命の価値は?

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◇ 「大丈夫……きっと大丈夫……」 自分に言い聞かせるために、ピクシーは独りで何度も呟いた。 きっと、メタモンは生きている。そう信じなければならなかった。 そうしなければ、罪悪感に心を蝕まれる。 メタモンは自らの意思でアリスを引きつけてピクシー達を逃してくれた。 『だからこそ辛い』 太陽が爛々と輝いて、汗が流れそうなほどに熱い。 それにも関わらず寒い、震えが止まらない。 怖くて……しょうがない。 ──アタシはこんなに弱かったの? 自問自答を繰り返すまでもなく、答えは決まっていた。 しかし、その答えをはっきりと理解してしまうのは嫌だった。 泣きついて、この質問をして、誰かに否定してもらえたらどんなに楽だろう。 だが、他人の答えですらピクシーの震えを止めることは出来ない。 「メタモンは大丈夫、だって……」 強いから──そう、ピクシーは言葉を続けたかった。 アタシと違って強いから大丈夫。そう言いたかった。 ──言えるわけ無いじゃない! メタモンが戦いの素人であることなど、数多の戦いを勝ち抜いてきたピクシーでなくてもわかる。 そんなメタモンがあの少女を引き付けるなど、どれほど恐ろしいことだろう。 それでも、メタモンはピクシー達を逃してくれたのだ。 「…………」 自己嫌悪、不安、焦燥、消沈、後悔、悲壮──様々な感情がピクシーの心の中で渦巻いていた。 それでも、ピクシーは言えなかった。 言いたかった言葉が出ないなんて初めての経験だった。 この殺し合いに来てから、どれほど自分は弱くなってしまったのだろう。 「……いいな」 一欠片でも、メタモンの勇気があればとピクシーは思う。 少しでも、強くなれたらとピクシーは思う。 ──それでも、私はきっとこの言葉を言えないだろう。 ──メタモンのところに戻ろう、と。 「死にたくないよ、アタシ…………」 ◆ 深い森の中、傷を負ったグレイシアが休息を取り。 ソーナンスが看病を、ピクシーが見張りを兼ねて付近をうろつくという体制を取っていた。 もちろん、全員が揃っていた方がいいということはわかっている。 しかし、見張りを買って出たピクシーの「少しだけ、一人にして欲しい」という言葉が、ピクシーの単独行動を許した。 単独行動といっても、ソーナンスがすぐに駆けつけることの出来る距離であるし、 瞳を潤せたピクシーに対して、何も言うことが出来なかったというのもある。 「……死んでほしくないな」 「ソーナンス」 誰が死んでほしくないとも、誰にも死んでほしくないともグレイシアは言わない。 全てに手が届くとも思ってはいないし、手を汚さずにいられるとも思ってはいない。 だからその言葉は誓いでも願いでもなく、祈りである。 「伝言……伝わるでしょうか」 「ソーナンス!」 「うん、きっと……きっと伝わりますよね」 「ソーナンス」 伝わると思わなければ、休んではいられない。 本当ならば、今すぐにでもグレイシアは駆け出したかった。 縋るべき希望があるから、今はまだ休んでいられる。 もしもあの狼がいなければ、自分はどうしただろうか。 安全地帯まで二匹を送り、メタモンを探しに行ったのだろうか。 来なかったIFの世界をグレイシアは考える。 果たして、感情を取っただろうか理性を取っただろうか。 もしも次に仲間と別れることがあれば、 もしもその時に狼がいなければ、 私はどうするのだろう。 青い腕がぽんとグレイシアの肩に乗った。 「…………」 ソーナンスは何も言わず、ただグレイシアを見つめていた。 「ありがとう」 やはり祈ることしか出来ない、仲間たちと共に最善の選択を取れるように。 未来は不確かだけど、多分大丈夫だろう。 ソーナンスの顔を見ていると、その様な希望が湧いてくるようであった。 ○ 目覚めて早々、キングスライムは激死に棺桶丸状態だった。 普通のスライムならば255回は死んでいるであろう重症を負っているにも関わらず、 棺桶に足を突っ込む一歩手前程度で済んでいるのは、やはりキングとしての能力とタブンネを倒した時の経験値の力だろう。 「誰がてめーなんか。てめーなんか恐かねぇ!! 野郎、ぶっ殺してやらぁ!!」 激死に棺桶丸であると同時に、キングスライムはげきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだった。 腸が煮えくり返るという表現では駄目なのだろうか、現代日本語は謎が多い。 