黒く蝕み心を染めん

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ゆっくりと歩いていく。 一匹は上機嫌で、幸せそうな様子のまま歩いていく。 もう一匹はそれを眺めて、何かを思案するように、でもそれを彼には見せずに歩いていく。 ふいにこちらを振り向いた上機嫌な獣に、悪魔は微笑む。 だが言葉を投げかけることはない。 彼が発する言葉はどれも、ここにはいない誰かに向けられていて、でもそれは目の前にいる悪魔に向けられている。 彼が見ているのは現実だが、真実ではない。 だからかける必要はない。あちらからかけてくるから。 「あ、ブリーダーさん! 湖だよ、湖! 少し休憩していこうよ!」 「ああ、そうだな。そうしようか」 狼は彼を、ブリーダーと呼んだ。 四足歩行、立派な牙と鼻、一つ目。誰がどう見ても人の姿には見えない。 でも彼から見えるのは、自分を育ててくれた愛しいブリーダーの姿。 それが彼の眼から映る景色であり、現実。 こうしてしまったのは自分なのだと、改めて感じてまた、自分の行為が間違っていたのかと考えてしまう。 だけど、こんな無邪気な笑顔を見てしまうと、自分は正しかったと勘違いしそうになる。 「うわあ……凄くキレイ……。これなら飲めそうだね!」 「いや、大体の水なら殆どの動物なら飲めそうなものだが……」 と言いつつ、自分は動物の類ではなかったなと心の中で呟く。 美味しそうにゴクゴクと、水を飲んでいくハムライガー。 そんな光景を眺めて、ギリメカラは独り嘆息し、また思案する。 この後の行動はどうするべきか、優勝狙いのものに出会ったらどうするかを独り考える。 ハムライガーはあまり戦わせたくない、責任をとって、守り通したい。 自分のしたことは、彼にとってはあまりに残酷で、でもそれは救いでもある。 命令すれば何でも言う事は聞くだろう。 でもそれは、攻撃ではなく待機をさせるべきだ。 だけどそれは、彼にとって救いになるのだろうか。 ご主人様、つまりブリーダーに役立ってこその自分だと、ハムライガーは考えている。 彼の意見を尊重し、戦わせるべきなのだろうか。 もし死んでしまったら、それこそ自分は示しがつかなくなってしまう。 きっと、後悔をしてしまうだろう。情けないことに ふと、前を見るとハムライガーがそこにいた。 どうやら喉はもう潤ったらしい。 「どうした? そんな顔をして」 表情は先ほどとは一変して、神妙な面持ちになっていた。 「ブリーダーさん大丈夫? 何か考えてたみたいだけど……  もしかしてボク何かした? ね、ね、何か間違った? ねぇ  ボクがブリーダーさんを守るから、お願いだから、売らないでください。  お願いします。ごめんなさい。すみませんでした。何でも言う事を聞くから……」 「ああ、大丈夫だ。心配するな。お前を売ったりはしない」 「ホント? ホントだよね? 嘘じゃないよね?」 「ああ、本当だ」 この問いの答えは、命令して戦わせるのが正解なのだろう。 彼にとっての存在意義は、ブリーダーさんの役に立つということ。 私が死んだりすれば、壊れた彼は更に壊れてしまうだろう。 それならば戦わせてやるのが彼の為であるし、ブリーダーさんの役に立てて死んだ、とあれば彼も満足だろう。 尤も、彼を死なせるということは絶対にさせないが。 安心させるために、頭を撫でる。 彼はそれを気持ちよさそうに、眼を細めながら幸せそうに、なすがままにされている。 ギリメカラはそれを微笑ましそうに、眺めていた。 □□□ (なんや、凄く見てて癒されるなあ……) 湖の中から出ないといっても、さすがに外の様子は気になったようだ。 以前は自分が何も考えずに外へ出てしまったせいで、炎と爆発をくらってしまった。 だから今度は慎重に、湖から少しだけ顔を出して窺うことにしたのだ。 といっても、湖からは決して出ないが。 しかし様子を見るに、湖を荒らしに来たわけでもなさそうだし、もしかして純粋に休む為にいるのだろうか。 だとすれば彼等はワイを見ても戦うことはないだろうし、うまくいけば協力関係になれるかもしれない。 例えば、湖の警護とかワイのボディーガードとか湖の警護とか! (いや無理や。休んでるだけやろうし、そもそも自分本位すぎるわな) そもそもワイのボディーガードって、ワイ外に出る気だったん? アカンアカン。 ワイはこの湖に永久就職すると決めたんや。自湖警備員や。 外の世界にはぜってー干渉せえへん。湖の中で死ねるなら本望よ。 んー、でも少しくらい頼んでみるか。回復もしてきたしな。 外出るの怖いけど。 殺し合いに乗ってるかもしれへんけど。 その時はその時や。 (あー、でもどんな出方がええんやろ。一気にぶわって飛び出すか? それとも静かにざばー、って現れるか? 悩むなー) うんうん唸るオルトロス。 湖から出るのはまだ先になりそうだ。 □□□ オルトロスが唸ってる間に、湖に二匹が訪れていた。 一匹はジュペッタの体をした、プチヒーロー。 もう一匹はゲルキゾクであった。 目的は二匹とも同じで、湖に行けば誰かに会えるだろうと思ったからだ。 但しプチヒーローは仲間を探して、ゲルキゾクはカモになりそうなのを探して、であり両者は全くの逆である。 二匹は同時にこの湖につき、そしてまた二匹同時にギリメカラの方向を見た。 「おや」 「む」 「「あ」」 四者同時に目が合い、沈黙が訪れる。 先に口を開いたのはゲルキゾクだった。 「貴方方は殺し合いに乗っているのでしょうか?」 一対一ならまだしもこれだけの人数がいてはかなわない。 ここは様子見をすることにして、自分は殺し合いには乗ってませんアピールをすることにした。 まあ最初からそう言うつもりだったが。 「乗ってはいないな」 「ブリーダーさんとおなじー」 「僕も乗ってないよ」 ふーむ、どうやらこの三人の眼を見る限り、嘘はついていないらしい。 これはチャンスだ。うまくいけば、皆殺しにできる。 いや、皆殺しにする必要は無いか。一匹が死んだらもう一匹は確実に死のうとする。 もしくはそれを利用すれば…… 「それはよかった……こちらは武器も何も持ってませんでしたので」 「そうか。それはよかったな。ワシらがそういうもので」 「……ええ。それはそれは」 心の中で舌打ち。 どうやら、このゾウに似てなんか違うやつは手強いらしいな。 先に殺すならまずこいつからだろう。人形とゾウに似たやつをすりすりしている狼は、後回しでも対処できる。 問題はどう殺すかなのだが。 と、そんなことを考えていると、人形がコチラへと近づいてくる。 あちらからの位置だと遠いから、寄ってきてくれたのだろう。ありがたい。 走り終わった人形は、その場にへなへなと座りだした。 「はあはあ……よかったあ。えっと、皆さん殺し合いに乗ってないんですね……」 「よかったな。