意志の凱旋

この世に正解なんて無い。


この世に間違いなんて無い。


でも物事には正と解を付け無くてはならない。


その時に必ず正しい――正義の答えが選ばれるとは限らない。


世界を生き抜くには時に身を闇に任せる必要がある。


それが性、それが人生。


己の道を夜の流れに身を任せる。


そんなの弱者の考えホ。


いや弱者とか強者とかどうでもいいホ。


俺は俺でしか無いヒホ。


ならやりたい事をやるってのが――。




「鉄拳制裁――ヒーホエンド!!」




「勝手にエンドってんじゃねぇ!!」




ぶつかる拳から生まれる衝撃は言葉なんかじゃ説明できない。
親から聞いた、ニュースで見た、友人の友人の話……どれも客観的に感じるだけで己の心は躍動しない。
外野の言うこと何て気にするな。
戦っているのは俺達だけ――土足で世界に踏み込み言葉だけを吐く輩が何を言うのか。
これが世界、己の人生だ。

本人が思っていることを外野が知る術など無い。

何も知らずに語るな。

故にこの勝負――本人達にしか勝敗は分からないだろう――。




きあいパンチと鉄拳制裁。
その威力共に申し分ない高威力の技である。
大きな力と大きな力のぶつかり合いはきっと天高く、遥か遠くの彼方、深き水底にも轟いているだろう。

故にその源である二人に負担される衝撃は想像も付かないだろう。

衝撃を上手く流し後退する体を整え相手の居場所を把握する。
その距離は飛べば一瞬で詰まる程の些細な距離であり十分に射程範囲。
ならばどうする?何が最善だ?彼奴に効く技は何だ?考えるよりも先に体が動いた。


「ヒホッ!?」


一瞬で距離を詰めるキノガッサの拳が目前に迫る。
己の気を瞬時に爆発させるマッハパンチの速度は常人では目で追う事も不可能である。
どんなに強力な一撃を放つ怪物が相手だろうが先に潰せば何の問題もない。
しかし躱せば戦いは振り出しに戻る訳でありジャックフロストが拳に当る必要も存在しない。
顔を捻りマッハパンチを避けつつ足を払いキノガッサの体制を崩す。
倒れそうになるキノガッサの腹に拳を撃ちこむもその拳は手で抑えられる。

拳を握る腕に力を込め自分の方が強い事を証明するキノガッサ。
だがジャックフロストも負けることなく拳は徐々に目標に近づく。
元々体制が崩れていたキノガッサは前方に倒れる勢いを利用しジャックフロストの横を駆け抜ける。
ジャックフロストが振り向くとそこにキノガッサはいない――上だ。

高さと重力を利用した蹴りの破壊力は説明する必要もない。
鋭利な風の音を立て豪快に大地を削るキノガッサ。
削れた大地が岩となり標的に降り注ぐ。


「人力岩雪崩……ってとこかい?ってな!」


「ホアー!アーッ!!イヤー!!!」


襲いかかる大量の岩に黙っているほど柔な男ではない――氷のように冷静で炎のように熱く。
邪魔するモンは拳で打ち砕けば何の問題もない。
拳で足りないなら頭でも足でも利用して破壊すれば全ては振り出しに戻る。
細かく砕かれた岩は始まりの場所へ――キノガッサに対し牙を剥く。

弾幕を掻い潜り連撃後のジャックフロストを狙いその足にローキック。

宙を舞うジャックフロストだがその瞳はキノガッサを逃さない。
体が回転する際そのままキノガッサの顎を蹴り飛ばし追撃を許さない。
今度はこちらの番である、揺らぐキノガッサの腹に今度こそ拳を叩きこむ。


「これが『拳』だホッ!!」


「うぐッ!?」


痛烈な一撃に顔を歪ませるキノガッサ。
この衝撃に体は崩れ片膝を大地に突き刺す。
胃の中の物が込み上げてくるが吐き出す時ではない、甘えるな。
あの時代を思い出せ、あの人は何を教えてくれた――いやあたしは何を学んだ?

