闘技場完成

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「皆様、私は当闘技場の主催者モリーでございます」 テレビから流れる映像は既にモンスター達の死闘から正装したモリーの会見に変わっていた。 だからといって、視聴者が興醒めするということはない。 この映像を見る全ての者が闘技場の終わりではなく、何らかの始まりを感じていた。 それが何かはわからない、だが確実にもっと刺激的でもっと熱い何かであるということだけは、誰もが皆、感じていた。 だからこそ今、モリーの一挙一動を固唾を呑んで見守っている。 一瞬も見逃せない、一言も聞き逃せない、祭りは今まさにクライマックスを迎えようとしている。 「――配当は現生存者の――」 義務的な闘技場を動かす歯車の話が聞こえる。重要だ、だがそこではない。 舞台の裏側が知りたいんじゃない、舞台で今まさに起ころうとしている新たなる何かを知りたいんだ。 心臓が動いている。心臓が熱く、疾く、動いている。 待てない、誰もが皆ご馳走を目の前にした犬だった。唾液を垂れ流しにするお預けぐらいの犬だった。 「ところで皆様……」 来た。と誰かが呟いた。 それは酒場で呑む人間の声であり、作業休憩中の労働者の声であり、家族で戦いを見る人間の声であり、 家来とともに戦いを見守る王族の声であり、恩赦としてテレビを与えられた囚人の声であり、 それは隣で共にテレビを見る男の声であり、そしてふと知れずに自分が洩らしていた声だった。 「最強のモンスターマスターである私の戦いが……見たくはあリませんか」 返答――そうといえる言語は存在しなかった。 誰もが皆熱狂のままに叫んだ。歓喜し、跳び、踊り、歌い、そしてこの熱狂を分かちあった。 「これより、エキシビションマッチと称しまして……いや」 テレビ画面に写った燕尾服が、その装着者――モリーの胸筋の膨張によって破れていく。 下から現れるのは、鋼のように鍛えあげられた肉体。 そして、それを覆う緑と赤で彩られた――その男の戦闘服。 「一介のチャレンジャー!!そして最強のモンスターマスターとして!! このわしが、モリーが!!全力をもって我がモンスターと共にクロスオーバーモンスター闘技場に乱入させて貰う!!」 世界が沈黙した。 言葉を探していた。 わかっていたというのに、誰もこの喜びを表現する方法を知らなかった。 モリー、と誰かが叫んだ。モリー、と隣にいた誰かも続いた。 病のように、モリーコールが、熱狂が、世界中に伝染していく。 いや、病のようにではない、これは病そのものだ。 世界が熱に浮かされてしまった。 「つきましては……最高の闘技場で以て、彼らの相手を――いや、 戦 い を 生 で 見 た く は あ り ま せ ん か ?」 「わしは……この時を待っていたのかも知れぬ」 「やっぱり?」 モリーの言葉に、さも当然であるように返すのはやはり付き合いの長さが所以なのだろう。 そんなマリーの姿に、モリーは笑った。 「見透かされていたか……」 「そうよ、モリーちゃんにはこんなこと向いてないもの」 こんなこと――闘技場運営に関わるエトセトラである。 もちろん、このバトルロワイアルが観客の熱狂によって成功を証明されているように、その運営の才能はある。 だが、そのような雑事など気にせず、この熱くも残酷な戦いを直接目に焼き付けている方が向いている男である。 運営など他人に任せて、自分を熱くさせたモンスターを応援しているべきだったと、声を大にしては言えないがそんなことも思っている。 だが、一番向いているのはやはり戦いである。 この殺し合いにおける、モンスターのスカウトは全て彼が担当している。 いや、それどころが全ての元凶が彼であると言っても過言ではない。 彼はモンスターマスターだった。 最強――そのような言葉が安いとも言えるほどに、強すぎた。 ある日、旅に出た。 1年経って、戻った。 彼は、たった一言「神を倒した」と言った。 しんりゅう――神の龍、その姿を見たものは誰も居ない。 