――――俺は魔王を倒して勇者になる男なんだよ! だからお前は黙って俺に斬られて経験値をよこせ!
そうすればお前らみたいな役立たずのモンスターも、ちったぁ人間様に役立つんだからよ!
――――ハッ! 俺の実力に恐れおののいて逃げたか! ハーッハッハッハ!
まぁ、お前ごときのモンスターが人間様に勝てるわけねーか! ギャハハハハハ……
そんなことを言われた仲間がいた。
彼曰く、ああいうのがクソガキって言うんだな。
結局、そんなことを言っていた男の最後は呆気なかった、と仲間は言う。
ホント馬鹿だよな。自分の力を過信しすぎだっての! そう言って仲間が笑っていた。
そんな仲間も、自分の力に過信して調子に乗ったがために会心の一撃を出されて死んだのだが。
ようするに、調子に乗るなということだ。
まぁ、自分はもともと慎重なので調子に乗ることは無いだろう。
……多分。
――――なぁ、俺と一緒に魔王を倒す旅に出ないか?
そんなことを言われた仲間がいた。
闘いの最中に友情でも芽生えたのだろうか、なんにせよ仲間はその男についていった。
結果、彼は見事魔王を男と共に、打ち破り旅から帰ってきた。
仲間にしてくれてありがとう! 勇者さんと旅が出来て本当に良かったよ! 仲間はそう言って男に感謝していた。
その後、彼は仲間達の間で語られる伝説になった。
勇者と旅をしたはぐれメタル。そうあの男は勇者だったのだ。
これからも、ずっとその伝説は語り継がれるだろう。
自分も勇者と一緒に旅をしてみたいなぁ、と思っている。
ある仲間は、最大限の力を引き出されてマスターと呼ばれる人と共に戦ったり
ある仲間は、自分の体を磨きに磨いて仲間に自慢したり
ある仲間は、勇者に殺されることを望んだり
ある仲間は、はぐれメタルキングに取り込まれたり
他の仲間達には劇的な出来事が訪れるが、未だ僕には来ない。
あーあ、僕にも劇的な出来事が起きないかなー……、そんなことを考えていた。
そんな時だ。どこか分からない会場で、モンスター同士で戦えと言われたのは。
こんなの、僕が求めてた『劇的な出来事』じゃないよ……
□□□
「…………」
「…………」ピョコピョコ
初っ端から変なのと出会っちゃた……
考えうる限りこのずーっとはねているのはお魚さんだろう。
それにしても……このお魚さん、色が綺麗である。
「うひゃぁ……お魚さんの身体は綺麗だね……」
「君の身体も十分に綺麗だと思うが?」ピョコピョコ
なにせこのお魚さん、ピカピカの金色をしているのだ。
確か僕らの親類に、金色のスライムがいたハズだけど……このお魚さんもお金をたくさん落とすのかな?
このコイキングは別にゴールデンスライムの親戚とうわけではなく、単なる色違いというものである。
本来ならこのお魚さんの色は赤なのだが、どういうわけかこのコイキングは金色の状態で生まれてきてしまったのだ。
無論、はぐれメタルは知る由もないが。
そんなことはさておき、はぐれメタルは疑問に思った。
なぜお魚さんなのに地上にいるのだ?
「あ、あのー。なんでここにいるの?」
「スタート場所がここだった」ピョコピョコ
……考えてみれば至極当然の答えである。
恐らくスタート場所はランダムに決まっているのだ。運悪くこのお魚さんは地上がスタート地点だったのだろう。
それにしても、このお魚さんはなんで水のある場所に移動しないのだろう?
「どうして水がある場所にいかないの?」
「逆に聞くが魚が必ず水にいなければいけない理由はなんだ?」ピョコピョコ
……言われてみれば確かにその通りだ。
確かに僕らの世界にも、水がある場所にいるはずのモンスターが地上にいるのだし、お魚さんが水のない場所にいても別段不思議ではない。
次は本題、殺し合いに乗っているかどうか。
「えーっと……お魚さんは殺し合いに乗っているの?」
「仮に乗っていたとして、この状態で誰かを殺せるか?」ピョコピョコ
……うん、どう考えても無理そう。
「冗談だ。一応攻撃手段は持っているぞ?」ピョコピョコ
「え? じゃあ……」
「いや、乗ってないから安心しろ」ピョコピョコ
「そ、そうなんだ……。実は僕もなんだ……。あ、その攻撃手段って?」
「その身を持って体感してみろ」ピョコピョコ
コイキングのたいあたり!
(ああ、ただのたいあたりか。そんなのだったら僕の身体には傷一つつかないな……、ってちょっと待って……)
かいしんのいち……
「あ、危ない!?」
ミス! はぐれメタルにかわされた。
寸前のところではぐれメタルはたいあたりを回避した。
当然だ。かいしんの一撃が当たってしまったら自分は四散して死んでしまうだろう。
自分の体力といえば20にもみたない微弱なもの。
それを高い防御力で補っているのだが、防御力を無視するかいしんの一撃ではそんなものは通用しない。
その威力を象徴するかのように、コイキングにぶつかった木は見事にへし折れてしまった。
ぶつかったコイキングは宙を舞い、はぐれメタルの正面に落ちた。
「あ、危ないよ! やっぱり僕を殺す気だったんでしょ!」
「ああ、すまない。どうやらこれのせいらしいな」ピョコピョコ
お魚さんの眼にある、レンズみたいなものは『ピントレンズ』というらしい。
どうにも、くりてぃかるりつを上げるものらしいのだが……生憎、くりてぃかるの意味が分からない。
かいしんと同じような意味だな、そうお魚さんが言ってくれてようやく理解できた。
「まぁ、かなり運がよかったんだな今のは」ピョコピョコ
「そうなの?」
「もっと別の使い方があるからな……」ピョコピョコ
「へぇ~」
「…………」
途端にお魚さんが跳ねなくなった。
ま、まさか! 体力がきれたんじゃ!
「お魚さん大丈夫!?」
「……すまない、PPが切れてしまった。よろしければ乗せてくれないか」
「えっ、いいですけど……」(ぴーぴー?)
「すまない、助かるよ。それと私の名はコイキングだ。よろしく」
「あ、僕ははぐれメタルです。よろしくお願いします! コイキングさん!」
金と銀、二人の旅はまだ始まったばかり……
【B-5/森林/一日目/昼】
【はぐれメタル@ドラゴンクエストシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持]:ふくろ(不明支給品×1)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗りたくない
1:コイキングさんと行動
2:ぴーぴー?
[備考]
オス。慎重で、臆病。劇的な出来事を待ち望んでいる。一人称は「僕」
【コイキング@ポケモンシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:ピントレンズ
[所持]:ふくろ(無し)
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗るつもりはない
1:はぐれメタルと行動
※現在のPPの状況
はねる 残り0
体当たり 残り34
[備考]
オス。紳士。頭はよいほうらしい(コイキング界で)一人称は「私」
色違い
[支給品紹介]
【ピントレンズ@ポケモンシリーズ】
ポケモンに持たせると、クリティカル率が1段階上がる道具。
間違ってもコイキングに持たせる道具ではない。
最終更新:2017年08月31日 20:19