悪の華

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彼女の心は、男性への愛で満ち溢れていた。 どんな男性であっても、彼女は愛することが出来た。 性格も、容姿も、年齢も、人種も、彼女にとって例外など存在しない。 一人一人に違った魅力が有り、その魅力を発見するのが彼女の楽しみだった。 より沢山の男の人の、色んな部分を知りたい。 いっぱい話をしてその人の思想を知り、夜を過ごしてその人の肉体を知る……。 それは一人の男だけに留めることは出来ない。自分の知り合い全てに、同じような関係を築いた。 彼女にとってそれは知的好奇心を満たす行為であり、幸福であり、生き甲斐であったのだ。 反面、彼女に対する世間の目は厳しかった。 彼女のこの行ないは常に批判の的として話題に挙げられていた。 みっともない、汚らわしい、不埒者、尻軽女、ビッチ、社会のクズ、魔女、男喰い……。 人々は聞くに耐えないような罵倒を平然とぶつけてきた。 自分の男性への愛をいくら主張しても、誰一人として理解してくれなかった。 評判が悪くなれば男友達は寄り付かなくなる。 すると彼女は求めるものを探しに夜の世界へと飛び込んだ。 世間の目はさらに厳しくなり、やがては家族に見放され、友人に見放され…… 気がつけば昼の世界から、彼女の居場所は無くなっていた。 夜の世界はそんな彼女を受け入れた。 男性たちは親切にも、食事代や寝泊りの費用、さらにはプレゼントに至るまでドンドン出してくれる。 それは「本当に男を食い物にしている」行為。けれどそれを無下にすることも出来ず、受け入れていた。 彼女は沢山の者と関係を作り、沢山の人の全てを知る。なんとも楽しい生活だったことだろう。 大きく歪まされてしまったのはある男がきっかけだった。 その男は端正な顔立ちをしており、紳士的な態度が非常に好感が持てた。 彼女はいつもと同じように、かつて夜を共にした他の男性と同様に、この男に対して愛を注いだ。 その男は言った。僕だけのものになってくれ、と。 それを彼女は断った。だって、貴方だけでは満足出来ないから。 男の態度が変わる。 それまでの優しい微笑みは一切消え去り、軽蔑の眼差しと怒りの形相を浮かべながら冷徹な言葉をぶつけだした。 その豹変に彼女は唖然とする。私は、こんな顔をする彼を知らない。知らなかった。男の全てを知っていると思っていたのに、知らなかった。 言葉のナイフは彼女の心と、人格、容赦なく切りつけた。 歯止めが効かなくなり、言葉に加えて男の拳までもが飛んでくる。 悪意を全身に浴びながら、彼女は甘美な時間が一転し、ガラガラと崩れ落ちる感覚に苦しんでいた。 夜の世界すら、こうやって私を否定して、悲しませて、苦しませるのか。 胸を引き裂くような辛い感情が湧き上がる。 その感情に任せて彼女は、男性を思いっきり突き飛ばした。 運が悪いことに、バランスを崩した男は、頑丈なベッドの柱の部分に後頭部を強く打ち付けた。 ぶくぶくと赤い泡を吹き、白目を剥いて、しばらく痙攣を繰り返したあとに動かなくなった。 彼女の目の前にある光景が、一瞬、現実のものだと思えなかった。 やがて抑えきれないほどの罪悪感と恐怖が心を蝕んでいく。 錯乱の挙句、彼女は喰らいつく様に男に接吻をした。 ……もとい、文字通り喰らいついていた。 ガリリ ブチブチブチブチッと不快な音を立てて、口内に柔らかな物体が飛び込んでくる。 その瞬間に我に返り、肉を吐き戻そうとした彼女は、ある事に気が付いてしまった。 ―――美味しい。 彼女は男性の『味』を知った。 その日からしばらくして、彼女は愛する男性全員の「魅力」を知るに至った。 誰も知らない、男性の魅力の一つ。それを私は知ることが出来る。 その人は私の体の中で、共に生き続けられる。それは最高に幸せなことだ。 カニバリストによる連続惨殺事件の犯人、人呼んで"マンイーター"はここに誕生した。 この行為を繰り返すうちに、彼女は人間から『幽鬼』へと身を堕としていた……。 「よっしゃ、この設定で行けば同情を誘えること間違い無しだぜ!!」 上記のクッソエグい経歴は全部彼女が即興で考えた 作 り 話 である。 幽鬼マンイーター、美しい外見で男を惑わせ、肉だけでなく金まで貪る人食いゾンビ。 