いや、見たものがいないからこそ神なのだろう。 それを倒したと、後に取材に応じて彼はそう言った。 より強いモンスターと出会いたい。 倒されたしんりゅうはモリーに願いを聞き、彼はそう答えたとも言った。 強すぎるが故に敵を失った男の法螺話であると、その日が訪れるまでは誰もが皆そう考えていた。 ある日、何の前触れもなく見たこともない世界に誘われる旅の扉が開かれた。 開かれた扉の先で見たものを調査団はたった一言、神の国であると報告した。 この世界へともたらされた山程の科学技術の産物に、その言葉を疑うものはいなかった。 次々に旅の扉が開かれていく。世界が熱狂に包まれていく。 技術交流が行われ、異世界からの来訪者が現れ、別の世界へと旅立つ者もまた出現し、そして多重世界の壁は限りなく薄いものとなっていった。0.01ミリ世界最薄。 そして、モリーは幾多ある世界の中で最強のモンスターを決める戦いを、クロスオーバーモンスター闘技場を生み出した。 願いが叶った、モリーのその言葉を聞いた者は誰一人としていなかった。 「本来の予定では、この闘技場を繰り返し、繰り返し、繰り返し、そして、10人程優勝モンスターが集まった後に、ワシがそいつらと戦うつもりだった。だが……」 「わかるわ、待ちきれなくなっちゃったのね」 「運営が軌道に乗るまでは、おとなしくしているつもりだったが……この記念すべき第一回目でこれだけやらかしてくれるなら、ワシはもう……辛抱たまらん」 熱っぽく語るモリーを見て、マリーは笑った。 子どものような男だ、きっと永遠に変わらないんだろう。 きっと私が背を押さなくても、そうしていたに違いない。 「何もいらん、命だってくれてやる。だから、誰にもやらん……あの闘技場で、あのボーイ達と殺しあう権利は既に闘技場にいる彼らを除けば、 世界にただ一人、ワシだけだ。ワシだけの戦いだ。阻むならワシはきっと世界だって敵に回してやるだろう。 だが、今だけは世界の誰も敵に回るまい、世界中の誰もが皆、ワシの戦いを応援してくれる。 幸福だ、ワシは最高に幸福だ。数多ある世界の中で、ワシだけの幸福だ」 彼は遠いところに行ってしまうのだ、とマリーは思った。 そして、それは違うのだろうとも、マリーは思った。 彼が本来いるべき場所こそがそこなのだ。ただ、次なる戦いのために、彼はこの世界に近づいてきただけなんだろう。 「いってらっしゃい、モリーちゃん」 だったら、笑顔で見送ろう。 それだけだ、それだけが私のできる事だ。 「ああ、皆によろしく」 「ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう」 緊急移動用飛空艇ラグナロク。今、闘技場上空に到達す。 拡声器で超増幅されたモリーの声は島の端にいようとも聞こえるほどの轟音と化している。安眠は出来ない。 「これよりワシこと、モンスターマスターモリーは、ただ一人仲間モンスターを連れて、この闘技場へと乱入させてもらおう。 ワシを殺せば、この殺し合いが終わると思い込むボーイよ、それは有り得ない。 何故か、諸君らに勝利はないからだ。 今回!!訓練に訓練を重ね、鍛え上げた最強のモンスターを用意させてもらった!!」 笛の音が鳴り響いた。 轟々と音がする。 湖から何かが迫り上がる。 何かが来る。わかることはただ、それだけ。 「このワシが選んだ最強のモンスター……その姿、目に焼き付けよ!!」 #aa(){{{      ∧     ∠_ゝ     |ロ|     / ̄ヽ   _―´   ̄―_ ./        ヽ、 / ( ̄)  ●  ● ヘ  ∠⌒ゝ (⌒ヽノ⌒、| -~|■|ロロ 廴(二(●)|  ̄~| ̄|   ノ二二/ |   | |   ノ ' `/ |   |_|  ノ  / ノ 二[・・]二ニ]―-[二二] (◎二◎)三)|ロ|◎)三) }}} 「「「「「「「「「「スラリンガルじゃねーかっ!」」」」」」」」」」 この時、この瞬間だけ、会場内の心が一つになったと信じたい。 誰もが皆、いやそれは違うだろと思っただろう。 