歪みの国のアリス

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誰が殺した 駒鳥の雄を それは私よ スズメがそう言った 私の弓で 私の矢羽で 私が殺した 駒鳥の雄を 鳥さんは死んじゃった。 だからこの歌を歌うの。 どうしてこの歌なのか、この歌を知ってるのかって? 知らな~い。 もしかしたら赤おじさんと黒おじさんから聞いた歌だったかもしれない。 でも別にそんなことどうでもいいの。 だって、誰も聞いてないんだから。 だからね、アリスはもっとたくさん、一緒に歌ってくれるお友達を探すの。 おもちゃも欲しいけど、やっぱり一緒に遊べる人間のお友達がいいなぁ。 ほら、あそこにも。 動物さんが3匹とお人形さんが1個、お友達になれそうな人が1人いるの。 だからね、私は聞くの。 「ねえ、あなたはアリスとお友達になってくれる?」 ◆ 「ソーナンス!」 彼らと出会ったのは偶然だった。 どうしたらいいかと考える二人の元に、突如謎の轟音が響いた。 ほんの一瞬であったが、それは決して無視できるほどのものではなかった。 まるで、地面を丸ごと抉り取ったかのような音が、ほんの一瞬とはいえ聞こえてきては彼らとてじっとはしていられなかった。 まず森を抜け、見晴らしのよい場所に出てから行動しよう。そう言った(ように見えた)のはソーナンスだった。 彼なりに用心し、ピクシーを守ろうとしているのかもしれない。 そして、森を出たところにいたのは。 「ソーーナンス!」 「あなたは、ソーナンスさん?!」 巨大なドラゴン、桃色髪の少女、そしてソーナンスの知り合いらしきモンスター、グレイシアだった。 ソーナンスをどうして彼らが無条件に信用したのかということには彼の戦い方、特性にあった。 彼は自分から戦うことは好まず、相手の攻撃を受け流し反撃に応じることが得意だとされている。 そんなポケモンが、積極的に他のモンスターに戦いを仕掛け、傷つけることはないと、そう判断したことが理由である。 「見たことないモンスターだけど、みんな何て言うの?」 「しらないの?わたしたちポケモンっていうんだけど」 「ソーナンス!」 グレイシア、メタモン(桃色の髪の少女)、ソーナンスは同じ種族に分類されるモンスターであるという。 しかしドラゴン、ピクシーには共に聞き覚えがない。 「ピクシーって言うならお前もだ。色んなピクシーを俺は見てきたが、お前みたいな小奇麗なやつは見たことねえぞ」 「ピクシーさんという名前なのですか。私達もピクシーというポケモンは知っていますが、どうやらあまり関係はなさそうですね」 ドラゴンは青い小悪魔を連想し、グレイシアは白くふっくらとした妖精ポケモンを連想したその名前。 未知なる遭遇は彼らの間に僅かな混乱をもたらしていた。 しかし、そんな彼らの中にも、とある共通点があった。 それは、皆人間の元で暮らし、育てられたモンスターであるということ。 そこに様々な想い、別れがあれど彼らがそうであったということは変わらない。 ドラゴンやメタモンはそこを多くは語れなかったものの、そこには何かしらの想いが込められているのを彼らは感じていた。 「そうだ、ピクシーさん、ソーナンスさん!こんなばしょですけど、せっかくであったんですし、わたしたちとおともだちになりましょうよ!」 そんなことを言い出したのはメタモンだった。 「グレイシアさんとも、こんなにつよいドラゴンさんともおともだちになれたんですし。  きずついてたたかわなくてもみんななかよくしましょう」 「よせ。その呼ばれ方はむず痒いんだよ」 「照れてるんですか?」 「うるせえ!」 ピクシーは驚いていた。 こんなところでも、こんな風に友達を作ろうとするモンスターもいるのだと。 彼女の心に、ほんの小さなものだが希望の光が生まれた。 こんなところに放り込まれ、主に死ねと言われているようなものだと感じて闇に包まれた心に。 このソーナンスのような存在もたくさんいるのだと。 答えは当然決まっている。 「もちろん!皆で一緒に生き残ろう!」 「ソーナンス!」 ここで、ピクシーはこの会場にきて初めて笑顔を見せた。 それにつられ、ソーナンスもしかめっ面の中に嬉しそうな声を上げて同意。 「ありがとう!がんばろうねみんな」 少女の姿をしたモンスターは、そんな彼らの様子にどこまでも嬉しそうだった。 「ねえ、あなたはアリスとお友だちになってくれる?」 