今回は人間の男がいない、というわけで、悲しい過去を持つ悪魔ですアピールをして同情を誘うという魂胆だ。 「アタシの策略はこうだ。まず、男の参加者にこの話を打ち明け、同情してもらう(男は全員、悲しい過去を持つオンナに弱い)  続いて、何とか魅了して(代わりに戦ってもらったりと、程よく利用してから)あくまのキスで弱らせる。  苦しんでいるところをアタシの必殺技『麻痺かみつき』で止めを刺す……ヤバイ、天才じゃねーかコレ!!」 キャーハハハと高笑いをする。 人間の男であればこんなことしなくてもナイスバディで勝手に魅了されるけど、悪魔相手となるとそんな上手くいかない。 一目惚れ狙いではなく、中身を知ってもらうことで魅了するのだ。え、セクシーダンス? あんなの一時的な魔法みたいなもんだからね? 無論、自分も悪魔なので殴り合いでの戦闘能力はそこそこある。けれど、優勝するためには持ちうる武器を最大限使わないといけないだろう。 そうだ、優勝するのは自分だ。戦いの舞台でヒロインを目指し、最終的には世界中の男を食い物にしてやるのだ! マンイーターは美しいワンレングスヘアーをなびかせて歩き出す。 どっかに単純な性格でそこそこ強い男悪魔(カモ)がいればいいんだけどね。うん。  ◆ 外道バックベアードの触手に縛られるブイモンの姿があった。 「このロリコンめっ! 幼女である私に襲いかかるなんて、この変態野郎!」 「ち、違うんだ、そんなつもりは無かったんスよ! 変態じゃないッス!」 ブイモンが襲いかかった……というのは、決して間違いではない。 ふわふわと歩いてるバックベアードを見つけたブイモンは、背後から忍び寄って必殺技のブイモンヘッドを放ったのだ。 いわゆる不意打ち。だって殺し合いに乗らないとモリーに殺されるじゃないか。やるしかなかったんだ。 ……かっこいい容姿をしている彼は、あいにくその見た目にそぐう程の勇敢さを持ち合わせてなかった。 仕方ないじゃないか。それが一般的なモンスターの考え方というものだ。 ……しかし、その結果はご覧の有様。あっという間にお縄にかけられた。 成長期の戦闘能力じゃ勝てっこなかった。仕方ない、こうなったら命乞いタイムしか有るまい。 「すみませんでした……。支給品置いて走り去りますので助けてください」 「そんなこと言って、離した瞬間私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」 「しないから」 「ほらそう言う。変態はみんな同じこと言うのよ!」 ダメだ。埒があかない。交渉に応じる気が一切感じられない。 バックベアード……その姿は巨大な目玉に無数の触手が生えている異形の怪物そのものである。 いくら年齢的に幼女だったしても、誰が目玉と触手の悪魔に襲いかかるというのだろうか。 客観的に物事を見つめることが出来ないのか。目玉のくせに見れないのか。 それにしても、交渉がダメならあとはもう暴れるくらいしか助かる手立ては無い。 ブイモンは体をひねって拘束を抜け出そうともがく。 しかし、ブイモンの力ではガチガチに巻かれた触手はピクリとも緩まない。 「クッソー、離してくれ! 俺をどーする気ッスか!」 「アナタみたいな野獣を野放しに出来ないわ。ここで殺してあげるわ! クソムシが!」 「クソムシて……い、嫌だーっ! 冤罪のまま殺されるだとか勘弁してくださいよ!」 「ねぇどんな気分? 襲おうとした幼女に返り討ちに合うとかどんな気分よ?」 悪党を完全に無力化したことで、バックベアードの感情は高ぶっていた。 コイツの命は私が握っているんだ。あぁ、なんという征服感。実に気分がいい。 その触手で首を絞めて退治することも出来るし、衝撃波の魔法ザンマで切り刻んでやる事も出来る。 命乞いに乗って助けてやるのも自由なのだ。まぁ、そのつもりは無いけれどもね。 彼女は自らの手の内で必死にもがくブイモンの姿をニヤニヤと(目玉だけなので表情は無いが)眺めていた。 と、その現場に通りかかったマンイーターであった。 「うわ、まさかの戦闘中じゃん」 「何よあんた……って、何!? 人間の女!?」 バックベアードは驚く。その姿はどう見ても人間の小娘だったからだ。 黒髪ワンレンの白いボディコンを着たチャラい女。何故こんなのがここにいるのか。 ……まぁ、そんなことはぶっちゃけ後でいい、と判断した。 