もしそんな者にあったらおヌシの命は無かっただろうな」 「ええ、その……失礼なことを言いますけど顔を見て、もしかしたらって思っちゃって」 「気にするな。こんな身なりだし、勘違いもしてしまうだろう」 「あ、有難うございます。それにそちらの方も……」 「私が何か?」 「その、なんというか、ちょっと危ない感じがしたので……」 「おやおや」 まさか直感で当てられるとは思わなかった。 といっても本人は気付いていないし、放置しても問題はない。 「初対面なのに失礼ですよね……。でもよかったです。優しい人達で」 「確かにそうですよね。そうだ、ここで会ったのも何かの縁。よろしければ協力しませんか?」 距離をつめるために、ゆっくりとゾウに似たやつに近づいていく。 「あ、僕もお願いします!」 嬉しいことにあの人形も近づいてきた。 ちょうどいい、一網打尽に――― 「いや待て。おヌシ、名は?」 「……ゲルキゾクという者です」 「プチヒーローっていいます」 「そうか。ワシはギリメカラ。こやつはハムライガーという。時にゲルキゾク。おヌシは本当に武器を持ってはおらんのか?」 「どういう、意味でしょうか?」 「ゲル、というのだから、さぞかし便利なのだろうな。何にでも姿形を変えられて」 「……それが?」 「なに、戯言だ。気にするな」 ギリメカラと言ったか、中々鋭い。 というか、もう既に自分がどういう者なのか分かっているのではないだろうか。 いや、この口ぶりはどう考えても分かっている。 さて、どうするか。 警戒はされただろうし、このままでは殺すことも難しいだろう。 ならば、ここで殺るか? しかし実力も何も分からない相手と戦うのは、分が悪すぎる。 あちらはこちらの能力を分かっているから、尚更危険。 何もしなければ、強制的に対主催への道。 それでは主人に顔向けできない。 本当にどうしようか。そんなことを考えていたとき。 湖がぐるぐると渦巻いて、やがてそれが空へと浮かび上がった。 そしてその中からタコが飛び出した。 「ワイ、参上!」 タコが空中を舞う。 □□□ 地上は修羅場的なことになっていることとは露知らず、オルトロスは未だに登場方法を考えていた。 今のところは二つに絞れた。絞れたのだ。 凄く悩むなぁ……、これ自分の技で登場するわけやし。 どうやって登場しようか? ・ミールストームを使って派手に登場や! ・くさいいきを使ってファンサービスや! →ミールストームを使って派手に登場や! ・くさいいきを使ってファンサービスや! ピコーン やっぱりくさい息では嫌われてしまうし、警戒されてしまうやろ。 ここはミールストームを使って派手に登場したるで! そうと決まれば! ミールストームを湖上へぶっぱして! そのまま勢いよく!                 \ドッパーン/ 「ワイ、参上!」 □□□ 嬉しい誤算とは正にこのことなのだろう。 あのタコの登場の仕方は非常に派手だった。 誰もがそれを見つめるくらいには、派手であった。 だから、隙が生じた。 一気に走り出して、距離をつめる。 私が取ろうとしている行動に気付いたのか、ギリメカラがハムライガーという狼を突き飛ばす。 まあ、後々そいつも利用するから有難かったが。 さて、そろそろフィナーレの時間だ。 ガトリングの形へと変形! 零距離から銃弾を打ち込んであげましょう! 「残念だったな。ワシにはきかんよ」 しかし反射。 零距離で打った弾丸は跳ね返り、ゲルキゾクへ向かって打ち込まれる。 だが砲弾は己自身なので、砲弾はゲルキゾクと一体化していった。 「そうですか……そういうことですか……」 ガトリングではダメージを与えることができないと分かったゲルキゾクは、瞬時に別の形へと変化する。 その姿はまるでパラボラアンテナ。 ゲルキゾクの技。超パラボラビームである。 「実弾がきかないなら……実体のないもので!」 「……っ!」 ギリメカラはしまった、と顔をしかめる。 確かに彼には反射という、殺し合いにはうってつけの能力がある。 但し、反射できるのは『物理』のみ。 超パラボラビームは物理という、実体を持って攻撃する技ではない。いわば、魔法のようなもの。 従って、反射不可能。 「さようなら。ギリメカラさん」 (まさか……こんな奥の手を隠しているとは、な) ゲルキゾクとやらの正体は掴めた。同じような奴を見たからだ。 能力もどういうものかは分かった。ゲルという単語を聞いた時点で確信した。 しかし予想外の出来事が起こり、想定外の奥の手を使われてしまった。 タコが登場した瞬間、身構えてしまった。 それが仇となったのだろう。ゲルキゾクが距離を詰めてきた。 そして、咄嗟にハムライガーを突き飛ばしてしまった。 しかしそれだけなら、よかったのだろう。 あろうことか、このゲルは物理攻撃以外のもので攻撃してきた。 物理を反射できるのはワシの強みでもあるが、それ以上に大きなリスクもある。 物理以外の攻撃をくらうと、ダメージも多くくらってしまうことだ。 まさに諸刃の剣。そして、その隙を突かれてしまった。 (……口惜しいのう) あの男に顔向けできないのが口惜しい。 人間達の慌てふためく姿を、見せてやることができなかったのが口惜しい。 ハゲに抵抗することもなく、死ぬことが口惜しい。 自分の死も、人間達にとっては殺し合いの中で起こったイベントに過ぎず、盛り上げさせてしまったことが口惜しい。 こんなに後悔してしまう、自分の不甲斐なさが口惜しい。 なにより、ハムライガーを独り残してしまうことが口惜しい。 彼をここまで壊して、責任を取れないことが 更に彼を壊してしまうことが 何よりも心残りだった。 それは、きっと死んでも後悔し続ける。 抗いたくても抗えなくて、やり直すことができない、永遠の過ち。 「すまない」 最期の言葉は、懺悔。 そして光がギリメカラを包んだ。 □□□ いきなりブリーダーさんに突き飛ばされた。 訳も分からず、ブリーダーさんの方向を見ると、さっきのゲルキゾクさんがブリーダーさんの近くにいました。 その後よく分からないけど、銃のような姿に変りました。 そして気付いた。 かばってくれたのだと。 守ってくれたのだと。 でも、そんなのは余計なお世話だよ。 「ブリーダーさん!!」 伸ばしたその手は届くことはない。 それでも、彼は届くと信じて、手を伸ばす その先へ、自分が守らなければいけない対象へ。 だけどそれは杞憂だった。 「ブリーダーさん、生きてる……」 銃の攻撃をくらったのにブリーダーさんは無傷だった。 何事も無かったかのようにそこに佇んでいる。 「ブリーダーさん!」 嬉しくて、嬉しくて、ブリーダーさんに近づこうとした。 でも、まだ終わっていなかった。 ゲル状の生物はなんだかよく分からない姿に変化して、ブリーダーさんに向けて光線を放ってきた。 でも、心配することはない。 