だけ驚きの色を見せた
(表情が薄いのであまりわからなかったが)

「久し振りんっ!」
「お久振りです。スマ高の皆さんも呼ばれてたんですか。竹内・・・さん?もお久し振りです」

勝田は必死で手でシーッのポーズを取った
ダメ!そこに触れちゃ!

「私は竹内ではないっ!正義の使者、ヤッタルチャン2号だ!」
「同じくヤッタルチャン1号!やったるで!」

手作りのヘルメット、全身タイツ、マント
正義のヒーロー、いや、ヒロインが2人そこには立っていた

「あのさぁ、タケちゃんが正体バレしたくねーのはわかるけどなんでかななんまで・・・」

慌てて勝田が田村の口を塞ぐ。だからダメだって触れちゃ!!!

「プッ、コスプレ?w竹内さん何してるんですかぁ?」

宮本佳林が小馬鹿にしたようにヤッタルチャンに近付く
あああ、どいつもコイツも無神経なタケちゃん乙女なんだから

「だーかーらー!朱莉は竹内じゃねーーーーーーーーーーーーーー!!!」

キレた!タケちゃんがキレた、しかも朱莉とか自分で言っちゃってるし!
飛び出して、一瞬にして佳林との間合いを詰める・・・いきなり必殺の鉄山靠!!!

「おーっとぉ!」

しかし、佳林は脅威的な柔らかさで身体を捻りその一撃を完全に避けた
相変わらずくねくねと蛸のように有り得ない動き・・・独特のヨガ闘法

「かりん!テメー!」
「おい!やるのかJ農!そっちの奴も来いやぁ!」

血の気の多いめいめいがすぐに反応した
あっちゃー、予想はしてたけどこんな展開になっちゃうかぁ

「別にやるのは構わないがお前誰だ?」
「テメーこそ誰だ猿みたいなツラしやがって!」
「名乗らないならリーゼント子泣きじじいとか呼ぶぞ」
「長ぇよ!それに誰が子泣きじじいだこの猿助が!」

このままではマズい。勝田はスッ、と田村の背後を取った
血の気の多い人には全員寝てもらいましょう

一触即発。そのとき、倉庫の鉄扉がまたガラガラを音を立てて開いた

「あれー?もう始まってるよー」
「いや、違うだろ。大体予想通りだったけど」

現れたのは4人程の集団
リーダー格と思われるショートカットの女がズンズンと前に進んできた

「かりん、タケちゃん、今はやめときなよ。そっちの2人も。やめないならウチらが相手になるよ」
「あぁ?雑魚はすっこんでろよ!」

ヤバい、コイツらまで出てくるなんて

「りな、ウチらどうしたらええんやろ?」
「とりあえずかななんは黙ってヤッタルチャンしてて」

私1人ではさすがに全員は止められない、マジで一体どうすれば・・・

「あー、みんなゴメーン!遅れちゃった。あれ?もうウォーミングアップ?いやー若いもんはやっぱりいいねぇ!」

再び、鉄扉から掛け込んでくる小柄なシルエットがあった
やっと来てくれたか・・・私達を召集した張本人
なんとも呑気な声、朗らかな温かい表情。これだけの人数を集めるのもこの人徳?だろうか
しかし、この頭数、面子・・・メールに書いてあったことはやはり本気か

「あれ?どしたのみんな固まって?ウォーミングアップ終わり?じゃ、早速ミーティングしようか」

部活・・・まるで部活のノリだ
割と恐ろしいことをしようとしてるのに部活

私的には

こういうノリ、嫌いじゃない