何故かって? それは私が捕まえてる変態がその女に助けを求めだしたからだよ。 「そこの麗しきお嬢さん、助けてください!」 状況的に私が一方的に攻撃してるように見えるだろう。 ならば、キチンと事情を説明すればわかってもらう必要がある。 「騙されないで! こいつ幼女である私を襲ったのよ! ロリコンのケダモノよ!」 「俺ケダモンじゃないです! デジモンです!」 「うっせークソムシが! ほら、貴方も一人の女ならわかるでしょ! コイツは女の敵なのよ、敵!」 女の敵……これは殺し文句だわね。バックベアードは心の中で不敵に笑う。 羊の如くか弱き幼女と、盛りの付いたオオカミ……どちらの言い分が信用されるかしら? 無論、この私に決まってるでしょ。幼女の味方をしない人間がどこにいるかしら。 とりあえず、これだけ言えばこの人間も騙されたりしないはずよ。ウフフフフ…… マンイーターはバックベアードとブイモンの姿を交互に見た。 そして、黙ったままふくろから拳銃を取り出す。 出てきたのはMPSマシンガン、彼女はその銃口をブイモンに向けた。 「オーオゥ、貴方からも一撃くれてやりたいってわけね! いいわいいわ、このゴミクズを撃ち抜いちゃって!」 嬉々とした口調でバックベアードはそう言うと、ブイモンを掴んでいる触手をマンイーターが狙いやすい位置に動かす。 ブイモンは必死にもがくが、最後までその拘束から逃れられることは叶わない。 「ギャー、助けてーっ!」 引き金が引かれる。 ―――ぱららららっ 「…………」 軽い発砲音が周囲にこだました。 「…………」 「そ、そん……な……」 「…………」 ……静寂の中、ブイモンは声だけが小さく聞こえた。 「……おやおやぁ~? これはいったいどういう風の吹き回しィ?」 銃弾を浴びて、うずくまるマンイーターを見ながら、バックベアードは挑発を口にする。 そう、おそらく誰もが予想しただろうが、マンイーターは発砲の瞬間にマシンガンの銃口をバックベアードへ向け直したのだ。 彼女は常に男性の肩を持つのは当たり前だ。だって獲物だし。 だが、それを予想出来なかったバックベアードは一瞬だけ驚いた。 しかし、マンイーター側にも予期出来ない事態が一つだけ含まれていた。 それはバックベアードは『撃ち込まれた銃弾を反射する性質』を持つ悪魔だったということ。 無数に放たれた銃弾は、そっくりそのままマンイーターの腹部へと突き刺さった。 ブイモンの「そんな……」という言葉は、その不可解な展開を飲み込むことが出来なかった感想である。 「あーあ、残念だわねぇ。私のようなか弱い幼女に襲いかかるから報いを受けるのよ?」 こんなの幼女のセリフではない。 「まさかガンを跳ね返せるとか有り得ないんですけど……いや、アタシも平気なんだけどさー」 マンイーターはスッと立ち上がり、いくつもの小さな穴が空けられたボディコンを手でパッパッと叩いた。 カラカランと音を立てて銃弾が服の隙間からこぼれ落ちていく。 「へぇ、防弾チョッキでも付けてたのかしら」 「教えないよ」 「あっそ。どっちにしろ、貴方の銃は役に立たない。だったら後は直接的な殴り合いね。どう? 勝てる自信あるかしら? 人間」 「もう必殺技でワンチャンよ、これに賭けるわ」 「ほーう、必殺技ねぇ……。……幼女だからって馬鹿にするのもほどほどにしろよ、クズ鉄。  人間の小娘風情が、バックベアードである私に少しでも勝てると思ってんの?」 バックベアードは目の前の"無力そうな人間"を見て、嘲る。 事実、バックベアードはその辺りの野良悪魔と比べて、格段に強い戦闘能力を持っている。 それは本物の人間どころか、マンイーターですらも大きくレベルを上回っている程に。 支給品という不確定要素が通用しなければ、あとは互いの純粋な戦闘能力をぶつけ合うことによって勝者が決まる。 相変わらずブイモンは縛られているため、二人の戦いに邪魔が入ることは無い。 「麻痺かみつきッ!!」 マンイーターは口をガバッと開き、バックベアードへと駆ける! 「遅い、遅いのよ! こちらが先手を取らせて貰うわ!!」 バックベアードの目には既に勝利しか見えていなかった。 圧倒的なレベルの差に加えて、自分には相手の動きを封じる技を先に繰り出せる。 