そんな声が聞こえた。 とても透き通った、綺麗な声。 一同が振り向くと、そこにいたのは1人の少女。 青いワンピースを身に纏った、綺麗な肌をした女の子。 一見人間にしか見えないが、メタモンや人間に比較的近い外見をしたピクシーもこの場にいる。誰も疑問を持たなかった。 だから、気付くのが遅れた。 友達という言葉に釣られてか、真っ先に近寄っていったのはメタモンだった。 「あなた、なまえなんていうの?」 「わたし?わたしはアリスっていうの」 「アリスちゃんだね。わたしはメタモン。おともだちになりましょう!」 「ほんとう?!わぁい!」 嬉しそうにはしゃぐ二人の少女。 そんな中、ふとドラゴンは少女の瞳を覗き込み。 その奥を見つめ。 「それじゃあね、メタモンさん。おねがいがあるの」 「おねがい?なんでもいってよ。ともだちじゃない」 「そう?それじゃあ」 「メタモン!!危ない!!!」 と、とっさにドラゴンが飛び出し、メタモンを突き飛ばした。 「 死 ん で く れ る ? 」 ◆ 彼らの中で最も生死の境目を生きてきたのはドラゴンだった。 他のモンスターの戦いは傷付くことはあっても死ぬことは極稀なもの。 その中で、ドラゴンだけは常に生死を賭けた殺し合いを、戦いとしてきたのだ。 負ければその時点で不要とされ、捨てられるか最悪処分されるという環境で育ってきた。 故に殺意、悪意といったものにはこの場の他のモンスターと比較して人一倍は敏感であった。 舞い上がったメタモンでは気付けなかった、アリスの瞳の奥にある虚無、真の暗闇。 そして、考え込む仕草と共に少女からとてつもなく嫌な気配を感じ取ったドラゴンは、気がつけば咄嗟に飛び出していた。 (全く、子守なんて慣れないことはするもんじゃねえな) どうせあの時俺は死んでいた。 それなのに命を助けられ、それまでの考えを改めさせられていた。 もう死ぬことでしか己のプライドを保てないと思っていたのを変えられたのだ。あのようなガキのモンスターに。 その結果がこのザマだ。 だけど、不思議と悪い心地はしなかった。 飛び出すと同時に吐いた、俺の炎は”アレ”には届かないだろう。 だから一刻も早くこれから離れろ。 (お前はこんなところにいつモンスターじゃねえ。だから、生きろ) そう心で呟いたのと、ドラゴンの視界が真っ赤に染まったのは、ほぼ同時だった。 &color(red){【ドラゴン@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】} ◆ 「グォア…ッ!」 不意に突き飛ばされ、地面に倒れこむメタモン。 呻き声が聞こえた先に視線を戻すとドラゴンさんが全身を真っ黒に染め、血と炎を吹き出しながら崩れ落ちていた。 「じゃましないでよ。アリスはドラゴンさんにはきょうみないんだから」 そう言いながら、アリスは動かなくなったドラゴンの体を蹴り飛ばした。 何が起こっているのか、理性をもって理解できたものは一匹としていなかった。 しかし、グレイシアだけは咄嗟に傍にいたピクシーとソーナンスの前に飛び出した。 それと同時、アリスは3匹の存在に気付いたように視線を向けた。 「あ、そっか。じゃまするならけしちゃえばいいんだ」 そう呟くと同時、アリスの手からとてつもないエネルギーが噴出。 赤き魔力がピクシーを、ソーナンスを、グレイシアを飲み込んでいく。 思わずメタモンは叫ぶ。 「止めてええええええ!!!!」 地面を抉り、周囲の大気を振るわせる大出力の攻撃。 しかし、それでも彼らは形を保っていた。 グレイシアが守るを使ってそれを防いだのだ。 「ソーナンス!!ソーナンス!!」 しかしそれを受けた衝撃か、グレイシアは地面に倒れぐったりしている。 おそらくは守るでも防ぎきれないほどの衝撃を、アリスは放ったということなのだろう。 「あれ?まだ生きてるの?  ウサギさんやお人形さん、ハンプティダンプティさんはいらないのよ」 そう言って再び攻撃を加えようとするアリス。それを見て、メタモンは。 「アリス、こっち!!」 アリスに向けて叫んだ後、森の中へ向けて走り出した。 何も考えがなかったわけではない。 ただ、アリスは自分とは友達になろうとした。しかし皆を邪魔者扱いして殺そうともした。 もし自分とだけ友達になろうとするのならばきっと放っておかないはずだと。 分の悪い賭けだとは本人も思っていたが、メタモンの行動は功を奏した。 「あ、まってー。鬼ごっこするの?