進撃の巨竜

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進撃の巨竜」(2017/08/31 (木) 20:43:49) の最新版変更点

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クーフーリンは駆ける。青空の元、眩い光が照らす荒地を。 見渡す限りに広がるのは大地の鈍い色、その先に見える大海原の青。 差し当たって目指す場所は小さな集落。人工的に作られた建造物、何かがあるだろう。 彼は足を休めることなく、風の如く走り続ける。彼の究極の目的、それは"救うため"だ。 モリーによって狂わされた"己の"世界を、その魔の手から救うために……。 そうしてたどり着いた廃村を散策する。 何かしら役に立つ備品などがあれば集めておきたい。 彼が求める道具は決して武器ではない。武器ならば既に間に合っている。 ……その手に握られるのは世界で最も硬いと言われる金属で作られた槍。 『メタルキングの槍』。 この武器の前には、どんな相手であれども一切の不足など存在し無い。 そしてまた、クーフーリン自身にも戦いに対する迷いは無かった。 当然、目の前にそびえ立つ、斧を構えた巨竜が相手であろうとも……。 周囲に建てられた家々の屋根よりも高い巨体を揺らす、二足歩行の竜と鉢合わせた。 ―――その瞳に宿るのは王の風格。 捕食を基本とする魔物、その魔物たちを捕食出来る立場に立つ魔物、まさに頂点。 他者に対する恐れなど無縁、むしろそんな感情など備わっていないかの如し。 その力強さと冷静さ、殺意、それらが入り混じる圧倒的な威圧が押し寄せる。 瞳に捉えられ、それを見据えた瞬間から、彼らの戦いは始まっていた。 クーフーリンは魔力を解放し、呪文を詠唱する。 「―――タル・カジャ……!」 溢れ出る魔力を筋力、運動神経へと注ぎ込む肉体強化呪文"タルカジャ"。 自らが持つ物理的戦闘力を補強、その火力を200%にまで引き上げる。 全力を出し切らねばならぬ。油断など決して許される相手では無いと、直感で感じた。 例え武器が壊れようとも、可能な限り激烈な一撃を叩き込まねば、壊されるのは自分。 無論、今クーフーリンの手に収められし武器は生半可なものではない。 己の出せる最高の力、その倍のパワーで振るわれようと、着いてこれるだろうと確信出来た。 ―――故に彼は、翔ぶ。 身の丈ほどの槍は、もはや爪楊枝の如く軽い。 風をも切り裂き、その切っ先を巨竜へと向ける。 「その心臓、貰い受ける――――!」 "生"を司る部位、その一点を定める。その一撃で、命を狩り取る。 まるで鎧のように硬い龍の鱗をも突き破るような、洗練された攻撃……。 それを巨竜は斧を持って防ぐ。 ガギィ……ッ……と耳を貫くような鋭い金属音。 飛び散る火花が、その衝撃の高さを物語る。 武器の力、そしてクーフーリンの力が相乗し、一点に集中されたそれを巨竜は受け止めた。 やはりただならぬ竜では無い。クーフーリンはそれを思い知らされる。 ……ここで一時的に後方へ引くべきか否か……。 巨竜の攻撃範囲から抜け出すことで出方を伺う……それが通常の選択であろう。 だが、今まさに相手の懐へと飛び込める絶好の機会である。 多少無茶な動作を行なってでも攻撃を浴びせれば、確実に有利に持ち込めるだろう。 ならば、とクーフーリンは肉体の重心を槍先に集中し、強行突破を図る……!! 巨竜の対応は決まりきっている。そのまま押し返すのでは無い。 斧を傾けることで切っ先を受け流し、がら空きになったサイドを狙ってくるだろう。 そして、その予測は正しく現実のものとなる。 切っ先は滑らされ、クーフーリンは巨竜の左側へ。 巨竜は口を大きく開き、その小柄な体に向けて灼熱の火炎を放とうと試み……。 それよりも早くクーフーリンは左腕を差し出す。 ……否、その掌を巨竜の顔へと突きつける。 魔法詠唱。