駆け抜けてBlue

振り向かずどこまでも走り続ける。
未だにボナコンは目を覚まさないままだが、背中から伝わる温もりがボナコンの命が燃え続けていることを教えてくれる。

「クソ……」
思いがけず、ルカリオの口から言葉が漏れた。
ボナコンは生きている、いつか目も覚ますだろう。
だが、クー・フーリンは死んだ。はっきりと見たわけではないが断言できる。

今走っているルカリオは、クー・フーリンの犠牲の上に存在することが出来ている。

その事を今更に嘆いたりはしない。
やるべきことははっきりとわかっている、ならば嘆いたりしている暇はない。

だが、クー・フーリンの死はルカリオに漠然とした不安感をもたらす。
人間への反逆のために、どれほどの死体が積み重なることになるのだろうか。

覚悟していたつもりだった、しかし実際にその光景を見るとルカリオは揺れる。
そう、仲間を救うために仲間を死地に追いやるという矛盾はルカリオの根本を揺らす。

誓ったのならば、ルカリオにはやり遂げる意志力がある。
クー・フーリンの死を残念なものとして、割り切れる冷静さがある。

それでも、ルカリオは──

「おい」
ルカリオの思考は威厳ある声に、強制的に中断させられる。

壁と見まごう程の巨体だった。
その四足で動く度に地響きが起こっているのではないかと思わせるほどの威圧感すら感じさせる。
紫の皮膚は鎧であるかのように強靭で、頭部に備わった二本の角は一本一本が研ぎ澄まされた槍を思わせた。

一言で単純に纏めると、強い。

「聞いているのか?」
「ああ、聞いている」

「単刀直入に聞く、この状況を打破する意志はあるか?」

未来は不透明で絶望的だ。
それでも、ルカリオは今を悩んだりはしない。
目の前にある切っ掛けを掴み取れるなら、ルカリオは躊躇しない。

「ある」


馴れ合いはしない、ベヒーモスは最初にそう言って共に行動する気はないという意志を明確にした。

「共に動いてくれると、ありがたいのだが」
「悪いが、まだ我は何も得てはいない……お前もそうだろう?
「それもそうだが……」

この殺し合いを打破し帰還する方法に関して自分はまだ手がかりすら見つけてはいない。
そして、それはお互い様だろう。
ならば、別々の場所で行動した方が効率が良い、そう言ってベヒーモスはルカリオの請願を切り上げた。

なにより、何も得られぬまま他者という荷物を抱え込むことも、あるいは荷物として抱えられることもベヒーモスは許さない。
幻獣王の元に帰る事を遅らせる要因を作る気はないし、幻獣王以外の者に従う気は砂一粒程もない。
それは、幻獣王に仕えるものとしてのプライドともいえる。

そして、ルカリオは一旦ベヒーモスと共に行動することを諦める。
後に同じ道を行く事を見据え、今は違う道を辿ることを許容したのだ。

「では、誰に会ったか聞かせてもらおうか」

そして、情報交換が始まった。

と言っても、情報交換は互いの自己紹介と、シャドームーンに関する情報提供程度に留まる。
ベヒーモスとルカリオ共、出会った者は少なく、ほとんどが死んでしまっていた。

死人はいい、というベヒーモスの言葉に従って、互いに死者に関して口にすることはなかった。
そして、ボナコンは相変わらず目覚めなかったのである。

「シャドームーンか、覚えておこう」
ベヒーモスはルカリオから聞いた強敵の容姿を、しっかりと脳に刻み込む。
苦戦の可能性はあるかもしれないが、ベヒーモスは敗けるとは欠片も思ってはいない。
慢心ではない、経験則である。

