ハルモニア

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その男の鶴の一声で、改造され尽くした人の島は非現実的な展開を始める。 海も森も砂地も、すべてが嘘まやかしであったように。 本来予想外であろう情景だが、渦中のグレイシアは冷静にせり上がり変わりゆく大地を観察していた。 いや、彼女は神経を張り詰めていた。 ふざけたあの魔物に似た、巨大な自称モンスターに乗り込む男を、遠巻きに見ながら。 踏みしめる大地は慣らされた、コロシアムの砂地。 先ほどまでの岩肌ではない、無残だった死の跡地すらもう見えない。 彼女たちが守りぬいた帰り道もまた、行方不明だ。 「もういい加減にしてほしいよね……」 うんざりと、しかし笑って。 「ピクシー?」 ソーナンスは心配そうに、投げやりに笑ったピクシーの傍に寄った。 自棄を起こしているのだろうか、無理もない、あまりにも理不尽で唐突な出来事だったから。 誰が予想できるだろうか、島が、会場がひっくり返るなんて。 というか正直むちゃくちゃだ、海のエリアもあった、明らかに客席の面積が足りてない、もう、あのさあ。 「大丈夫、大丈夫だよ」 一周回って、どこか清々しい気分だった。 死ぬだの殺すだの、苦しい感情に挟まれていた時より、ずうっとマシなきもち。 「少し、心配しましたが貴方も同じでしたか」 グレイシアが気高く、しっかと先を、『帰り道』を見据えて。 「うん、あの変なおっさんに一発食らわせてやんなきゃ」 ぱしん、拳を掌に押し付ける。 賢さ技が目立つ種族のピクシーだが、勿論力技だって揃えている。 見た目は可愛らしいタッチは勿論、完全に格闘技に分類されるヒールレイドはモンスターにとっては僅かなダメージかも知れないが、人間はそうは行かない。 「え、と……どういう」 ソーナンスも理解していた。 でも、ちょっと、その、ほんのちょっと嫌だった。 優しすぎて言葉を閉じ込めていたぐらいには、彼は世界に他人に寛容だったから。 「まず、主催だろうあの男が降りてきた、ということは」 この状況が如何に破綻しているか。 懇切丁寧にグレイシアは説く。 まず、我々には最後の1体になるまで戦いを強いられるルールと、死枷が押し付けられていた。 そのせいであるものは悩み、あるものは戦い、あるものは死んだ。 魔物同士の、殺し合いの宴、非常に悪趣味だ、とグレイシアは断言する。 先に見ていたこの島のデータ、殺し合いの計画の全容。 実に、実に手の込んだ非道だ。 「でも、そこまで徹底してるのにあのおっさんが出てくる……ってのは、ちょっとおかしいよね?」 管理人たるモリーの乱入、それは何かの破綻を示す。 たんに好奇心、気まぐれではないか、そう思わなくもない。 ただ周囲に沸き立つ雨の如き不協和音、人間の声。 変わったのだ、おそらく。 会場と同じく、破綻した殺し合いは姿を、ルールを変更した。 無論、死枷が消えたという確証はどこにもない。 でも、だ。 「もう誰とも殺しあいとか、戦いをしなくていい、あいつ以外とは」 ソーナンスは言葉の先を見る。 青く巨大な、間抜け面をした怨敵を。 「主催……彼への落とし前をつけ、私達は堂々と帰るのです」 真っ直ぐな帰り道。 「僕は……」 「大丈夫よ、ソーナンス、あんたは無理しなくても……」 「ううん、僕も、闘う」 嫌だけど、選ぶ。 このまま何もしないで、同調だけして、自分を持たないのは嫌だ。 ソーナンスも帰り道を確認した。 誰かに痛い思いをさせるやつを、放っておいていいわけがない。 自分も痛みを受けて、返してやらなくてはいけない。 言わなければ、声を大にして叫ばなければ、そうじゃないと、この行いが間違っていたと。 それは、多分。 この場所にいて、いなくなってしまった、みんなの痛みでもあるだろう。 返さないと、せめて、伝えないと。 知らない誰かに対する痛みが胸に募る。 選んで選ばなかった気持ちを想像するだけでこうなのだから。 