その速度は炎を吹き出すよりも早い……ッ! 「―――ザンダインッ!!」 無数の衝撃波が巨竜を襲う。 太刀の如く鋭利な風が、鎧に匹敵するほどの硬度を持つ竜の鱗を切り裂いていく。 巨竜は天へ向けて火炎を吐きながら大きく仰け反り、そのまま数メートル吹っ飛ばされる。 それと同時にクーフーリンも大地に着陸、巨竜の姿を見定める。 木造民家に激突し、木っ端微塵に破壊され、砂埃が舞っている。 あいにく巨竜は、その砂埃の中をゆっくりと立ち上がっていた。 「……やはり生半可な攻撃ではビクともしないか……」 あまり応えた様子を見せない竜の姿を見てクーフーリンは呟く。 ザンダインは、衝撃波を生み出す呪文の中でも非常に高いクラスに属する魔法である。 しかし、この竜を前にしては、圧倒的に威力が足りなかった。 優位に立つためには確実にその槍で貫かねばならぬ、そう確信する。 ―――跳躍。 大地を蹴り、巨竜へと一気に距離を詰める。 既に立ち上がった巨竜はその目でクーフーリンの動きを見極め、斧を構える。 おそらく、いや、確実に先ほどと同じ手は通じないだろう。 巨竜の攻撃範囲に突入する寸前、クーフーリンはそばに植えられていた樹木の枝を掴んだ。 そのまま一回転し、上ではなく下へと慣性を向ける。 地についたと同時に、その地を蹴りつける! 槍の切っ先を、巨竜の下方から、突きつけるッ―――! ギィンッ!! またしても武器同士のぶつかり合う音。 このフェイントを織り交ぜた突撃からの攻撃も、巨竜は易々と見切っていた。 だが、ここで攻撃を止めるわけにはいかない……! 大きく腕を振るい、次々に斬撃を繰り出す。 飛び交う火花。響く不協和音。衝突する力と力。高まる緊張。 天秤にかけられた命と命。刃が欠けるより早く、肉体が疲弊していく。 強化された力をもってしても、その腕に痺れが走り出す。 巨竜の一撃一撃はどこまでも重く、迷いも容赦も一切存在しない。 捕食者は、目の前の獲物に対して、持ちうる力を全て出し切る。 己の肉体のリミッターなど外れている。いや、外せなければ獣に明日など存在しないのだ。 そういう者に打ち勝つには、己もそのリミッターを解かねばならない。 振り下ろされた斧を受け流し、クーフーリンは意識を集中する。 「―――デスバウンド……ッ!!」 己の限界を超える。 肉体の損傷すら省みず、その躍動を最大のものへと昇華する。 ―――"死との境界線(デスバウンド)"を辿る技――― 死を目前とした時、脳は最大限に加速する。 その現象を利用することで、体内時間のアクセルを踏み込むことが可能となる。 故に、世界は極限まで遅くなる。雨の中にいれば、その雨粒が空中静止しているかのように見えるだろう。 ただしその反動に、己の身体と脳に、相当な負荷をかけてしまう。 一瞬のうちに勝負を決めなければ、その後の戦況は容易にひっくり返ることとなる。 「師匠は言っていた――――」 大きく足を踏み込み、メタルキングの槍を神速で振るう。 鋭利な刃先は音を立てずに巨竜の足を地面と横一文字に通り抜ける。 血は噴き出さない。時の流れが戻る瞬間までは、ただ斬られたという"結果"だけが存在する。 「肉を切らせて骨を断つ……」 続けざまに槍を振り上げ、その巨大な尻尾を断ち切る。 ピアノ線が豆腐に食い込むように、切っ先が沈み込む。 これもまた、即座に千切れたりはしない。それよりも早い時空の中に自分はいる。 「小さな犠牲をもってして、大きな勝利がもたらされるのだと!!」 最後に狙うのはその首筋。 頚動脈を一突き、これで勝負が決まる。 槍を引き、それを巨竜の急所を目掛けて思い切り突き刺すッ……!! ―――ギィィンッ……!! 「……まさか……っ!?」 防がれた。その巨大な斧によって。 予期せぬ自体に一瞬だけ対応が遅れる。 巨竜は振り向き様に槍を打ち払い、さらに追撃に斧を振り下ろした。 クーフーリンは咄嗟に後方へと回避行動を取る。 だが遅い……!! 