「プンスコ!」 ギルガメッシュに開幕で99/100殺しにされ、回復したと思えばケルベロスに6/7殺しにされ、その後川に流され、 キングスライムの王としてのプライドはズタボロだった。 それほどボコボコにされようものなら、敵に対する恐怖でも覚えそうなものだが、怒りで動いているところは流石に王を名乗るだけのことはある。 勇者王と言っても過言ではないだろう、やはり過言だろう。 そんなキングスライムはどんぶらこどんぶらこと流されながらも 必死こいて無様なデブなりに頑張って、川から這い上がり、森に成っているオレンのみを貪って頑張って生きていた。 口いっぱいにオレンのみを頬張りながら、げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだった。 その上、腸は煮えくり返っていた。後、怒髪天を衝いていた。とにかくキングスライムは怒っていたのだ。 この文章で伝えたいことは、とにかくキングスライムが怒っていたということである。 「あー、何だよ。くそ。おもしろくないな。つまらねえ。サンドバッグがほしい」 怒りという感情は特に発散行為を要する、キングスライムは誰でもいいから殴りたかった。 とにかくむしゃくしゃしていた。 「ん?」 そんなキングスライムがピクシーを発見したのは、ある種必然だったのだろう。 「アンタ……」 ピクシーの目は憔悴しきっていた、だからといって王は哀れんだりはしない。 「お前、ちょっとボコらせろ!」 王の世界にいるのは、王と奉仕者のみ。 ならば、目の前の奉仕者が何を思うとも王は躊躇なく踏みにじる。 だが、ジハードによる能力値低下が解除された戦闘経験豊富なピクシーと、死にかけのレベルアップしたキングスライム、 どちらが勝つかと言われれば33:4でピクシーが勝利するだろう。 そして前評判を覆すことも戦闘描写も無くキングスライムは敗けた。 「ピギー……」 戦闘音を聞いて、ソーナンスとグレイシアがピクシーの元に駆けつける。 「大丈夫ですか!?」 「ソーナンス!!(便乗)」 「アタシは大丈夫……でも」 アリスとの戦いでも、ケルベロスとの戦いでも、それには至らなかった。 だから、考えなくて済むと思った。 「こいつ、どうすればいいの……?」 敵の命をこの手に握る感触というものは、こうも気持ちが悪かったのか。 【D-7/森/一日目/日中】 【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身は不明) [思考・状況] 基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す  1:アリスから離れる  2:メタモン… 【ピクシー@モンスターファーム】 [状態]:疲労(中)、能力低下、精神的疲労 [装備]:なし [所持]:ふくろ(不明支給品1) [思考・状況] 基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。  1:目の前の敵に対処する  2:皆と一緒に行動する  3:メタモンが気がかり 【ソーナンス@ポケットモンスター】 [状態]:能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(不明支給品1) [思考・状況] 基本:ソーナンス!  1:ピクシーのそばにいてあげたい。   2:ソーナンス… 【キングスライム@ドラゴンクエスト】 [状態]:肉体損傷(大)魔力消費(中)、気絶中 [装備]:なし [所持]:ふくろ(拡声器@現実) [思考・状況] 基本:主催者を粛正する  1:モリーをたおすために下僕を集める  2:王様であるボクに無礼は許さない |No.43:[[絡繰考察]]|[[時系列順]]|No.47:[[迷い生きる獣達]]| |No.45:[[そんなことよりきのみが食べたい]]|[[投下順]]|No.47:[[えー?何?聞こえない?]]| |No.28:[[歪みの国のアリス]]|グレイシア|No.52:[[そんなものはない]]| |No.28:[[歪みの国のアリス]]|ピクシー|No.52:[[そんなものはない]]| |No.28:[[歪みの国のアリス]]|ソーナンス|No.52:[[そんなものはない]]| |No.13:[[I Wanna Be Your Dog]]|キングスライム|No.52:[[そんなものはない]]|
