Reckless Fire

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船は静かに空の闇を漂い、彼の密航を咎める者は星と月以外には誰一人としていない。 ただ、存在を示すかのようにGAKU-RANが星の海の中、軍旗のようにはためいていた。 まだ拳は握らない。 相手が何であろうが、今から始まるものはただの喧嘩だ。 この拳の中に握りしめるのは武器ではない。 握力と決意、ただそれだけ。 これからジャックフロストは殴るだろう。 顔面の形が変わるまでに殴り、自分が誰を殴っているのかわからなくなるまで殴り、許してと懇願されてなおも殴るだろう。 だが、それ以上はしない、他人の命をこの手の中に握る気はない。 「んじゃ、ボチボチ……」 ジャックフロストは拳を握った。 この拳で――くそったれな運命だって、ぶん殴ってやる。 「喧嘩の押し売り……させてもらうホ!!!」 ジャックフロストは思いっきり、飛行船をぶん殴った。 機体が大きく、揺れる。 穴が開く。 人が騒ぐ。 騒騒、騒騒。 「あー……あー……」 ジャックフロスト以外の誰も、何が起こっているのかを理解できない。 だから、思いっきり聞かせてやる。 滑りこむ機内。 周囲に誰もいない。 通路の類か。 騒音はどこからか、人の声はどこからか、 わからない。しゃらくさい。 「喧嘩の時間だホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」 叫ぶ。それはもう、機内中に届くように。 隣におっさんが住んでいたら、怒鳴りこんでくるぐらいに騒がしく。 人間のどよめきを押しつぶすぐらいにうるさく。 そして熱く。 「骨のある奴……出てこいホォ!!」 ジャックフロストが叫んでから5秒も経たぬ内に、黒服の男達――5人程、訓練された動きを見せながらの襲来。 「ジャックフロスト……死んだはずじゃ!」 「死なんホ!!」 死んで無かったのか、そう納得する間もなく、 呟いた黒服の男がジャックフロストのスカイアッパーで頭を天井にめり込ませて、失神。 四人、モンスターボールを構え。 「男だったら拳一つで勝負せんホイ!」 ポケモンを出す前に、ジャックフロストのローキックが黒服の内の一人の脛を砕く。 堪らず倒れ込もうとしたその男の両足を持ち抱え、ジャイアントスイングからのスローイング! 哀れ投擲武器と化した男は、3人を巻き込んで衝突。複雑骨折!痛い! そして拳一つとは一体何だったのか!誰か教えて欲しい!僕は知らない!! ここまでで敵襲来から1分の早業、 流石喧嘩慣れしているジャックフロストはサラマンダーよりずっと早い! 「冷イイイイイイイイイイイイイイイイ崩オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」 敵はどこにいるのか、襲撃を待ってなどいられない。 壁をぶち破る。 「キャアアアアアアアアアアア!!!!」 着替え中の女性に遭遇。 「失礼しましホ」 謝りながらも鳩尾に1発、女性は気絶、全治1ヶ月! 「もう1発!!」 うっかり侵入した私室から、更に壁をぶち破る。 やはり私室。金持ち風の中年男性と遭遇。 「待て!」 「待たんホ!」 金持ち風の中年男性の鼻っ柱を殴る、顔面陥没! 「ごの゙……ズイ゙ッ゙ヂを゙…………押゙ぜ……ばお゙前゙……ば…………死゙」 「死なんホ!!」 顔面陥没しても喋る人間の精神力ってすごいね。 しかし、そんな中年男性の台詞を最後まで待たずに、鳩尾に1発。中年男性は気絶、意識不明の重体! 「スイッチかホ?」 スイッチを押せば死ぬということは、これが掛けられた呪いを発動するスイッチなのだろう。 ならば、この飛行船内にいても呪いは発動するのだろうか――可能性は限りなく低いと見ているが、確認のために試してみるか? いや、迂闊に押して全く無関係のモンスターに呪いが発動するのはどうかなぁ、ノリに乗ってるジャックフロストも流石にバツが悪い。 「ホ留」 スイッチを学ランの内ポケットに仕舞いこみ、ジャックフロストは駆け出す。 それにしても、どういうことだろうか。 偶々出くわした乗客をぶん殴りながら、ジャックフロストは考える。 これほど派手に暴れたのならば、先程の黒服のような連中が来てもおかしくはない。 だというのに、いるのは逃げ惑う乗客だけ。 たまにいい拳を持った乗客とクロスカウンターをぶち決め、 再戦の約束を交わしながら――ジャックフロストは一つの考えに思い至る。 (反射は使えない。侵入されてしまったのだから。 呪いを使えばイチコロなのに、未だにオイラが死んでいないのは、やはり使えないから。 そしてオイラはあの黒服ぐらいなら一瞬でぶっ倒せる……つまり、逃げた……あるいは) その時、飛来してきた黒い首輪がジャックフロストの思考を中断する。 「テメェ……」 万魔の一撃でぶち砕いた今の首輪は、ルカリオが巻かれていたものと同じ。 自分の雪が溶けるほどに、ジャックフロストは激怒する。 「やれやれ……君のせいで被害が甚大だ」 黒服の男達を引き連れた、明らかにリーダー格の男。 殴ろうとするも、団員が前に立ちふさがり、肉壁となる。 予め、出されていたポケモンも一緒だ。 「ジャックフロスト……君の馬鹿な抵抗もそこまでだ」 「馬鹿はどっちだ!このクソ野郎!!」 「クソ野郎上等、卑劣結構……」 「うんこ垂れ!」 「君はちょっと黙って……」 「糞尿垂れ流し野郎!!」 「何故、人をそっちの方向で罵倒する!!」 「まぁ……良い、単刀直入に言おう」 「聞かん!」 「聞け!」 「大人しくイービルリングを装着し、闘技場に戻るが良い……そうすれば、君を許してやろう。 何、君なら優勝も簡単だし、死んだと思っていた優勝候補のジャックフロストが復活……熱い展開だ、きっと盛り上がるだろう」 「NO!」 「ふふ……命が惜しくないのか?君なら優勝も可能だ、大人しく従え」 「絶対にNO!」 「わかってないホ、スカトロマン……オイラはお前らに喧嘩売りに来てやったんだホ。 そんなオイラが大人しく、お前らにしっぽ振ってやると思ったかホ? テメェらの問いにゃ……なんだってNOで答えてやるホ!!」 「そうか……ならば、君の心変わりを誘発しよう」   SUMMON READY, OK?    ―― GO リーダー格の男がCOMPから召喚せしは、イービルリングを巻かれたダークポケモン軍団×1000! 一体、この飛行船のサイズはどれほどのものかとツッコミを入れる方もいるかもしれないが、 この飛行船内は異界化により、内部と外部に異常なサイズ差が生じている。 その御蔭で、研究室などが存在しているのだ。納得していただきたい 「君はこのダークポケモン軍団に勝てるかな?」 「YES」 (NOとしか言わないはず……) 「ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホォ!!」 リーダー格の男の動揺を尻目に、放たれるは鉄拳制裁x1000! ダークポケモン軍団の全イービルリング爆発四散!!サヨナラ! ダークポケモン軍団は全員茫然自失も、とりあえずジャックフロストは全員ぶん殴っておく姿勢は見せておく。 「続いて……」 リーダーの盾となっていた団員達は行間で撃破、あるいは逃走済み。 最早、ジャックフロストの拳を阻むものはあまりない!あんまり! 「鉄拳制裁ィ!!」 