間一髪間に合わず、左手がその斧により分断される。 さらに巨大な斧が地面に叩きつけられ、その破片が降り注ぐ。 血飛沫が巨竜の足から、尻尾から、クーフーリンの左手から同時に噴き出した。 左手を失うことでバランスが崩れ、着地に失敗―――。 ―――大きく崩れた体勢で大地に叩きつけられる。 (何故だ……何故この竜がこの速度に着いて来れる……!?) 巨竜がデスバウンドの速度に対応出来るのは、想定していなかった。 あの体躯で、そんな器用な動作を行なえるだなんて、誰が予想出来るだろうか。 バトルレックスが得意とする剣技『はやぶさ斬り』。 一振りで2つの斬撃を同時に行なう、言わば非現実的な速度を実現した秘術である。 デスバインド発動直後こそ、命令信号が脳に届いていなかった。 故にはやぶさ斬りの発動に遅れを取ってしまったものの、一度意識を集中すればその神速にも手が届く。 そして何より、そのタイミングが巨竜に味方した。 クーフーリンが勝利を確信した、その瞬間。本当に、ほんの僅かな油断が現れた瞬間。 偶然にもその"刹那"の間に発動、そして反撃を行なったのである。 クーフーリンの集中力は途切れ、高速で迫る斧をかわす事を許さなかった。 たった1秒にも満たないような時間の中、クーフーリンは優位に立ち、そして不利に陥った。 (―――体が、動かない……!) デスバインドの反動がここで牙をむく。 体力の大半が削り落とされ、即座に立ち上がる事を困難とした。 その間にも距離を詰めてくる巨竜。 「ザンダインッ!!」 右手を突き出し呪文詠唱。 ……だが、もはやそれも悪あがきに過ぎない。 巨竜が斧をひと振りするだけで衝撃波は呆気なく打ち砕かれた。 (―――ッ! ……もはやこれまでか……) 打つ手は無くなった。 おそらく悠長に立ち上がるだけの時間など与えられない。 魔法も隙のないこの状態で撃って、何が出来る? 戦いはここで終わり、己の世界も終焉を迎える。 クーフーリンはゆっくりと目を瞑る。 と、その時、その耳が異様な音を聞き取る。 まるでバケツに入った水をひっくり返したような、バシャッという音。 目を開くとそこには、巨竜の背後から消化液を浴びせる、先ほどのワームの姿があった。 「獲物を~屠るッ、イェェェg……!!」 気分の高ぶるような歌を口ずさむワーム、その歌は即座に途切れた。 巨竜が振り向き様に放った灼熱の炎、それがワームを飲み込んだ。 ……実に愚かな介入……その有様を見て、クーフーリンは嘆かざるを得なかった。 どうして、そのような貧弱な力で我らの戦いに入ろうと思ったのか。 それに、あの消化液も巨竜に対し、何らダメージを与えているように見えなかった。 最後に見るものが、無駄死にする生き物だとは……、あぁ、実に嘆かわしい。 巨竜は再度クーフーリンに向き直る。 改めて斧を構え、トドメを刺しにかかる。 そして獲物を狩り取ろうと駆け出す。 ―――瞬間。 苦痛に呻くような咆哮を上げながら、すぐそばに転倒した。 先ほどのワームによる消化液が足の傷口を溶かし始めたのだ。 いいや、傷口だけでは無い、鱗すらも少しづつだが蝕んでいる。 (どうやら運命は私に味方したようだ。この勝利、掴ませてもらう……!) すかさずクーフーリンはメタルキングの槍を倒れ込んだ巨竜の首へと突き刺した。 巨竜の口から大量の血液が溢れ出し、しばらく体を震わせ、そして絶命する。  ……死ぬ間際にバトルレックスは小さな疑問を抱いた。  どうして自分は敗北したのか、と。  一切に油断も無く、戦闘における不足も無く、誤った判断も行わなかった。  なのに何故? 何が勝負を決めたのだろうか。  ―――ほんの一瞬だけ考えて、彼はその答えを知った。  きっとこの世界に来ること無く、獣として、怪物として生を終えていたら最後まで知ることがなかった答え。  そしてそれを理解した直後に、彼の意識は漆黒の世界へと沈んでいった。  ……彼が最後に得た解答が何かは、我々にはわからない。 