「カッコいいだろう!!!!」 だが、そんな空気などモリーは読みはしない。 そこら辺の空気が読めていれば、最初から殺し合いなんて開きはしない。そういう男なのだ。 「では、ワシも会場へと乱入させてもらおうかっ!!」 そう言うや否や、モリーはパラシュートも無しに飛行船から飛び降りてスラリンガルの頭上にひょいと飛び乗ってみせる。 そして、砲台からスラリンガルの内部へと入り込んだ。 「では、この会場も最終決戦に相応しいバトルフィールドへと模様替えさせてもらおう!!」 気づくと、モリーは片手にスイッチを持っていた。 モリーの行動はスラリンガルでの乱入に留まらない。 まだ、何かがあるのだ。迷惑な男だ、本当に。 「おしてみよう ポチッとな!」 無情にも押されるスイッチ、それは破滅への輪舞曲なのか。はたまた、非情なる鎮魂歌なのか。 スイッチが押されると同時に島に巨大な地響きが鳴り渡るではないか。 あぁ!なんという末法的な光景であろうか!!どうぞ読者の皆様方、気を確かにしてご覧頂きたい!! 島が浮いた!!島が浮いたのだ!!もう一度書くが島が浮いたのだ!!!コワイ!! そして、C-3~6、D-3~6、E-3~6、それらのエリアを底にして周囲のエリアがそれ以上に上昇していく。 これはまさにすり鉢か!?はたまた蟻地獄か!?狂気的な様相を呈しているが、しかし事態はそれだけに留まらない。 そう、エリア全ての地面がひっくり返ったのである。 オセロの黒と白が入れ替わるように、参加者と地面に落ちた支給品と死体になんら影響が無いままに、地形だけがオセロのように入れ替わったのである!! 見よ!!底となったエリアが入れ替わった先の地面は、何の変哲もないローマ闘技場めいた砂地ではあるが、 それ以外のエリアから入れ替わった先の地面には、何と椅子がついているのだ!!観客席!!! そして、あぁ――神よ!一体参加者が前世でどのような罪を背負ったというのだろうか!! 先程すり鉢あるいは、蟻地獄めいて、と言ったこの地形が――実際滑り台のように斜めになりだしたのだ!! 抗うことも意味がなく!!嗚呼参加者達は、C-3~6、D-3~6、E-3~6に蟻地獄めいて引き寄せられてしまった!!しかも超高速で!! 怪我一つ無いのは、何らかの仕組みだろう。 そして、滑り台と化した観客席は元に戻り――そして!!嗚呼!!はっきり言おう!!私は正気でこの文章を書いている、狂ったわけではない。 だが、これから先に広がる光景を見れば、狂っているのだと取られかねない!!! そう観客席に降り注ぐものがある!! 流星か!?否!! ヒッチコック的な鳥か!?否!! そう、それは……あまりにも信じがたいが…………人間それも……観客なのだ!!コワイ!! そう、彼らは買ったのだ。 間近でモンスター達の最終決戦を見ることが出来るチケットを!!テレビでCMを開始してから2分で完売!! S席30万G!A席20万G!B席10万G!立ち見席無し!!高度以外に命の保証も無し!! そして何よりも恐ろしいことに……そのチケットは分割払いに出来ないのだ!! そう、彼らは……金も命も捨ててでも、戦いを見に来たアホなのだ!正真正銘のアホなのだ!! だが、例え死んでも後悔は無いだろう!!アホなのだから!!戦いが大好きな大アホなのだから!! かくして最終決戦は始まった!! いざ征かん!!決戦のバトルフィールドへ!!!! ※モリーwithスラリンガルが乱入してきました。 ※C-3~6、D-3~6、E-3~6に放置支給品、モンスター達(モリーwithスラリンガルも含めて)、死体が再配置されました。 ※といっても、近くにいたキャラは近くのままだと思います。 ※観客席は飛ばないと行けないような高いところにありますが、バリアも何もありません。 ※観客席以外の全エリアが平地となりました。 |No.80:[[心重なる距離にある]]|[[投下順]]|No.82:[[殺戮人形は祭りの時を待ち望む]]| |No.67:[[第一回生存者報告]]|モリー|No.91:[[決勝(1)]]|