だって銃を防いだ、ブリーダーさんなんだから、こんなのはどうってことはないだろう。 でも、なんで? なんで、そんな悲しそうな顔なの? なんで光りに包まれているの? どうして? ブリーダーさんがいた所が、爆発した。 &color(red){【邪鬼ギリメカラ@真・女神転生シリーズ 死亡】} 【最悪手:ギリメカラ死亡+ハムライガー生存】 □□□ ゆっくりと煙が上がると、地面に倒れ付した巨体がそこにあった。 その瞬間を、狼は愕然とし、タコはぺちゃっと着地し、人形は呆然とし、生命体はニヤリと口角を上げ、その様を眺める。 やがて生命体が動き出し、その場に立ち尽くす狼に近寄り、止まった。 生命体の目的はこの殺し合いに優勝すること。 そして、それが楽になる『道具』もまた欲しかった。 狙いは先ほど殺した悪魔をブリーダーと呼び、依存しているあの狼。 あの時撃ち殺したふざけた女と同じ、どこかで見たことがあるような、そんな気がしていた。 だから利用してみる。 ゲルキゾクは彼を『道具』として利用する為に、まず依存対象を殺すことにした。 その後、傷心状態の狼を洗脳して、『道具』としてこき使い、そして捨てる。 だって簡単そうだから。 純真そうな狼は簡単に騙せるだろう。 「よろしければ協力しませんか?」 「……」 「こうなってしまったのも、すべては首謀者であるあのモリーが原因でしょう。  先に謝っておきます。あなたがお慕いしている方を殺して申し訳ございませんでした。  しかし、これは不可抗力というもの。憎むべきは殺し合いの場です。  私も殺し合いが始まる前に、マスターを亡くしまして……辛い気持ちは分かります。  ですから、その方の無念を晴らす為に協力していただけませんか?」 そう言って手を伸ばす。 傷心中で、あの様子の狼ならばコロッといける。 横であの人形が五月蝿く、そいつの言う事を聞いちゃダメだ、とか叫んでいるが気にすることはない。 ゆっくりと顔を上げた狼が、コチラを見る。 手を伸ばしてきた。 ゲルキゾクは勝利を確信する。プチヒーローは必死に叫び続ける。 そして、ハムライガーの手がゲルキゾクの手を掴む――― 「―――あ?」 ことはなく、そのまま手を素通りした。 その先、胸のコアへと勢いよく突き刺す。 「が……」 この時、ゲルキゾクの判断には誤りが二つあった。 確かにハムライガーとギリメカラの関係は主従関係であるが、それはハムライガーの一方的な依存から成り立っているものである。 それをギリメカラが容認しているだけにすぎないのだ。 彼等に何が起こったのか、ゲルキゾクは知らない。 故に、こうなることも予想できない。 それよりも大きな誤算が、ハムライガーを道具として使うには、壊れすぎていたということ。 幽鬼マンイーター。『あくむ』を魅せてハムライガーを誑かし、狂わせて追い込む。 邪鬼ギリメカラ。『パニックボイス』を使用し、壊してとどめを刺す。 ゲルキゾクが行おうとした行為は、マンイーターと同じ行為であった。 勿論、既に壊れているので言葉は届かない。 しかしゲルキゾクはその前に彼を、もう一段階壊していた。 ゲルキゾク。依存対象を『殺害』して死体殴り。 これにより彼の心の中はぽっかり穴が開いた。 しかし、その穴の中には何も入ることはない。その穴はブラックホール。 二度と戻ることは無い虚無へと、ご招待。 ようはゲルキゾクは何も知らなかったがために、ツメが甘かったがために、こうなった。 ゆっくりと彼は後進していく。 信じられないものを見るように、自分の胸を、ハムライガーを交互に見る。 だがハムライガーは彼のことなど見向きもせず、殺された主人の下へと歩いていた。 彼は後進し続ける。 後進の終点駅は湖。 彼はそこへ足を踏み外し落ちていく直前に、あの女のことを思い出していた。 金を貪欲に欲して、自分を道具呼ばわりして、でも自分のことで泣いてくれたあの女。 (裏切ってしまいましたね……) 生き残ることができず、勝手な行動をとって、勝手に野垂れ死ぬ。 これを契約違反と呼ばずして、何と言うのだろう。 絶対に死ぬな、一人ぼっちにするな、それらを私は破った。 (…………) もし、あの女が生きているのならば、私が死んで開放されるのだろうか。 そうであれば、私のことなどさっさと忘れてしまって、私より優れたより優秀な道具を探して欲しい。 もし、殺されているのであれば、死んでいるのならば。 再開できたならば。 契約の不履行を許してもらえるのであれば。 (また、道具として使役してほしいですね) そんな思いと共に、彼は沈んでいった。 &color(red){【ゲルキゾク@モンスターファームシリーズ 死亡】} □□□ めのまえでぶりーだーさんがしんじゃった まわりはばくはつのせいでくろこげになっていてぶりーだーさんもまっくろにそまっている うそだぼくはしんじない だってぶりーだーさんのはだはまだあったかいから けどぶりーだーさんをゆさゆさゆらしてもおきない けどぶりーだーさんにこえをかけてもおきない いまめのまえでおこっているできごとはなんだろう げんそう? もうそう? そうぞう? きょぞう? まぼろし? えいぞう? げんかく? くうそう? それともゆめ? ああきっとそうだこれは『あくむ』なんだわるい『きおく』なんだ 『あくむ』ならめをさまさなきゃいけない いらない『きおく』はけさないといけない はやくぶりーだーさんのところへかえらないといけない もどったらぶりーだーさんはほめてくれるよね てきをやっつけたんだからほめてくれるはず ぶりーだーさんにやくあいたいなあ もうかなしまないよね もううったりしないよね ぶりーだーさん! ぶりーだーさん ぶりーだーさん…… ―――ぶりーだーさん? あれ? ぶりーだーさんってだれだっけ? そもそもぼくって――― だれだっけ? ああ きっとこれはおもいだしちゃいけないんだ だからおぼえていないんだ だったら おもいださくていいじゃん おもいださないようにこわさないと ああ 『はやくぶりーだーさんにあいたいなあ』 でもだれだっけな? □□□ たった数分で二人の命が無くなった。 僕は眺めて、叫ぶことしかできなかった。 この出来事を引き起こしたのは、あの紫色のタコさんのせいなのだろうが、きっと悪気は無いのだろう。 意図してやったにしては、全く喜んでないし。 それにしても問題はあのハムライガーさん。 あれだけ懐いていたギリメカラさんを殺されてしまったのだ。ゲルキゾクを殺しても仕方あるまい。 問題はその後だ。彼の心の傷は相当深いものだろう。 もしかしたら、殺し合いに乗ってしまうかもしれないし、自殺してしまうかもしれない。 でもそれじゃ駄目だ。死んでしまったギリメカラさんに、申し訳が立たない。 生きてもらわないと。 「ハムライガーさん!」 振り向かない。 