※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

スマ高との休戦3日後、週末の放課後
総長の道重の招集によって全校生徒がモー商体育館に集合していた。

「ねーどぅー?何が始まるのー?」

工藤遥に絡み付きながら佐藤優樹が悪戯っぽく微笑む

「あ?論功行賞とか言ってたぜ?っーか絡むな!痛って!」
「ろんこーこーしょー?何それ?龍 江功さんのショー?」
「誰だよそれは!」

2人とも先の小川紗季との戦いで顔を腫らしているが
さすがは若いだけあって既に元気を取り戻している、いつものノリだ

「よっ、はっ、フッ!フッ!」
「おいだーいし、テメーもうっせーよ!何やってんだ?」

もう1人元気な人物が居る。石田亜佑美だ・・・つーかなんだよその体操?

「Rehabilitation!」

無駄にいい発音だなオイ・・・
狡猾な福田花音に翻弄されていたがコイツも実は大したダメージは受けていないみたいだ
しかし、天鬼組でただ1人浮かない顔をしている人物が居た

「はぅぅ・・・」
「おいはるなん、元気出せって。色々あったけど丸く収まったんだし」

遥はとりあえず気休めを言ってみたが無駄な感じがした
まー無理もない、コイツのせいで抗争になったわけだし
他の1年や上級生達も心なしか春菜のことを白い目で見ているような気がする
こりゃーなかなか立ち直れないだろうな・・・

「おう1年共、揃ってるな」

デ○・・・いや、鈴木さんだ。一緒に譜久村さん、生田さんも現れた。

「優樹ちゃん、香音ちゃんに謝りなさい」
「いやですぅー!べーだ!」
「お前!まだ反省しとらんとか!」

うわ、再び一触即発か。昨日の今日でそれはちょっと勘弁・・・

「いいって聖ちゃん、生田。油断したウチが悪い」

鈴木さんが譜久村さんと生田さんを制した。やっぱりこの人意外といい人?

「でも次にやるときは容赦しねぇからな糞ガキ」
「イヒヒヒヒヒ」

そうだ、九鬼と天鬼。その抗争はまだ決着が付いていない。
遥はゴクリ、と唾を飲み込んだ。スマ高との戦いで見たこの人達の強さ
ウチらは・・・果たしてこの人達を越えられるんだろうか?

ざわざわざわ

そうこうしている内に生徒達がざわめき始めた。
道重さゆみ、総長の登場である
足を引き摺りながら登壇する道重、勝田との戦いのダメージはまだ癒えていない
しかし飽くまで凛とした姿勢で堂々と生徒達に壇上から向き合った

「ぽんぽん、あ、あ、テストマイク・・・えーと、全員集まったかな?」

全員、居るかな?いや、あの人が居ない・・・

「まぁいいや、これよりこの前のスマ高戦の反省会並びに論功行賞を始めます」

論功行賞・・・外との戦いが長らく途絶えていたモー商にとって久々の論功行賞である
遥達天鬼組、いや聖達九鬼組にとっても初めての論功行賞だ
論功行賞といっても何か賞品が貰えたりするわけではない。貰えるのは『名誉』だけだ。
しかしこの『名誉』が非常に重要である。誰が一番活躍したか?誰が一番強いか?
そして誰が・・・次期総長にふさわしいのか?

これはモー商のヤンキー達のプライドを刺激する一大イベントなのだ

「えー、まずは総評から・・・ちょっと長いけど寝ないでよ」

ワハハハハハハハ、と生徒達から笑い声が起こる。現総長はこういうトークが抜群に上手い。
前々総長は噛み噛みでやってたという噂は聞いたことあるけど

(道重総長の総評)
まずいきなり侵入してきたスマ高にみんなさゆみが指示する前に立ち向かった。
このことはすごく誇りに思います。みんな、ありがとう。(場内から拍手)

しかしです、肝心の戦いでは多くの生徒がスマ高の小数の強者達に圧倒されていました。
これはとても残念な点です。私が言えた義理じゃないけれどもちょっと鍛え方が足りません。(場内苦笑&ショボーン)

また、これは大半の人が知らないと思いますが私の元にスマ高からモ―商生に変装した刺客が放たれてきました。
私が負傷しているのはそのためです。(場内ざわざわ)

えー、ここからが本題。そんな状況を覆してくれた生徒達がこの中に居ます。

おおっ、と場内がざわめく

「それでは、論功行賞を始めます・・・まずは第6位から!第6位は2人居ます!」

やっべー!なんか鳥肌立ってきた!ハルだよね?ハルと鈴木さんだよね?道重さん助けたし!