◇ 「大丈夫……きっと大丈夫……」 自分に言い聞かせるために、ピクシーは独りで何度も呟いた。 きっと、メタモンは生きている。そう信じなければならなかった。 そうしなければ、罪悪感に心を蝕まれる。 メタモンは自らの意思でアリスを引きつけてピクシー達を逃してくれた。 『だからこそ辛い』 太陽が爛々と輝いて、汗が流れそうなほどに熱い。 それにも関わらず寒い、震えが止まらない。 怖くて……しょうがない。 ──アタシはこんなに弱かったの? 自問自答を繰り返すまでもなく、答えは決まっていた。 しかし、その答えをはっきりと理解してしまうのは嫌だった。 泣きついて、この質問をして、誰かに否定してもらえたらどんなに楽だろう。 だが、他人の答えですらピクシーの震えを止めることは出来ない。 「メタモンは大丈夫、だって……」 強いから──そう、ピクシーは言葉を続けたかった。 アタシと違って強いから大丈夫。そう言いたかった。 ──言えるわけ無いじゃない! メタモンが戦いの素人であることなど、数多の戦いを勝ち抜いてきたピクシーでなくてもわかる。 そんなメタモンがあの少女を引き付けるなど、どれほど恐ろしいことだろう。 それでも、メタモンはピクシー達を逃してくれたのだ。 「…………」 自己嫌悪、不安、焦燥、消沈、後悔、悲壮──様々な感情がピクシーの心の中で渦巻いていた。 それでも、ピクシーは言えなかった。 言いたかった言葉が出ないなんて初めての経験だった。 この殺し合いに来てから、どれほど自分は弱くなってしまったのだろう。 「……いいな」 一欠片でも、メタモンの勇気があればとピクシーは思う。 少しでも、強くなれたらとピクシーは思う。 ──それでも、私はきっとこの言葉を言えないだろう。 ──メタモンのところに戻ろう、と。 「死にたくないよ、アタシ…………」 ◆ 深い森の中、傷を負ったグレイシアが休息を取り。 ソーナンスが看病を、ピクシーが見張りを兼ねて付近をうろつくという体制を取っていた。 もちろん、全員が揃っていた方がいいということはわかっている。 しかし、見張りを買って出たピクシーの「少しだけ、一人にして欲しい」という言葉が、ピクシーの単独行動を許した。 単独行動といっても、ソーナンスがすぐに駆けつけることの出来る距離であるし、 瞳を潤せたピクシーに対して、何も言うことが出来なかったというのもある。 「……死んでほしくないな」 「ソーナンス」 誰が死んでほしくないとも、誰にも死んでほしくないともグレイシアは言わない。 全てに手が届くとも思ってはいないし、手を汚さずにいられるとも思ってはいない。 だからその言葉は誓いでも願いでもなく、祈りである。 「伝言……伝わるでしょうか」 「ソーナンス!」 「うん、きっと……きっと伝わりますよね」 「ソーナンス」 伝わると思わなければ、休んではいられない。 本当ならば、今すぐにでもグレイシアは駆け出したかった。 縋るべき希望があるから、今はまだ休んでいられる。 もしもあの狼がいなければ、自分はどうしただろうか。 安全地帯まで二匹を送り、メタモンを探しに行ったのだろうか。 来なかったIFの世界をグレイシアは考える。 果たして、感情を取っただろうか理性を取っただろうか。 もしも次に仲間と別れることがあれば、 もしもその時に狼がいなければ、 私はどうするのだろう。 青い腕がぽんとグレイシアの肩に乗った。 「…………」 ソーナンスは何も言わず、ただグレイシアを見つめていた。 「ありがとう」 やはり祈ることしか出来ない、仲間たちと共に最善の選択を取れるように。 未来は不確かだけど、多分大丈夫だろう。 ソーナンスの顔を見ていると、その様な希望が湧いてくるようであった。 ○ 目覚めて早々、キングスライムは激死に棺桶丸状態だった。 普通のスライムならば255回は死んでいるであろう重症を負っているにも関わらず、 棺桶に足を突っ込む一歩手前程度で済んでいるのは、やはりキングとしての能力とタブンネを倒した時の経験値の力だろう。 「誰がてめーなんか。てめーなんか恐かねぇ!! 野郎、ぶっ殺してやらぁ!!」 激死に棺桶丸であると同時に、キングスライムはげきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだった。 腸が煮えくり返るという表現では駄目なのだろうか、現代日本語は謎が多い。 「プンスコ!」 