「ハムラガーさん!」 振り向かない。 「ハムライガーさん!!」 振り向かない。 「ハムライガーさん!!!」 「――――」 振り向いた。 「…………ぅあ」 彼の眼を見て、プチヒーローはぺたんと尻餅をついた。 何で……何もないんだ? どうしてこんな暗いんだ? 「ぶりーだーさん」 「ブリーダー……さん?」 「あいたい」 「へ……?」 「あいたい」 「あいたい」 「あいたい」 「あいたい」 「あいたい」 「あいたい」 「ひっ……」 プチヒーローはハムライガーから逃げるように、後ずさりしていく。 あれ、なんで。 言葉を発するべきなのに口が言う事を聞いてくれないの。 それどころか寒くないのに体がぶるぶる震えだしてるの。 彼からなんで逃げるの。 どうして、僕は恐怖を感じているの。 「こ、こないで……っ! お願いだから!」 でも近づいてくる。 こわいこわいこわいこわい。 こないで。 ちかづかないで。 そして、距離は数センチ。 「じゃま」 「はひ……!」 どいた。 なぜだか命が救われた気がした。 ハムライガーは僕には目もくれず、そのまま森の中を歩いていき、姿が見えなくなった。 いつの間にか、湖は僕とギリメカラさんの死体だけしか、残っていませんでした。 「あ……」 なにしてるんだろう僕。 なんで怖がってたんだよ。 なんで、あの目を見たくらいで何を怖気づいているんだ。 ヒーローは怖がっちゃいけない。 辛くても、苦しくても、怖がっちゃいけないし、泣いちゃだめだ。。 誰かに勇気を与える為に、希望を持ってもらうために、象徴とならなきゃいけないんだ。 だから、救わなきゃいけない。 目の前で大好きな人が死んだ苦しみは僕にも分かる。 たった短い間でも、それは僕にとって大切な思い出。 ハムライガーさんにとって、ギリメカラさんは大好きな人だったんだろう。 その気持ちは、分かる。 でも、乗り越えなくちゃいけない。 乗り越えて、生き残って、そうして初めてギリメカラさんは報われる。 だから止めなきゃいけない。 あの狼さんが取る行動を。 あの目は暗くて、何も見えない闇だった。 一歩間違えば、取り返しがつかない行動をしてしまうかもしれない。 悲しみは僕が一緒に背負ってあげるから。 苦しみは僕が一緒に背負ってあげるから。 そうなる前に進もう。 これ以上、犠牲者を出しちゃいけないんだ。 だから僕は一歩を踏み出す。 手を差し伸べるために。 【F-6/湖/一日目/夕方】 【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】 [状態]:魔力消費(小) [装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生Ⅰ [所持]:ふくろ(中身無し) [思考・状況] 基本:勇気を与える者になる 1:ハムライガーさんを救う 【備考】 オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」 死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。 ※ギリメカラが所持していた物は死体の傍に放置されています。 □□□ (アカンアカンアカン……ワイが? あの惨劇を引き起こした? 嘘やろ?) 現実を受け入れられず、その場から逃げ出したオルトロス。 なにせ、派手に登場しドヤ顔をした後、地面に目を向ければ爆発、さらに死体が出来上がるのを見てしまったのだ。 どこからどう考えても自分が登場したせいで、事件は起こってしまったようにしか見えなかった。 これは逃げるしかない。誰だってそうする、オルトロスだってそうした。 (いや違う。ワイが登場した時にはもう始まってたんや。ワイは関係あらへん!) しかしタコは現実から目を背ける。 目の前で起きた、数分の出来事から目を背ける。 (やっぱり……タコらしくすべきやったな) 【G-6/森/一日目/夕方】 【オルトロス@ファイナルファンタジー】 [状態]:健康、後悔 [装備]:なし [所持]:なし [思考・状況] 基本:戦いをできるだけ避ける 1:湖から早く立ち去る □□□ 何も残っていない空っぽの人形はひたすら歩く。 ゆっくりと、ゆっくりとその歩みはただひたすらに遅い。 記憶と精神、破壊されつくした彼の眼は、深淵の如き深さになっていた。 但し、覗いてもあちら側がこちら側を見ることは無い。その先は虚無そのものだからだ。 残った一欠けらの思いは、『はやくぶりーだーさんにあいたい』という、もう叶うことがないそれこそ幻想。 言葉は届かない、行動には興味を示さない、何も考えない。 目的の為ならば邪魔をするものは容赦なく殺す。 プログラミングされた一つの目的を果たす為に、延々と繰り返す。 行進を、殺害を、生産を、発言を、止めない。 ただそれだけ。 【F-7/森/一日目/夕方】 【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】 [状態]:刺傷、狂気(永)、PANIC、精神崩壊、記憶崩壊 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身無し) [思考・状況] 基本:はやくぶりーだーさんにあいたい  1:あるく [備考] オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」 マンイーターのあくむによって、精神を追い込まれ、ギリメカラのパニックボイスでとどめを刺されました。 ダメ押しにゲルキゾクが死体殴りをしました。 本来のPANICは一時的な症状ですが、マンイーターの悪夢による狂気を加速させる方向で使われたため、実質永続しています。 ギリメカラによる幻覚も合わせて、ギリメカラをブリーダーと認識して、殺し合いの先の未来の夢に囚われています。 ギリメカラ(ブリーダーさん)が死亡した現実を受け入れられないが故に、記憶も崩壊しました。 『ぶりーだーさんにはやくあいたい』という目的を果たす為に、歩き続けています。 |No.68:[[君の思い出に]]|[[投下順]]|No.70:[[僕たちは世界を変えることができない。]]| |No.62:[[勝者なき戦い]]|ライガー|No.71:[[]]| |No.53:[[ようやく戦ったね(ニッコリ]]|オルトロス|No76:[[ハイパーディシディアファイナルファンタジーサードストライククロノファンタズマイグゼグスシャープリローデットアルティメットマッチファイナルエディションラブマックス!!!!!!>ハイパーディシディア]]| |No.61:[[ありがとう]]|プチヒーロー|No.71:[[]]| |No.62:[[勝者なき戦い]]|邪鬼ギリメカラ|&color(red){死亡}| |No.55:[[テレビのスイッチを切るように]]|ゲルキゾク|&color(red){死亡}|