ならアリスが鬼ねー」 アリスはこちらに気を取られ、追いかけ始めたのだ。 遠ざかる足音。二人の姿は森の中に消えていく。 「メタモンちゃん!」 「…ぐ……」 「ソーーナンス!」 「だ、大丈夫です…。まだ歩けます…。それより、あの早くここから…。  でないとあの子も、戻って、来られない…」 「う、うん、分かった!ソーナンス、お願い!」 そう言われたソーナンスは、グレイシアを肩で支え、ピクシーが先導して歩き始めた。 メタモンの走り出した方とは逆の場所へ。 ◆ 「おにごっこはやめてかくれんぼにしたの~?」 森の中。 ワンピース姿の少女には酷であるはずの環境もものともせずにアリスは進んでいく。 木々や草花のせいで見通しはあまり利かず、足元も生身の人間には厳しいであろうその空間を、ひょいひょいとそれこそ無邪気な子供のように歩く。 いや、実際彼女は無邪気な子供だった。 だからだろう。 そんな彼女の目の前に、 「あれ?」 自分と同じ顔をした人間がいれば、興味を持つのも当然である。     アリス 「あ~!私だあ!こんにちは!!」 しかし、それ以上の疑問を持つことはなく、己と全く同じ顔をした存在がいるということをあっさりと受け入れていた。 同じ顔、同じ髪、服も形は全く同じ。違うところといえば、その瞳の中に闇が、虚無がないこと、そして服の色が若干薄くなっていることだろう。 「ねえ、ちょっとだけ、おはなししない…?」 「アリスとおしゃべり?いいよ、しようしよう!」 ◇ メタモンがアリスに変身したのにも理由はある。 この子が、一体何者なのかを確かめたかったのだ。 一見では人間にしか見えなかった少女。 しかしドラゴンを得体のしれない方法で殺し、皆に大威力の攻撃を放った。 ドラゴンを殺して。 アリスに変身するまでの間、彼女の目から逸れている間にメタモンはあの光景を思い出して嘔吐した。 まるで何か強力な呪いでも受けたかのような、あまりに無惨な死に様。 出会って数時間だったが、それでも友達だった彼の死はメタモンを深く傷つけていた。 それでも、だからこそ確かめなければならなかった。 あの時友達になろうと言ったのは嘘だったのか。どうしてドラゴンさんを殺したのか。 そのための変身だった。 が、変身後、自分の能力を分析したところでメタモンはこの少女がただ者ではなかったことに気付くまでそう時間は掛からなかった。 所持している技。 高威力、無属性かつ強力な特殊効果を持った特殊攻撃。こんなもの、特性:あまのじゃくのポケモンがVジェネレートを使うようなものだ。 相手のエネルギーを奪い取る技。メガドレインのようなものかと思ったが、この技が吸い取るのは生命力だ。 強力な火炎攻撃。はっきり言って、威力だけならドラゴンさんのものなど比べ物にならないほどの力を持っている。 そして、あのドラゴンさんを殺した技。強力な呪いを投げかける技で、特殊な耐性がなければ防ぐことは難しい。 こんな技を持っている少女は本当に人間なのか。 いや、人間ではなかった。 ポケモンで言うゴーストタイプ、いや、そんなものよりももっと恐ろしい存在だ。 昔聞いたことのある話で、悪い組織の人間に殺された、とあるポケモンの母親がずっと幽霊としてある建物の中に留まって誰も近寄らせないようにしたということがあったらしい。 嘘か本当かまでは分からないが、この少女もそれと似たようなものに思えた。 そして、だからこそ立ち向かわなければいけなかった。 もっと知りたいと思った。もっと、近付きたいと思った。 それがあのドラゴンさんを殺した相手であっても。 きっと私が復讐のためにこの子を殺すなんてことは、きっと彼も望まないと思ったから。 「ねえ、アリスちゃんはおともだちがほしいの?」 「うん!私ずっと一人っきりだったから、いっしょにあそべるお友だちがほしいの」 「じゃあ、どうしてドラゴンさんをころしたの?」 「べつにアリスころそうと思ったんじゃないもん。いきなりとび出してきたのドラゴンさんだもん」 「じゃあ、どうしてわたしをころそうとしたの?」 そう、それこそがきっかけ。 あの時のアリスの呪いが狙ったのは自分だった。 友達になってほしいという言葉、あれは嘘だったというのだろうか。 「だって、アリスとお友だちになるんでしょ?だったら死んでくれないとダメじゃない」 メタモンには、アリスが何を言っているのか分からなかった。 何故死ぬことが友達になることに繋がるのか。 