ギルガメッシュに開幕で99/100殺しにされ、回復したと思えばケルベロスに6/7殺しにされ、その後川に流され、 キングスライムの王としてのプライドはズタボロだった。 それほどボコボコにされようものなら、敵に対する恐怖でも覚えそうなものだが、怒りで動いているところは流石に王を名乗るだけのことはある。 勇者王と言っても過言ではないだろう、やはり過言だろう。 そんなキングスライムはどんぶらこどんぶらこと流されながらも 必死こいて無様なデブなりに頑張って、川から這い上がり、森に成っているオレンのみを貪って頑張って生きていた。 口いっぱいにオレンのみを頬張りながら、げきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームだった。 その上、腸は煮えくり返っていた。後、怒髪天を衝いていた。とにかくキングスライムは怒っていたのだ。 この文章で伝えたいことは、とにかくキングスライムが怒っていたということである。 「あー、何だよ。くそ。おもしろくないな。つまらねえ。サンドバッグがほしい」 怒りという感情は特に発散行為を要する、キングスライムは誰でもいいから殴りたかった。 とにかくむしゃくしゃしていた。 「ん?」 そんなキングスライムがピクシーを発見したのは、ある種必然だったのだろう。 「アンタ……」 ピクシーの目は憔悴しきっていた、だからといって王は哀れんだりはしない。 「お前、ちょっとボコらせろ!」 王の世界にいるのは、王と奉仕者のみ。 ならば、目の前の奉仕者が何を思うとも王は躊躇なく踏みにじる。 だが、ジハードによる能力値低下が解除された戦闘経験豊富なピクシーと、死にかけのレベルアップしたキングスライム、 どちらが勝つかと言われれば33:4でピクシーが勝利するだろう。 そして前評判を覆すことも戦闘描写も無くキングスライムは敗けた。 「ピギー……」 戦闘音を聞いて、ソーナンスとグレイシアがピクシーの元に駆けつける。 「大丈夫ですか!?」 「ソーナンス!!(便乗)」 「アタシは大丈夫……でも」 アリスとの戦いでも、ケルベロスとの戦いでも、それには至らなかった。 だから、考えなくて済むと思った。 「こいつ、どうすればいいの……?」 敵の命をこの手に握る感触というものは、こうも気持ちが悪かったのか。 【D-7/森/一日目/日中】 【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身は不明) [思考・状況] 基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す  1:アリスから離れる  2:メタモン… 【ピクシー@モンスターファーム】 [状態]:疲労(中)、能力低下、精神的疲労 [装備]:なし [所持]:ふくろ(不明支給品1) [思考・状況] 基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。  1:目の前の敵に対処する  2:皆と一緒に行動する  3:メタモンが気がかり 【ソーナンス@ポケットモンスター】 [状態]:能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(不明支給品1) [思考・状況] 基本:ソーナンス!  1:ピクシーのそばにいてあげたい。   2:ソーナンス… 【キングスライム@ドラゴンクエスト】 [状態]:肉体損傷(大)魔力消費(中)、気絶中 [装備]:なし [所持]:ふくろ(拡声器@現実) [思考・状況] 基本:主催者を粛正する  1:モリーをたおすために下僕を集める  2:王様であるボクに無礼は許さない |No.43:[[絡繰考察]]|[[時系列順]]|No.30:[[迷い生きる獣達]]| |No.45:[[そんなことよりきのみが食べたい]]|[[投下順]]|No.47:[[えー?何?聞こえない?]]| |No.28:[[歪みの国のアリス]]|グレイシア|No.52:[[そんなものはない]]| |No.28:[[歪みの国のアリス]]|ピクシー|No.52:[[そんなものはない]]| |No.28:[[歪みの国のアリス]]|ソーナンス|No.52:[[そんなものはない]]| |No.13:[[I Wanna Be Your Dog]]|キングスライム|No.52:[[そんなものはない]]|

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