「第6位・・・生田衣梨奈!石田亜佑美!」

えーっ!ハルじゃないのかよ!ふざけんなよ!

「おっ!?おおおっ!?」

だーいしは体操リハビリを続けていたが自分の名前が呼ばれて慌てて気を付け!の姿勢になった
なんでコイツが・・・

「理由は生田は敵の強者の一角のリーゼントを、石田は敵の副将、福田に絡んである程度抑え込んでいた点です。
 2人とも勝てれば尚良かったけど強敵と充分立派に戦ったと思います。ちゃんとさゆみは見てますよ」
「やったねあぬみん!」
「うぉおおおおおお!テンションMAX!」

出た、どや顔ガッツポーズ・・・そんな石田に比べて、生田さんはどこか浮かない顔だ。
最終的に勝田にやられたらしいけどやっぱりショックだよな、それ。無名の奴にやられたようなもんだし
その横で譜久村さんが私は?私は?と焦りながら猛アピールしている。確かに何で生田さんだけ?

「続いて、5位を発表します」

デレデレデレデレデレデレ・・・生徒達が口三味線、いや口ドラムを始めた。盛り上がってきたー!

「第5位・・・佐藤優樹!」

えーっ!?という声が場内を包んだ。誰だそりゃあ!?という声も
嘘だろ・・・コイツが5位かよ!?ハルは?ねぇハルは?

「やったー!イェイイェイ!」

論功行賞のことをよくわかっていなかったにも関わらず優樹は素直に飛び跳ねて喜んでいる
現金な奴だな・・・道重さんが再び口を開いた

「理由は、敵の旗を奪って混乱させたり敵の助っ人を抑え込んだりと地味に活躍してたところです。今後も精進して下さいね。」

「はいっ!」

優樹が元気よく手を挙げながら応えた・・・ぐぬぬぬぬ!ハルより目立つとはコイツ許せん!

「続いて、第4位です。第4位も2人居ます」

2人!ハルだよね?絶対ハルだよね?・・・ハルであってくれ!頼む!

「第4位・・・鈴木香音、工藤遥!」

よっしゃぁ!第4位!ハルは思わずガッツポーズを取った。

「理由は先程話した刺客に気付いて私を救ってくれた2人だからです。特に工藤は糞弱いのによく頑張りましたね」

場内から一斉に笑いが起こる・・・ちょっと!道重さ~ん、糞弱いは余計だってば!

「どぅー、おめでとう。ブフォw」
「糞弱いくせにやるじゃねーか!糞弱いくせに!」
「よかったな、もやしw」

優樹とだーいしの小馬鹿にしたような祝福・・・つーかハルはお前らより行賞順位上だぞ!
あと鈴木さん、もやしってーのはやめてくれ
ぐぬぬぬ・・・なんだこのスッキリしない感じは。でもまーいいや、名前売れたし。

「続いて第3位です・・・第3位は・・・」

あと呼ばれてないのは・・・つーかウチら活躍の割に順位低くねーか?他はあの人ぐらいだろ?

「第3位、鞘師里保!」

ざわっ、と場内がざわめく。そりゃそうだ、鞘師さんが3位!?おいおい、どーゆうことだよ?

「敵の強者、リーゼントを圧倒し更に敵の刺客を最終的に仕留めたのもりほりほです。さすがですね・・・ってりほりほ居るー?」

シーン・・・どうやら鞘師さんは会場に居ないようだ。
居たら「何で3位なんですかぁ!この私がっ!」みたいなことになってただろうから丁度いいのかも知れないが。
・・・つーかじゃあ1位と2位って誰だよ!!!

「では第2位を発表します・・・2位も2人居ます」

えっ?誰誰?ぽんぽん以外にコンビとか居たっけ?誰だよおい!

「第2位・・・譜久村聖!そして・・・飯窪春菜っ!」

「えっ!?」
「何っ!?」
「はぅぅ!?」

おーっ譜久村さん・・・ってえっ!?ハァ?
飯窪!?なんで!?おかしいだろおい!!!