「…………」 「何だホ!?」 そう、ジャックフロストの拳はリーダー格の男に届くこと無く止められていた。何故だ。 拳が受け止められていたからだ。 COMPによって召喚されたのはダークポケモン軍団×1000だけではない、正確に言えばダークポケモン軍団×1000+1だったのだ!つまり1001! あの101匹ワンちゃんに10を掛けて-9を引いた数字と同値! あんまり101匹ワンちゃん関係ないね!ごめんね! 「ふふ……」 「どういうことだホ…………」 ジャックフロストの拳を受け止めるほどの実力者がこの世にどれほどいるだろうか、あまりいない、いるといえばいる。 その内の一人が――戦いを中断させられたあの男が、目の前にいる。 「紹介しよう、君のお友達で……そして今では、イービルスパイラル重ねがけで、私の忠実な手下となってくれた……」 妖精 ジャアクランタン が一体出た! 「ふざけんじゃねぇホオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」 「コ……コロス…………」 「ジャックランタン……」 見よ、ジャックランタンの無残な姿を! イービルスパイラルを両腕に2つずつ、首に3つ! 言語は意味をなさず、ただ殺意のみを口にし、時折口から涎を垂らす! 全ての記憶を失い、しかし戦闘能力はそのままに――ジャックランタンはジャアクランタンとなってしまった! 「東京で戦っていたんだろう?決着をつければいいじゃないか、ここで」 怒りのあまり、ジャックフロストはジャアクランタンを無視してリーダー格の男に殴りかかる。 だが、ジャアクランタンの邪悪拳によって床に沈められ、マウントポジションで殴られ続ける! 「……はは、戦えるのが嬉しいからって、そんな跪いて感謝しなくてもいいじゃないか、私と君の仲だろう」 殴られ続けるジャックフロストに、サディスティックな笑みを浮かべて、リーダー格の男は嘲笑の言葉を投げつける。 「うるっせぇ!邪魔だホ!」 殴られ続けるままには終わらない、ジャックフロストはジャアクランタンの両腕を逆に捕まえ、バックドロップをぶちかます。 ジャアクランタンの首が変な方向に曲がるが、その程度ではジャアクランタンは――いや、ジャックランタン時代から止まってはいない。 すぐさま、立ち上がりジャアクランタンの拳がジャックフロストの右頬に、 ジャックフロストの拳がジャアクランタンの左頬にぶち当たる!クロスカウンター! 互いの拳の尋常でない威力!互いに壁に衝突!吐血! しかし、そこからお互いすぐに状態を立て直し、駆ける。 目の前の奴に思いっきり拳をぶち込んでやる。 何を思おうと、誰が相手であろうと、突き詰めればジャックフロストは――そのためにこの飛行船に乗り込んだのだ。 ならば、構うものか。 ジャックランタンがジャアクランタンになったというのならば、治るまでしこたまぶん殴る。治らなくてもぶん殴る。だから治れ! 決着をつけるべき相手はジャックランタンであって、ぽっと出のジャアクランタンなどではない! 「そうだホ!ランタン!?」 互いにクロスカウンター!だが今度はそのままの位置で互いに踏ん張る。 すかさず、ジャックフロストのミドルキック、それをジャアクランタンは一歩引いて、ジャックフロストの足を掴む。 突如訪れる強風。 ジャックフロストの身体が回転する。 目が回る、そんなものではない。 今や、ジャックフロストの体は回転そのものだ。 その回転力から放たれるは必殺のジャイアントスイング! 放り投げられたジャックフロストの体を、そこから更にジャアクランタンは万魔の一撃で追撃。金的! ただし、妖精なので股関に当たる部位を攻撃という意味合い! 「ヒ……ホォ……」 連戦のダメージ、蓄積した疲労、そしてもろに受けてしまったジャアクランタンの万魔の一撃が、三途の川を拝ませる。 全く縁もゆかりもないボナコンが手のような部位を振っている、誰だお前は! 一瞬の臨死体験、その隙を見逃すジャアクランタンではない。 そのままに、ジャアクランタン……ジャックフロストの目に指を突っ込んで、殴り抜ける!これは痛い!超痛い! 「ヒホォ!!」 右目から何らかの液体を雨のように降らしながら、再びジャックフロスト宙を舞う。 だが、その隙を見逃すジャアクランタンではない。 そう……宙に浮いた敵を攻撃し続ける――これはジャアクランタンの永パだ!簡単に始動する! 攻撃を食らいながら、命を削られながら、ジャックフロストは見た。 (ランタン……お前…………) 男泣き――そう、ジャアクランタンは涙を流しながら、ジャックフロストに攻撃していた。 東京での決着、それが彼らにとってどれほど神聖なものだっただろうか。 それを邪魔された上に、このような邪悪な形での決着を強制されている。 記憶と意思を奪われたジャアクランタンも、本能で己の情けなさに――涙を流す! しかし、口元だけは戦闘の喜びを感じるように満面の笑みを浮かべさせられている。 (畜生……お前も、辛いよな……辛いに決まっているホ!!) そうだ、このまま永パでボコられているままでは終われない。 これはジャックフロストとジャックランタンの喧嘩であるべきなのだ。 「思い出すホ!ジャックランタン!!オイラ達の戦いの日々を!」 宙に打ち上げられたジャックフロストは叫んだ。 言葉を言い終わる間もなく、再度ジャアクランタンに宙に打ち上げられる。 だが、ジャックフロストは終わらない。 そのまま空中でバック宙姿勢で、地面に着地。永パ回避! 最早、ボコボコである。 雪だるまというよりもじゃがいもである。 それでもギリギリで生きているのはジャックフロストが身に纏うGAKU-RANのお陰という他ないだろう。 だが、生きている。 生きているのならば、戦える。 戦えるのならば――目の前の男に勝利できる。 中指を突き立て、ジャックフロストは叫んだ。 「来やがれ!どっちが最強か……オイラたちにはそれだけだホ!?」 そう、今の光景に既視感を読者の方も多いだろう。 このジャックフロストの行動は、まさしくジャックランタンと初めて喧嘩した時の行動のそれである。 (そうだ……俺は) ジャアクランタンがジャックフロストを一方的に殴っていた時に生まれた感情はなにか、 悲しみ怒り……それと同時に浮かべさせられていた笑み、しかしそれは決して嘘ではない。 ジャアクランタンはジャックフロストに勝利したかった。 意思も記憶もない、ジャアクランタンが……何故だ! 覚えているからだ。戦いを。そして今。 「カツ……」 ジャアクランタンの意思が右腕のイービルスパイラルを破壊する! ジャックランタンは取り戻した!勝利への飢えを! 先程の動きとは打って変わって、ジャックフロストはジャアクランタンを翻弄する。 いや、ジャアクランタンの攻撃は全て食らっている、だが食らったままで。 余裕の笑みを浮かべたまま、ジャアクランタンをぶん殴る。 「お前の力はその程度かホ?弱ッ……」 「テメェ……」 ジャックフロストの侮蔑の言葉、その言葉に左腕のイービルスパイラルが全て弾け飛ぶ。 ジャックランタンは取り戻した!強さへの誇りを! 「来い!!ジャックランタン!!」 「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」 「このタイミングを待っていたんだ」 リーダー格の男は冷徹に言い放つ。 そして解き放つ、イービルスパイラルを。 