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「「「「「ス・・・スマ高!!!?」」」」」

教室の窓から遥達が目にしたのは信じられない光景だった
モー商の校庭・・・周辺校から神聖不可侵といわれたその領域で
見慣れぬ制服を着た一団とモー商の生徒達が小競り合いを演じている

その一団の真ん中の生徒が振っている王冠エンブレム入りの大きなピンクの旗
そのエンブレムが近年、周辺区域を席巻した新興勢力・・・
スマイル女子高等学院~通称スマ高のものであることを遥達は一瞬にして認識した

「な、なんでスマ高がここにおると!」
「あんなに堂々と・・・」

流石の九鬼組、聖達も動揺を隠せなかった。遥達天鬼組に至っては言葉すら出ない

「なんでからしらねぇ・・・」

道重さゆみがふ~っと溜息をつき肩を竦めながら言葉を続ける

「ウチらさぁ、ナメられてるんじゃない?」

・・・そうとしか思えない。
しかしスマ高は所詮数年前に設立された新設校。伝統も頭数も戦力も喧嘩の場数もモー商には大きく及ばないはず
一体どんな勝算があって仕掛けてきたのだろうか?
だが唐突な奇襲による動揺が薄れ、冷静に校庭の攻防の様子が見えてきたところで
遥はその認識がいささか甘いものであることを思い知らされる

よく見れば地に倒れているのはモー商の生徒ばかり。その数は徐々に・・・いやどんどん増えていっている!
死屍累々、そんな表現がぴったりくる状況だ。
更に状況を良く見るとスマ高の前線に2人、手練れの強者がおりモー商の生徒は殆どその2人に倒されている。
その2人の手練れの内の1人の姿を見て、譜久村聖、そして工藤遥の表情が凍りついた。

「あ、朱莉ちゃん・・・!?」「竹内さん!?」

 

「和田さぁ~ん、やっぱやめましょうよぉ~。絶対マズいっスよこれ~」

スマ高の手練れの1人、竹内朱莉はこの殴り込みに乗り気ではなかった。
別にモー商にビビっているわけではない。それなりに渡り合う自信はある。
しかし、朱莉にはこの殴り込みに乗り気になれない理由が二つあるのだ。

「うるさいタケ!とっととコイツら倒してはるなんを探して!」

そんな朱莉を後方から腕を組んで叱咤しているのがスマ高の総長・・・和田彩花
今回のモー商への殴り込みの発端となった人物だ。

総長なのに発端?という言い方はおかしいと思うだろう。
普通は総長が召集をかけて他校に殴り込むものである。
だが、飽くまで和田は『私事』でモー商を訪れたに過ぎない。
今回、スマ高の兵隊達の召集を掛けたのは和田の隣でほくそ笑んでいる人物なのだ。

「こういうきっかけ、ずっと待ってたんだよね~。ねっ、かななん」

その人物が旗を振っている生徒に話し掛ける

「さっすが福田さんですわ。こんなに短時間でこんだけ兵隊集めるとか尊敬しますわ。でも福田さん・・・」
「ん?」
「そろそろ疲れましたわ、なんかこの旗振るの意味あるんですか?」
「何言ってるのかななん!せっかく殴り込みに来たんだから大々的にスマ高ここにあり!ってアピールしないと」
「そういうことでっか、なんとなくやる気出てきましたわ~」

「おい福田さん!かななん!まったりしてねぇでちっとは手伝え!」

まったりと後方でだべっているスマ高の副総長、福田と関西弁の旗振りの生徒にツッコミを入れたのは
スマ高前線のもう1人の手練れ、前髪リーゼント風で後ろに長髪を流している手足の異様に長い生徒だ

「いや、めいめいが居ればウチらの出る幕なんか無いって。ウチのエースってとこモー商に見せてやんなよ」

確かに『手伝え』と言った割に『めいめい』と呼ばれた生徒は髪を振り乱し、常軌を逸したかのような暴れっぷりで
群がるモー商生達を次々にズタボロにしている。悪鬼羅刹・・・まさにそんな表現がぴったりだ