「どうして?しんだらおともだちにもなれないよ?あそぶこともはなすこともできなくなるのよ?」 「どうして?死んだらずっといっしょにいられるのよ?アリスとおんなじにならないとお友だちになれないよ?  アリスのお友だち、みんな死んでるんだもん」 その言葉で、彼女の持つ友達という存在に少し踏み込めた気がした。 もしかしたら、彼女自身が死んだ存在であるためその死生観自体を狂わせているのではないか。 自分も死んでいるのだから、他の人も同じようにすることで仲間を増やせるのだと思っているのではないか。 しかし、いくらアリスがそうだからといってそれで友達になれるとは思えなかったし、何よりメタモンも死にたくはなかった。 「ちがうよ!しぬっていうのはかなしいんだよ!ほかのみんなともあえなくなるし、あそべなくなるの!  ともだちになりたいなら、わたしがなってあげるからそんなしんでほしいなんていっちゃだめなの!」  アリス 「私が何をいってるのかわかんない。  お友だちになってくれるっていうんだったらね、――――死んでくれる?」 その言葉、あの時ドラゴンの庇ったときと同じもの。それは、紛れもない死の宣告。 キーーーーーン 心臓を鷲掴みにでもされたかのような寒気、怖気が全身を襲う。 しかし、それだけだ。メタモンの肉体にも精神にも、大きな影響を及ぼすことはない。 メタモンの変身はただの姿を真似るだけの技ではない。 能力、技、耐性。その全てをコピーするのだ。 そして、アリスには呪殺は通じない。だから、その宣告はメタモンには無意味。 「あれ?死なないんだ。  じゃあしょーぶしようよしょーぶ!アリスまけないから!」 そう言って、アリスはあの莫大な攻撃を打ち出そうと手を翳した。 それを受けきるため、メタモンも同じ技を構える。 全く同じ魔力を持った、全く同じ、大威力の万能技。 森の中、二つの衝撃がぶつかり合った。 ◆ 「グォォ!!」 「きゃあっ!!!」 業火がほとばしり、周囲の木々を一瞬で消し飛ばす。 閃光と吹雪が走り、襲い来る炎を受け流す。 「グルルルル…」 アリスと遭遇した場所から逃げてきた3匹を待ち受けていたのは、一匹の巨大な猛獣だった。 そのモンスターはこちらを認識するや否や、突然攻撃を仕掛けてきた。 業火を吐き、巨大な爪でもってこちらを斬り割かんと振りかざしてきた凶獣に対し、3匹は迎え撃つしかなかった。 「アギダイン!!」 そして今また、彼の唱えた呪文は巨大な火柱を打ち出す。 グレイシアは守るでガードすると同時、吹雪を相手に向かって放つ。 炎を操るゆえ冷気には弱いのか、吹雪く寒い風に動きを止める猛獣。 「メガレイ!」 そこへ追撃をかけるように、ピクシーが光をその手から放出。猛犬を包み込む。 「やった?!」 「油断してはダメ!」 ピクシーの中では、その攻撃は相当のダメージを与えるはずの技。 しかし、グレイシアの警告どおり、猛犬は大したダメージを受けている様子もなく、その場に留まっていた。 「そんな…、だってさっきのは結構な技だったのに…」 「やっぱり。どうやら私達の力がどうしてか下がってるみたい」 先のアリスの発した技、それはジハード。 相手に無属性の高エネルギーをぶつけ、同時に相手の能力を下げる技。 彼らは守るをもってしても防ぎきれなかったあの一撃の、後者の効果による二次被害を受けていた。 グレイシアがそれに気付いたのはこの戦いの中。時間経過か何かしらの対策で戻すことが可能だったかもしれないがタイミングが悪すぎた。 相手はあのドラゴンに勝るとも劣らない強力なモンスター。 いくら2匹がかりとはいえ能力の下がった彼らには荷が重かった。 「グオオオオオオッ!!!」 虚空爪激がグレイシアに放たれる。 後ろに飛びのくことで回避しようとしたが、ジハードのダメージがグレイシアの反応を遅らせる。 結果、直撃こそ避けはしたものの、振り払われた腕に吹き飛ばされてしまう。 「うぁっ…!」 「グレイシア!」 吹き飛び、地面に倒れこんだグレイシアを逃さず、追撃をかけようと爪を振りかざし、 「…!」 その時だった。 グレイシアの目の前にソーナンスが飛び出してきたのは。 「ソーナンス!」 相手の攻撃を受けてから反射することが能力であるソーナンスには、この猛獣は強すぎる。 おそらくダメージを返す前に死ぬだろう。 ゆえに二匹はソーナンスを引かせていたのに。 そして爪が振り下ろされる瞬間、影のようなものが猛獣を包み込んだ。 