そう、いくらさっきから負けフラグをばら蒔いていたとしても、この差を覆せなければ自身の敗北は有り得ないのだ。 ―――処刑の時間だ。 「じわじわとなぶり殺してあげる! パララアイ!!」 パララアイ……バックベアードの『相手の筋肉を麻痺させる眼力』が、マンイーターを射抜く――。 そして、マンイーターは戦いに勝利した。 &color(red){【外道バックベアード@真・女神転生シリーズ 死亡】}  ◆ 何が起きたか簡潔に説明しよう。 マンイーターは『強アンデッド』と区分される肉体を持っている。 その肉体の特徴として挙げられるのは、銃弾を受けても一切の損傷を受けないという所。 そしてもう一つは『呪殺』属性の攻撃を反射出来る所。この二つが際立って目立つ点と言えよう。 さて、バックベアードの肉体は銃弾を跳ね返す。だが、それ以外に目立った耐性は持ち合わせていない。 パララアイの属性が『呪殺』。反射された眼力は、そのままバックベアード自身の体を石の如く硬直させた。 その後、触手一本を動かすことも叶わぬまま、ボコボコに殴られて息絶えた、というわけだ。 マンイーターを見た目で人間だと判断してしまったのも、敗因の一つなのかもしれない。 「適当に誘惑すりゃ済むのに、なんでこんな死線くぐる羽目に……」 マンイーターはため息をついた。 ショットシェルの弾が込められたマシンガン……これぶっぱすれば余裕で行けるっしょ、と思ったらそんなことはなかった。 苦労して助けだした割にはこの男悪魔はあんまり強くなさそうだし……。なんかもう幸先が悪いったりゃありゃしない。 「助けてくれて感謝ッス!! 麗しき人間のお姉さん!!」 「いやいや、人間じゃねーから。アタシは幽鬼マンイーターって、悪魔だよ悪魔」 「マジすか! 俺はブイモンって言います! 良ければマンイーターさんと行動してもイイッスか?  しばらくの間でも、二人組で戦えば絶対に有利になるはずッスよ……そう思いません?」 これじゃ誘惑じゃなくて共同戦線じゃねーか。 まぁいい、他に有能そうな男悪魔に会うまでは弾除けとして役立たないことも無いだろう。 「そーかそーか。じゃ~あ……」 身をくねらせてブイモンの耳元に顔を近づけて、優しく囁いた。 「契約としてアタシにキスしてちょうだい? イケメンな竜の坊や……」 超肉食系の悩殺テクで軽~く虜にしてやるぜ。さぁ、たじろぐがいい。女を意識するがいい! 「……すみません。俺、マンイーターさんより十歳くらい若い子のが好みだもんで……ちょっと……」 「」 ロリコンに間違いは無かった模様。 【E-5/山中/一日目/日中】 【ブイモン@デジタルモンスターシリーズ】 [状態]:健康 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身は不明) [思考・状況] 基本:生き残りたい  1:しばらくマンイーターと組む [備考] オス。若者。ヘタレな後輩キャラ。「ッス」みたいな口調。自力で進化は出来無いようだ。 必殺技は「ブイモンヘッド」 【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ】 [状態]:健康 [装備]:MPSマシンガン&ショットシェル(85/100)@真・女神転生 [所持]:ふくろ、外道バックベアードのふくろ(中身は不明) [思考・状況] 基本:優勝狙い  1:男悪魔を誘惑し味方に付け、利用しつつ優勝を狙う  2:しばらくブイモンと組む。場合によっては切り捨てる [備考] メス。白いボディコンに黒髪ワンレンのゾンビ。ノリが軽いギャル。名前の通り男喰い。一人称は「アタシ」 技は「麻痺噛みつき」「悪魔のキス(未登場)」「セクシーダンス(未登場)」 真・女神転生Ⅱの出典 《支給品紹介》 【MPSマシンガン@真・女神転生】 吉祥寺の骨董屋で25000円で買えるマシンガン。連射出来るが威力が低い。 【ショットシェル@真・女神転生】 銃の弾。MPSマシンガンと同時期に購入すると思われる。 |No.17:[[力の証]]|[[投下順]]|No.19:[[きらがぶじゃれじゃれん!!]]| ||ブイモン|No.29:[[眠ったままで]]| ||外道バックベアード|&color(red){死亡}| ||幽鬼マンイーター|No.29:[[眠ったままで]]|