「オラぁ!そんなもんかモー商!レベル低いじゃねぇか!このタァムラ様とまともにやり合える奴は居ねぇのか!」

まるで水を得た魚のように暴れるめいめい~田村芽実に対して
もう1人の手練れ、竹内朱莉は相変わらず愚痴りながら戦いを続けていた

「和田さん、もう無ーーーーーー理ーーーーー、やめときましょう!」
「タケ!弱音を吐かない!1人30殺ぐらいすれば何とかなるから!」

しかし愚痴りつつも朱莉はきっちりと仕事をこなしている
小柄な身体に不釣り合いな恐るべき筋力・・・
キュー学の怪物、矢島舞美と同じ遺伝子を朱莉が宿していることを知らないモー商生徒達は
次々にその重いパンチの餌食となっていた。

「早くしないとはるなんが死んじゃう!」
「死にゃしませんって、いくらモー商でも殺しはしないでしょ殺しは」
「でもメールにはもうお別れかもって・・・はるなん!はるなん!」

激しく取り乱す和田彩花。はるなんはるなん・・・はるなんのことになると人が変わる。
朱莉がイマイチ乗り気になれない理由の一つがこれである。

(いや、お友達もいいっスけどね・・・ちょっとおかしいでしょ。和田さん絶対なんか騙されてるって)

それでもまぁ朱莉がこの殴り込みに付き合っているのはそんな真っ直ぐで危うい大将が案外嫌いじゃなくて
放っておけないからなのだが。。。

 

「なかなか面白いじゃんスマ高・・・つーかアンタ達何ぼーっとしてるわけ!?さっさと行きなさいよ!」

道重の檄で聖とナマタがハッ!と我に返った

「ス、スマ高かなんか知らんけど捻り潰しちゃるけん!」
「・・・行ってきます!」

教室から飛び出していく聖とナマタ

(フクちゃん・・・?まっ、いいか)

一瞬、聖の顔に迷いのような表情が浮かんだのを道重は見逃さなかった。
少し気になるが、譜久村は信頼出来る子だ。少なくとも九鬼の中では一番。
何があってもモー商の為に尽くしてくれるだろう。それに・・・

「1年!アンタ達も早く行きなさいよ!」
「えっ!?」

道重の言葉に、遥達天鬼組は一瞬呆けて固まってしまった

「何?ビビってるわけ?なら行かなくてもいいけど。こういうのは顔売るチャンスだよ?」

チャンス・・・チャンス・・・

「ディス イズ ア チャ~ンス!(どや!)」

その言葉に真っ先に反応したのはだーいしだった・・・つーかなんだそのどや顔は?
お前そんなキャラだったっけ?

「はい!みにしげさん、まーちゃんも行って来ます!」

行くのか優樹・・・つーかコイツを他校と絡ませて大丈夫なのか?
しかもみにしげって総長に失礼だろ!

2人は勢い良くダッシュで飛び出して行った
・・・ってか出遅れた!ハルも!

「自分も行って来ます!」

そう宣言したハルの顔を道重総長は無言でまじまじと眺めた
じ~っ・・・な、なんスか?

「アンタ、無理しない方がいいよ?」

ど、どういう意味っスか?怪我してるからっスか?
またじ~っとハルの顔を見てる
うっ・・・この人なんか苦手かも・・・

「そこに倒れてる子を保健室に運んで。総長命令!」
「えっ!?」

倒れてる子・・・はるなんのことか
あぁ、すっかり忘れてたぜ

「で、保健室にあの子寝かせてよくよく考えて覚悟決めてから校庭に行きなさい。
 ・・・アンタさ、足震えてたよ。ビビってるでしょ?」
「ビ、ビビってなんか!!!」

ビビってなんかいない!ビビってなんかいませんよ!

「スマ高の小さい赤い奴、アレは知り合いかな?なんかフクちゃんもアイツ見て動揺してたけど」

な、何だ・・・何なんだこの人は?