「皆様、私は当闘技場の主催者モリーでございます」 テレビから流れる映像は既にモンスター達の死闘から正装したモリーの会見に変わっていた。 だからといって、視聴者が興醒めするということはない。 この映像を見る全ての者が闘技場の終わりではなく、何らかの始まりを感じていた。 それが何かはわからない、だが確実にもっと刺激的でもっと熱い何かであるということだけは、誰もが皆、感じていた。 だからこそ今、モリーの一挙一動を固唾を呑んで見守っている。 一瞬も見逃せない、一言も聞き逃せない、祭りは今まさにクライマックスを迎えようとしている。 「――配当は現生存者の――」 義務的な闘技場を動かす歯車の話が聞こえる。重要だ、だがそこではない。 舞台の裏側が知りたいんじゃない、舞台で今まさに起ころうとしている新たなる何かを知りたいんだ。 心臓が動いている。心臓が熱く、疾く、動いている。 待てない、誰もが皆ご馳走を目の前にした犬だった。唾液を垂れ流しにするお預けぐらいの犬だった。 「ところで皆様……」 来た。と誰かが呟いた。 それは酒場で呑む人間の声であり、作業休憩中の労働者の声であり、家族で戦いを見る人間の声であり、 家来とともに戦いを見守る王族の声であり、恩赦としてテレビを与えられた囚人の声であり、 それは隣で共にテレビを見る男の声であり、そしてふと知れずに自分が洩らしていた声だった。 「最強のモンスターマスターである私の戦いが……見たくはあリませんか」 返答――そうといえる言語は存在しなかった。 誰もが皆熱狂のままに叫んだ。歓喜し、跳び、踊り、歌い、そしてこの熱狂を分かちあった。 「これより、エキシビションマッチと称しまして……いや」 テレビ画面に写った燕尾服が、その装着者――モリーの胸筋の膨張によって破れていく。 下から現れるのは、鋼のように鍛えあげられた肉体。 そして、それを覆う緑と赤で彩られた――その男の戦闘服。 「一介のチャレンジャー!!そして最強のモンスターマスターとして!! このわしが、モリーが!!全力をもって我がモンスターと共にクロスオーバーモンスター闘技場に乱入させて貰う!!」 世界が沈黙した。 言葉を探していた。 わかっていたというのに、誰もこの喜びを表現する方法を知らなかった。 モリー、と誰かが叫んだ。モリー、と隣にいた誰かも続いた。 病のように、モリーコールが、熱狂が、世界中に伝染していく。 いや、病のようにではない、これは病そのものだ。 世界が熱に浮かされてしまった。 「つきましては……最高の闘技場で以て、彼らの相手を――いや、 戦 い を 生 で 見 た く は あ り ま せ ん か ?」 「わしは……この時を待っていたのかも知れぬ」 「やっぱり?」 モリーの言葉に、さも当然であるように返すのはやはり付き合いの長さが所以なのだろう。 そんなマリーの姿に、モリーは笑った。 「見透かされていたか……」 「そうよ、モリーちゃんにはこんなこと向いてないもの」 こんなこと――闘技場運営に関わるエトセトラである。 もちろん、このバトルロワイアルが観客の熱狂によって成功を証明されているように、その運営の才能はある。 だが、そのような雑事など気にせず、この熱くも残酷な戦いを直接目に焼き付けている方が向いている男である。 運営など他人に任せて、自分を熱くさせたモンスターを応援しているべきだったと、声を大にしては言えないがそんなことも思っている。 だが、一番向いているのはやはり戦いである。 この殺し合いにおける、モンスターのスカウトは全て彼が担当している。 いや、それどころが全ての元凶が彼であると言っても過言ではない。 彼はモンスターマスターだった。 最強――そのような言葉が安いとも言えるほどに、強すぎた。 ある日、旅に出た。 1年経って、戻った。 彼は、たった一言「神を倒した」と言った。 しんりゅう――神の龍、その姿を見たものは誰も居ない。 いや、見たものがいないからこそ神なのだろう。 それを倒したと、後に取材に応じて彼はそう言った。 より強いモンスターと出会いたい。 