彼女の心は、男性への愛で満ち溢れていた。 どんな男性であっても、彼女は愛することが出来た。 性格も、容姿も、年齢も、人種も、彼女にとって例外など存在しない。 一人一人に違った魅力が有り、その魅力を発見するのが彼女の楽しみだった。 より沢山の男の人の、色んな部分を知りたい。 いっぱい話をしてその人の思想を知り、夜を過ごしてその人の肉体を知る……。 それは一人の男だけに留めることは出来ない。自分の知り合い全てに、同じような関係を築いた。 彼女にとってそれは知的好奇心を満たす行為であり、幸福であり、生き甲斐であったのだ。 反面、彼女に対する世間の目は厳しかった。 彼女のこの行ないは常に批判の的として話題に挙げられていた。 みっともない、汚らわしい、不埒者、尻軽女、ビッチ、社会のクズ、魔女、男喰い……。 人々は聞くに耐えないような罵倒を平然とぶつけてきた。 自分の男性への愛をいくら主張しても、誰一人として理解してくれなかった。 評判が悪くなれば男友達は寄り付かなくなる。 すると彼女は求めるものを探しに夜の世界へと飛び込んだ。 世間の目はさらに厳しくなり、やがては家族に見放され、友人に見放され…… 気がつけば昼の世界から、彼女の居場所は無くなっていた。 夜の世界はそんな彼女を受け入れた。 男性たちは親切にも、食事代や寝泊りの費用、さらにはプレゼントに至るまでドンドン出してくれる。 それは「本当に男を食い物にしている」行為。けれどそれを無下にすることも出来ず、受け入れていた。 彼女は沢山の者と関係を作り、沢山の人の全てを知る。なんとも楽しい生活だったことだろう。 大きく歪まされてしまったのはある男がきっかけだった。 その男は端正な顔立ちをしており、紳士的な態度が非常に好感が持てた。 彼女はいつもと同じように、かつて夜を共にした他の男性と同様に、この男に対して愛を注いだ。 その男は言った。僕だけのものになってくれ、と。 それを彼女は断った。だって、貴方だけでは満足出来ないから。 男の態度が変わる。 それまでの優しい微笑みは一切消え去り、軽蔑の眼差しと怒りの形相を浮かべながら冷徹な言葉をぶつけだした。 その豹変に彼女は唖然とする。私は、こんな顔をする彼を知らない。知らなかった。男の全てを知っていると思っていたのに、知らなかった。 言葉のナイフは彼女の心と、人格、容赦なく切りつけた。 歯止めが効かなくなり、言葉に加えて男の拳までもが飛んでくる。 悪意を全身に浴びながら、彼女は甘美な時間が一転し、ガラガラと崩れ落ちる感覚に苦しんでいた。 夜の世界すら、こうやって私を否定して、悲しませて、苦しませるのか。 胸を引き裂くような辛い感情が湧き上がる。 その感情に任せて彼女は、男性を思いっきり突き飛ばした。 運が悪いことに、バランスを崩した男は、頑丈なベッドの柱の部分に後頭部を強く打ち付けた。 ぶくぶくと赤い泡を吹き、白目を剥いて、しばらく痙攣を繰り返したあとに動かなくなった。 彼女の目の前にある光景が、一瞬、現実のものだと思えなかった。 やがて抑えきれないほどの罪悪感と恐怖が心を蝕んでいく。 錯乱の挙句、彼女は喰らいつく様に男に接吻をした。 ……もとい、文字通り喰らいついていた。 ガリリ ブチブチブチブチッと不快な音を立てて、口内に柔らかな物体が飛び込んでくる。 その瞬間に我に返り、肉を吐き戻そうとした彼女は、ある事に気が付いてしまった。 ―――美味しい。 彼女は男性の『味』を知った。 その日からしばらくして、彼女は愛する男性全員の「魅力」を知るに至った。 誰も知らない、男性の魅力の一つ。それを私は知ることが出来る。 その人は私の体の中で、共に生き続けられる。それは最高に幸せなことだ。 カニバリストによる連続惨殺事件の犯人、人呼んで"マンイーター"はここに誕生した。 この行為を繰り返すうちに、彼女は人間から『幽鬼』へと身を堕としていた……。 「よっしゃ、この設定で行けば同情を誘えること間違い無しだぜ!!」 上記のクッソエグい経歴は全部彼女が即興で考えた 作 り 話 である。 幽鬼マンイーター、美しい外見で男を惑わせ、肉だけでなく金まで貪る人食いゾンビ。 今回は人間の男がいない、というわけで、悲しい過去を持つ悪魔ですアピールをして同情を誘うという魂胆だ。 「アタシの策略はこうだ。