ゆっくりと歩いていく。 一匹は上機嫌で、幸せそうな様子のまま歩いていく。 もう一匹はそれを眺めて、何かを思案するように、でもそれを彼には見せずに歩いていく。 ふいにこちらを振り向いた上機嫌な獣に、悪魔は微笑む。 だが言葉を投げかけることはない。 彼が発する言葉はどれも、ここにはいない誰かに向けられていて、でもそれは目の前にいる悪魔に向けられている。 彼が見ているのは現実だが、真実ではない。 だからかける必要はない。あちらからかけてくるから。 「あ、ブリーダーさん! 湖だよ、湖! 少し休憩していこうよ!」 「ああ、そうだな。そうしようか」 狼は彼を、ブリーダーと呼んだ。 四足歩行、立派な牙と鼻、一つ目。誰がどう見ても人の姿には見えない。 でも彼から見えるのは、自分を育ててくれた愛しいブリーダーの姿。 それが彼の眼から映る景色であり、現実。 こうしてしまったのは自分なのだと、改めて感じてまた、自分の行為が間違っていたのかと考えてしまう。 だけど、こんな無邪気な笑顔を見てしまうと、自分は正しかったと勘違いしそうになる。 「うわあ……凄くキレイ……。これなら飲めそうだね!」 「いや、大体の水なら殆どの動物なら飲めそうなものだが……」 と言いつつ、自分は動物の類ではなかったなと心の中で呟く。 美味しそうにゴクゴクと、水を飲んでいくハムライガー。 そんな光景を眺めて、ギリメカラは独り嘆息し、また思案する。 この後の行動はどうするべきか、優勝狙いのものに出会ったらどうするかを独り考える。 ハムライガーはあまり戦わせたくない、責任をとって、守り通したい。 自分のしたことは、彼にとってはあまりに残酷で、でもそれは救いでもある。 命令すれば何でも言う事は聞くだろう。 でもそれは、攻撃ではなく待機をさせるべきだ。 だけどそれは、彼にとって救いになるのだろうか。 ご主人様、つまりブリーダーに役立ってこその自分だと、ハムライガーは考えている。 彼の意見を尊重し、戦わせるべきなのだろうか。 もし死んでしまったら、それこそ自分は示しがつかなくなってしまう。 きっと、後悔をしてしまうだろう。情けないことに ふと、前を見るとハムライガーがそこにいた。 どうやら喉はもう潤ったらしい。 「どうした? そんな顔をして」 表情は先ほどとは一変して、神妙な面持ちになっていた。 「ブリーダーさん大丈夫? 何か考えてたみたいだけど……  もしかしてボク何かした? ね、ね、何か間違った? ねぇ  ボクがブリーダーさんを守るから、お願いだから、売らないでください。  お願いします。ごめんなさい。すみませんでした。何でも言う事を聞くから……」 「ああ、大丈夫だ。心配するな。お前を売ったりはしない」 「ホント? ホントだよね? 嘘じゃないよね?」 「ああ、本当だ」 この問いの答えは、命令して戦わせるのが正解なのだろう。 彼にとっての存在意義は、ブリーダーさんの役に立つということ。 私が死んだりすれば、壊れた彼は更に壊れてしまうだろう。 それならば戦わせてやるのが彼の為であるし、ブリーダーさんの役に立てて死んだ、とあれば彼も満足だろう。 尤も、彼を死なせるということは絶対にさせないが。 安心させるために、頭を撫でる。 彼はそれを気持ちよさそうに、眼を細めながら幸せそうに、なすがままにされている。 ギリメカラはそれを微笑ましそうに、眺めていた。 □□□ (なんや、凄く見てて癒されるなあ……) 湖の中から出ないといっても、さすがに外の様子は気になったようだ。 以前は自分が何も考えずに外へ出てしまったせいで、炎と爆発をくらってしまった。 だから今度は慎重に、湖から少しだけ顔を出して窺うことにしたのだ。 といっても、湖からは決して出ないが。 しかし様子を見るに、湖を荒らしに来たわけでもなさそうだし、もしかして純粋に休む為にいるのだろうか。 だとすれば彼等はワイを見ても戦うことはないだろうし、うまくいけば協力関係になれるかもしれない。 例えば、湖の警護とかワイのボディーガードとか湖の警護とか! (いや無理や。休んでるだけやろうし、そもそも自分本位すぎるわな) そもそもワイのボディーガードって、ワイ外に出る気だったん? アカンアカン。 ワイはこの湖に永久就職すると決めたんや。自湖警備員や。 外の世界にはぜってー干渉せえへん。湖の中で死ねるなら本望よ。 んー、でも少しくらい頼んでみるか。回復もしてきたしな。 外出るの怖いけど。 殺し合いに乗ってるかもしれへんけど。 その時はその時や。 (あー、でもどんな出方がええんやろ。一気にぶわって飛び出すか? それとも静かにざばー、って現れるか? 悩むなー) うんうん唸るオルトロス。 湖から出るのはまだ先になりそうだ。 □□□ オルトロスが唸ってる間に、湖に二匹が訪れていた。 一匹はジュペッタの体をした、プチヒーロー。 もう一匹はゲルキゾクであった。 目的は二匹とも同じで、湖に行けば誰かに会えるだろうと思ったからだ。 但しプチヒーローは仲間を探して、ゲルキゾクはカモになりそうなのを探して、であり両者は全くの逆である。 二匹は同時にこの湖につき、そしてまた二匹同時にギリメカラの方向を見た。 「おや」 「む」 「「あ」」 四者同時に目が合い、沈黙が訪れる。 先に口を開いたのはゲルキゾクだった。 「貴方方は殺し合いに乗っているのでしょうか?」 一対一ならまだしもこれだけの人数がいてはかなわない。 ここは様子見をすることにして、自分は殺し合いには乗ってませんアピールをすることにした。 まあ最初からそう言うつもりだったが。 「乗ってはいないな」 「ブリーダーさんとおなじー」 「僕も乗ってないよ」 ふーむ、どうやらこの三人の眼を見る限り、嘘はついていないらしい。 これはチャンスだ。うまくいけば、皆殺しにできる。 いや、皆殺しにする必要は無いか。一匹が死んだらもう一匹は確実に死のうとする。 もしくはそれを利用すれば…… 「それはよかった……こちらは武器も何も持ってませんでしたので」 「そうか。それはよかったな。ワシらがそういうもので」 「……ええ。それはそれは」 心の中で舌打ち。 どうやら、このゾウに似てなんか違うやつは手強いらしいな。 先に殺すならまずこいつからだろう。人形とゾウに似たやつをすりすりしている狼は、後回しでも対処できる。 問題はどう殺すかなのだが。 と、そんなことを考えていると、人形がコチラへと近づいてくる。 あちらからの位置だと遠いから、寄ってきてくれたのだろう。ありがたい。 走り終わった人形は、その場にへなへなと座りだした。 「はあはあ……よかったあ。えっと、皆さん殺し合いに乗ってないんですね……」 「よかったな。