そうして、戦いの幕が閉じた。 地面に左腕を置き、切断面に左手をくっつけた状態で、先ほど手に入れた支給品アモールの水を振りかける。 神経が不完全なために感覚は戻らないが、接合することだけに成功する。 応急処置を施したところで、自分の助太刀をしてくれた魔物のそばへと向かう。 「……感謝する、先ほどのワームよ」 彼の死は決して無駄なものではなかった。 彼が介入したからこそ、今自分は大地に立ち、呼吸を続けることが出来るんだ。 あの勝利は私の力ではない、私に巡ってきた運が良かったのだ。 たまたま自分が勝つ世界が存在し、たまたまそれにたどり着いた。ただそれだけ。 犠牲となったワームがその世界へ導いてくれたのだ。 私は彼のことを決して忘れないだろう。 「いや、生きてるよ」 「何……ッ?」 ファイガ(で一発)のボナコンが起き上がった。 「なんていうか、オッカの実とかいう道具持ってたせいか、生きながらえた」 「そうか」 「見物者のボナコン株を上げようと、颯爽と助太刀しようとしたらこの有様よ。  華々しく散るのも美徳だが、まだ俺には見せ場が残されているのかもしれない」 「そうか」 「あんちゃん、名前何て言うの?」 「私は妖精クーフーリン」 「そうか、俺はボナコン」 「……」 「元々俺、誰かと組んで登場するのがデフォなわけよー。  アダマンキャリー君とか、粘液戦隊ボナコンジャーとかでさ。  つーわけでさ、良ければついて行ってもいい?  スタンスはあんちゃんに合わせるからさー」 ボナコンは流れるような自己紹介から、手を組まないかと提案を持ちかけた。 なお、「あんちゃん」の発音は福山○治を意識している。 「いいだろう、ただし……」 「ただし?」 ボナコンに対し、クーフーリンは不敵な笑みを浮かべ、こう答えた。 「私の速さに、ついて来れるなら……」 そう言って彼はマントをなびかせ、背を向けてゆっくりと歩き出す。 ボナコンは「何だコイツ、中二病か?」と思った。 &color(red){【バトルレックス@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】} 【F-2/廃村/一日目/午後】 【妖精クーフーリン@真・女神転生シリーズ】 [状態]:ダメージ(中)左腕負傷(接合済み) [装備]:メタルキングの槍@DQ8 [所持]:ふくろ、アモールの水(残り小) [思考・状況] 基本:全の路を往き、万を司る 1:魔の手(モリー)から世界(自分の生活)を救う 2:廃村を探索 [備考] ※男。現在のところ、タルカジャ、ザンダイン、デスバインドを習得している模様。 ※師匠とは女神スカアハのことです(原典神話通り) 【ボナコン@ファイナルファンタジーシリーズ】 [状態]:ダメージ(大) [装備]:なし [所持]:ふくろ [思考・状況] 基本:目立つ 1:クーフーリンにお供する [備考] ※オス ※支給品オッカの実を消費しました ※最新のボナコンスレは↓ ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1301835035/ 《支給品紹介》 【アモールの水@ドラゴンクエストシリーズ】 伝説の滝アモールの名を冠した水。非常に高い治癒効果がある。 【オッカの実】 効果抜群のほのおタイプのわざを受けたとき、一度だけダメージを1/2にする。 だからってボナコンが火炎の息を耐えられるのか、疑問に思われるかもしれない。 こう考えて欲しい。あくまで即死するのはファイラであり、火炎の息ならギリギリ助かる可能性があるのだと。 |No.33:[[タチムカウ-狂い咲く己の証明-]]|[[投下順]]|No.35:[[偶像崩壊]]| |No.09:[[@]]|妖精クーフーリン|No.41:[[NEXT LEVEL]]| |No.09:[[@]]|ボナコン|No.41:[[NEXT LEVEL]]| |No.08:[[怪物騙]]|バトルレックス|&color(red){死亡}|