ぐるぐる胸の中で回る気持ちで息が詰まって、息を少しでも高い位置で吸おうと、顔を上げた。 胸と瞳いっぱいに映る、天の頂に上り詰めた月。 月を取り囲む散っていった誰かの星空、これを眺めているものが多いことを切に願う。 眩しかった、三体を照らす金色の光。 陽光を反射して降り注ぐ、明るく昏い、光。 真円にに溶けこむように、しかしはっきりと境界線を築いた九尾の影。 ゆっくりと、知らない影はこちらに降りてくる。 「あれ……?」 眩しすぎて目を細めていたソーナンスは幻視する。 その背に、はぐれたメタモンが、少女の姿で跨って手を振っているのを。 声に気づいたピクシーとグレイシアも同じく、放心した状態で誰かを、九尾ではない誰かを見ていた。 苦しいほど、共感と、愛惜が募った。 降臨した九尾を見ても、誰も口を開けない。 「……ピクシー、グレイシア、ソーナンス」 噛み締めた声は中性的で、月光を浴びて光り輝いて見えた。 どうしてだろう、様々な、知っても居ない面影があるのは。 「貴方は……?」 警戒したいのに、グレイシアは素直に、彼女にしては珍しくただ欲求のままに尋ねた。 知りたい、目の前の九尾を、その内包している魂を。 「私は――」 切々、朗々と、声は始まった。 レナモン、そう名乗った語り部の伝える、魔物達の声。 鮫龍、コイキング、はぐれメタル、モー・ショボー、エアドラモン、メタルティラノモン、スティングモン、アリス、そしてメタモン。 戦った、戦った、逃がした、見ていた、追いかけた、見ていた、見送った、恐れた。 およそ一日、たったそれだけの間に対面し過ぎ去った光景。 レナモンは語る、己を、他者の記憶を保持できる生き物であると。 0と1で構成された存在であるがゆえに、どんな生き物より記憶に触れるという特性を。 「メタモンは?」 答えを、どうしてか予想できた。 「私の……友だちになってくれた」 声は重なる、記憶の、「おともだちになりましょう」という声と。 思い出が、短い間の出来事が。 「そう……ですか」 察してしまう。 友が、この場にいないことを。 その理由を、過去形になってしまった事実を。 交響する。 会話は、音に、唄になる。 振動が触れ合い、届く。 「私は伝えたかった、会いたかった……だから、よかった」 レナモンは、スラリンガルに飛び込む前に彼女らを視認した。 スラリンガルと少し離れた中央に居たのが幸いしたのだろうか。 月の、星の、めぐりが彼女らを引きあわせたのだろうか。 「ごめんなさい」 グレイシアは泣いていた。 彼女らしくもなく、声を震わせて。 ピクシーも、ソーナンスもまた。 メタモンとはほんの数刻しか行動を共にはしていなかった。 だが、今三体が、レナモンを含めると四体がここにこうして生きた状態で出会えたのはメタモンのおかげ。 見えざる命の輪唱、繋がれた今。 ピクシーは、もっと話しておけばよかったと後悔する。 グレイシアは、こんな場所に連れて来られなければと嘆く。 ソーナンスは、助けてあげたかったともしもを考える。 レナモンは、彼女たちが泣きじゃくるのをただ見ていた。 優しく、そしてたっぷりと羨望を含んだ眼差し。 亡くしたもののために、素直に涙を流せる。 それは悲しいけれど暖かくて、自分もそんな気持ちを取り戻し、大事にしたいとレナモンは思う。 でも謝るだけじゃあ駄目なんだ、そう口を開こうとした、その時であった。 『ありがとう』 不意に、泣き声の和音に空から鼓膜を揺らす優しい声が加わった。 「メタモン……?それとも……」 幻聴だったのだろうか、レナモンが喋ったのか。 確かに彼女たちはその声を聞いた。 人工の世界で、決して人間では作れない、満天の夜空。 そこに輝くのは散っていった命。 一つ一つの瞬きが鼓舞し、背中をを押し、激励する。 中には血気盛んに降り注ぐものもいる。 俯かずに仰ぐ、まだ地に立つ彼女らは、ちゃんと前を向かなくてはいけないのだ。 「――私の中の記憶によると、死者は星となり我々を見守っていてくれるらしい」 思い出は胸の中だけではない。 