倒されたしんりゅうはモリーに願いを聞き、彼はそう答えたとも言った。 強すぎるが故に敵を失った男の法螺話であると、その日が訪れるまでは誰もが皆そう考えていた。 ある日、何の前触れもなく見たこともない世界に誘われる旅の扉が開かれた。 開かれた扉の先で見たものを調査団はたった一言、神の国であると報告した。 この世界へともたらされた山程の科学技術の産物に、その言葉を疑うものはいなかった。 次々に旅の扉が開かれていく。世界が熱狂に包まれていく。 技術交流が行われ、異世界からの来訪者が現れ、別の世界へと旅立つ者もまた出現し、そして多重世界の壁は限りなく薄いものとなっていった。0.01ミリ世界最薄。 そして、モリーは幾多ある世界の中で最強のモンスターを決める戦いを、クロスオーバーモンスター闘技場を生み出した。 願いが叶った、モリーのその言葉を聞いた者は誰一人としていなかった。 「本来の予定では、この闘技場を繰り返し、繰り返し、繰り返し、そして、10人程優勝モンスターが集まった後に、ワシがそいつらと戦うつもりだった。だが……」 「わかるわ、待ちきれなくなっちゃったのね」 「運営が軌道に乗るまでは、おとなしくしているつもりだったが……この記念すべき第一回目でこれだけやらかしてくれるなら、ワシはもう……辛抱たまらん」 熱っぽく語るモリーを見て、マリーは笑った。 子どものような男だ、きっと永遠に変わらないんだろう。 きっと私が背を押さなくても、そうしていたに違いない。 「何もいらん、命だってくれてやる。だから、誰にもやらん……あの闘技場で、あのボーイ達と殺しあう権利は既に闘技場にいる彼らを除けば、 世界にただ一人、ワシだけだ。ワシだけの戦いだ。阻むならワシはきっと世界だって敵に回してやるだろう。 だが、今だけは世界の誰も敵に回るまい、世界中の誰もが皆、ワシの戦いを応援してくれる。 幸福だ、ワシは最高に幸福だ。数多ある世界の中で、ワシだけの幸福だ」 彼は遠いところに行ってしまうのだ、とマリーは思った。 そして、それは違うのだろうとも、マリーは思った。 彼が本来いるべき場所こそがそこなのだ。ただ、次なる戦いのために、彼はこの世界に近づいてきただけなんだろう。 「いってらっしゃい、モリーちゃん」 だったら、笑顔で見送ろう。 それだけだ、それだけが私のできる事だ。 「ああ、皆によろしく」 「ボーイ達……まずは、ご苦労と言っておこう」 緊急移動用飛空艇ラグナロク。今、闘技場上空に到達す。 拡声器で超増幅されたモリーの声は島の端にいようとも聞こえるほどの轟音と化している。安眠は出来ない。 「これよりワシこと、モンスターマスターモリーは、ただ一人仲間モンスターを連れて、この闘技場へと乱入させてもらおう。 ワシを殺せば、この殺し合いが終わると思い込むボーイよ、それは有り得ない。 何故か、諸君らに勝利はないからだ。 今回!!訓練に訓練を重ね、鍛え上げた最強のモンスターを用意させてもらった!!」 笛の音が鳴り響いた。 轟々と音がする。 湖から何かが迫り上がる。 何かが来る。わかることはただ、それだけ。 「このワシが選んだ最強のモンスター……その姿、目に焼き付けよ!!」 #aa(){{{      ∧     ∠_ゝ     |ロ|     / ̄ヽ   _―´   ̄―_ ./        ヽ、 / ( ̄)  ●  ● ヘ  ∠⌒ゝ (⌒ヽノ⌒、| -~|■|ロロ 廴(二(●)|  ̄~| ̄|   ノ二二/ |   | |   ノ ' `/ |   |_|  ノ  / ノ 二[・・]二ニ]―-[二二] (◎二◎)三)|ロ|◎)三) }}} 「「「「「「「「「「スラリンガルじゃねーかっ!」」」」」」」」」」 この時、この瞬間だけ、会場内の心が一つになったと信じたい。 誰もが皆、いやそれは違うだろと思っただろう。 「カッコいいだろう!!!!」 だが、そんな空気などモリーは読みはしない。 そこら辺の空気が読めていれば、最初から殺し合いなんて開きはしない。そういう男なのだ。 「では、ワシも会場へと乱入させてもらおうかっ!!」 