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太陽は高くのぼり、気温はグングン上昇していた。
J農果樹科の実習室。いつものように獣巣獣巣の面々がたむろっている。
ただ、朋子だけは課題提出とかで、その場にいなかった。

「あーりー、氷出しといて」由加がクラッシュアイスでデザートを作ってくれていた。
キャラメルティーのシャーベット。甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「とも、遅いなあ」アイスピックで氷をガシガシ砕きながら、あかりが口を尖らせた。
早く食べたくてしかたがない。「ねえねえ、先に食べてようよ。ともの分は残しといてさ」
代弁するように紗友希が提案する。「賛成賛成♪」佳林が同意した。

「しょうがないわね。暑いもんね」由加の一言にみな顔をほころばせた。
氷を砕いているあかりを見ながら、佳林が唐突に訊いた。
「そういえばさ、ともをアイスピックで刺したやつがいたって聞いたことある」
3人の視線が由加に集中した。
「ああ…まだあなたたちが入学する前の話ね…」由加が応える。
「ウソ?何があったん?」「とも、あんまり自分の話しないもんね」「ねえねえ、ゆかちゃん教えてよ」
3人が興味津々といった顔をする。まるきりゴシップ好きの女子高生になってしまったようだ。

「ともがいないところでそんな話は…」とはいったものの、
ワクテカして目を輝かせている3人に根負けした。
「…あれは、まだともと仲良くなったばかりの頃だったかな…」

「敵対してたグループと衝突してね」由加が話し始める。
「タイマンとは名ばかりで、多勢に無勢。ともと私は、チェーンと鉄パイプで応戦したの」
「え?」あかりたちはいまだ由加と朋子の“本気”のケンカを見たことがなかった。
小競り合い程度のケンカはしょっちゅうだが、道具を使うようなケンカは…。

現在こうしてトップにいるからには、当然勝利したのだろうが、
いつも穏やかな由加と冷静な朋子からは、ちょっと想像しにくい場面である。

「その時に刺されたの?」紗友希も同じ感想を持ったのか、あかりを見つめてから尋ねた。

「こっちもボロボロだったんだけどね」由加がつづける。
「全員片付けたと油断したのね。相手のリーダー格が突っ込んできたの、アイスピック片手に」
ゴクリと生ツバを呑み込む3人。
「ともは私をかばって刺されたのよ」

「暑い~。ぐったり~」朋子が実習室のドアを開けて入ってきた。
由加に集中していた視線は一斉に朋子に向けられ、朋子はたじろいだ。「な、なによ?」

「ごめんね、とも。みんな聞きたいっていうから」
「別に隠してる話じゃないし。いいよ」朋子は由加に苦笑を投げかけた。
スカートをまくって太股を3人に見せた。
「ほら、ここが刺された傷。ついでにいうと、こっちがヘビに咬まれた傷」
いいながら朋子は由加にウインクした。

「で、相手はどうなったの?」佳林がじっと朋子を見つめた。
「私も刺し返したよ」
またしても生ツバを呑み込む3人。だが、そこで終わりではなかった。

「刺し返したはいいけど痛くてさ。ゆかちゃんにバトンタッチしたわけ」
朋子が肩をすくめながら、由加をチラリと見た。
「ゆかちゃんはそのあとアイスピックでそいつの手のひらを重ねて地面に縫いつけてね」
言葉を失う3人。「そのまんまレンガで滅多うちしたの」
いかにも楽しそうに由加を肘で小突いた。
「よく死ななかったね、あいつ。まあ総入れ歯にはなったろうけど」

デザートを用意していた由加に、
「あ、あたしがやる!」「ゆ、ゆかちゃんは座ってて!」
あかりたちが慌てて声を揃えて叫んだ。