疑問に思ったのはハルだけではなかった。今日の発表で一番会場がざわざわしている。
飯窪は今回の抗争の戦端を開いたスマ高に通じている戦犯・・・これが多くの生徒の共通認識だろう
ハルもダチだけど・・・本音をいうと今回の件はあまり納得いっていない。根は悪い奴じゃないのはわかってるけど・・・
何より飯窪本人が一番動揺している。涙目になりながらはぅはぅ言うばかりだ・・・一体何で・・・

「あー、みんな静かに!ちゃんと説明するから!」

道重さんの一声で一端は皆が静まる・・・しかしヒソヒソと話す声は止まらない
そんなヒソヒソ話を掻き消すように道重さんが説明を始めた

「まずフクちゃん、敵の強者の一角を抑え込んだだけでなく手打ちの立ち合い人まで呼んでくれた・・・
 さゆみに相談なく呼んじゃったのはちょっと気に食わないけど緊急時の判断として正解だったと思う。
 その強さと人脈、そして自分の意思、判断で大局を動かしてくれたことをさゆみは高く評価します!!!」

ぱちぱちぱちぱち・・・場内のどこからともなく拍手が起こった。その拍手は会場全体に拡がり、大きなものとなった。
確かに今回の戦い、譜久村さんの働きは大きいものだった。大局を動かす、か・・・確かにかなわねぇし鞘師さんより上かも。

「あっ、ありがとう・・・ごじゃいます・・・うぇえ」

当の譜久村さんは泣きじゃくっていた。相変わらず感激屋、そして泣き虫だ。
喧嘩のときは堂々としてて強そうなんだけどね・・・でもそういうとこ、嫌いじゃない。

「はいおめでとう、じゃあ次に飯窪だけど・・・」

場内が雰囲気が変わり一気にシーン、となった。ハルも唾をゴクリ、と飲む込む。なんで?なんで飯窪が譜久村さんと同率の2位?

「飯窪はスマ高を呼び込んでしまった張本人です。ハッキリ言って今回スマ高と揉めたきっかけの大罪人です。でも・・・」

でも?でも何だ?それ以上でもそれ以下でも無いんじゃないか?道重さんは一体何を評価してるんだ?

「飯窪は飯窪なりに自分の力で戦いを終わらせようとしていました。そして最終的にスマ高と手打ちできたのは飯窪のお陰でもあります。
 飯窪の土下座で敵の大将の和田が私達に土下座したんですよ?これって何気にすごくない?
 スマ高であれ何であれ一廉の人物にそこまで信頼され、大事にされてる飯窪はたぶん只者じゃない、さゆみはそう思います。」
 
道重さん、それは違う・・・と言いたかったが確かにそうかもしれない。あの偏屈な和田が信頼する人間は限られている。
でもいくら只者じゃないからって論功行賞2位はねーだろ、コイツ戦犯だし

「今回は確かにこの子の力はマイナスに働きました。でも今後スマ高、周辺校と駆け引きしていく上で必ず大きな力になってくれる・・・さゆみはそう信じてます。
 フクちゃんと同じく大局を動かす人間として今後の期待値込みの2位、誰がなんと言おうとさゆみは飯窪を評価します。文句のある人はさゆみが相手になるから。以上、2位までの行賞、終わりっ!」

シーン、そこまで道重さんに言われたら仕方がない。そんな空気だ。
ハル的には道重さんの言ってること、何となくわかるようなわからないような?確かにコイツのコミュ力は上手く使えば役に立つかもしんないけど

「あ、ありがとうございますっ!うっうっ・・・」

静けさの中、譜久村さんと飯窪の泣き声だけが響く。論功行賞ってこんなんでいいのか?・・・つーかそういや1位って誰なんだ!?

「さて、皆さんお待ちかねの論功行賞1位を発表します・・・第1位は・・・」

場内に緊張が走る・・・呼ばれてないのって誰だ?田中さん?いや、田中さんはあんとき居なかったし
まさか勝田みたいに影で大活躍してた奴が居るのか?・・・そんなわけねーよな
一体、一体誰なんだよ!!!

