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須藤茉麻は動かない。

ダイヤモンドが砕ける事がないように、須藤茉麻は動かない。
西から昇った太陽が東に沈む事がないように、須藤茉麻は動かない。

その日、Berryz工業須藤茉麻は食事中であった。
お気に入りのプロレス漫画′未来少年名探偵コナン・ザ・グレート・テキサン′のコミックを読みながら、行き付けの定食屋で注文した日替り定食が給仕されるのを待っていた。

ふと、店の外が騒がしい。須藤は何事かといぶかしんだ。
が、定食屋の親父が須藤専用の丼に飯を盛っているのが視界の端に見えたため取り敢えず放っておいた。

「須藤!居るのは分かってんねんぞ!出てこいや!」
先程から騒がしかったのは、どうやら須藤を倒そうと追ってきたヤンキー連中であるらしかった。
「ったく。面倒くさい連中だなぁ。」
と思った須藤だったが、運ばれてきた日替り定食のサラダにドレッシングもかけず、取り敢えず一気に胃の中に納めた。

ガラッ!
定食屋の引き戸を開けヤンキーが2~3人入って来る。
「オイッ須藤!表出ろや!」
ヤンキーの一人が須藤を挑発する。
須藤は日替り定食のご飯にのりたまをかけながら返答する。
「うるさい。ご飯の最中だよ。ちょっと待ってよ。」
泰然自若。
須藤は黙々と日替り定食をたいらげていく。

「ふぅ。」
5分後。日替り定食特盛りを完食した須藤が、麦茶を飲み干し一息つく。
「ちょっとそこ座りなよ。」
須藤は、一人の大柄なヤンキーを対面に座るよう促す。

「ねぇ、腕相撲しようか?」

「何やて?」
「アンタが私に勝ったら、アンタの舎弟になってあげる。普通に私をボコるよりお得でしょ。」
「よーし、ホンマやな。」
「女に二言はないよ。」
そう言われた大柄なヤンキーは、腕捲りをしてテーブルの上にドンッと片肘を付いた。
須藤は組んでいた腕をほどくと、ゆっくりと相手の手を掴みテーブルの上に肘を付いた。ゆっくり、ゆっくりと。

はっけよーい、のこった!定食屋の親父が腕相撲の行司をかって出た。この親父、大の好角家であった。

「ぬおぉーらぁー」
ヤンキーが顔を真っ赤にして力を入れる。対して須藤は全く涼しい顔のまま微動だにしない。
まるで全盛期の小錦の取組のように、ジリジリとギリギリとヤンキーの腕をねじ伏せていく。

腕相撲勝負は須藤の圧勝で終わった。
ヤンキーの連れも、呆気にとられたまま二人の取組を見守るだけだった。

「やっぱり茉麻ちゃんは強いねぇ。将来は女子プロ(レスラー)だねぇ。」
定食屋の親父が須藤の勝利を褒め称える。
須藤はウフフといった笑みを浮かべ、
「美味しかった。ごちそうさまでした。」
そう言って定食屋の親父に会釈をして、軽やかな足取りで店を後にした。


「(自分の)腕が折れるか思うたわ。あの人より腕相撲強い人に未だに会った事あらへん。全く(須藤の腕は)動かへんかった。イエイッ!」(寺田光男・談)

誰あろうこの大柄なヤンキーこそ、後の第69代三冠ヘビー級チャンピオン寺田光男その人なのであった。


須藤茉麻は動かない。


須藤伝 完