こうして伝え、共有すれば、その合唱は永遠のものにだってなれる。 いつだって夜空を見上げれば、思い出せる。 星々が笑っているか、泣いているか、それは心持ち次第で。 「だとしたら、泣いてなど、いられませんね」 夜空の応援席まで、届けよう。 勝鬨を、感謝を。 夜明けが来るより早く、連れて来よう。 記憶を、戻る場所を。 涙を拭う。 これは忘れるんじゃあない、しまっていくんだ。 そうして帰って、留めて、伝えて、大事に大事にする感情だ。 「向かうのだろう、あれに」 レナモンは問うた。あえて明確な道筋を言わずに。 「無論です」 グレイシアは胸を張る。瞳は涙ではない輝きに満ちていた。 「あったりまえよ」 ピクシーは拳を握る。その手の中には今日という日の想いが詰まっている。 「行こう」 ソーナンスは声に出す。彼の意思で、選んだやり方を。 強く、より強く。 固まった四体の意志。 「あの子が見ているうちに、終わらせよう」 レナモンの背に、促されるままに乗り走りだす。 触れ合った温もりを離さないように掴んで。 戦いの序曲が鳴り響く。 四重奏の和音と共に。 【D-5/平地/二日目/深夜】 【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】 [状態]:ダメージ(中)疲労(大) [装備]:なし [所持]:ふくろ(空っぽ) [思考・状況] 基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す   1:戦いに征く   2:メタモン、ありがとう 【ピクシー@モンスターファーム】 [状態]:疲労(大) [装備]:なし [所持]:ふくろ(空っぽ) [思考・状況] 基本:生きて帰りたい   1:帰るために戦う   2:見ててねメタモン   【ソーナンス@ポケットモンスター】 [状態]:疲労(大) [装備]:なし [所持]:ふくろ(空っぽ) 、スマートフォン@真・女神転生4 [思考・状況] 基本:ソーナンス!  1:ピクシーのそばにいてあげたい。  2:自分の意思で戦う  3:メタモンのことも居なくなったモンスターたちのことも忘れない ※この島の仕組、ターミナルの存在を確認しました。 【キュウビモン(レナモン)@デジタルモンスターシリーズ】 [状態]:ダメージ(中)、疾走 [装備]:なし [所持]:ふくろ(空) [思考・状況] 基本:君を忘れない 1:まだ見ぬ君に逢いに行く 2:鮫竜(ガブリアス)に再会できたなら名前を聞きたい 4:シャドームーンとアリスの決着後も気になる [備考] メス寄り。 多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、 大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。 自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。 ロードしたメタモンのデータは消失しましたがその残滓からメタモンのこの島での記憶を見ました。 現在は完全体に進化することは出来ません。 ※シャドームーンとアリスの戦いのうち空で行われた部分(獣王拳での決着まで)と、B-03城へのメテオカウンターを目撃しました。 |No.81:[[闘技場完成]]|[[時系列順]]|No.89:[[ブルーディスティニー]]| |No.87:[[It's Time to Play]]|[[投下順]]|No.89:[[ブルーディスティニー]]| |No.86:[[交差して超える世界]]|グレイシア|No.91:[[決勝(1)]]| |No.86:[[交差して超える世界]]|ピクシー|No.91:[[決勝(1)]]| |No.86:[[交差して超える世界]]|ソーナンス|No.91:[[決勝(1)]]| |No.85:[[レナモンの唄 ~Memories Off~]]|レナモン|No.91:[[決勝(1)]]|