クーフーリンは駆ける。青空の元、眩い光が照らす荒地を。 見渡す限りに広がるのは大地の鈍い色、その先に見える大海原の青。 差し当たって目指す場所は小さな集落。人工的に作られた建造物、何かがあるだろう。 彼は足を休めることなく、風の如く走り続ける。彼の究極の目的、それは"救うため"だ。 モリーによって狂わされた"己の"世界を、その魔の手から救うために……。 そうしてたどり着いた廃村を散策する。 何かしら役に立つ備品などがあれば集めておきたい。 彼が求める道具は決して武器ではない。武器ならば既に間に合っている。 ……その手に握られるのは世界で最も硬いと言われる金属で作られた槍。 『メタルキングの槍』。 この武器の前には、どんな相手であれども一切の不足など存在し無い。 そしてまた、クーフーリン自身にも戦いに対する迷いは無かった。 当然、目の前にそびえ立つ、斧を構えた巨竜が相手であろうとも……。 周囲に建てられた家々の屋根よりも高い巨体を揺らす、二足歩行の竜と鉢合わせた。 ―――その瞳に宿るのは王の風格。 捕食を基本とする魔物、その魔物たちを捕食出来る立場に立つ魔物、まさに頂点。 他者に対する恐れなど無縁、むしろそんな感情など備わっていないかの如し。 その力強さと冷静さ、殺意、それらが入り混じる圧倒的な威圧が押し寄せる。 瞳に捉えられ、それを見据えた瞬間から、彼らの戦いは始まっていた。 クーフーリンは魔力を解放し、呪文を詠唱する。 「―――タル・カジャ……!」 溢れ出る魔力を筋力、運動神経へと注ぎ込む肉体強化呪文"タルカジャ"。 自らが持つ物理的戦闘力を補強、その火力を200%にまで引き上げる。 全力を出し切らねばならぬ。油断など決して許される相手では無いと、直感で感じた。 例え武器が壊れようとも、可能な限り激烈な一撃を叩き込まねば、壊されるのは自分。 無論、今クーフーリンの手に収められし武器は生半可なものではない。 己の出せる最高の力、その倍のパワーで振るわれようと、着いてこれるだろうと確信出来た。 ―――故に彼は、翔ぶ。 身の丈ほどの槍は、もはや爪楊枝の如く軽い。 風をも切り裂き、その切っ先を巨竜へと向ける。 「その心臓、貰い受ける――――!」 "生"を司る部位、その一点を定める。その一撃で、命を狩り取る。 まるで鎧のように硬い龍の鱗をも突き破るような、洗練された攻撃……。 それを巨竜は斧を持って防ぐ。 ガギィ……ッ……と耳を貫くような鋭い金属音。 飛び散る火花が、その衝撃の高さを物語る。 武器の力、そしてクーフーリンの力が相乗し、一点に集中されたそれを巨竜は受け止めた。 やはりただならぬ竜では無い。クーフーリンはそれを思い知らされる。 ……ここで一時的に後方へ引くべきか否か……。 巨竜の攻撃範囲から抜け出すことで出方を伺う……それが通常の選択であろう。 だが、今まさに相手の懐へと飛び込める絶好の機会である。 多少無茶な動作を行なってでも攻撃を浴びせれば、確実に有利に持ち込めるだろう。 ならば、とクーフーリンは肉体の重心を槍先に集中し、強行突破を図る……!! 巨竜の対応は決まりきっている。そのまま押し返すのでは無い。 斧を傾けることで切っ先を受け流し、がら空きになったサイドを狙ってくるだろう。 そして、その予測は正しく現実のものとなる。 切っ先は滑らされ、クーフーリンは巨竜の左側へ。 巨竜は口を大きく開き、その小柄な体に向けて灼熱の火炎を放とうと試み……。 それよりも早くクーフーリンは左腕を差し出す。 ……否、その掌を巨竜の顔へと突きつける。 魔法詠唱。その速度は炎を吹き出すよりも早い……ッ! 「―――ザンダインッ!!」 無数の衝撃波が巨竜を襲う。 太刀の如く鋭利な風が、鎧に匹敵するほどの硬度を持つ竜の鱗を切り裂いていく。 巨竜は天へ向けて火炎を吐きながら大きく仰け反り、そのまま数メートル吹っ飛ばされる。 