まず、男の参加者にこの話を打ち明け、同情してもらう(男は全員、悲しい過去を持つオンナに弱い)  続いて、何とか魅了して(代わりに戦ってもらったりと、程よく利用してから)あくまのキスで弱らせる。  苦しんでいるところをアタシの必殺技『麻痺かみつき』で止めを刺す……ヤバイ、天才じゃねーかコレ!!」 キャーハハハと高笑いをする。 人間の男であればこんなことしなくてもナイスバディで勝手に魅了されるけど、悪魔相手となるとそんな上手くいかない。 一目惚れ狙いではなく、中身を知ってもらうことで魅了するのだ。え、セクシーダンス? あんなの一時的な魔法みたいなもんだからね? 無論、自分も悪魔なので殴り合いでの戦闘能力はそこそこある。けれど、優勝するためには持ちうる武器を最大限使わないといけないだろう。 そうだ、優勝するのは自分だ。戦いの舞台でヒロインを目指し、最終的には世界中の男を食い物にしてやるのだ! マンイーターは美しいワンレングスヘアーをなびかせて歩き出す。 どっかに単純な性格でそこそこ強い男悪魔(カモ)がいればいいんだけどね。うん。  ◆ 外道バックベアードの触手に縛られるブイモンの姿があった。 「このロリコンめっ! 幼女である私に襲いかかるなんて、この変態野郎!」 「ち、違うんだ、そんなつもりは無かったんスよ! 変態じゃないッス!」 ブイモンが襲いかかった……というのは、決して間違いではない。 ふわふわと歩いてるバックベアードを見つけたブイモンは、背後から忍び寄って必殺技のブイモンヘッドを放ったのだ。 いわゆる不意打ち。だって殺し合いに乗らないとモリーに殺されるじゃないか。やるしかなかったんだ。 ……かっこいい容姿をしている彼は、あいにくその見た目にそぐう程の勇敢さを持ち合わせてなかった。 仕方ないじゃないか。それが一般的なモンスターの考え方というものだ。 ……しかし、その結果はご覧の有様。あっという間にお縄にかけられた。 成長期の戦闘能力じゃ勝てっこなかった。仕方ない、こうなったら命乞いタイムしか有るまい。 「すみませんでした……。支給品置いて走り去りますので助けてください」 「そんなこと言って、離した瞬間私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」 「しないから」 「ほらそう言う。変態はみんな同じこと言うのよ!」 ダメだ。埒があかない。交渉に応じる気が一切感じられない。 バックベアード……その姿は巨大な目玉に無数の触手が生えている異形の怪物そのものである。 いくら年齢的に幼女だったしても、誰が目玉と触手の悪魔に襲いかかるというのだろうか。 客観的に物事を見つめることが出来ないのか。目玉のくせに見れないのか。 それにしても、交渉がダメならあとはもう暴れるくらいしか助かる手立ては無い。 ブイモンは体をひねって拘束を抜け出そうともがく。 しかし、ブイモンの力ではガチガチに巻かれた触手はピクリとも緩まない。 「クッソー、離してくれ! 俺をどーする気ッスか!」 「アナタみたいな野獣を野放しに出来ないわ。ここで殺してあげるわ! クソムシが!」 「クソムシて……い、嫌だーっ! 冤罪のまま殺されるだとか勘弁してくださいよ!」 「ねぇどんな気分? 襲おうとした幼女に返り討ちに合うとかどんな気分よ?」 悪党を完全に無力化したことで、バックベアードの感情は高ぶっていた。 コイツの命は私が握っているんだ。あぁ、なんという征服感。実に気分がいい。 その触手で首を絞めて退治することも出来るし、衝撃波の魔法ザンマで切り刻んでやる事も出来る。 命乞いに乗って助けてやるのも自由なのだ。まぁ、そのつもりは無いけれどもね。 彼女は自らの手の内で必死にもがくブイモンの姿をニヤニヤと(目玉だけなので表情は無いが)眺めていた。 と、その現場に通りかかったマンイーターであった。 「うわ、まさかの戦闘中じゃん」 「何よあんた……って、何!? 人間の女!?」 バックベアードは驚く。その姿はどう見ても人間の小娘だったからだ。 黒髪ワンレンの白いボディコンを着たチャラい女。何故こんなのがここにいるのか。 ……まぁ、そんなことはぶっちゃけ後でいい、と判断した。 何故かって? それは私が捕まえてる変態がその女に助けを求めだしたからだよ。 「そこの麗しきお嬢さん、助けてください!」 