そう言うや否や、モリーはパラシュートも無しに飛行船から飛び降りてスラリンガルの頭上にひょいと飛び乗ってみせる。 そして、砲台からスラリンガルの内部へと入り込んだ。 「では、この会場も最終決戦に相応しいバトルフィールドへと模様替えさせてもらおう!!」 気づくと、モリーは片手にスイッチを持っていた。 モリーの行動はスラリンガルでの乱入に留まらない。 まだ、何かがあるのだ。迷惑な男だ、本当に。 「おしてみよう ポチッとな!」 無情にも押されるスイッチ、それは破滅への輪舞曲なのか。はたまた、非情なる鎮魂歌なのか。 スイッチが押されると同時に島に巨大な地響きが鳴り渡るではないか。 あぁ!なんという末法的な光景であろうか!!どうぞ読者の皆様方、気を確かにしてご覧頂きたい!! 島が浮いた!!島が浮いたのだ!!もう一度書くが島が浮いたのだ!!!コワイ!! そして、C-3~6、D-3~6、E-3~6、それらのエリアを底にして周囲のエリアがそれ以上に上昇していく。 これはまさにすり鉢か!?はたまた蟻地獄か!?狂気的な様相を呈しているが、しかし事態はそれだけに留まらない。 そう、エリア全ての地面がひっくり返ったのである。 オセロの黒と白が入れ替わるように、参加者と地面に落ちた支給品と死体になんら影響が無いままに、地形だけがオセロのように入れ替わったのである!! 見よ!!底となったエリアが入れ替わった先の地面は、何の変哲もないローマ闘技場めいた砂地ではあるが、 それ以外のエリアから入れ替わった先の地面には、何と椅子がついているのだ!!観客席!!! そして、あぁ――神よ!一体参加者が前世でどのような罪を背負ったというのだろうか!! 先程すり鉢あるいは、蟻地獄めいて、と言ったこの地形が――実際滑り台のように斜めになりだしたのだ!! 抗うことも意味がなく!!嗚呼参加者達は、C-3~6、D-3~6、E-3~6に蟻地獄めいて引き寄せられてしまった!!しかも超高速で!! 怪我一つ無いのは、何らかの仕組みだろう。 そして、滑り台と化した観客席は元に戻り――そして!!嗚呼!!はっきり言おう!!私は正気でこの文章を書いている、狂ったわけではない。 だが、これから先に広がる光景を見れば、狂っているのだと取られかねない!!! そう観客席に降り注ぐものがある!! 流星か!?否!! ヒッチコック的な鳥か!?否!! そう、それは……あまりにも信じがたいが…………人間それも……観客なのだ!!コワイ!! そう、彼らは買ったのだ。 間近でモンスター達の最終決戦を見ることが出来るチケットを!!テレビでCMを開始してから2分で完売!! S席30万G!A席20万G!B席10万G!立ち見席無し!!高度以外に命の保証も無し!! そして何よりも恐ろしいことに……そのチケットは分割払いに出来ないのだ!! そう、彼らは……金も命も捨ててでも、戦いを見に来たアホなのだ!正真正銘のアホなのだ!! だが、例え死んでも後悔は無いだろう!!アホなのだから!!戦いが大好きな大アホなのだから!! かくして最終決戦は始まった!! いざ征かん!!決戦のバトルフィールドへ!!!! ※モリーwithスラリンガルが乱入してきました。 ※C-3~6、D-3~6、E-3~6に放置支給品、モンスター達(モリーwithスラリンガルも含めて)、死体が再配置されました。 ※といっても、近くにいたキャラは近くのままだと思います。 ※観客席は飛ばないと行けないような高いところにありますが、バリアも何もありません。 ※観客席以外の全エリアが平地となりました。 |No.86:[[交差して超える世界]]|[[時系列順]]|No.88:[[ハルモニア]]| |No.80:[[心重なる距離にある]]|[[投下順]]|No.82:[[殺戮人形は祭りの時を待ち望む]]| |No.67:[[第一回生存者報告]]|モリー|No.91:[[決勝(1)]]|

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