咄嗟、猛獣は振り下ろした爪を直前で止め、ソーナンスを睨みつける。 「貴様、何をした?」 「ソーナンス」 「なるほど、呪いをかけたか。お前が死ねば、俺の命も共に奪うという呪いを」 「ソーナンス」 「だが、いいのか?もし俺が死を恐れなければ、お前は死ぬことになるのだぞ?」 「ソーナンス」 「そうか」 と、そう言って猛獣は、その爪を再び振り下ろし――― 「ダメーーーー!!!!!」 ピクシーの声が響き。 それが、もう少し動けばその頭を引き裂くであろう、その寸前で止めた。 「いいだろう、こちらとてまだ死にたいわけではない。  お前の勇気に免じて、今回だけは逃がしてやる」 「ソー、ナンス」 その言葉を受けて、それまで微動だにしなかったソーナンスが腰を落とした。 今の今までその恐怖を耐えていたのだろう。腰が抜けているようだった。 グレイシアがその傍に駆け寄り、その背に乗せる。先のお礼だろう。 アリスから受けた攻撃は、ピクシーの回復魔法によって若干ではあるがそのダメージを減らしていた。でなければ戦闘などこなせないだろう。 ともあれ、彼らに背を向けて進む猛獣。もう彼らには興味がないということなのだろう。 と、その方向はこっちの向かってきた場所だ。 グレイシアは一言、猛獣に告げる。 「そっちにはもう一体、私達の仲間が、友達がいます。  変身が得意で、グニャグニャしたピンク色の子です。  もし会うことがあれば、私達の向かった方を伝えてあげてください。お願いします」 あの場においてきた仲間への言伝。 猛獣は振り向いて、グレイシアを見つめる。 「伝えると思うのか?もしかしたら俺はそいつを殺すかもしれんのだぞ?」 「そう言ってもらえるなら、まだ信用できます。あなたは真っ直ぐな者のようです。人を騙したりするのは苦手でしょう?  なら、いきなりあの子に襲い掛かることもないかもしれない」 グレイシアにとって、もしダメでも言っておくだけで少しは違うかもしれないとそう思っただけだ。 万一襲うことがあっても、再度の合流への何かしらの希望は残しておきたかった。 猛獣は答えることもなく、背を向け、また振り返ってこう問うた。 「一つ聞かせろ。  お前達は一体何から逃げていた?  置いてきた仲間、その傷、ただ事ではないだろう?」 「アリス、という女の子に襲われて。仲間も一体殺されました…。  かなりの力を持っているみたいで、私達には手に負えませんでした」 「なるほどな。  いいだろう、お前の言う伝言、一応考えておいてやる」 それだけ言うと、猛獣は背を向け歩き出した。 今度は振り返ることはなかった。 ◆ あれは果たして悪魔だったのか。 ふと、ケルベロスはそう考えた。 悪魔は見つけ次第殺す。手心を加えては己の死にも繋がりかねない。 だからこそ戦闘中はその疑問は打ち捨ててきた。 しかし、あの水色の者は仲間のために己の命を賭した。 悪魔がそのようなことするだろうか。 少なくともそれは低級な悪魔の思考ではない、しかし彼が上級の悪魔にも見えなかった。 あの時の、通りすがりの悪魔を治療し殺された彼を思い出す。 いや、そんなことは関係ない。 今回彼らを逃がしたのは、あくまで身にかけられた呪いを解くため。 それ以上の理由などない。 「アリス、か。  このような場所にいる以上、人間ということは有り得まい。…まさか噂に聞くあいつか?」 ケルベロスは彼らの示した方角へ向かいながら思考を切り替えた。 噂に聞いたことはある。 謎の少女が、友達になろうと道行く人に死を懇願する、悪霊のような存在。 もし、あの魔人が存在するのであれば、奴を討伐するのは俺の役割。おそらく彼らの言っていた仲間に構う余裕はないかもしれない。 魔獣ケルベロス、デビルバスター。 悪魔を狩る。それだけが、俺の役割なのだから。 【C-7/森/一日目/昼】 【魔獣 ケルベロス@女神転生シリーズ】 [状態]:健康 肉体損傷(小) 魔力消費(小) [装備]:無し [所持]:ふくろ(空) [思考・状況] 基本:悪魔を殺して回る、慈悲はない。   1:アリスという少女(高確率で悪魔と推測)を殺す  2:あの3匹は、今だけは見逃す   3:3匹の言う仲間に、彼らの向かった場所を伝えるかどうか―――? ◆ へんしん。 それは相手の能力、技を完全にコピーすることができるという技。 しかし、コピーできないものもある。 一つは体力。例えばメタモンがハピナスに変身してもHPは増えず、メタモンの状態のときそのままとなる。 