状況的に私が一方的に攻撃してるように見えるだろう。 ならば、キチンと事情を説明すればわかってもらう必要がある。 「騙されないで! こいつ幼女である私を襲ったのよ! ロリコンのケダモノよ!」 「俺ケダモンじゃないです! デジモンです!」 「うっせークソムシが! ほら、貴方も一人の女ならわかるでしょ! コイツは女の敵なのよ、敵!」 女の敵……これは殺し文句だわね。バックベアードは心の中で不敵に笑う。 羊の如くか弱き幼女と、盛りの付いたオオカミ……どちらの言い分が信用されるかしら? 無論、この私に決まってるでしょ。幼女の味方をしない人間がどこにいるかしら。 とりあえず、これだけ言えばこの人間も騙されたりしないはずよ。ウフフフフ…… マンイーターはバックベアードとブイモンの姿を交互に見た。 そして、黙ったままふくろから拳銃を取り出す。 出てきたのはMPSマシンガン、彼女はその銃口をブイモンに向けた。 「オーオゥ、貴方からも一撃くれてやりたいってわけね! いいわいいわ、このゴミクズを撃ち抜いちゃって!」 嬉々とした口調でバックベアードはそう言うと、ブイモンを掴んでいる触手をマンイーターが狙いやすい位置に動かす。 ブイモンは必死にもがくが、最後までその拘束から逃れられることは叶わない。 「ギャー、助けてーっ!」 引き金が引かれる。 ―――ぱららららっ 「…………」 軽い発砲音が周囲にこだました。 「…………」 「そ、そん……な……」 「…………」 ……静寂の中、ブイモンは声だけが小さく聞こえた。 「……おやおやぁ~? これはいったいどういう風の吹き回しィ?」 銃弾を浴びて、うずくまるマンイーターを見ながら、バックベアードは挑発を口にする。 そう、おそらく誰もが予想しただろうが、マンイーターは発砲の瞬間にマシンガンの銃口をバックベアードへ向け直したのだ。 彼女は常に男性の肩を持つのは当たり前だ。だって獲物だし。 だが、それを予想出来なかったバックベアードは一瞬だけ驚いた。 しかし、マンイーター側にも予期出来ない事態が一つだけ含まれていた。 それはバックベアードは『撃ち込まれた銃弾を反射する性質』を持つ悪魔だったということ。 無数に放たれた銃弾は、そっくりそのままマンイーターの腹部へと突き刺さった。 ブイモンの「そんな……」という言葉は、その不可解な展開を飲み込むことが出来なかった感想である。 「あーあ、残念だわねぇ。私のようなか弱い幼女に襲いかかるから報いを受けるのよ?」 こんなの幼女のセリフではない。 「まさかガンを跳ね返せるとか有り得ないんですけど……いや、アタシも平気なんだけどさー」 マンイーターはスッと立ち上がり、いくつもの小さな穴が空けられたボディコンを手でパッパッと叩いた。 カラカランと音を立てて銃弾が服の隙間からこぼれ落ちていく。 「へぇ、防弾チョッキでも付けてたのかしら」 「教えないよ」 「あっそ。どっちにしろ、貴方の銃は役に立たない。だったら後は直接的な殴り合いね。どう? 勝てる自信あるかしら? 人間」 「もう必殺技でワンチャンよ、これに賭けるわ」 「ほーう、必殺技ねぇ……。……幼女だからって馬鹿にするのもほどほどにしろよ、クズ鉄。  人間の小娘風情が、バックベアードである私に少しでも勝てると思ってんの?」 バックベアードは目の前の"無力そうな人間"を見て、嘲る。 事実、バックベアードはその辺りの野良悪魔と比べて、格段に強い戦闘能力を持っている。 それは本物の人間どころか、マンイーターですらも大きくレベルを上回っている程に。 支給品という不確定要素が通用しなければ、あとは互いの純粋な戦闘能力をぶつけ合うことによって勝者が決まる。 相変わらずブイモンは縛られているため、二人の戦いに邪魔が入ることは無い。 「麻痺かみつきッ!!」 マンイーターは口をガバッと開き、バックベアードへと駆ける! 「遅い、遅いのよ! こちらが先手を取らせて貰うわ!!」 バックベアードの目には既に勝利しか見えていなかった。 圧倒的なレベルの差に加えて、自分には相手の動きを封じる技を先に繰り出せる。 そう、いくらさっきから負けフラグをばら蒔いていたとしても、この差を覆せなければ自身の敗北は有り得ないのだ。 ―――処刑の時間だ。 「じわじわとなぶり殺してあげる! パララアイ!!」 