イービルスパイラルはあっさりとジャックランタンとジャックフロストを蝕み、完全に捕えた。 虜囚じみて、彼らの両腕両足首にはイービルスパイラルが巻かれている。 「この戦いの映像も、スペシャルマッチとして全てカメラに収めさせてもらった……もう十分だ。 会場にある制限が……ここには無い。やれやれ、だからといってイービルスパイラルがこんなにもあっさりと弾け飛ぶとはね。 まぁ君たちを、再び会場に放り込んで、その心配もなくなる……運べ」 あっさりと喧嘩は最悪の結末を迎えた。 リーダー格の男は元の部屋に戻った、それから観客たちに事情を説明するのだろう。 もしかしたら、ジャックフロストの処刑スイッチを押す権利をもあっさりと与えてしまうのだろう。 そして飛行船が――人間達が堕ちることもない。 ジャックフロストが飛行船に与えた程度のダメージならば、魔法を使えば飛行に影響はない。 しばらくして、黒服の男達が部屋へと入る。 「…………」 「…………」 瞳から輝きを失った二匹は、ただ運ばれるままに流されて――そして再び会場へと放り込まれる。 パリン。 パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。 ワケがない! ここまで熱くなった男達をイービルスパイラルが止められるわけがない。そうだろう!? イービルスパイラルはあっさりと破裂していく。 「ランタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!」 「フロストオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」 周りの男をなぎ倒し、愛しあう恋人同士の様に……ジャックフロストとジャックランタンは、叫ぶ!! 「火イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」 「崩オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」 拳が互いの腹に食らいつく。 倒れない。 もう邪魔するものはいない。 どちらが強いか決めてやる。 拳と拳が衝突し。 そして―― 「ハァ……ハァ……」 「ハァ……ハァ……」 「99勝ッ!!99敗ッ……そして」 「1分けかホ……やれやれ、また決着は東京で……」 「ああ……そうだな」 結局、決着はつかないままに終わった。 ただ、天井を見上げ、大の字になって二匹は横たわる。 本当ならば、もう少し休んで、お互いのボコボコになった顔を笑い合って、 そしてまたいつか再戦を誓って、今日のところは終わりたい。 だが、まだだ――まだ、ジャックフロストは何も成してはいない。 「んじゃあ、そろそろ行くホ」 よろめきながら立ち上がる。 足取りは覚束ない、体が重力に引っ張られているかのように沈みそうになっていく。 だが、喧嘩はまだ終わっていない。 「待てよ」 「んだホ?こっちはお前と違って忙しいんだホ」 「また東京で……会うんだろ」 「当たり前のこと聞くなホ」 「あぁ……そうだよな」 「ああ……そうだホ」 「じゃあ……またな」 「ああ……また」 &color(red){【ジャックランタン@女神転生シリーズ 死亡】} 多量のイービルスパイラル装着、そしてそれを自分の力で破壊したのだ。 それがジャックランタンにとってどれ程の負担となったか。 この喧嘩のために彼は生ききり、そして休んだのだろう。 ジャックフロストは振り返らない。 未だ、何も終わってはいない。 こうなった元凶を、殴ってすらいない。 泣いたりはしない、絶対にジャックランタンのために泣いてやるものか。 「クソ……」 妙に体が怠い。 ジャックランタンと同じ理由なのだろう。 それに加え、連戦の傷、疲労は一切癒えていない。 それでも進む。 視界が歪んでいる。 突然、現れた壁にぶつかる。 壁じゃない、人間だ。 「……」 黒服の男か、ジャックフロストは拳を構える。 「なぁ……お前、何しに来たんだよ」 「わかってんだホ……喧嘩しに来たんだホ…………」 「そんなボロボロの身体で……何が出来るっていうんだよ!!」 「殴ったり、蹴ったり出来るホ」 そう言って、ジャックフロストは弱々しく男の鳩尾を殴った。 ただ、突いただけに終わってしまった。 「自分はやるだけやった……そう言って、自分を慰めたいんだろ? なぁ、諦めろよ、俺が口を利いてやるよ……会場に戻って…………それで」 「NO」 「オイラの知り合いは……みんな、数多の大惨事で家族とか友達とか……死んじまってるホ。 失ってない奴は、誰一人としていない みんな……助けたかった人がいて、助けられなかった人がいて…… 死にたかったりして、それでも生きていて……精一杯頑張ってるホ。 それに比べれば、殴る奴がはっきりしている今の状況は超ありがたいホ………… みんなやってるのにオイラだけが諦めるなんて……喧嘩に負けたようなもんだホ……オイラは……負けず嫌いなんだホ……」 「お前……」 「なんか知らんが、お前ならきっと勝てるホ……このオイラの拳を鳩尾に受けて倒れなかったからホ」 「…………」 「じゃあな、邪魔するならもう1発殴るホ」 「…………待ってくれ」 男から差し出された物を、ジャックフロストは受け取った。 それは男なりの決意の現れなのだろう、疑いはしなかった。 「そのマッスルドリンコは回復量10倍、副作用20倍の特別品だ……今のお前が飲むと後に死ぬ」 「ホー」 「それでもお前が闘うなら……飲め!」 「飲む!」 ゴクリ!! ジャックフロストに漲る力!!傷が癒えていく!! 「お前……」 「俺も、今の組織は違うと思うんだ……なんてな。 ジャックフロスト、お前が勝ちそうだから、恩でも売っておこうと思っただけさ」 「……ホッ、100万倍にして返してやるホ」 「ああ、期待して待ってるぜ」 男はその後、ジャックフロストに飛行船のコックピットの位置を教え、去ろうとした。 何処へ行くのか、と聞くと脱出すると言い。 その後、どうするのかと聞くと、ボスを探すと言う。 「まっ、俺はあんなハゲの部下じゃないってこった」 「オイラは誰の部下でもねーけどな」 「ハハッ……うん、最後にお前に会えて良かった」 「オイラもだホ」 別れの挨拶はない。 ただ、ジャックフロストは男の脛を蹴りあげ、男はジャックフロストの腹を蹴りあげた。 流石に全快した状態で鳩尾を殴るのは遠慮した。 「がんばれよ、ジャックフロスト……」 脛を抑え、涙目で去りゆくジャックフロストを見送る。 きっと、ジャックフロストは勝利するのだろう。この喧嘩に。 ならば、自分も戦ってみようと思う。 「今度もきっと……敵同士だな」 自分は今度こそ、真に仕えるべきボスの下にいるのだろう。 そして、働こうとうする悪事をアイツが止めに来るのだろう。 そんな楽しげな未来を想像し、 「私を……いや、我々を裏切るのか」 「いや、あんた達が裏切ったのさ……俺達をな」 「愚かな……」 「ああ、でもなぁ……テメェにゃ負けねぇよくそったれ!」 「行けッ!ユンゲラー!!」 男もまた、戦い始めた。 逃げ惑う乗客、抗う戦闘員、パイロット、その全てをぶん殴って――とうとうジャックフロストはコックピットへと辿り着く。 正直、よくわからないが全てぶっ壊せば堕ちるだろう。 そう安易に考えて、とりあえず鉄拳制裁を放つ。 今までの苦労が嘘であるかのように、あっさりと機械は破壊され尽くした。 