「第1位は・・・私、道重さゆみでーっす!」

うさちゃんピースをしながら道重さんが飛び跳ねて1位を発表した
そして・・・場内が凍り付いた

「あれ?聞こえなかった?じゃあもう1度言うね!第1位は、道重さゆみ!!!はい、みんな拍手っ!」

・・・ぱちぱちぱちぱち
場内からまばらに拍手が起こった。いや、道重さん、いくらなんでもそれはちょっと無理が・・・
そんなまばらな拍手とハルの心の声に応えるように、道重さんがマイクに捲し立て始めた

「ちょっと!さゆみは刺客に襲われてこんなにボロボロになって耐えてたんだよ?
 アンタ達がもうちょっとしっかりしてればこんなことにはならなかった、そうでしょ?
 大将のさゆみをパーフェクトに無傷で終わらせることが出来なかった時点でさゆみ以外の奴が1位なんて有り得ないっ!」

場内から失笑が漏れ始めた。でも、確かに理屈は通ってるような通ってないような・・・
その道重さんの必死さに優樹は爆笑している・・・コラ、失礼だろ!

「さゆ~、みっともないっちゃよ」

場内の全員が一斉にその声の主の方に振り向いた。
体育館の入り口、後光を浴びて立っているツインテールの小柄なシルエット

た、田中さんっ!

特注のスカジャン、ロングスカート、派手な髪色、メイク
いつ見てもカッコいい!!!ハルの憧れの人がそこに立っていた。

「たなさた~ん!」

優樹が脇目もふらず全力でダッシュし、田中さんに抱き付く
おいお前!何してんだ!ぐぬぬぬぬ・・・

「佐藤、ウザい・・・ってゆうか佐吉にやられたんやって?まだまだやね」
「えーっ!ちゃんと最後はやっつけましたぁ~!」
「2人がかりでやろ?もう1人は確かく、く・・・」

た、田中さんっ!ハルは涙目になりながら思わず前へと歩み出て叫んだ

「天鬼組!工藤遥ですっ!!!」

田中さんがちらり、とこちらを一瞥する
わわわわわ、緊張MAX!!!どうしよう、この場から消えてしまいたい・・・

「工藤、お疲れ。アンタのことは大体わかっとる。糞弱いとか」

再び、場内が爆笑に包まれた。そんな・・・田中さんまで・・・

「でも糞弱いってことはこれからいくらでも強くなれるってことやろ?頑張るっちゃよ」

ぽん、とハルの肩を叩いて田中さんは壇上へと歩いていった
田中さん・・・感動ですっ!ハル、絶対強くなりますから!

「れいな!一体どこ行ってたのよー!さゆみがこんなに大変だったのにー!」
「ごめんさゆ、バンドのライブが近いけん。音合わせとか大変で・・・胃も痛くて・・・」

最近、田中さんはバンドを始めたらしい。どんな感じなのかわからないけどきっとイカしたバンドに違いない。ライブ見てぇー!

「何がバンドよー!スマ高がいきなり攻めてきて・・・」
「あーあー、スマ高のことなら大体わかっとる。焼肉とか」
「その件は色々ヤバいからあんまり言わないほうがいいって!」
「あー、じゃあ整いナントカとか」
「それもダメだってば!」

そこからはくだくだと道重さんと田中さんのトークが続いた。
まるで漫才のようなやり取り・・・そのやり取りに体育館が暖かい笑いに包まれる
いつものモー商の風景が戻ってきたのだ

「で、何やったっけ?論功行賞?もう終わり?」
「終わり終わり!さゆみが1位でお・し・ま・い」
「うわ、職権濫用・・・みんな、どう思う?この総長」
「しょっちゅうフラフラしてる奴よりはマシでしょ!」
「そういうさゆは凹られて足元ふらふらやん」
「誰が上手いこと言えって・・・」

ピロリロリン♪ピロリロリン♪ピロリロリンリンリン♪

どこからともなく音楽が流れてきた

「ん?終わり?早いねー」
「あっ、そうだ!さゆとみんなに見せたいもんがあるとよ!」

そう言うと、田中さんは懐から1枚のDVDを取り出した。

「誰か、視聴覚室からモニターとDVDプレイヤー持ってきて!」

そのDVDが新たなる戦いを告げる知らせであることを、遥達はまだ知る由もなかった。