ええ、ビビってましたよ。ハルは竹内さんにビビってました!
でもあの一瞬で見抜くかそれ普通?ハルと竹内さんのことだけじゃなく譜久村さんと竹内さんのことまで
わ、わかりましたよ!まずはるなんを保健室に運びます!でも必ず校庭には行くんで!意地でも!!!

 

階段を全力で駆け降り、靴も履き替えずに下駄箱を駆け抜けて校庭へ飛び出した聖とナマタ。

「やばか!」

スマ高を取り囲んでいたモー商生徒の一団は2箇所、田村と竹内の居る前線から完全に包囲を崩され
崩壊寸前の状態である。あろうことか田村と竹内の恐るべき強さに後退りする者達も現れ始めた。

「そろそろ頃合いかな・・・」

冷静に後方から戦局を見ていたスマ高副長、福田花音が号令を掛ける

「特攻部隊前へ!めいめいとタケちゃんの開けた穴から校内に突撃して!飯窪春菜さんを見つけたら保護して!褒美は焼肉おごりーーーーーー!」

福田の号令と共に20名程の『特攻部隊』が校舎を目がけて突撃を開始した。

「ヒャッハァ!!!」「バーベキューっ!!!」「イーヤフォンでっ!!!」
「しゅわしゅわーーーーーーーーーー!!」「ぽんっ!!!」「ギャハハハハハ!!!」

どう見てもチャラく、頭の悪そうな若者達・・・かつてスマ高が周辺区域を席巻した時代に猛威を振るった
『ピンチケ』と呼ばれる兵隊達である。
個々の力はさほど強くないが良心というものがまるで存在せず、集団になったときの無軌道な暴力は
一時期、他校の脅威となっていた。ちなみに『ピンチケ』の語源とは・・・

「少し遅かったようですわね」
「聖!ウチらで食い止めるしかなかよ!」
「言われるまでもありませんわ!」

聖、ナマタが下駄箱への道を塞ぐようにピンチケ達の前に立ち塞がる

「イヤッハァ!死ねえ!」

ぽーん!

ナマタにバットで殴り掛かったピンチケの身体が派手に宙を舞った。
強烈なアッパーカットの一撃
恐るべき筋力の大振りな打撃で敵の身体を吹き飛ばし、宙に舞い上げる・・・ぽんぽんのもう一つの『ぽん』

「どけぇ!」

ぽーん!

聖に襲い掛かったピンチケの身体も宙を舞った。
ロックからの合気道投げ・・・どごっ!高く宙を舞ったピンチケの身体は頭から無残に校庭に叩き付けられた。

ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!
次々と聖達に襲い掛かるが、まるで紙屑のようにピンチケ達は次々と宙を舞う

「お~、やっと出てきたね~、ぽんぽん」

福田は特に動揺を見せることもなく、ニヤニヤしながら軽く言い放つ

「こ、コイツら・・・強ぇ!」「ヤバいよヤバいよ」
「か、勝てるわけがねぇ!!!」「ヒィ!ふ、福田さぁ~ん!!!」

『ピンチケ』の語源・・・『ピンチ』になると『ケ』ツを捲って逃げ出す。ゆえにピンチケ。
勢いに乗った勝ちいくさでは大きな戦力となるが劣勢になればまるで蜘蛛の子を散らすように逃げ出すのだ。
結局『特攻部隊』の半数、10名程がスマ高本陣に逃げ帰ってくる有様である。

「おめーらなぁ!ちょっとは根性見せろやぁ!!!」

田村の檄が虚しく響く。しかし、相変わらず福田花音の頬はなぜか緩んでいた。

「クソ弱かね、スマ高。相手にならんっちゃ」
「気を付けてえりぽん、弱い奴ばかりじゃないわ」
「先輩!遅れてすみません!うおっ!もうこんなに倒したんですか」
「うひょ~!」