「これで……」 「そう、これで……飛行船は落ちてしまうわぁ」 ジャックフロストの背後に立つのは、バニーガール然とした女。この場所でこういう格好ということは、変態なのだろうか。 「一歩遅かったようだホ?早く来ても落としていたけどな」 「…………ええ、その通り。飛行船の最強戦力……ランタンちゃんは死んじゃってぇ、ダークポケモン軍団でも駄目ぇ、 侵入されてしまったらバリアも意味ないしぃ、そして機械が壊されちゃったせいで、もうバリアも張れないま、ま」 「の割りには随分余裕じゃないかホ?オイラは全然、女でも殴るホ?」 顔面ではなく腹を殴るのは、彼なりの優しさなのだろう。全く優しくはない。 「そう……この飛行船は堕ちる……け、ど、私は一応、お客様の生命を守らなければならないの」 「言っとくけど、飛行船が落ちたからって」 「えぇ、ゆっくぅり、堕ちるでしょうねぇ……お優しいこと……でもね、建前っていうのがあるのよ、そういう」 「つまり……?」 会話に飽きて、そろそろ鳩尾を殴ろうと拳を構えたその時である。 「飛行船が安全に着陸するためにはどうすればいいか!そう!!足が必要!! でも島に上陸したら……凶暴なモンスターに襲われるかも!!そんな時、自衛のために手が必要!! と・く・に……こんな飛行船に乗り込んじゃってくる子にはオシオキが必要!!そうよね!! つまり……一回使ってみたかった!!飛行船の変形機能!!作動させちゃいます!!」 「大起動せよ……霊的侵略超神 竜神王!!」 その時、飛行船が大変形を開始する!! それと同時にジャックフロストの立つ床の下に備え付けられたバネが作動!! ジャックフロスト船外に射出!! さて、ここで説明しよう! この飛行船は侵略のために開発されたさる国の霊的侵略兵器である、ただの飛行船にあるまじきバリア機能などはこれの応用なのだ。 しかしこの飛行船の真骨頂はバリア機能だけにとどまらない!! 実は変形する!二本の足で大地に立つ!両の腕で敵を殴り!グッズ展開のしやすい新兵器も満載!! 飛行船として敵国に侵入し、変形し、空から降るは大魔神!!超強い! 筋肉組織はヒルコで応用!更に内部に悪魔を宿らせておくことで、普段は結界用――いざとなったら悪魔の力で、コクピット破壊時の緊急操作が可能。 「J(ジャックフロスト)・さらば!」 テンションが上ってミリーは叫ぶ。 やはり兵器は変形してなんぼだ!! そして何より、派手なアトラクション仕立てにすることで、ある程度ジャックフロスト侵入の溜飲も下げられるだろう。 もちろん、自分が楽しいからということは否定出来ない。 「それでは……皆様ご覧ください!当機が誇る最強兵器…… メギドラダイン砲にて、あのジャックフロストを原子レベルにまで分解してみせましょう!!」 メギドラダイン砲――なんという恐ろしい響きだろうか!! 霊的侵略超神 竜神王の胸部が開いたかと思うと、巨大な砲台がせり出してくる。 バネによって宙に跳ね飛ばされたジャックフロストなど格好の獲物! ああ!ジャックフロストよ!お前の命もここまでか!! 「おもしれーもん、出してきやがって……来るなら来やがれホ!!」 このままでは海面へと叩き付けられる間もなく、 メギドラダイン砲にて完全消滅するであろう……しかし、ジャックフロストが放つは挑戦的な言葉!! 「頼むぜ……オイラの…………」 今までの人生が走馬灯のように廻っていく。 楽しいことも、辛いことも、数えきれない程に。 そして最期に、キノガッサとの喧嘩とジャックランタンとの喧嘩が浮かんで、 ゆっくりとジャックフロストは微笑んだ。 「自慢の拳……そしてッ!」 トロール、ジャックフロス子、己のサマナー、吉田・ランスロット・次郎、デンジャラス武彦、吉田・ランスロット・三郎 特攻隊、吉田・ランスロット・一郎、ヴァンパイア、ジャアクフロスト、マーラ様、スサノオ、月島さん、マンソン アスラおう、ベルゼブブ、キノガッサ、ルカリオ、ジャックランタン 「全ての思い出をブチ込めて…………」 ジャックフロストは拳を握った。 「万魔の――鉄拳・マッハ――スカイアッパァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!!!!!!!」 空を蹴り、狙うは、竜神王の腹。 だが拳は届かない。あまりにも距離がありすぎる。 「冷イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!  崩オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射5秒前!」 だから、俺達が。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射4秒前!」 お前と一緒に。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射3秒前!」 殴ってやれば。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射2秒前!」 あのデカブツにも。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射1秒前!」 届くだろう! 「あったりまえだホ!!」 「メギドラダイン砲 発射アアアアアアアアアア!!!!!!!!」 発射される超絶威力の万能砲撃。 ジャックフロストは拳の風圧で掬い上げるように、アッパーを放った。 すると、どうなる。 友情で結ばれたジャックフロストの拳を受けて、竜神王はどうなる!? 状態を崩し、メギドラダイン砲の砲台を下に向け、そして、メギドラダイン砲が放たれる。 するとメギドラダイン砲の超絶威力で、竜神王は空を飛んだ。 飛んで行く、メギドラダイン砲はまだまだ続く。 「まさか、ここは……」 そしてメギドラダイン砲の砲撃が終わった時、竜神王はその超絶威力で宇宙にまで打ち上がってしまった。 かくして、ジャックフロストは……飛行船の排除に成功し、そして――ジャックフロストは!! 静かに、海の上に浮いている。 何の音も聞こえない。 何も見えやしない。 それでも、すぐ隣りの島での戦いは続くのだろう。 会ったこともない奴らが……いや、一人だけ生きている……ルカリオは戦い続けるのだろうか。 「まぁ、頑張れ……あのおっさんを殴る役は……特別に代わって……や…………」 ジャックフロストは堪え切れない眠気に、身を委ねてしまうことにした。 ほんの少しだけ、寝てしまおう。 もう喧嘩する元気もない。 そして目が覚めたら、また。 また、喧嘩でもするかな。 &color(red){【妖精 ジャックフロスト@女神転生シリーズ 死亡】} |No.76:[[ハイパーディシディアファイナルファンタジーサードストライククロノファンタズマイグゼグスシャープリローデットアルティメットマッチファイナルエディションラブマックス!!!!!!>ハイパーディシディア]]|[[投下順]]|No78:[[君のとなり]]| |No.75:[[brave heart]]|妖精ジャックフロスト|&color(red){死亡}|