その男の鶴の一声で、改造され尽くした人の島は非現実的な展開を始める。 海も森も砂地も、すべてが嘘まやかしであったように。 本来予想外であろう情景だが、渦中のグレイシアは冷静にせり上がり変わりゆく大地を観察していた。 いや、彼女は神経を張り詰めていた。 ふざけたあの魔物に似た、巨大な自称モンスターに乗り込む男を、遠巻きに見ながら。 踏みしめる大地は慣らされた、コロシアムの砂地。 先ほどまでの岩肌ではない、無残だった死の跡地すらもう見えない。 彼女たちが守りぬいた帰り道もまた、行方不明だ。 「もういい加減にしてほしいよね……」 うんざりと、しかし笑って。 「ピクシー?」 ソーナンスは心配そうに、投げやりに笑ったピクシーの傍に寄った。 自棄を起こしているのだろうか、無理もない、あまりにも理不尽で唐突な出来事だったから。 誰が予想できるだろうか、島が、会場がひっくり返るなんて。 というか正直むちゃくちゃだ、海のエリアもあった、明らかに客席の面積が足りてない、もう、あのさあ。 「大丈夫、大丈夫だよ」 一周回って、どこか清々しい気分だった。 死ぬだの殺すだの、苦しい感情に挟まれていた時より、ずうっとマシなきもち。 「少し、心配しましたが貴方も同じでしたか」 グレイシアが気高く、しっかと先を、『帰り道』を見据えて。 「うん、あの変なおっさんに一発食らわせてやんなきゃ」 ぱしん、拳を掌に押し付ける。 賢さ技が目立つ種族のピクシーだが、勿論力技だって揃えている。 見た目は可愛らしいタッチは勿論、完全に格闘技に分類されるヒールレイドはモンスターにとっては僅かなダメージかも知れないが、人間はそうは行かない。 「え、と……どういう」 ソーナンスも理解していた。 でも、ちょっと、その、ほんのちょっと嫌だった。 優しすぎて言葉を閉じ込めていたぐらいには、彼は世界に他人に寛容だったから。 「まず、主催だろうあの男が降りてきた、ということは」 この状況が如何に破綻しているか。 懇切丁寧にグレイシアは説く。 まず、我々には最後の1体になるまで戦いを強いられるルールと、死枷が押し付けられていた。 そのせいであるものは悩み、あるものは戦い、あるものは死んだ。 魔物同士の、殺し合いの宴、非常に悪趣味だ、とグレイシアは断言する。 先に見ていたこの島のデータ、殺し合いの計画の全容。 実に、実に手の込んだ非道だ。 「でも、そこまで徹底してるのにあのおっさんが出てくる……ってのは、ちょっとおかしいよね?」 管理人たるモリーの乱入、それは何かの破綻を示す。 たんに好奇心、気まぐれではないか、そう思わなくもない。 ただ周囲に沸き立つ雨の如き不協和音、人間の声。 変わったのだ、おそらく。 会場と同じく、破綻した殺し合いは姿を、ルールを変更した。 無論、死枷が消えたという確証はどこにもない。 でも、だ。 「もう誰とも殺しあいとか、戦いをしなくていい、あいつ以外とは」 ソーナンスは言葉の先を見る。 青く巨大な、間抜け面をした怨敵を。 「主催……彼への落とし前をつけ、私達は堂々と帰るのです」 真っ直ぐな帰り道。 「僕は……」 「大丈夫よ、ソーナンス、あんたは無理しなくても……」 「ううん、僕も、闘う」 嫌だけど、選ぶ。 このまま何もしないで、同調だけして、自分を持たないのは嫌だ。 ソーナンスも帰り道を確認した。 誰かに痛い思いをさせるやつを、放っておいていいわけがない。 自分も痛みを受けて、返してやらなくてはいけない。 言わなければ、声を大にして叫ばなければ、そうじゃないと、この行いが間違っていたと。 それは、多分。 この場所にいて、いなくなってしまった、みんなの痛みでもあるだろう。 返さないと、せめて、伝えないと。 知らない誰かに対する痛みが胸に募る。 選んで選ばなかった気持ちを想像するだけでこうなのだから。 ぐるぐる胸の中で回る気持ちで息が詰まって、息を少しでも高い位置で吸おうと、顔を上げた。 