遅れて校庭に飛び出して来た石田と佐藤は一瞬、横たわるピンチケ達に驚いたものの
すぐにスマ高本陣の方に目を向けた

「ウチもだいぶ浮足立ってますね」
「ウチらが行けばきっと盛り返せるけん、行くとよ!」
「突撃にょろ~!」
「待って!」

突然、勇んで突撃しようとするナマタ達を聖が制した。

「なんね聖、怖気付いたと?」
「考えなしに突っ込むんじゃなくて分担を決めましょう!」
「分担?譜久村さん、ウチらみんなで一点突破した方が早いんじゃ・・・」
「そうたい、そんなん必要なか!」
「勿論そうだけどスマ高のあの強者2人が易々と通してくれると思う?
 あの2人と戦う担当と本陣を襲う担当を決めておいた方がいいわ」

なるべくもっともらしいこと言うように聖は腐心していた。
目的は、ただ一つシンプルなことなのだが

「まぁええっちゃよ。じゃああのリーゼントの奴はえりなが殺るけん」
「じゃあ私はもう1人の赤い学ランの・・・」

それはダメ!石田が言い終わらない内に聖は慌てて口を挟んだ

「アイツは私がやるわ!1年の2人は構わず本陣に突撃して!」
「ええっ!?ウチらで敵の大将殺るんですか!」

 

「あああっ、もうっ!見てらんないっ!あやが行くっ!」
「待ってあやちょ!」

ピンチケ達の不甲斐なさにたまらず自ら前線に出て行こうとする和田を福田が全身で制した。

「こんなんじゃ埒が明かないじゃない!はるなんが死んじゃう!」
「あやちょ、花音を信じて!もう手はちゃんと打ってあるから!」

そう言って福田は和田に何やらごにょごにょと耳打ちをした

「えーっ!そうなの!?じゃあ最初から言ってよー!」

ふぅ・・・やれやれ、なんとか納得してくれたか。
万が一アンタが討たれちゃうといくさにならないんだよね。
だから大人しくしててよ、和田さん。
こっちは引き摺り出す側だからね、アンタが引き摺り出されてどうすんだよってこと。

こっちが最初に強さを見せた後、少し弱さを見せればあっちは好機と見て攻め寄せてくるわけさ。
ピンチケどもに最初から期待なんてしてない。アイツらは単なる餌。

向こうが戦力を前に出してくれば出してくるほどチャンスが生まれる。
正面から勝つだけがいくさじゃない。ってゆうか正面からモー商に勝てるわけない。

兵は詭道なり。

詭道の矢は既に敵に放っている
ここまでは計算通り・・・あとは不確定要素次第、かな

ったく、手間掛けさせんなよコイツは・・・まぁ軽いからいいけどよ
工藤遥は飯窪春菜を背負い、人気の無い廊下を保健室に向かって歩いていた
校舎内の殆どの生徒はスマ高を迎え撃つかヤジ馬で観戦するか出払っていて校内は静かだ
ああっ、ハルも早く行かねぇと・・・ん?

前から生徒が1人歩いてくる。こんなときに中に残ってる奴が居るのか?
モー商生は例外なく血の気の多い奴ばっかりのはずだが・・・

近付いてくる・・・誰だ?長身でかなりスタイルがいいが、顔はよくわからない
特徴のない顔だ。どっかで見たような見ないような???あんな奴ウチに居たっけ?
まっ、いっかどぅーでも。まさにどぅーでもいい感じの顔だし・・・
その生徒は特にこちらを見る様子もなくすっ、すっ、すっ、と歩いてくる。
ま、便所かなんかかな?

特に何事もなく擦れ違・・・どごっ!

腹に衝撃・・・え?え?
遥はわけもわからないままうつ伏せに倒れ、春菜の下敷きになった。
えっ!?何だ?何がどうなってんだ?

さっきの生徒の足が見える・・・やっと頭が回った
ハル・・・コイツにやられたのか?

遥は顔を上げ、生徒の顔を見ようとする・・・視界がぼやける・・・
ぼんやりと見える顔・・・この顔、どっかで・・・

あ!コイツは確か・・・

そこで遥の意識は途切れた。
 

 

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