パララアイ……バックベアードの『相手の筋肉を麻痺させる眼力』が、マンイーターを射抜く――。 そして、マンイーターは戦いに勝利した。 &color(red){【外道バックベアード@真・女神転生シリーズ 死亡】}  ◆ 何が起きたか簡潔に説明しよう。 マンイーターは『強アンデッド』と区分される肉体を持っている。 その肉体の特徴として挙げられるのは、銃弾を受けても一切の損傷を受けないという所。 そしてもう一つは『呪殺』属性の攻撃を反射出来る所。この二つが際立って目立つ点と言えよう。 さて、バックベアードの肉体は銃弾を跳ね返す。だが、それ以外に目立った耐性は持ち合わせていない。 パララアイの属性が『呪殺』。反射された眼力は、そのままバックベアード自身の体を石の如く硬直させた。 その後、触手一本を動かすことも叶わぬまま、ボコボコに殴られて息絶えた、というわけだ。 マンイーターを見た目で人間だと判断してしまったのも、敗因の一つなのかもしれない。 「適当に誘惑すりゃ済むのに、なんでこんな死線くぐる羽目に……」 マンイーターはため息をついた。 ショットシェルの弾が込められたマシンガン……これぶっぱすれば余裕で行けるっしょ、と思ったらそんなことはなかった。 苦労して助けだした割にはこの男悪魔はあんまり強くなさそうだし……。なんかもう幸先が悪いったりゃありゃしない。 「助けてくれて感謝ッス!! 麗しき人間のお姉さん!!」 「いやいや、人間じゃねーから。アタシは幽鬼マンイーターって、悪魔だよ悪魔」 「マジすか! 俺はブイモンって言います! 良ければマンイーターさんと行動してもイイッスか?  しばらくの間でも、二人組で戦えば絶対に有利になるはずッスよ……そう思いません?」 これじゃ誘惑じゃなくて共同戦線じゃねーか。 まぁいい、他に有能そうな男悪魔に会うまでは弾除けとして役立たないことも無いだろう。 「そーかそーか。じゃ~あ……」 身をくねらせてブイモンの耳元に顔を近づけて、優しく囁いた。 「契約としてアタシにキスしてちょうだい? イケメンな竜の坊や……」 超肉食系の悩殺テクで軽~く虜にしてやるぜ。さぁ、たじろぐがいい。女を意識するがいい! 「……すみません。俺、マンイーターさんより十歳くらい若い子のが好みだもんで……ちょっと……」 「」 ロリコンに間違いは無かった模様。 【E-5/山中/一日目/日中】 【ブイモン@デジタルモンスターシリーズ】 [状態]:健康 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身は不明) [思考・状況] 基本:生き残りたい  1:しばらくマンイーターと組む [備考] オス。若者。ヘタレな後輩キャラ。「ッス」みたいな口調。自力で進化は出来無いようだ。 必殺技は「ブイモンヘッド」 【幽鬼マンイーター@真・女神転生シリーズ】 [状態]:健康 [装備]:MPSマシンガン&ショットシェル(85/100)@真・女神転生 [所持]:ふくろ、外道バックベアードのふくろ(中身は不明) [思考・状況] 基本:優勝狙い  1:男悪魔を誘惑し味方に付け、利用しつつ優勝を狙う  2:しばらくブイモンと組む。場合によっては切り捨てる [備考] メス。白いボディコンに黒髪ワンレンのゾンビ。ノリが軽いギャル。名前の通り男喰い。一人称は「アタシ」 技は「麻痺噛みつき」「悪魔のキス(未登場)」「セクシーダンス(未登場)」 真・女神転生Ⅱの出典 《支給品紹介》 【MPSマシンガン@真・女神転生】 吉祥寺の骨董屋で25000円で買えるマシンガン。連射出来るが威力が低い。 【ショットシェル@真・女神転生】 銃の弾。MPSマシンガンと同時期に購入すると思われる。 |No.17:[[力の証]]|[[時系列順]]|No.20:[[上手くズルく生きて楽しいのさ]]| |No.17:[[力の証]]|[[投下順]]|No.19:[[きらがぶじゃれじゃれん!!]]| ||ブイモン|No.29:[[眠ったままで]]| ||外道バックベアード|&color(red){死亡}| ||幽鬼マンイーター|No.29:[[眠ったままで]]|

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