船は静かに空の闇を漂い、彼の密航を咎める者は星と月以外には誰一人としていない。 ただ、存在を示すかのようにGAKU-RANが星の海の中、軍旗のようにはためいていた。 まだ拳は握らない。 相手が何であろうが、今から始まるものはただの喧嘩だ。 この拳の中に握りしめるのは武器ではない。 握力と決意、ただそれだけ。 これからジャックフロストは殴るだろう。 顔面の形が変わるまでに殴り、自分が誰を殴っているのかわからなくなるまで殴り、許してと懇願されてなおも殴るだろう。 だが、それ以上はしない、他人の命をこの手の中に握る気はない。 「んじゃ、ボチボチ……」 ジャックフロストは拳を握った。 この拳で――くそったれな運命だって、ぶん殴ってやる。 「喧嘩の押し売り……させてもらうホ!!!」 ジャックフロストは思いっきり、飛行船をぶん殴った。 機体が大きく、揺れる。 穴が開く。 人が騒ぐ。 騒騒、騒騒。 「あー……あー……」 ジャックフロスト以外の誰も、何が起こっているのかを理解できない。 だから、思いっきり聞かせてやる。 滑りこむ機内。 周囲に誰もいない。 通路の類か。 騒音はどこからか、人の声はどこからか、 わからない。しゃらくさい。 「喧嘩の時間だホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」 叫ぶ。それはもう、機内中に届くように。 隣におっさんが住んでいたら、怒鳴りこんでくるぐらいに騒がしく。 人間のどよめきを押しつぶすぐらいにうるさく。 そして熱く。 「骨のある奴……出てこいホォ!!」 ジャックフロストが叫んでから5秒も経たぬ内に、黒服の男達――5人程、訓練された動きを見せながらの襲来。 「ジャックフロスト……死んだはずじゃ!」 「死なんホ!!」 死んで無かったのか、そう納得する間もなく、 呟いた黒服の男がジャックフロストのスカイアッパーで頭を天井にめり込ませて、失神。 四人、モンスターボールを構え。 「男だったら拳一つで勝負せんホイ!」 ポケモンを出す前に、ジャックフロストのローキックが黒服の内の一人の脛を砕く。 堪らず倒れ込もうとしたその男の両足を持ち抱え、ジャイアントスイングからのスローイング! 哀れ投擲武器と化した男は、3人を巻き込んで衝突。複雑骨折!痛い! そして拳一つとは一体何だったのか!誰か教えて欲しい!僕は知らない!! ここまでで敵襲来から1分の早業、 流石喧嘩慣れしているジャックフロストはサラマンダーよりずっと早い! 「冷イイイイイイイイイイイイイイイイ崩オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」 敵はどこにいるのか、襲撃を待ってなどいられない。 壁をぶち破る。 「キャアアアアアアアアアアア!!!!」 着替え中の女性に遭遇。 「失礼しましホ」 謝りながらも鳩尾に1発、女性は気絶、全治1ヶ月! 「もう1発!!」 うっかり侵入した私室から、更に壁をぶち破る。 やはり私室。金持ち風の中年男性と遭遇。 「待て!」 「待たんホ!」 金持ち風の中年男性の鼻っ柱を殴る、顔面陥没! 「ごの゙……ズイ゙ッ゙ヂを゙…………押゙ぜ……ばお゙前゙……ば…………死゙」 「死なんホ!!」 顔面陥没しても喋る人間の精神力ってすごいね。 しかし、そんな中年男性の台詞を最後まで待たずに、鳩尾に1発。中年男性は気絶、意識不明の重体! 「スイッチかホ?」 スイッチを押せば死ぬということは、これが掛けられた呪いを発動するスイッチなのだろう。 ならば、この飛行船内にいても呪いは発動するのだろうか――可能性は限りなく低いと見ているが、確認のために試してみるか? いや、迂闊に押して全く無関係のモンスターに呪いが発動するのはどうかなぁ、ノリに乗ってるジャックフロストも流石にバツが悪い。 「ホ留」 スイッチを学ランの内ポケットに仕舞いこみ、ジャックフロストは駆け出す。 それにしても、どういうことだろうか。 偶々出くわした乗客をぶん殴りながら、ジャックフロストは考える。 これほど派手に暴れたのならば、先程の黒服のような連中が来てもおかしくはない。 だというのに、いるのは逃げ惑う乗客だけ。 たまにいい拳を持った乗客とクロスカウンターをぶち決め、 再戦の約束を交わしながら――ジャックフロストは一つの考えに思い至る。 (反射は使えない。侵入されてしまったのだから。 呪いを使えばイチコロなのに、未だにオイラが死んでいないのは、やはり使えないから。 そしてオイラはあの黒服ぐらいなら一瞬でぶっ倒せる……つまり、逃げた……あるいは) その時、飛来してきた黒い首輪がジャックフロストの思考を中断する。 「テメェ……」 万魔の一撃でぶち砕いた今の首輪は、ルカリオが巻かれていたものと同じ。 自分の雪が溶けるほどに、ジャックフロストは激怒する。 「やれやれ……君のせいで被害が甚大だ」 黒服の男達を引き連れた、明らかにリーダー格の男。 殴ろうとするも、団員が前に立ちふさがり、肉壁となる。 予め、出されていたポケモンも一緒だ。 「ジャックフロスト……君の馬鹿な抵抗もそこまでだ」 「馬鹿はどっちだ!このクソ野郎!!」 「クソ野郎上等、卑劣結構……」 「うんこ垂れ!」 「君はちょっと黙って……」 「糞尿垂れ流し野郎!!」 「何故、人をそっちの方向で罵倒する!!」 「まぁ……良い、単刀直入に言おう」 「聞かん!」 「聞け!」 「大人しくイービルリングを装着し、闘技場に戻るが良い……そうすれば、君を許してやろう。 何、君なら優勝も簡単だし、死んだと思っていた優勝候補のジャックフロストが復活……熱い展開だ、きっと盛り上がるだろう」 「NO!」 「ふふ……命が惜しくないのか?君なら優勝も可能だ、大人しく従え」 「絶対にNO!」 「わかってないホ、スカトロマン……オイラはお前らに喧嘩売りに来てやったんだホ。 そんなオイラが大人しく、お前らにしっぽ振ってやると思ったかホ? テメェらの問いにゃ……なんだってNOで答えてやるホ!!」 「そうか……ならば、君の心変わりを誘発しよう」   SUMMON READY, OK?    ―― GO リーダー格の男がCOMPから召喚せしは、イービルリングを巻かれたダークポケモン軍団×1000! 一体、この飛行船のサイズはどれほどのものかとツッコミを入れる方もいるかもしれないが、 この飛行船内は異界化により、内部と外部に異常なサイズ差が生じている。 その御蔭で、研究室などが存在しているのだ。納得していただきたい 「君はこのダークポケモン軍団に勝てるかな?」 「YES」 (NOとしか言わないはず……) 「ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホ ヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホヒホォ!!」 リーダー格の男の動揺を尻目に、放たれるは鉄拳制裁x1000! ダークポケモン軍団の全イービルリング爆発四散!!サヨナラ! ダークポケモン軍団は全員茫然自失も、とりあえずジャックフロストは全員ぶん殴っておく姿勢は見せておく。 「続いて……」 リーダーの盾となっていた団員達は行間で撃破、あるいは逃走済み。 最早、ジャックフロストの拳を阻むものはあまりない!あんまり! 「鉄拳制裁ィ!!」 「…………」 「何だホ!?」 そう、ジャックフロストの拳はリーダー格の男に届くこと無く止められていた。何故だ。 拳が受け止められていたからだ。 COMPによって召喚されたのはダークポケモン軍団×1000だけではない、正確に言えばダークポケモン軍団×1000+1だったのだ!