もしそんな者にあったらおヌシの命は無かっただろうな」 「ええ、その……失礼なことを言いますけど顔を見て、もしかしたらって思っちゃって」 「気にするな。こんな身なりだし、勘違いもしてしまうだろう」 「あ、有難うございます。それにそちらの方も……」 「私が何か?」 「その、なんというか、ちょっと危ない感じがしたので……」 「おやおや」 まさか直感で当てられるとは思わなかった。 といっても本人は気付いていないし、放置しても問題はない。 「初対面なのに失礼ですよね……。でもよかったです。優しい人達で」 「確かにそうですよね。そうだ、ここで会ったのも何かの縁。よろしければ協力しませんか?」 距離をつめるために、ゆっくりとゾウに似たやつに近づいていく。 「あ、僕もお願いします!」 嬉しいことにあの人形も近づいてきた。 ちょうどいい、一網打尽に――― 「いや待て。おヌシ、名は?」 「……ゲルキゾクという者です」 「プチヒーローっていいます」 「そうか。ワシはギリメカラ。こやつはハムライガーという。時にゲルキゾク。おヌシは本当に武器を持ってはおらんのか?」 「どういう、意味でしょうか?」 「ゲル、というのだから、さぞかし便利なのだろうな。何にでも姿形を変えられて」 「……それが?」 「なに、戯言だ。気にするな」 ギリメカラと言ったか、中々鋭い。 というか、もう既に自分がどういう者なのか分かっているのではないだろうか。 いや、この口ぶりはどう考えても分かっている。 さて、どうするか。 警戒はされただろうし、このままでは殺すことも難しいだろう。 ならば、ここで殺るか? しかし実力も何も分からない相手と戦うのは、分が悪すぎる。 あちらはこちらの能力を分かっているから、尚更危険。 何もしなければ、強制的に対主催への道。 それでは主人に顔向けできない。 本当にどうしようか。そんなことを考えていたとき。 湖がぐるぐると渦巻いて、やがてそれが空へと浮かび上がった。 そしてその中からタコが飛び出した。 「ワイ、参上!」 タコが空中を舞う。 □□□ 地上は修羅場的なことになっていることとは露知らず、オルトロスは未だに登場方法を考えていた。 今のところは二つに絞れた。絞れたのだ。 凄く悩むなぁ……、これ自分の技で登場するわけやし。 どうやって登場しようか? ・ミールストームを使って派手に登場や! ・くさいいきを使ってファンサービスや! →ミールストームを使って派手に登場や! ・くさいいきを使ってファンサービスや! ピコーン やっぱりくさい息では嫌われてしまうし、警戒されてしまうやろ。 ここはミールストームを使って派手に登場したるで! そうと決まれば! ミールストームを湖上へぶっぱして! そのまま勢いよく!                 \ドッパーン/ 「ワイ、参上!」 □□□ 嬉しい誤算とは正にこのことなのだろう。 あのタコの登場の仕方は非常に派手だった。 誰もがそれを見つめるくらいには、派手であった。 だから、隙が生じた。 一気に走り出して、距離をつめる。 私が取ろうとしている行動に気付いたのか、ギリメカラがハムライガーという狼を突き飛ばす。 まあ、後々そいつも利用するから有難かったが。 さて、そろそろフィナーレの時間だ。 ガトリングの形へと変形! 零距離から銃弾を打ち込んであげましょう! 「残念だったな。ワシにはきかんよ」 しかし反射。 零距離で打った弾丸は跳ね返り、ゲルキゾクへ向かって打ち込まれる。 だが砲弾は己自身なので、砲弾はゲルキゾクと一体化していった。 「そうですか……そういうことですか……」 ガトリングではダメージを与えることができないと分かったゲルキゾクは、瞬時に別の形へと変化する。 その姿はまるでパラボラアンテナ。 ゲルキゾクの技。超パラボラビームである。 「実弾がきかないなら……実体のないもので!」 「……っ!」 ギリメカラはしまった、と顔をしかめる。 確かに彼には反射という、殺し合いにはうってつけの能力がある。 但し、反射できるのは『物理』のみ。 超パラボラビームは物理という、実体を持って攻撃する技ではない。いわば、魔法のようなもの。 従って、反射不可能。 「さようなら。ギリメカラさん」 (まさか……こんな奥の手を隠しているとは、な) ゲルキゾクとやらの正体は掴めた。同じような奴を見たからだ。 能力もどういうものかは分かった。ゲルという単語を聞いた時点で確信した。 しかし予想外の出来事が起こり、想定外の奥の手を使われてしまった。 タコが登場した瞬間、身構えてしまった。 それが仇となったのだろう。ゲルキゾクが距離を詰めてきた。 そして、咄嗟にハムライガーを突き飛ばしてしまった。 しかしそれだけなら、よかったのだろう。 あろうことか、このゲルは物理攻撃以外のもので攻撃してきた。 物理を反射できるのはワシの強みでもあるが、それ以上に大きなリスクもある。 物理以外の攻撃をくらうと、ダメージも多くくらってしまうことだ。 まさに諸刃の剣。そして、その隙を突かれてしまった。 (……口惜しいのう) あの男に顔向けできないのが口惜しい。 人間達の慌てふためく姿を、見せてやることができなかったのが口惜しい。 ハゲに抵抗することもなく、死ぬことが口惜しい。 自分の死も、人間達にとっては殺し合いの中で起こったイベントに過ぎず、盛り上げさせてしまったことが口惜しい。 こんなに後悔してしまう、自分の不甲斐なさが口惜しい。 なにより、ハムライガーを独り残してしまうことが口惜しい。 彼をここまで壊して、責任を取れないことが 更に彼を壊してしまうことが 何よりも心残りだった。 それは、きっと死んでも後悔し続ける。 抗いたくても抗えなくて、やり直すことができない、永遠の過ち。 「すまない」 最期の言葉は、懺悔。 そして光がギリメカラを包んだ。 □□□ いきなりブリーダーさんに突き飛ばされた。 訳も分からず、ブリーダーさんの方向を見ると、さっきのゲルキゾクさんがブリーダーさんの近くにいました。 その後よく分からないけど、銃のような姿に変りました。 そして気付いた。 かばってくれたのだと。 守ってくれたのだと。 でも、そんなのは余計なお世話だよ。 「ブリーダーさん!!」 伸ばしたその手は届くことはない。 それでも、彼は届くと信じて、手を伸ばす その先へ、自分が守らなければいけない対象へ。 だけどそれは杞憂だった。 「ブリーダーさん、生きてる……」 銃の攻撃をくらったのにブリーダーさんは無傷だった。 何事も無かったかのようにそこに佇んでいる。 「ブリーダーさん!」 嬉しくて、嬉しくて、ブリーダーさんに近づこうとした。 でも、まだ終わっていなかった。 ゲル状の生物はなんだかよく分からない姿に変化して、ブリーダーさんに向けて光線を放ってきた。 