もう一つは技を出せる回数。変身段階で大幅に使用可能回数が減少しており、今アリスに変身している状態においてもMPは本来よりかなり下がっていた。 だからこそ、メタモンには持久戦となったら圧倒的に不利となる。 そしてこの場においても、地面にはいつくばっているのはメタモンの変身したアリスだった。 「もう終わりなの?」 無論理由としてはそれだけではないだろう。 戦いの中で相手の命を奪おうとするものと、殺したくないと考えるもの。 結果など見え透いている。 「それじゃ、そろそろ死んでくれる?お友だちになれば、もっといっしょにあそべるんだし」 そう言って、地面で僅かに身動ぎするメタモンに近付くアリス。 と、そこでメタモンの体に異変が起きる。 アリスを模った体がグニャグニャと輪郭を崩し、少しずつ色合いを落としていく。 その光景を見つめて驚くアリスの目の前で、その体はさらに小さくなっていき、最終的に元あったメタモンの形にまで戻っていった。 そんな姿を見つめて、アリスはがっかりしたような声でこういった。 「そっかー、にんげんだってウソついてたんだー」 そして、そのまま手をかざす。 そこに顕現するのは地獄の業火というのも生ぬるい、まさに天が齎す裁きのごとき大火炎。 「それじゃ、やっぱりいらない。じゃあね」 トリスアギオン。 周囲の木々を焼失ではなく消滅させるほどの高熱が、メタモンを包み込んだ。 ◆ 3匹は安全な場所を探して逃走している最中も、メタモンのことを一時たりと忘れたりなどしなかった。 「大丈夫、だよね、あの子…」 「私が油断さえしなければ、メタモンさんもドラゴンさんも…、くっ…!」 「ソーナンス…」 だが、今の彼ら自身分かっていた。 己の体の状態も、その無力さも。 いくら闘技場でいい結果が残せる強さがあっても、ポケモンリーグを勝ち残ったという過去を持っても。 この場で、命の掛かった戦いの場での、仲間の危機の前では、ただひたすらに無力だった。 【C-7/森/一日目/昼】 【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身は不明) [思考・状況] 基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す  1:アリスから離れる  2:メタモン… 【ピクシー@モンスターファーム】 [状態]:疲労(中)、能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(不明支給品1) [思考・状況] 基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。  1:皆と一緒に行動する   2:メタモンが気がかり 【ソーナンス@ポケットモンスター】 [状態]:能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(不明支給品1) [思考・状況] 基本:ソーナンス!  1:ピクシーのそばにいてあげたい。   2:ソーナンス… ※能力低下がいつまで継続するかは不明ですが、時間経過で解けるでしょう。 ◆ 炎は一瞬で全てを焼き尽くし、そのまま燃料を失って消滅。 その場に残っているのは、濛々と湧き上がる煙だけ。 炎を放った主は煙の外からその光景を眺め。 「じゃあ、アリスは行くね。ほかにあそんでくれる子はいないかなぁ」 そう言って、アリスは興味をなくしたようにその場を立ち去った。 煙の中を確かめることもなく、それまでと同じく鼻歌を歌いながら。 【B-6/草原/一日目/昼】 【アリス@女神転生シリーズ】 [状態]:健康 、魔力消耗(小) [装備]:チェーンソー [所持]:ふくろ(空) [思考・状況] 基本:遊ぶ ◆ アリスが去り、さらにしばらく経った後煙が晴れた、黒こげの地面。 本来であれば動くものがいるはずもないその場所に、つぶれたピンク色のスライム状の物体は残っていた。 『これはお前が持っていけ。薬の礼だ』 『そんな、わるいです!おともだちになれたんだから、そんなきづかいいらないですよ!』 『いいから、持っていけ。俺はそこそこ強いが、お前は色々と危なっかしい。  それに友達だとか認めたわけじゃないが、されっぱなしってのも気分が悪いんだよ』 あの時ドラゴンが渡してくれた、彼の道具、復活玉。 