オープニング

「レディース・エーン・ジェントルメーン!! 一世一代の大舞台に集いし老若男女の皆々様!!
 ついに来ましたこの瞬間! 世界を、いや次元を超えて集められたモンスターたちの!!
 肉体を、魂を削って生き残りをかけるデスマッチ! その中で最後まで大地に立ち、栄光を手にするのはいったいどいつだ!?
 魔物たちによる魔物たちの大いなる祭典、スペシャルモンスター闘技場がいよいよ開幕だーっ!!」

実況の声に応答して、わぁっと沢山の人々の歓声があがる。
そう、誰もが待ちわびた前代未聞の大祭りがついに始まるのだ。


 ◆


……おっと、キミは『モンスター闘技場』が何なのか知りたいのかい?
簡単に説明すれば、まず世界中から集められた魔物たちが互いに戦うんだ。
キミの仕事は、あらかじめ誰が生き残るのかを予想して、あとは勝利を祈りながら戦いを見るだけさ。
鋭い牙が、重い拳が、強力な魔法が飛び交うその壮絶な光景は、誰もが息を飲んで魅入ってしまうだろうよ。
見事に的中すれば一攫千金! 外せば残念、それならまた次の戦いに賭けるまでよ。
代わり映えの無い日常の中に、大いなる刺激と興奮を! 最高のエンターテイメントを!
それがモンスター闘技場なのさ!

だがな、今回行われる祭典は一味違うんだぜ。
どこに生息しているかもわからない……それこそ、誰も見たことの無いような貴重な魔物たちが大量投入されているらしい。
戦いの舞台だって、普段の狭苦しい堀の中なんかじゃあ無いぜ。
島を丸一つ! 無人の島を丸ごと使って、50体くらいの魔物を一斉に放すという、とんでもないスケールで行われるんだってよ!

戦いの行方は常にテレビモニターから確認出来るらしい。
金持ちの連中なら、あるいは飛行船に乗って特等席から直接見に行くかも知れねぇな。
とにかく、かつて無い程に迫力のある魔物たちの殺し合いが見れるらしいぞ!
どうだい? お前さんも興味が湧いてきたんじゃないのか?

おおっと、こうしちゃいられない!
ほら、お前も早くどいつが勝つのか賭けに行こうじゃないか!




―――   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――
   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――




僕はいつものように目を覚ますと、そこはいつもと全く違った景色があった。
やけに薄暗く、回りは石で作られた壁に囲まれて、目の前には鉄格子が嵌められている。
そして次に気付いたのは、自分の手足が鎖で繋がれていること。
最初、自分の身に何が起こっているのかわからなかった。
どうにか自分を縛る鎖を壊そうと、何度も電撃を放った。でも、鎖はビクともしない。

……やがて僕は痛感する。自分は何者かに……多分"悪い人間"に、捕われてしまったのだと。
それが脳裏に浮かんだ瞬間、体の芯から冷えきるような感覚が走った。
いったい自分は何をされるんだろうか。きっととても危険な実験に使われる。
間違いなくモルモットにされる。そして殺される。もう二度とうちに帰れない……。

僕は叫んだ。嫌だ、助けてくれ、森に返して欲しい、と。
僕は普通のピカチュウとして、ごく普通に過ごしてきた。何も悪いことなんてやってない。
それなのに、どうして僕はこんな運命を迎えなくてはならないんだ! そんなの、信じたくない!
周囲からも同じ様に叫び声があがっている。咆哮が、悲鳴が、泣き声が、合唱のように牢獄に満ち溢れていた。
ジャラジャラとした耳障りな、鎖を引き千切ろうと暴れる音も仕切りに聞こえる。
他にも、僕らの仲間が捕られてるんだ。少なくとも僕だけじゃなかった。
そう考えると僕は少しだけ冷静になれた。そして、どうにかしてここから抜け出す方法を考えようとした。
その時……

「シャーラーーーップ!!!」

みんなの声をかき消すように、人間の男の怒号が響き渡った。
あまりに覇気を帯びていたためか、誰もが閉口した。静寂が訪れる。
その静寂の中を、コツン、コツンと靴を鳴らす音が響いた。

「うむ、物わかりの良いいい子達だ。……さて、愛すべきモンスターの諸君よ。
 わしはこの度、支配人を努めさせていただくモリーというものだ。まぁ、覚えてくれなくても結構だ。
 ……さて、今からユーたちには、ある島の中でサバイバルを行なってもらう!!」

そう言いながら歩くモリーの姿が、格子の隙間から見えた。
中年の人間。赤と緑の派手な衣装。登頂部を除いてふさふさと豊かな髭と髪の毛。
そして、風もないのに何故だかパタパタとはためいているマフラー……。
その奇抜な印象の中には、どこか狂気のようなものが漂っているように思えた。

「サバイバル……何をするのかさっぱりわからない、という顔をしているな?
 では、諸君にわかりやすいように簡潔に一言で説明しようではないか。
 ……自分以外の他のモンスターを全て倒せ! そして最後まで生き延びるのだ!!」

……な、なんでそんな……動物実験じゃ無くて、戦い……?
よくわからない、どうしてそんなことさせるんだろう?