つまり1001! あの101匹ワンちゃんに10を掛けて-9を引いた数字と同値! あんまり101匹ワンちゃん関係ないね!ごめんね! 「ふふ……」 「どういうことだホ…………」 ジャックフロストの拳を受け止めるほどの実力者がこの世にどれほどいるだろうか、あまりいない、いるといえばいる。 その内の一人が――戦いを中断させられたあの男が、目の前にいる。 「紹介しよう、君のお友達で……そして今では、イービルスパイラル重ねがけで、私の忠実な手下となってくれた……」 妖精 ジャアクランタン が一体出た! 「ふざけんじゃねぇホオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」 「コ……コロス…………」 「ジャックランタン……」 見よ、ジャックランタンの無残な姿を! イービルスパイラルを両腕に2つずつ、首に3つ! 言語は意味をなさず、ただ殺意のみを口にし、時折口から涎を垂らす! 全ての記憶を失い、しかし戦闘能力はそのままに――ジャックランタンはジャアクランタンとなってしまった! 「東京で戦っていたんだろう?決着をつければいいじゃないか、ここで」 怒りのあまり、ジャックフロストはジャアクランタンを無視してリーダー格の男に殴りかかる。 だが、ジャアクランタンの邪悪拳によって床に沈められ、マウントポジションで殴られ続ける! 「……はは、戦えるのが嬉しいからって、そんな跪いて感謝しなくてもいいじゃないか、私と君の仲だろう」 殴られ続けるジャックフロストに、サディスティックな笑みを浮かべて、リーダー格の男は嘲笑の言葉を投げつける。 「うるっせぇ!邪魔だホ!」 殴られ続けるままには終わらない、ジャックフロストはジャアクランタンの両腕を逆に捕まえ、バックドロップをぶちかます。 ジャアクランタンの首が変な方向に曲がるが、その程度ではジャアクランタンは――いや、ジャックランタン時代から止まってはいない。 すぐさま、立ち上がりジャアクランタンの拳がジャックフロストの右頬に、 ジャックフロストの拳がジャアクランタンの左頬にぶち当たる!クロスカウンター! 互いの拳の尋常でない威力!互いに壁に衝突!吐血! しかし、そこからお互いすぐに状態を立て直し、駆ける。 目の前の奴に思いっきり拳をぶち込んでやる。 何を思おうと、誰が相手であろうと、突き詰めればジャックフロストは――そのためにこの飛行船に乗り込んだのだ。 ならば、構うものか。 ジャックランタンがジャアクランタンになったというのならば、治るまでしこたまぶん殴る。治らなくてもぶん殴る。だから治れ! 決着をつけるべき相手はジャックランタンであって、ぽっと出のジャアクランタンなどではない! 「そうだホ!ランタン!?」 互いにクロスカウンター!だが今度はそのままの位置で互いに踏ん張る。 すかさず、ジャックフロストのミドルキック、それをジャアクランタンは一歩引いて、ジャックフロストの足を掴む。 突如訪れる強風。 ジャックフロストの身体が回転する。 目が回る、そんなものではない。 今や、ジャックフロストの体は回転そのものだ。 その回転力から放たれるは必殺のジャイアントスイング! 放り投げられたジャックフロストの体を、そこから更にジャアクランタンは万魔の一撃で追撃。金的! ただし、妖精なので股関に当たる部位を攻撃という意味合い! 「ヒ……ホォ……」 連戦のダメージ、蓄積した疲労、そしてもろに受けてしまったジャアクランタンの万魔の一撃が、三途の川を拝ませる。 全く縁もゆかりもないボナコンが手のような部位を振っている、誰だお前は! 一瞬の臨死体験、その隙を見逃すジャアクランタンではない。 そのままに、ジャアクランタン……ジャックフロストの目に指を突っ込んで、殴り抜ける!これは痛い!超痛い! 「ヒホォ!!」 右目から何らかの液体を雨のように降らしながら、再びジャックフロスト宙を舞う。 だが、その隙を見逃すジャアクランタンではない。 そう……宙に浮いた敵を攻撃し続ける――これはジャアクランタンの永パだ!簡単に始動する! 攻撃を食らいながら、命を削られながら、ジャックフロストは見た。 (ランタン……お前…………) 男泣き――そう、ジャアクランタンは涙を流しながら、ジャックフロストに攻撃していた。 東京での決着、それが彼らにとってどれほど神聖なものだっただろうか。 それを邪魔された上に、このような邪悪な形での決着を強制されている。 記憶と意思を奪われたジャアクランタンも、本能で己の情けなさに――涙を流す! しかし、口元だけは戦闘の喜びを感じるように満面の笑みを浮かべさせられている。 (畜生……お前も、辛いよな……辛いに決まっているホ!!) そうだ、このまま永パでボコられているままでは終われない。 これはジャックフロストとジャックランタンの喧嘩であるべきなのだ。 「思い出すホ!ジャックランタン!!オイラ達の戦いの日々を!」 宙に打ち上げられたジャックフロストは叫んだ。 言葉を言い終わる間もなく、再度ジャアクランタンに宙に打ち上げられる。 だが、ジャックフロストは終わらない。 そのまま空中でバック宙姿勢で、地面に着地。永パ回避! 最早、ボコボコである。 雪だるまというよりもじゃがいもである。 それでもギリギリで生きているのはジャックフロストが身に纏うGAKU-RANのお陰という他ないだろう。 だが、生きている。 生きているのならば、戦える。 戦えるのならば――目の前の男に勝利できる。 中指を突き立て、ジャックフロストは叫んだ。 「来やがれ!どっちが最強か……オイラたちにはそれだけだホ!?」 そう、今の光景に既視感を読者の方も多いだろう。 このジャックフロストの行動は、まさしくジャックランタンと初めて喧嘩した時の行動のそれである。 (そうだ……俺は) ジャアクランタンがジャックフロストを一方的に殴っていた時に生まれた感情はなにか、 悲しみ怒り……それと同時に浮かべさせられていた笑み、しかしそれは決して嘘ではない。 ジャアクランタンはジャックフロストに勝利したかった。 意思も記憶もない、ジャアクランタンが……何故だ! 覚えているからだ。戦いを。そして今。 「カツ……」 ジャアクランタンの意思が右腕のイービルスパイラルを破壊する! ジャックランタンは取り戻した!勝利への飢えを! 先程の動きとは打って変わって、ジャックフロストはジャアクランタンを翻弄する。 いや、ジャアクランタンの攻撃は全て食らっている、だが食らったままで。 余裕の笑みを浮かべたまま、ジャアクランタンをぶん殴る。 「お前の力はその程度かホ?弱ッ……」 「テメェ……」 ジャックフロストの侮蔑の言葉、その言葉に左腕のイービルスパイラルが全て弾け飛ぶ。 ジャックランタンは取り戻した!強さへの誇りを! 「来い!!ジャックランタン!!」 「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」 「このタイミングを待っていたんだ」 リーダー格の男は冷徹に言い放つ。 そして解き放つ、イービルスパイラルを。 イービルスパイラルはあっさりとジャックランタンとジャックフロストを蝕み、完全に捕えた。 虜囚じみて、彼らの両腕両足首にはイービルスパイラルが巻かれている。 「この戦いの映像も、スペシャルマッチとして全てカメラに収めさせてもらった……もう十分だ。 