……そんな事は考えるな感じろ、それよりもだ。


「見下してんじゃねええええええええええ!!!!」


許せない。
今の攻撃は何だ。
嗚呼許せない許せない許せない。
何故普通の拳で攻撃を、冷気の一撃を放たなかったのか。
あの見た目なら十中八九冷気を纏う種族であることは一目瞭然絶対不可避。
氷技を切っていることなど有り得ない――この局面で手を抜くことを絶対に許してはいけない。
拳と拳、意志と意志、己と己を競い合うこの場に置いて手加減など情けではない。

それは相手への侮辱行為だ。

しかし男ジャックフロスト、その拳に手加減など存在しない。
答えは明白、氷技を切っている――キノガッサに合わせればこの回答が正しいだろう。
この自慢の拳は取り繕わなくても強い、そう強いのだ。


「見下してないホ。勝手な予測は恥ずかしいホ」

「だろうね……その拳を受ければ分かる……でも納得がいかないのさ」

「ならどうするホ?」

「顔がニヤついている……分かってんだろヒーホー野郎」


気合を込めるキノガッサ。


ジャックフロストは気合を込める。


その気迫――武神の領域。


「あたしの――あの人の拳が勝つ事を証明すればいい」


「その答えは正解だホ――だがその先に辿り着くとは限らない」


そして互いの思いが交差する――。




夢を追い続けるのは素晴らしいことだ。


夢がないのは駄目なことでない。


目の前の事を一つ一つ片付けるのも人生。


だったら人生は何をしたって誰も咎めはしないさ。


その拳は何を背負っているんだい?







落ちる太陽により夕暮れに染まる殺し合いの大地。
幾多の命が沈むように太陽もまた沈み始める。
削れた大地、荒れた岩、地に置いてある学ラン。
黄昏に焦がれる大地に仰向けで寝転がる二つの存在。
どれくらい倒れていただろか――時はそれ程経ってはいない。
しかし体に残る疲労は一日の量を遥かに凌駕していた。


「さて――そろそろ終わりにするホ」


ゆっくりと体を起き上がらせるジャックフロスト。


「何で戦ってるか分かんないけど――このままじゃ不完全燃焼なんだよ、そうなんだよ」


出会いは何だったのか――そんな事はどうでもいい。
心に闇が残ったまま果てるのは勘弁だ、だから最後までやらせろ。


「そのほうしは効かないホ……」


「やっぱりね――まさかとは思うけどアンタみたいな奴がいるとはね」


小細工は不要――故に此処から先は単純な


「喧嘩をするホ!!ヤー!!」


跳びかかるジャックフロストの一撃はとても隙だらけなモーション。
しかしキノガッサは避けない、避けれない。
それ程までに疲労が残っている。

「ガァ!!」

そのまま倒れこみマウンドポジションを取るジャックフロスト。
アイスカラテの剛拳がキノガッサに襲いかかるがそれは未遂。

「そう言えば木の実ありがとう……コイツは『恩返し』だよ!!」

口を開きタネを飛ばすキノガッサ。
口に詰められた木の実のタネを何粒も打ち込むタネマシンガンを至近距離で発射する。
勝つなら何でも利用する、言い訳なんて勝負の世界に存在しない。

「ヒ、ホホホホホホ!!!!」

何発も顔面に叩きこまれあまりの痛みに大地を転がるジャックフロスト。
追撃しようと堪える体に鞭を振るい起き上がるキノガッサ。
マッハと呼べるほど速くはないが一歩踏み込んだ拳を放つ。

「なら黙って貰ってろ!返す必要はないホ!!」

眉間にタネを全力で飛ばすジャックフロスト。
そのタネはキノガッサの眉間に直撃し仰け反らせるには十分すぎる一撃。
おまけに何が起きたか分からないが冷気を纏い更に追い打ちを駆けていた。

そのまま距離を詰め一発ぶん殴る。
キノガッサは体を再度仰け反らせるが怯まない。
逆に拳を叩きこむもジャックフロストに捕まる。
しかしローキックを放ち体制を崩し尻尾で掴んだ岩をそのまま叩きつける。
尖った岩の一撃はジャックフロストの腹を削りとり鮮血が大地をなぞる。