僕は唖然として次の言葉を待っていると、向かい側の牢の中から暴れる音が聞こえた。
ふざけるんじゃねぇ! 誰がてめぇみたいな野郎に従うか、と。
あいにく薄暗くてハッキリとは姿が見えない。ただ、その言葉には強い怒気が込められていた。
ガシャリガシャリと乱暴に鎖が揺らされる。

「無駄だ! その鎖を簡単に壊せると思うな。大人しくしろ!」

モリーの言葉を聞かず、そのモンスターは鎖を揺らし続け、何度も雄叫びをあげる。
彼の抗議はしばらく続いた。きっと彼はもう何も聞こうとしないだろう。その拘束が外されるまで、何者にも耳を貸すことは無い。

「……言うことを聞けないボーイにはお仕置きをしてやらねばな……」

しかし、その様子を見かねたモリーはため息を交えながらそう言った。
彼は懐から何か杖のような物を取り出す。
そしてそれを檻の中で喚き続ける彼に向けて振るった。



……放たれた光弾は彼に当たると、つんざくような爆音と、目を開けられない程の閃光を走らせた。



それが止み、うっすらと目を開けると、モンスターが居たであろう檻は半壊しており、真っ黒な物体が置かれていた。
……真っ黒な物体……?
少し注意してそれを観察して僕は衝撃を受けた。
それは炭化した死体だった。彼の肉体だったものは、ただの燃えカスに変わっていた。

「わしに刃向かえると思うな。今の音でわかっただろう? こちらには諸君を一撃で葬るだけ手段はあるのだ。
 ……おっと、別にこの杖だけが手段では無いぞ。他にもわしの意思一つでユーたちの息の根を止める呪いをかけておいた。
 無駄死にしたくなければ大人しくしたまえ。もちろん、わしとしても戦い以外で諸君を殺すのは嫌なのでな。これ以上わし困らせるでないぞ?」

モリーは淡々とそう告げる。
僕は目の前で見せつけられた惨状にただただ恐怖していた。
もはや、まともに思考など出来るはずがなかった。
叫びだしたくても、声を上げられない。

モリーは「オホン」と咳払いをすると、また歩き出しながら説明を再開した。

「このサバイバルではモンスター同士の力の差を少しでも埋め、より戦いを予測不可能とするために、諸君に各自『ふくろ』を支給する。
 中にはランダムに一つだけ、道具や武器が入っている。己の弱さを自覚している者も、そうでない者も、上手く活用していただきたい。
 ……なお、島での行動は自由にして構わないが、島を抜けて逃げ出そうとすれば悪いが殺処分させてもらうぞ。
 また、お前たちがあまりにものんびり戦い、3日以上かかった場合はタイムアップとして適当に殺処分して優勝を決める。後にはパレードが控えているからな……。
 ……なぁ諸君、簡単には死にたくは無いだろう? ならばその力を振るい、最後まで勝ち残るがいい!さすればわしから大いなる栄光と与えよう!
 戦いを乗り越えて栄光を手にするのと、むやみに反抗して無駄死にするのか……どちらの道を選ぶかは諸君の判断に任せようではないか」

その言葉に対して、何体かの魔物が吼える。
それは恐怖なのか、怒りなのか、はたまた賛同なのかは判断出来ない。
モリーはそれには意に返さず、指をパチリと鳴らした。
するとその瞬間、背中に何かが刺さったような痛覚が走った。
次に抗えぬ程に強い眠気が襲い掛かってくる。おそらく麻酔針という道具を刺されたのだろう。
僕の意識がどんどん遠ざかっていく……。その間もモリーはずっと何かを喋っていた。

「多くの者たちがユーたちの活躍に期待を寄せている……。
 言わば、ユーたちは舞台の主役だ! メインキャストだ! ヒーローなのだ!
 是非とも、最後までその地に立ち、空へ向けて雄叫びをあげる英雄の姿を、我々に見せてくれ!」

その先の言葉は、もう僕の頭には入らなかった。


   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――
―――   ―――   ―――   ―――   ―――   ―――


皆様、モニターをご覧下さい。
会場のあちこちに運ばれたモンスターたちが一斉に目を覚ましました。
いよいよ、かつて誰も見たことのないようなドラマが始まるのです。
かけふだのご購入はお済でしょうか? まだの貴方はお早めにどうぞ。
皆様の応援が、祈りが、モンスターに勝利の女神を微笑ませるかもしれません。

さぁさぁ、ついに祭典の幕が開かれました……!
戦いの火蓋が切って落とされました!!



【主催者:モリー@ドラゴンクエスト】
【見せしめ:レオモン@デジタルモンスター】


―――クロスオーバー・モンスター闘技場 ここに開幕―――



投下順 No.01:邪知暴虐の王
ピカチュウ No.04:海物語
モリー No.67:第一回生存者報告
レオモン 死亡