会場にある制限が……ここには無い。やれやれ、だからといってイービルスパイラルがこんなにもあっさりと弾け飛ぶとはね。 まぁ君たちを、再び会場に放り込んで、その心配もなくなる……運べ」 あっさりと喧嘩は最悪の結末を迎えた。 リーダー格の男は元の部屋に戻った、それから観客たちに事情を説明するのだろう。 もしかしたら、ジャックフロストの処刑スイッチを押す権利をもあっさりと与えてしまうのだろう。 そして飛行船が――人間達が堕ちることもない。 ジャックフロストが飛行船に与えた程度のダメージならば、魔法を使えば飛行に影響はない。 しばらくして、黒服の男達が部屋へと入る。 「…………」 「…………」 瞳から輝きを失った二匹は、ただ運ばれるままに流されて――そして再び会場へと放り込まれる。 パリン。 パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。パリン。 ワケがない! ここまで熱くなった男達をイービルスパイラルが止められるわけがない。そうだろう!? イービルスパイラルはあっさりと破裂していく。 「ランタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!」 「フロストオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」 周りの男をなぎ倒し、愛しあう恋人同士の様に……ジャックフロストとジャックランタンは、叫ぶ!! 「火イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!」 「崩オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」 拳が互いの腹に食らいつく。 倒れない。 もう邪魔するものはいない。 どちらが強いか決めてやる。 拳と拳が衝突し。 そして―― 「ハァ……ハァ……」 「ハァ……ハァ……」 「99勝ッ!!99敗ッ……そして」 「1分けかホ……やれやれ、また決着は東京で……」 「ああ……そうだな」 結局、決着はつかないままに終わった。 ただ、天井を見上げ、大の字になって二匹は横たわる。 本当ならば、もう少し休んで、お互いのボコボコになった顔を笑い合って、 そしてまたいつか再戦を誓って、今日のところは終わりたい。 だが、まだだ――まだ、ジャックフロストは何も成してはいない。 「んじゃあ、そろそろ行くホ」 よろめきながら立ち上がる。 足取りは覚束ない、体が重力に引っ張られているかのように沈みそうになっていく。 だが、喧嘩はまだ終わっていない。 「待てよ」 「んだホ?こっちはお前と違って忙しいんだホ」 「また東京で……会うんだろ」 「当たり前のこと聞くなホ」 「あぁ……そうだよな」 「ああ……そうだホ」 「じゃあ……またな」 「ああ……また」 &color(red){【ジャックランタン@女神転生シリーズ 死亡】} 多量のイービルスパイラル装着、そしてそれを自分の力で破壊したのだ。 それがジャックランタンにとってどれ程の負担となったか。 この喧嘩のために彼は生ききり、そして休んだのだろう。 ジャックフロストは振り返らない。 未だ、何も終わってはいない。 こうなった元凶を、殴ってすらいない。 泣いたりはしない、絶対にジャックランタンのために泣いてやるものか。 「クソ……」 妙に体が怠い。 ジャックランタンと同じ理由なのだろう。 それに加え、連戦の傷、疲労は一切癒えていない。 それでも進む。 視界が歪んでいる。 突然、現れた壁にぶつかる。 壁じゃない、人間だ。 「……」 黒服の男か、ジャックフロストは拳を構える。 「なぁ……お前、何しに来たんだよ」 「わかってんだホ……喧嘩しに来たんだホ…………」 「そんなボロボロの身体で……何が出来るっていうんだよ!!」 「殴ったり、蹴ったり出来るホ」 そう言って、ジャックフロストは弱々しく男の鳩尾を殴った。 ただ、突いただけに終わってしまった。 「自分はやるだけやった……そう言って、自分を慰めたいんだろ? なぁ、諦めろよ、俺が口を利いてやるよ……会場に戻って…………それで」 「NO」 「オイラの知り合いは……みんな、数多の大惨事で家族とか友達とか……死んじまってるホ。 失ってない奴は、誰一人としていない みんな……助けたかった人がいて、助けられなかった人がいて…… 死にたかったりして、それでも生きていて……精一杯頑張ってるホ。 それに比べれば、殴る奴がはっきりしている今の状況は超ありがたいホ………… みんなやってるのにオイラだけが諦めるなんて……喧嘩に負けたようなもんだホ……オイラは……負けず嫌いなんだホ……」 「お前……」 「なんか知らんが、お前ならきっと勝てるホ……このオイラの拳を鳩尾に受けて倒れなかったからホ」 「…………」 「じゃあな、邪魔するならもう1発殴るホ」 「…………待ってくれ」 男から差し出された物を、ジャックフロストは受け取った。 それは男なりの決意の現れなのだろう、疑いはしなかった。 「そのマッスルドリンコは回復量10倍、副作用20倍の特別品だ……今のお前が飲むと後に死ぬ」 「ホー」 「それでもお前が闘うなら……飲め!」 「飲む!」 ゴクリ!! ジャックフロストに漲る力!!傷が癒えていく!! 「お前……」 「俺も、今の組織は違うと思うんだ……なんてな。 ジャックフロスト、お前が勝ちそうだから、恩でも売っておこうと思っただけさ」 「……ホッ、100万倍にして返してやるホ」 「ああ、期待して待ってるぜ」 男はその後、ジャックフロストに飛行船のコックピットの位置を教え、去ろうとした。 何処へ行くのか、と聞くと脱出すると言い。 その後、どうするのかと聞くと、ボスを探すと言う。 「まっ、俺はあんなハゲの部下じゃないってこった」 「オイラは誰の部下でもねーけどな」 「ハハッ……うん、最後にお前に会えて良かった」 「オイラもだホ」 別れの挨拶はない。 ただ、ジャックフロストは男の脛を蹴りあげ、男はジャックフロストの腹を蹴りあげた。 流石に全快した状態で鳩尾を殴るのは遠慮した。 「がんばれよ、ジャックフロスト……」 脛を抑え、涙目で去りゆくジャックフロストを見送る。 きっと、ジャックフロストは勝利するのだろう。この喧嘩に。 ならば、自分も戦ってみようと思う。 「今度もきっと……敵同士だな」 自分は今度こそ、真に仕えるべきボスの下にいるのだろう。 そして、働こうとうする悪事をアイツが止めに来るのだろう。 そんな楽しげな未来を想像し、 「私を……いや、我々を裏切るのか」 「いや、あんた達が裏切ったのさ……俺達をな」 「愚かな……」 「ああ、でもなぁ……テメェにゃ負けねぇよくそったれ!」 「行けッ!ユンゲラー!!」 男もまた、戦い始めた。 逃げ惑う乗客、抗う戦闘員、パイロット、その全てをぶん殴って――とうとうジャックフロストはコックピットへと辿り着く。 正直、よくわからないが全てぶっ壊せば堕ちるだろう。 そう安易に考えて、とりあえず鉄拳制裁を放つ。 今までの苦労が嘘であるかのように、あっさりと機械は破壊され尽くした。 「これで……」 「そう、これで……飛行船は落ちてしまうわぁ」 ジャックフロストの背後に立つのは、バニーガール然とした女。この場所でこういう格好ということは、変態なのだろうか。 「一歩遅かったようだホ?