胸と瞳いっぱいに映る、天の頂に上り詰めた月。 月を取り囲む散っていった誰かの星空、これを眺めているものが多いことを切に願う。 眩しかった、三体を照らす金色の光。 陽光を反射して降り注ぐ、明るく昏い、光。 真円にに溶けこむように、しかしはっきりと境界線を築いた九尾の影。 ゆっくりと、知らない影はこちらに降りてくる。 「あれ……?」 眩しすぎて目を細めていたソーナンスは幻視する。 その背に、はぐれたメタモンが、少女の姿で跨って手を振っているのを。 声に気づいたピクシーとグレイシアも同じく、放心した状態で誰かを、九尾ではない誰かを見ていた。 苦しいほど、共感と、愛惜が募った。 降臨した九尾を見ても、誰も口を開けない。 「……ピクシー、グレイシア、ソーナンス」 噛み締めた声は中性的で、月光を浴びて光り輝いて見えた。 どうしてだろう、様々な、知っても居ない面影があるのは。 「貴方は……?」 警戒したいのに、グレイシアは素直に、彼女にしては珍しくただ欲求のままに尋ねた。 知りたい、目の前の九尾を、その内包している魂を。 「私は――」 切々、朗々と、声は始まった。 レナモン、そう名乗った語り部の伝える、魔物達の声。 鮫龍、コイキング、はぐれメタル、モー・ショボー、エアドラモン、メタルティラノモン、スティングモン、アリス、そしてメタモン。 戦った、戦った、逃がした、見ていた、追いかけた、見ていた、見送った、恐れた。 およそ一日、たったそれだけの間に対面し過ぎ去った光景。 レナモンは語る、己を、他者の記憶を保持できる生き物であると。 0と1で構成された存在であるがゆえに、どんな生き物より記憶に触れるという特性を。 「メタモンは?」 答えを、どうしてか予想できた。 「私の……友だちになってくれた」 声は重なる、記憶の、「おともだちになりましょう」という声と。 思い出が、短い間の出来事が。 「そう……ですか」 察してしまう。 友が、この場にいないことを。 その理由を、過去形になってしまった事実を。 交響する。 会話は、音に、唄になる。 振動が触れ合い、届く。 「私は伝えたかった、会いたかった……だから、よかった」 レナモンは、スラリンガルに飛び込む前に彼女らを視認した。 スラリンガルと少し離れた中央に居たのが幸いしたのだろうか。 月の、星の、めぐりが彼女らを引きあわせたのだろうか。 「ごめんなさい」 グレイシアは泣いていた。 彼女らしくもなく、声を震わせて。 ピクシーも、ソーナンスもまた。 メタモンとはほんの数刻しか行動を共にはしていなかった。 だが、今三体が、レナモンを含めると四体がここにこうして生きた状態で出会えたのはメタモンのおかげ。 見えざる命の輪唱、繋がれた今。 ピクシーは、もっと話しておけばよかったと後悔する。 グレイシアは、こんな場所に連れて来られなければと嘆く。 ソーナンスは、助けてあげたかったともしもを考える。 レナモンは、彼女たちが泣きじゃくるのをただ見ていた。 優しく、そしてたっぷりと羨望を含んだ眼差し。 亡くしたもののために、素直に涙を流せる。 それは悲しいけれど暖かくて、自分もそんな気持ちを取り戻し、大事にしたいとレナモンは思う。 でも謝るだけじゃあ駄目なんだ、そう口を開こうとした、その時であった。 『ありがとう』 不意に、泣き声の和音に空から鼓膜を揺らす優しい声が加わった。 「メタモン……?それとも……」 幻聴だったのだろうか、レナモンが喋ったのか。 確かに彼女たちはその声を聞いた。 人工の世界で、決して人間では作れない、満天の夜空。 そこに輝くのは散っていった命。 一つ一つの瞬きが鼓舞し、背中をを押し、激励する。 中には血気盛んに降り注ぐものもいる。 俯かずに仰ぐ、まだ地に立つ彼女らは、ちゃんと前を向かなくてはいけないのだ。 「――私の中の記憶によると、死者は星となり我々を見守っていてくれるらしい」 思い出は胸の中だけではない。 こうして伝え、共有すれば、その合唱は永遠のものにだってなれる。 