悲痛の叫びを挙げるジャックフロストだが大地には倒れない。
傷口を手で塞ぎ冷気で止血などする筈がない。
血を掬い取った腕を振るいキノガッサの眼を潰す。
鮮血に染められたキノガッサの視界は夕暮れも重なり紅蓮に染まる。

体当たりでキノガッサを突き飛ばす。
追撃しようにも勢いで自分も倒れてしまい未遂に終わる。
キノガッサが立ち上がる時とジャックフロストが立ち上がる時は同一。


そして呼吸を整える時も同一。


「男なら何度でも立ち上がって拳を振るうホ」
その拳、全てを砕く万魔の一撃。


「女だって黙って見てるだけじゃない――動く時だってあるさ」
その拳、背負う物は一つではない。






拳に気合を込める。

気合だけじゃない。
力を。
意志を。
夢を。
全てを込めて撃ちぬくだけ。

己という存在が確立出来ずに不安に悩まされる時がある。
そんな時は黙って周りに頼れ。
そんな時は同一の存在に己が満足するまでぶつかり合えばいい。
真の強さとは孤独ではない。

真の強さとは何か――それは己の拳に聞け。
故にこの先の結果など些細な記号でしかなく勝敗に意味など存在しない。
在るとすれば戦いがあったと言う証に過ぎない。

木の実を頬張り気休め程度に回復する。
学ランを再度纏い体勢を整える。
体に付いた血に不快感を表しながらもその顔は満足している。

拳を突き出し拳と拳を合わせ意志を通わせる。

『これより我らは互いに拳を交えた盟友となる』

夕暮れに重なる二つの影が交差し大地に深いバツ印を刻み込む。

ならば語るに笑止。
それは背中が語る――『こっちは任せろ』と。



故にこの殺し合いに反逆する意志が動き出す――





【D-4南西/森林/一日目/夕方】
【ジャックフロスト@女神転生シリーズ】
[状態]:ダメージ(大)、流血、覚悟
[装備]:GAKU-RAN(ガク-ラン)@デジモンシリーズ
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:東京に帰る
 1:頑張る
 2:喧嘩を売られたら殴る
 3:殴って勝てなかったら蹴る


[備考]
オス。皆様も御存知の通り、数々の激戦を繰り広げた猛者。
一人称はオイラで、語尾はホ。
あと、ヒーホー。
精神異常無効、身体状態異常無効、テトラジャ、デクンダ、タルカジャ、気合、鉄拳制裁、万魔の一撃。
純粋に最高の状態で殴りあう事に特化したビルド。
いろんなシリーズのが混ざり合ってる?
いやだってこいつ皆勤みたいなものだし、そりゃ色んなシリーズに呼び出されてるさ。


E-6でターミナルルームらしき部屋を発見しました。
目印としてオレンのみを起きました。


D-7洞窟がD-4まで開通しました。
そのことによる山部分などへの影響は不明です。


D-4の大地は荒れました。


【キノガッサ@ポケットモンスターシリーズ】
[状態]:ダメージ(大)流血、、覚悟
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品1)
[思考・状況]
基本:殺し合いに抗う
 1:心と拳を磨き続ける


[備考]
メス。かつては喧嘩っ早く、暴力で全てを解決し、自尊心を満たしていたが、師と仰ぐ人間との出会いにより、“心”を知った。
それでも荒々しい性格は健在で、あまり口はよろしくない。
一人称は「あたし」。
技はきあいパンチ、マッハパンチ、ローキック、きのこのほうし。


No.59:ごちそうさまでした 時系列順 No.61:ありがとう
No.59:ごちそうさまでした 投下順 No.61:ありがとう
No.54:言葉も想いも拳に乗せて 妖精ジャックフロスト No.73:わるだくみ
No.54:言葉も想いも拳に乗せて キノガッサ No.73:わるだくみ

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最終更新:2017年08月31日 20:56