でも、心配することはない。 だって銃を防いだ、ブリーダーさんなんだから、こんなのはどうってことはないだろう。 でも、なんで? なんで、そんな悲しそうな顔なの? なんで光りに包まれているの? どうして? ブリーダーさんがいた所が、爆発した。 &color(red){【邪鬼ギリメカラ@真・女神転生シリーズ 死亡】} 【最悪手:ギリメカラ死亡+ハムライガー生存】 □□□ ゆっくりと煙が上がると、地面に倒れ付した巨体がそこにあった。 その瞬間を、狼は愕然とし、タコはぺちゃっと着地し、人形は呆然とし、生命体はニヤリと口角を上げ、その様を眺める。 やがて生命体が動き出し、その場に立ち尽くす狼に近寄り、止まった。 生命体の目的はこの殺し合いに優勝すること。 そして、それが楽になる『道具』もまた欲しかった。 狙いは先ほど殺した悪魔をブリーダーと呼び、依存しているあの狼。 あの時撃ち殺したふざけた女と同じ、どこかで見たことがあるような、そんな気がしていた。 だから利用してみる。 ゲルキゾクは彼を『道具』として利用する為に、まず依存対象を殺すことにした。 その後、傷心状態の狼を洗脳して、『道具』としてこき使い、そして捨てる。 だって簡単そうだから。 純真そうな狼は簡単に騙せるだろう。 「よろしければ協力しませんか?」 「……」 「こうなってしまったのも、すべては首謀者であるあのモリーが原因でしょう。  先に謝っておきます。あなたがお慕いしている方を殺して申し訳ございませんでした。  しかし、これは不可抗力というもの。憎むべきは殺し合いの場です。  私も殺し合いが始まる前に、マスターを亡くしまして……辛い気持ちは分かります。  ですから、その方の無念を晴らす為に協力していただけませんか?」 そう言って手を伸ばす。 傷心中で、あの様子の狼ならばコロッといける。 横であの人形が五月蝿く、そいつの言う事を聞いちゃダメだ、とか叫んでいるが気にすることはない。 ゆっくりと顔を上げた狼が、コチラを見る。 手を伸ばしてきた。 ゲルキゾクは勝利を確信する。プチヒーローは必死に叫び続ける。 そして、ハムライガーの手がゲルキゾクの手を掴む――― 「―――あ?」 ことはなく、そのまま手を素通りした。 その先、胸のコアへと勢いよく突き刺す。 「が……」 この時、ゲルキゾクの判断には誤りが二つあった。 確かにハムライガーとギリメカラの関係は主従関係であるが、それはハムライガーの一方的な依存から成り立っているものである。 それをギリメカラが容認しているだけにすぎないのだ。 彼等に何が起こったのか、ゲルキゾクは知らない。 故に、こうなることも予想できない。 それよりも大きな誤算が、ハムライガーを道具として使うには、壊れすぎていたということ。 幽鬼マンイーター。『あくむ』を魅せてハムライガーを誑かし、狂わせて追い込む。 邪鬼ギリメカラ。『パニックボイス』を使用し、壊してとどめを刺す。 ゲルキゾクが行おうとした行為は、マンイーターと同じ行為であった。 勿論、既に壊れているので言葉は届かない。 しかしゲルキゾクはその前に彼を、もう一段階壊していた。 ゲルキゾク。依存対象を『殺害』して死体殴り。 これにより彼の心の中はぽっかり穴が開いた。 しかし、その穴の中には何も入ることはない。その穴はブラックホール。 二度と戻ることは無い虚無へと、ご招待。 ようはゲルキゾクは何も知らなかったがために、ツメが甘かったがために、こうなった。 ゆっくりと彼は後進していく。 信じられないものを見るように、自分の胸を、ハムライガーを交互に見る。 だがハムライガーは彼のことなど見向きもせず、殺された主人の下へと歩いていた。 彼は後進し続ける。 後進の終点駅は湖。 彼はそこへ足を踏み外し落ちていく直前に、あの女のことを思い出していた。 金を貪欲に欲して、自分を道具呼ばわりして、でも自分のことで泣いてくれたあの女。 (裏切ってしまいましたね……) 生き残ることができず、勝手な行動をとって、勝手に野垂れ死ぬ。 これを契約違反と呼ばずして、何と言うのだろう。 絶対に死ぬな、一人ぼっちにするな、それらを私は破った。 (…………) もし、あの女が生きているのならば、私が死んで開放されるのだろうか。 そうであれば、私のことなどさっさと忘れてしまって、私より優れたより優秀な道具を探して欲しい。 もし、殺されているのであれば、死んでいるのならば。 再開できたならば。 契約の不履行を許してもらえるのであれば。 (また、道具として使役してほしいですね) そんな思いと共に、彼は沈んでいった。 &color(red){【ゲルキゾク@モンスターファームシリーズ 死亡】} □□□ めのまえでぶりーだーさんがしんじゃった まわりはばくはつのせいでくろこげになっていてぶりーだーさんもまっくろにそまっている うそだぼくはしんじない だってぶりーだーさんのはだはまだあったかいから けどぶりーだーさんをゆさゆさゆらしてもおきない けどぶりーだーさんにこえをかけてもおきない いまめのまえでおこっているできごとはなんだろう げんそう? もうそう? そうぞう? きょぞう? まぼろし? えいぞう? げんかく? くうそう? それともゆめ? ああきっとそうだこれは『あくむ』なんだわるい『きおく』なんだ 『あくむ』ならめをさまさなきゃいけない いらない『きおく』はけさないといけない はやくぶりーだーさんのところへかえらないといけない もどったらぶりーだーさんはほめてくれるよね てきをやっつけたんだからほめてくれるはず ぶりーだーさんにやくあいたいなあ もうかなしまないよね もううったりしないよね ぶりーだーさん! ぶりーだーさん ぶりーだーさん…… ―――ぶりーだーさん? あれ? ぶりーだーさんってだれだっけ? そもそもぼくって――― だれだっけ? ああ きっとこれはおもいだしちゃいけないんだ だからおぼえていないんだ だったら おもいださくていいじゃん おもいださないようにこわさないと ああ 『はやくぶりーだーさんにあいたいなあ』 でもだれだっけな? □□□ たった数分で二人の命が無くなった。 僕は眺めて、叫ぶことしかできなかった。 この出来事を引き起こしたのは、あの紫色のタコさんのせいなのだろうが、きっと悪気は無いのだろう。 意図してやったにしては、全く喜んでないし。 それにしても問題はあのハムライガーさん。 あれだけ懐いていたギリメカラさんを殺されてしまったのだ。ゲルキゾクを殺しても仕方あるまい。 問題はその後だ。彼の心の傷は相当深いものだろう。 もしかしたら、殺し合いに乗ってしまうかもしれないし、自殺してしまうかもしれない。 でもそれじゃ駄目だ。死んでしまったギリメカラさんに、申し訳が立たない。 生きてもらわないと。 「ハムライガーさん!」 