いつだって夜空を見上げれば、思い出せる。 星々が笑っているか、泣いているか、それは心持ち次第で。 「だとしたら、泣いてなど、いられませんね」 夜空の応援席まで、届けよう。 勝鬨を、感謝を。 夜明けが来るより早く、連れて来よう。 記憶を、戻る場所を。 涙を拭う。 これは忘れるんじゃあない、しまっていくんだ。 そうして帰って、留めて、伝えて、大事に大事にする感情だ。 「向かうのだろう、あれに」 レナモンは問うた。あえて明確な道筋を言わずに。 「無論です」 グレイシアは胸を張る。瞳は涙ではない輝きに満ちていた。 「あったりまえよ」 ピクシーは拳を握る。その手の中には今日という日の想いが詰まっている。 「行こう」 ソーナンスは声に出す。彼の意思で、選んだやり方を。 強く、より強く。 固まった四体の意志。 「あの子が見ているうちに、終わらせよう」 レナモンの背に、促されるままに乗り走りだす。 触れ合った温もりを離さないように掴んで。 戦いの序曲が鳴り響く。 四重奏の和音と共に。 【D-5/平地/二日目/深夜】 【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】 [状態]:ダメージ(中)疲労(大) [装備]:なし [所持]:ふくろ(空っぽ) [思考・状況] 基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す   1:戦いに征く   2:メタモン、ありがとう 【ピクシー@モンスターファーム】 [状態]:疲労(大) [装備]:なし [所持]:ふくろ(空っぽ) [思考・状況] 基本:生きて帰りたい   1:帰るために戦う   2:見ててねメタモン   【ソーナンス@ポケットモンスター】 [状態]:疲労(大) [装備]:なし [所持]:ふくろ(空っぽ) 、スマートフォン@真・女神転生4 [思考・状況] 基本:ソーナンス!  1:ピクシーのそばにいてあげたい。  2:自分の意思で戦う  3:メタモンのことも居なくなったモンスターたちのことも忘れない ※この島の仕組、ターミナルの存在を確認しました。 【キュウビモン(レナモン)@デジタルモンスターシリーズ】 [状態]:ダメージ(中)、疾走 [装備]:なし [所持]:ふくろ(空) [思考・状況] 基本:君を忘れない 1:まだ見ぬ君に逢いに行く 2:鮫竜(ガブリアス)に再会できたなら名前を聞きたい 4:シャドームーンとアリスの決着後も気になる [備考] メス寄り。 多くの勢力が戦いを続ける激戦区の森で、幼年期クラスのデジモン達を守って生活していたが、 大規模な戦闘に巻き込まれた際、彼らを守りきれなかったことをきっかけに力を求めるようになった。 自力での進化が可能であり、キュウビモンに進化可能であることまで判明している。 ロードしたメタモンのデータは消失しましたがその残滓からメタモンのこの島での記憶を見ました。 現在は完全体に進化することは出来ません。 ※シャドームーンとアリスの戦いのうち空で行われた部分(獣王拳での決着まで)と、B-03城へのメテオカウンターを目撃しました。 |No.81:[[闘技場完成]]|[[時系列順]]|No.89:[[It's Time to Play]]| |No.87:[[It's Time to Play]]|[[投下順]]|No.89:[[ブルーディスティニー]]| |No.86:[[交差して超える世界]]|グレイシア|No.91:[[決勝(1)]]| |No.86:[[交差して超える世界]]|ピクシー|No.91:[[決勝(1)]]| |No.86:[[交差して超える世界]]|ソーナンス|No.91:[[決勝(1)]]| |No.85:[[レナモンの唄 ~Memories Off~]]|レナモン|No.91:[[決勝(1)]]|

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