それと同時にクーフーリンも大地に着陸、巨竜の姿を見定める。 木造民家に激突し、木っ端微塵に破壊され、砂埃が舞っている。 あいにく巨竜は、その砂埃の中をゆっくりと立ち上がっていた。 「……やはり生半可な攻撃ではビクともしないか……」 あまり応えた様子を見せない竜の姿を見てクーフーリンは呟く。 ザンダインは、衝撃波を生み出す呪文の中でも非常に高いクラスに属する魔法である。 しかし、この竜を前にしては、圧倒的に威力が足りなかった。 優位に立つためには確実にその槍で貫かねばならぬ、そう確信する。 ―――跳躍。 大地を蹴り、巨竜へと一気に距離を詰める。 既に立ち上がった巨竜はその目でクーフーリンの動きを見極め、斧を構える。 おそらく、いや、確実に先ほどと同じ手は通じないだろう。 巨竜の攻撃範囲に突入する寸前、クーフーリンはそばに植えられていた樹木の枝を掴んだ。 そのまま一回転し、上ではなく下へと慣性を向ける。 地についたと同時に、その地を蹴りつける! 槍の切っ先を、巨竜の下方から、突きつけるッ―――! ギィンッ!! またしても武器同士のぶつかり合う音。 このフェイントを織り交ぜた突撃からの攻撃も、巨竜は易々と見切っていた。 だが、ここで攻撃を止めるわけにはいかない……! 大きく腕を振るい、次々に斬撃を繰り出す。 飛び交う火花。響く不協和音。衝突する力と力。高まる緊張。 天秤にかけられた命と命。刃が欠けるより早く、肉体が疲弊していく。 強化された力をもってしても、その腕に痺れが走り出す。 巨竜の一撃一撃はどこまでも重く、迷いも容赦も一切存在しない。 捕食者は、目の前の獲物に対して、持ちうる力を全て出し切る。 己の肉体のリミッターなど外れている。いや、外せなければ獣に明日など存在しないのだ。 そういう者に打ち勝つには、己もそのリミッターを解かねばならない。 振り下ろされた斧を受け流し、クーフーリンは意識を集中する。 「―――デスバウンド……ッ!!」 己の限界を超える。 肉体の損傷すら省みず、その躍動を最大のものへと昇華する。 ―――"死との境界線(デスバウンド)"を辿る技――― 死を目前とした時、脳は最大限に加速する。 その現象を利用することで、体内時間のアクセルを踏み込むことが可能となる。 故に、世界は極限まで遅くなる。雨の中にいれば、その雨粒が空中静止しているかのように見えるだろう。 ただしその反動に、己の身体と脳に、相当な負荷をかけてしまう。 一瞬のうちに勝負を決めなければ、その後の戦況は容易にひっくり返ることとなる。 「師匠は言っていた――――」 大きく足を踏み込み、メタルキングの槍を神速で振るう。 鋭利な刃先は音を立てずに巨竜の足を地面と横一文字に通り抜ける。 血は噴き出さない。時の流れが戻る瞬間までは、ただ斬られたという"結果"だけが存在する。 「肉を切らせて骨を断つ……」 続けざまに槍を振り上げ、その巨大な尻尾を断ち切る。 ピアノ線が豆腐に食い込むように、切っ先が沈み込む。 これもまた、即座に千切れたりはしない。それよりも早い時空の中に自分はいる。 「小さな犠牲をもってして、大きな勝利がもたらされるのだと!!」 最後に狙うのはその首筋。 頚動脈を一突き、これで勝負が決まる。 槍を引き、それを巨竜の急所を目掛けて思い切り突き刺すッ……!! ―――ギィィンッ……!! 「……まさか……っ!?」 防がれた。その巨大な斧によって。 予期せぬ自体に一瞬だけ対応が遅れる。 巨竜は振り向き様に槍を打ち払い、さらに追撃に斧を振り下ろした。 クーフーリンは咄嗟に後方へと回避行動を取る。 だが遅い……!! 間一髪間に合わず、左手がその斧により分断される。 さらに巨大な斧が地面に叩きつけられ、その破片が降り注ぐ。 血飛沫が巨竜の足から、尻尾から、クーフーリンの左手から同時に噴き出した。 左手を失うことでバランスが崩れ、着地に失敗―――。 ―――大きく崩れた体勢で大地に叩きつけられる。 (何故だ……何故この竜がこの速度に着いて来れる……!?) 巨竜がデスバウンドの速度に対応出来るのは、想定していなかった。 あの体躯で、そんな器用な動作を行なえるだなんて、誰が予想出来るだろうか。 バトルレックスが得意とする剣技『はやぶさ斬り』。 一振りで2つの斬撃を同時に行なう、言わば非現実的な速度を実現した秘術である。 デスバインド発動直後こそ、命令信号が脳に届いていなかった。 故にはやぶさ斬りの発動に遅れを取ってしまったものの、一度意識を集中すればその神速にも手が届く。 そして何より、そのタイミングが巨竜に味方した。 クーフーリンが勝利を確信した、その瞬間。本当に、ほんの僅かな油断が現れた瞬間。 偶然にもその"刹那"の間に発動、そして反撃を行なったのである。 クーフーリンの集中力は途切れ、高速で迫る斧をかわす事を許さなかった。 たった1秒にも満たないような時間の中、クーフーリンは優位に立ち、そして不利に陥った。 (―――体が、動かない……!) デスバインドの反動がここで牙をむく。 体力の大半が削り落とされ、即座に立ち上がる事を困難とした。 その間にも距離を詰めてくる巨竜。 「ザンダインッ!!」 右手を突き出し呪文詠唱。 ……だが、もはやそれも悪あがきに過ぎない。 巨竜が斧をひと振りするだけで衝撃波は呆気なく打ち砕かれた。 (―――ッ! ……もはやこれまでか……) 打つ手は無くなった。 おそらく悠長に立ち上がるだけの時間など与えられない。 魔法も隙のないこの状態で撃って、何が出来る? 戦いはここで終わり、己の世界も終焉を迎える。 クーフーリンはゆっくりと目を瞑る。 と、その時、その耳が異様な音を聞き取る。 まるでバケツに入った水をひっくり返したような、バシャッという音。 目を開くとそこには、巨竜の背後から消化液を浴びせる、先ほどのワームの姿があった。 「獲物を~屠るッ、イェェェg……!!」 気分の高ぶるような歌を口ずさむワーム、その歌は即座に途切れた。 巨竜が振り向き様に放った灼熱の炎、それがワームを飲み込んだ。 ……実に愚かな介入……その有様を見て、クーフーリンは嘆かざるを得なかった。 どうして、そのような貧弱な力で我らの戦いに入ろうと思ったのか。 それに、あの消化液も巨竜に対し、何らダメージを与えているように見えなかった。 最後に見るものが、無駄死にする生き物だとは……、あぁ、実に嘆かわしい。 巨竜は再度クーフーリンに向き直る。 改めて斧を構え、トドメを刺しにかかる。 そして獲物を狩り取ろうと駆け出す。 ―――瞬間。 苦痛に呻くような咆哮を上げながら、すぐそばに転倒した。 先ほどのワームによる消化液が足の傷口を溶かし始めたのだ。 いいや、傷口だけでは無い、鱗すらも少しづつだが蝕んでいる。 (どうやら運命は私に味方したようだ。この勝利、掴ませてもらう……!) すかさずクーフーリンはメタルキングの槍を倒れ込んだ巨竜の首へと突き刺した。 巨竜の口から大量の血液が溢れ出し、しばらく体を震わせ、そして絶命する。  ……死ぬ間際にバトルレックスは小さな疑問を抱いた。  どうして自分は敗北したのか、と。  一切に油断も無く、戦闘における不足も無く、誤った判断も行わなかった。  なのに何故? 何が勝負を決めたのだろうか。  ―――ほんの一瞬だけ考えて、彼はその答えを知った。  きっとこの世界に来ること無く、獣として、怪物として生を終えていたら最後まで知ることがなかった答え。  そしてそれを理解した直後に、彼の意識は漆黒の世界へと沈んでいった。  ……彼が最後に得た解答が何かは、我々にはわからない。 そうして、戦いの幕が閉じた。 地面に左腕を置き、切断面に左手をくっつけた状態で、先ほど手に入れた支給品アモールの水を振りかける。 神経が不完全なために感覚は戻らないが、接合することだけに成功する。 応急処置を施したところで、自分の助太刀をしてくれた魔物のそばへと向かう。 