振り向かない。 「ハムラガーさん!」 振り向かない。 「ハムライガーさん!!」 振り向かない。 「ハムライガーさん!!!」 「――――」 振り向いた。 「…………ぅあ」 彼の眼を見て、プチヒーローはぺたんと尻餅をついた。 何で……何もないんだ? どうしてこんな暗いんだ? 「ぶりーだーさん」 「ブリーダー……さん?」 「あいたい」 「へ……?」 「あいたい」 「あいたい」 「あいたい」 「あいたい」 「あいたい」 「あいたい」 「ひっ……」 プチヒーローはハムライガーから逃げるように、後ずさりしていく。 あれ、なんで。 言葉を発するべきなのに口が言う事を聞いてくれないの。 それどころか寒くないのに体がぶるぶる震えだしてるの。 彼からなんで逃げるの。 どうして、僕は恐怖を感じているの。 「こ、こないで……っ! お願いだから!」 でも近づいてくる。 こわいこわいこわいこわい。 こないで。 ちかづかないで。 そして、距離は数センチ。 「じゃま」 「はひ……!」 どいた。 なぜだか命が救われた気がした。 ハムライガーは僕には目もくれず、そのまま森の中を歩いていき、姿が見えなくなった。 いつの間にか、湖は僕とギリメカラさんの死体だけしか、残っていませんでした。 「あ……」 なにしてるんだろう僕。 なんで怖がってたんだよ。 なんで、あの目を見たくらいで何を怖気づいているんだ。 ヒーローは怖がっちゃいけない。 辛くても、苦しくても、怖がっちゃいけないし、泣いちゃだめだ。。 誰かに勇気を与える為に、希望を持ってもらうために、象徴とならなきゃいけないんだ。 だから、救わなきゃいけない。 目の前で大好きな人が死んだ苦しみは僕にも分かる。 たった短い間でも、それは僕にとって大切な思い出。 ハムライガーさんにとって、ギリメカラさんは大好きな人だったんだろう。 その気持ちは、分かる。 でも、乗り越えなくちゃいけない。 乗り越えて、生き残って、そうして初めてギリメカラさんは報われる。 だから止めなきゃいけない。 あの狼さんが取る行動を。 あの目は暗くて、何も見えない闇だった。 一歩間違えば、取り返しがつかない行動をしてしまうかもしれない。 悲しみは僕が一緒に背負ってあげるから。 苦しみは僕が一緒に背負ってあげるから。 そうなる前に進もう。 これ以上、犠牲者を出しちゃいけないんだ。 だから僕は一歩を踏み出す。 手を差し伸べるために。 【F-6/湖/一日目/夕方】 【プチヒーロー@ドラゴンクエスト】 [状態]:魔力消費(小) [装備]:水鏡の盾@ドラゴンクエスト、ヒノカグツチ@真・女神転生Ⅰ [所持]:ふくろ(中身無し) [思考・状況] 基本:勇気を与える者になる 1:ハムライガーさんを救う 【備考】 オス。泣き虫でこわがり。プチット族に期待されていたプチット族の勇者。一人称は「僕」 死後、心をジュペッタの死体に宿らせることで復活しました。 ※ギリメカラが所持していた物は死体の傍に放置されています。 □□□ (アカンアカンアカン……ワイが? あの惨劇を引き起こした? 嘘やろ?) 現実を受け入れられず、その場から逃げ出したオルトロス。 なにせ、派手に登場しドヤ顔をした後、地面に目を向ければ爆発、さらに死体が出来上がるのを見てしまったのだ。 どこからどう考えても自分が登場したせいで、事件は起こってしまったようにしか見えなかった。 これは逃げるしかない。誰だってそうする、オルトロスだってそうした。 (いや違う。ワイが登場した時にはもう始まってたんや。ワイは関係あらへん!) しかしタコは現実から目を背ける。 目の前で起きた、数分の出来事から目を背ける。 (やっぱり……タコらしくすべきやったな) 【G-6/森/一日目/夕方】 【オルトロス@ファイナルファンタジー】 [状態]:健康、後悔 [装備]:なし [所持]:なし [思考・状況] 基本:戦いをできるだけ避ける 1:湖から早く立ち去る □□□ 何も残っていない空っぽの人形はひたすら歩く。 ゆっくりと、ゆっくりとその歩みはただひたすらに遅い。 記憶と精神、破壊されつくした彼の眼は、深淵の如き深さになっていた。 但し、覗いてもあちら側がこちら側を見ることは無い。その先は虚無そのものだからだ。 残った一欠けらの思いは、『はやくぶりーだーさんにあいたい』という、もう叶うことがないそれこそ幻想。 言葉は届かない、行動には興味を示さない、何も考えない。 目的の為ならば邪魔をするものは容赦なく殺す。 プログラミングされた一つの目的を果たす為に、延々と繰り返す。 行進を、殺害を、生産を、発言を、止めない。 ただそれだけ。 【F-7/森/一日目/夕方】 【ライガー(ハムライガー)@モンスターファームシリーズ】 [状態]:刺傷、狂気(永)、PANIC、精神崩壊、記憶崩壊 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身無し) [思考・状況] 基本:はやくぶりーだーさんにあいたい  1:あるく [備考] オス。ブリーダーに育てられている。種族はハムライガー(ライガー×ハム)。一人称は「ボク」 マンイーターのあくむによって、精神を追い込まれ、ギリメカラのパニックボイスでとどめを刺されました。 ダメ押しにゲルキゾクが死体殴りをしました。 本来のPANICは一時的な症状ですが、マンイーターの悪夢による狂気を加速させる方向で使われたため、実質永続しています。 ギリメカラによる幻覚も合わせて、ギリメカラをブリーダーと認識して、殺し合いの先の未来の夢に囚われています。 ギリメカラ(ブリーダーさん)が死亡した現実を受け入れられないが故に、記憶も崩壊しました。 『ぶりーだーさんにはやくあいたい』という目的を果たす為に、歩き続けています。 |No.68:[[君の思い出に]]|[[投下順]]|No.70:[[僕たちは世界を変えることができない。]]| |No.62:[[勝者なき戦い]]|ライガー|No.71:[[その心まで何マイル?]]| |No.53:[[ようやく戦ったね(ニッコリ]]|オルトロス|No76:[[ハイパーディシディアファイナルファンタジーサードストライククロノファンタズマイグゼグスシャープリローデットアルティメットマッチファイナルエディションラブマックス!!!!!!>ハイパーディシディア]]| |No.61:[[ありがとう]]|プチヒーロー|No.71:[[その心まで何マイル?]]| |No.62:[[勝者なき戦い]]|邪鬼ギリメカラ|&color(red){死亡}| |No.55:[[テレビのスイッチを切るように]]|ゲルキゾク|&color(red){死亡}|

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