それがメタモンの命をどうにか繋ぎとめていた。 しかし、命を繋ぎとめたとは言っても、体に受けた、致命傷にはならないほどのダメージまでは回復してはくれなかった。 今はもう動くこともできない状態だ。 (もしこれをドラゴンさんがもってたら、ドラゴンさんはしなずにすんだのかな…) 掠れる意識の中、ふとそんなことを思ってしまった。 (ドラゴンさん…) 彼の最後を思い出し、悲しさと悔しさに押しつぶされそうになる。 それでもあのアリスという少女が、メタモンはずっと気になっていた。 『死んだらずっといっしょにいられるのよ?アリスとおんなじにならないとお友だちになれないよ?  アリスのお友だち、みんな死んでるんだもん』 (そんなの…違う…) 友達になりたいと言い、そして死んでくれないかとも言った少女。 メタモンにとって相反する2つの言葉。 それが頭の中でリフレインする。 (死ぬっていうのは、辛いんだよ、悲しいんだよ…?  そんなので友達なんか、できないよ…) 体のダメージに、頭が限界を迎えつつある。 朦朧とする頭が、さらに薄れていく。 そんな中でも、メタモンは己をここまで傷つけた少女のことを思い続け、 (だから、しねばともだちになれるって…、そんなの、ぜったいおかしいよ――――) その思考を最後に、メタモンの意識は休息を求めて沈んでいった。 【B-6/草原/一日目/昼】 【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】 [状態]:意識無し、疲労(大)、ダメージ(大)、能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身なし) [思考・状況] 基本:みんなを笑顔にして、幸せにする  1:殺すことは仕方ないこともあるかもしれないけれど、そうでなかったら反論する  2:”ともだち”をつくる   3:アリスが気にかかる 《支給品紹介》 【復活の玉@ドラゴンクエスト】 ドラゴンに支給。 戦闘不能になった際、一度だけ復活することができる。 |No.27:[[ティラノモンさん究極体おめでとうございます]]|[[投下順]]|No.29:[[眠ったままで]]| |No.11:[[human in the box]]|魔人アリス|No.33:[[タチムカウ-狂い咲く己の証明-]]| |No.07:[[Fantastic Future]]|ドラゴン|&color(red){死亡}| |No.07:[[Fantastic Future]]|グレイシア|No.46:[[命の価値は?]]| |No.07:[[Fantastic Future]]|メタモン|No.50:[[escape]]| |No.02:[[本当に逃がしますか? →はい]]|ピクシー|No.46:[[命の価値は?]]| |No.02:[[本当に逃がしますか? →はい]]|ソーナンス|No.46:[[命の価値は?]]| |No.13:[[I Wanna Be Your Dog]]|魔獣ケルベロス|No.33:[[タチムカウ-狂い咲く己の証明-]]|
誰が殺した 駒鳥の雄を それは私よ スズメがそう言った 私の弓で 私の矢羽で 私が殺した 駒鳥の雄を 鳥さんは死んじゃった。 だからこの歌を歌うの。 どうしてこの歌なのか、この歌を知ってるのかって? 知らな~い。 もしかしたら赤おじさんと黒おじさんから聞いた歌だったかもしれない。 でも別にそんなことどうでもいいの。 だって、誰も聞いてないんだから。 だからね、アリスはもっとたくさん、一緒に歌ってくれるお友達を探すの。 おもちゃも欲しいけど、やっぱり一緒に遊べる人間のお友達がいいなぁ。 ほら、あそこにも。 動物さんが3匹とお人形さんが1個、お友達になれそうな人が1人いるの。 だからね、私は聞くの。 「ねえ、あなたはアリスとお友達になってくれる?」 ◆ 「ソーナンス!」 彼らと出会ったのは偶然だった。 どうしたらいいかと考える二人の元に、突如謎の轟音が響いた。 ほんの一瞬であったが、それは決して無視できるほどのものではなかった。 まるで、地面を丸ごと抉り取ったかのような音が、ほんの一瞬とはいえ聞こえてきては彼らとてじっとはしていられなかった。 まず森を抜け、見晴らしのよい場所に出てから行動しよう。そう言った(ように見えた)のはソーナンスだった。 彼なりに用心し、ピクシーを守ろうとしているのかもしれない。 