「……感謝する、先ほどのワームよ」 彼の死は決して無駄なものではなかった。 彼が介入したからこそ、今自分は大地に立ち、呼吸を続けることが出来るんだ。 あの勝利は私の力ではない、私に巡ってきた運が良かったのだ。 たまたま自分が勝つ世界が存在し、たまたまそれにたどり着いた。ただそれだけ。 犠牲となったワームがその世界へ導いてくれたのだ。 私は彼のことを決して忘れないだろう。 「いや、生きてるよ」 「何……ッ?」 ファイガ(で一発)のボナコンが起き上がった。 「なんていうか、オッカの実とかいう道具持ってたせいか、生きながらえた」 「そうか」 「見物者のボナコン株を上げようと、颯爽と助太刀しようとしたらこの有様よ。  華々しく散るのも美徳だが、まだ俺には見せ場が残されているのかもしれない」 「そうか」 「あんちゃん、名前何て言うの?」 「私は妖精クーフーリン」 「そうか、俺はボナコン」 「……」 「元々俺、誰かと組んで登場するのがデフォなわけよー。  アダマンキャリー君とか、粘液戦隊ボナコンジャーとかでさ。  つーわけでさ、良ければついて行ってもいい?  スタンスはあんちゃんに合わせるからさー」 ボナコンは流れるような自己紹介から、手を組まないかと提案を持ちかけた。 なお、「あんちゃん」の発音は福山○治を意識している。 「いいだろう、ただし……」 「ただし?」 ボナコンに対し、クーフーリンは不敵な笑みを浮かべ、こう答えた。 「私の速さに、ついて来れるなら……」 そう言って彼はマントをなびかせ、背を向けてゆっくりと歩き出す。 ボナコンは「何だコイツ、中二病か?」と思った。 &color(red){【バトルレックス@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】} 【F-2/廃村/一日目/午後】 【妖精クーフーリン@真・女神転生シリーズ】 [状態]:ダメージ(中)左腕負傷(接合済み) [装備]:メタルキングの槍@DQ8 [所持]:ふくろ、アモールの水(残り小) [思考・状況] 基本:全の路を往き、万を司る 1:魔の手(モリー)から世界(自分の生活)を救う 2:廃村を探索 [備考] ※男。現在のところ、タルカジャ、ザンダイン、デスバインドを習得している模様。 ※師匠とは女神スカアハのことです(原典神話通り) 【ボナコン@ファイナルファンタジーシリーズ】 [状態]:ダメージ(大) [装備]:なし [所持]:ふくろ [思考・状況] 基本:目立つ 1:クーフーリンにお供する [備考] ※オス ※支給品オッカの実を消費しました ※最新のボナコンスレは↓ ttp://kohada.2ch.net/test/read.cgi/ff/1301835035/ 《支給品紹介》 【アモールの水@ドラゴンクエストシリーズ】 伝説の滝アモールの名を冠した水。非常に高い治癒効果がある。 【オッカの実】 効果抜群のほのおタイプのわざを受けたとき、一度だけダメージを1/2にする。 だからってボナコンが火炎の息を耐えられるのか、疑問に思われるかもしれない。 こう考えて欲しい。あくまで即死するのはファイラであり、火炎の息ならギリギリ助かる可能性があるのだと。 |No.30:[[迷い生きる獣達]]|[[時系列順]]|No.41:[[NEXT LEVEL]]| |No.33:[[タチムカウ-狂い咲く己の証明-]]|[[投下順]]|No.35:[[偶像崩壊]]| |No.09:[[@]]|妖精クーフーリン|No.41:[[NEXT LEVEL]]| |No.09:[[@]]|ボナコン|No.41:[[NEXT LEVEL]]| |No.08:[[怪物騙]]|バトルレックス|&color(red){死亡}|

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