油断するな、ルカリオが言おうとしたその時、
「おれはしょうきにもどった」


ボナコンが目覚めた。



が、別にボナコンが起きた所で特に情報交換が捗ったりはしなかった。
「そらそうよ」

ただ、クー・フーリンが死んだであろうことを聞き、
「あっ……」
そして自分が生きているという事実から、察した。


「そっかぁ…………」

今更泣いたりもしないが、少しやるせなかった。


気がつけば、空は赤く染まっていた。

「かえりてぇ」
ボナコンがポツリと呟いた。
夕陽は、帰郷感を刺激する。
いつだって、赤く染まった世界は子どもの時間の終わりを告げていた。

遊び疲れて巣に戻れば、家族が待っていた。
今はもう無い。

帰ったら、交尾して家族作りたいとボナコンは思う。

ところで、ボナコンはあれで成虫なのだろうか。
気になるところである。

「ああ」
赤く染まった空は、ルカリオの故郷を襲う炎を思わせた。
人間は炎と共に襲来し、全てを奪い去っていった。

赤く燃える空に、子供時代の思い出などもはや無い。

ただ、帰るべき場所にもう一度帰りたいと思う。
あの赤く燃えあがった空が、どこまでも続く青を取り戻せるように。

「…………」
感傷などは抱かない、ただ夜に乗じて狩りに来る魔物をベヒーモスは警戒していた。
赤く染まった世界すら踏み越えて、夜の闇は全てを喰らう。

戦慄の夜が訪れるだろう。

瞳に映る景色と、心に映る景色は互い互いに違っていた。


「では、我は行く」
古城へ向かう、そう続けてベヒーモスは駆け出した。
ルカリオ達に対して、さほど期待はしていない。
より言うのならば、再会すらおぼつかないものと見ている。

ボナコンはともかく、ルカリオには揺れているものがあった。
その揺れが何なのかはわからないし、そもそもベヒーモスには興味が無い。

だが、その迷いがいつか廻り廻って邪魔になるのならば──
そう考えたのか、ベヒーモスはルカリオ達に向き直りに叫ぶ。

「考えるな、走れ!」

助言というつもりではない、この程度の言葉でなにかを振りきれるとも思ってはいない。
そもそも、この言葉は悩みを解決するのではなく放棄しろという勧告である。

捨て去れば、自由だ。

【D-3/森林/一日目/夕方】

【ベヒーモス@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:ダメージ(中)、魔力消費(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×2)
[思考・状況]
基本:幻獣王の元へ帰還
1:古城へ向かう



「考えるな、走れ……か」
「ジャッキーのパクリじゃん、あれブルース・リーだったっけ?」
「…………」
「ああ見えて、映画好きなんだね。なんか適当に言う機会だと思ってはしゃいじゃって……んもう」
「すまない、黙れ」
「すまんな」



人間への憎悪、攫われた仲間、クー・フーリンの言葉、クー・フーリンの死、ベヒーモスの言葉。
様々なものがルカリオの中を駆け巡って、何一つ答えは出ない。

「どうすっかなー、俺もなぁ」

クー・フーリンは死に、ボナコンも拾った命の使い方を未だ決めずにいた。



赤い空が、黒い影によって塗りつぶされる。
飛行船が、二匹の視界を横切った。



「────ッ!!!!!」
「あっ、おい、待てい!」



考えず、走る。

【D-3/森林/一日目/夕方】

【ボナコン@ファイナルファンタジーシリーズ】
[状態]:疲労(大)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:目立つ

[備考]
※オス
※支給品オッカの実を消費しました
※最新のボナコンスレは↓
ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1301835035/


【ルカリオ@ポケットモンスター】
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[所持]:ふくろ
[思考・状況]
基本:主催者・観戦者・殺し合いに乗った奴を殺す
 1:飛行船の元へ駆ける
 2:まずは志を同じくする仲間を探す
 3:呪いを解除するには……どうすればいい?
 4:クーフーリン、私は…

[備考]
オス。仲間思いな性格。悪人達によって仲間が連れ去られ、人間に怒りを感じていた。一人称は「私」。



No.50:escape 投下順 No.52:そんなものはない
No.41:NEXT LEVEL ルカリオ No.57:我ハココニ在リ
No.41:NEXT LEVEL ボナコン No.57:我ハココニ在リ
No.40:バーサク状態でベヒーモスに挑んだら、カウンターでメテオ食らって死ぬに決まってるだろ! ベヒーモス No.65:救いの手