早く来ても落としていたけどな」 「…………ええ、その通り。飛行船の最強戦力……ランタンちゃんは死んじゃってぇ、ダークポケモン軍団でも駄目ぇ、 侵入されてしまったらバリアも意味ないしぃ、そして機械が壊されちゃったせいで、もうバリアも張れないま、ま」 「の割りには随分余裕じゃないかホ?オイラは全然、女でも殴るホ?」 顔面ではなく腹を殴るのは、彼なりの優しさなのだろう。全く優しくはない。 「そう……この飛行船は堕ちる……け、ど、私は一応、お客様の生命を守らなければならないの」 「言っとくけど、飛行船が落ちたからって」 「えぇ、ゆっくぅり、堕ちるでしょうねぇ……お優しいこと……でもね、建前っていうのがあるのよ、そういう」 「つまり……?」 会話に飽きて、そろそろ鳩尾を殴ろうと拳を構えたその時である。 「飛行船が安全に着陸するためにはどうすればいいか!そう!!足が必要!! でも島に上陸したら……凶暴なモンスターに襲われるかも!!そんな時、自衛のために手が必要!! と・く・に……こんな飛行船に乗り込んじゃってくる子にはオシオキが必要!!そうよね!! つまり……一回使ってみたかった!!飛行船の変形機能!!作動させちゃいます!!」 「大起動せよ……霊的侵略超神 竜神王!!」 その時、飛行船が大変形を開始する!! それと同時にジャックフロストの立つ床の下に備え付けられたバネが作動!! ジャックフロスト船外に射出!! さて、ここで説明しよう! この飛行船は侵略のために開発されたさる国の霊的侵略兵器である、ただの飛行船にあるまじきバリア機能などはこれの応用なのだ。 しかしこの飛行船の真骨頂はバリア機能だけにとどまらない!! 実は変形する!二本の足で大地に立つ!両の腕で敵を殴り!グッズ展開のしやすい新兵器も満載!! 飛行船として敵国に侵入し、変形し、空から降るは大魔神!!超強い! 筋肉組織はヒルコで応用!更に内部に悪魔を宿らせておくことで、普段は結界用――いざとなったら悪魔の力で、コクピット破壊時の緊急操作が可能。 「J(ジャックフロスト)・さらば!」 テンションが上ってミリーは叫ぶ。 やはり兵器は変形してなんぼだ!! そして何より、派手なアトラクション仕立てにすることで、ある程度ジャックフロスト侵入の溜飲も下げられるだろう。 もちろん、自分が楽しいからということは否定出来ない。 「それでは……皆様ご覧ください!当機が誇る最強兵器…… メギドラダイン砲にて、あのジャックフロストを原子レベルにまで分解してみせましょう!!」 メギドラダイン砲――なんという恐ろしい響きだろうか!! 霊的侵略超神 竜神王の胸部が開いたかと思うと、巨大な砲台がせり出してくる。 バネによって宙に跳ね飛ばされたジャックフロストなど格好の獲物! ああ!ジャックフロストよ!お前の命もここまでか!! 「おもしれーもん、出してきやがって……来るなら来やがれホ!!」 このままでは海面へと叩き付けられる間もなく、 メギドラダイン砲にて完全消滅するであろう……しかし、ジャックフロストが放つは挑戦的な言葉!! 「頼むぜ……オイラの…………」 今までの人生が走馬灯のように廻っていく。 楽しいことも、辛いことも、数えきれない程に。 そして最期に、キノガッサとの喧嘩とジャックランタンとの喧嘩が浮かんで、 ゆっくりとジャックフロストは微笑んだ。 「自慢の拳……そしてッ!」 トロール、ジャックフロス子、己のサマナー、吉田・ランスロット・次郎、デンジャラス武彦、吉田・ランスロット・三郎 特攻隊、吉田・ランスロット・一郎、ヴァンパイア、ジャアクフロスト、マーラ様、スサノオ、月島さん、マンソン アスラおう、ベルゼブブ、キノガッサ、ルカリオ、ジャックランタン 「全ての思い出をブチ込めて…………」 ジャックフロストは拳を握った。 「万魔の――鉄拳・マッハ――スカイアッパァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!!!!!!!」 空を蹴り、狙うは、竜神王の腹。 だが拳は届かない。あまりにも距離がありすぎる。 「冷イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!  崩オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射5秒前!」 だから、俺達が。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射4秒前!」 お前と一緒に。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射3秒前!」 殴ってやれば。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射2秒前!」 あのデカブツにも。 「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」 「メギドラダイン砲 発射1秒前!」 届くだろう! 「あったりまえだホ!!」 「メギドラダイン砲 発射アアアアアアアアアア!!!!!!!!」 発射される超絶威力の万能砲撃。 ジャックフロストは拳の風圧で掬い上げるように、アッパーを放った。 すると、どうなる。 友情で結ばれたジャックフロストの拳を受けて、竜神王はどうなる!? 状態を崩し、メギドラダイン砲の砲台を下に向け、そして、メギドラダイン砲が放たれる。 するとメギドラダイン砲の超絶威力で、竜神王は空を飛んだ。 飛んで行く、メギドラダイン砲はまだまだ続く。 「まさか、ここは……」 そしてメギドラダイン砲の砲撃が終わった時、竜神王はその超絶威力で宇宙にまで打ち上がってしまった。 かくして、ジャックフロストは……飛行船の排除に成功し、そして――ジャックフロストは!! 静かに、海の上に浮いている。 何の音も聞こえない。 何も見えやしない。 それでも、すぐ隣りの島での戦いは続くのだろう。 会ったこともない奴らが……いや、一人だけ生きている……ルカリオは戦い続けるのだろうか。 「まぁ、頑張れ……あのおっさんを殴る役は……特別に代わって……や…………」 ジャックフロストは堪え切れない眠気に、身を委ねてしまうことにした。 ほんの少しだけ、寝てしまおう。 もう喧嘩する元気もない。 そして目が覚めたら、また。 また、喧嘩でもするかな。 &color(red){【妖精 ジャックフロスト@女神転生シリーズ 死亡】} |No.76:[[ハイパーディシディアファイナルファンタジーサードストライククロノファンタズマイグゼグスシャープリローデットアルティメットマッチファイナルエディションラブマックス!!!!!!>ハイパーディシディア]]|[[時系列順]]|No79:[[終焉の物語]]| |No.76:[[ハイパーディシディアファイナルファンタジーサードストライククロノファンタズマイグゼグスシャープリローデットアルティメットマッチファイナルエディションラブマックス!!!!!!>ハイパーディシディア]]|[[投下順]]|No78:[[君のとなり]]| |No.75:[[brave heart]]|妖精ジャックフロスト|&color(red){死亡}|

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