そして、森を出たところにいたのは。 「ソーーナンス!」 「あなたは、ソーナンスさん?!」 巨大なドラゴン、桃色髪の少女、そしてソーナンスの知り合いらしきモンスター、グレイシアだった。 ソーナンスをどうして彼らが無条件に信用したのかということには彼の戦い方、特性にあった。 彼は自分から戦うことは好まず、相手の攻撃を受け流し反撃に応じることが得意だとされている。 そんなポケモンが、積極的に他のモンスターに戦いを仕掛け、傷つけることはないと、そう判断したことが理由である。 「見たことないモンスターだけど、みんな何て言うの?」 「しらないの?わたしたちポケモンっていうんだけど」 「ソーナンス!」 グレイシア、メタモン(桃色の髪の少女)、ソーナンスは同じ種族に分類されるモンスターであるという。 しかしドラゴン、ピクシーには共に聞き覚えがない。 「ピクシーって言うならお前もだ。色んなピクシーを俺は見てきたが、お前みたいな小奇麗なやつは見たことねえぞ」 「ピクシーさんという名前なのですか。私達もピクシーというポケモンは知っていますが、どうやらあまり関係はなさそうですね」 ドラゴンは青い小悪魔を連想し、グレイシアは白くふっくらとした妖精ポケモンを連想したその名前。 未知なる遭遇は彼らの間に僅かな混乱をもたらしていた。 しかし、そんな彼らの中にも、とある共通点があった。 それは、皆人間の元で暮らし、育てられたモンスターであるということ。 そこに様々な想い、別れがあれど彼らがそうであったということは変わらない。 ドラゴンやメタモンはそこを多くは語れなかったものの、そこには何かしらの想いが込められているのを彼らは感じていた。 「そうだ、ピクシーさん、ソーナンスさん!こんなばしょですけど、せっかくであったんですし、わたしたちとおともだちになりましょうよ!」 そんなことを言い出したのはメタモンだった。 「グレイシアさんとも、こんなにつよいドラゴンさんともおともだちになれたんですし。  きずついてたたかわなくてもみんななかよくしましょう」 「よせ。その呼ばれ方はむず痒いんだよ」 「照れてるんですか?」 「うるせえ!」 ピクシーは驚いていた。 こんなところでも、こんな風に友達を作ろうとするモンスターもいるのだと。 彼女の心に、ほんの小さなものだが希望の光が生まれた。 こんなところに放り込まれ、主に死ねと言われているようなものだと感じて闇に包まれた心に。 このソーナンスのような存在もたくさんいるのだと。 答えは当然決まっている。 「もちろん!皆で一緒に生き残ろう!」 「ソーナンス!」 ここで、ピクシーはこの会場にきて初めて笑顔を見せた。 それにつられ、ソーナンスもしかめっ面の中に嬉しそうな声を上げて同意。 「ありがとう!がんばろうねみんな」 少女の姿をしたモンスターは、そんな彼らの様子にどこまでも嬉しそうだった。 「ねえ、あなたはアリスとお友だちになってくれる?」 そんな声が聞こえた。 とても透き通った、綺麗な声。 一同が振り向くと、そこにいたのは1人の少女。 青いワンピースを身に纏った、綺麗な肌をした女の子。 一見人間にしか見えないが、メタモンや人間に比較的近い外見をしたピクシーもこの場にいる。誰も疑問を持たなかった。 だから、気付くのが遅れた。 友達という言葉に釣られてか、真っ先に近寄っていったのはメタモンだった。 「あなた、なまえなんていうの?」 「わたし?わたしはアリスっていうの」 「アリスちゃんだね。わたしはメタモン。おともだちになりましょう!」 「ほんとう?!わぁい!」 嬉しそうにはしゃぐ二人の少女。 そんな中、ふとドラゴンは少女の瞳を覗き込み。 その奥を見つめ。 「それじゃあね、メタモンさん。おねがいがあるの」 「おねがい?なんでもいってよ。ともだちじゃない」 「そう?それじゃあ」 「メタモン!!危ない!!!」 と、とっさにドラゴンが飛び出し、メタモンを突き飛ばした。 「 死 ん で く れ る ? 」 ◆ 彼らの中で最も生死の境目を生きてきたのはドラゴンだった。 他のモンスターの戦いは傷付くことはあっても死ぬことは極稀なもの。 その中で、ドラゴンだけは常に生死を賭けた殺し合いを、戦いとしてきたのだ。 負ければその時点で不要とされ、捨てられるか最悪処分されるという環境で育ってきた。 故に殺意、悪意といったものにはこの場の他のモンスターと比較して人一倍は敏感であった。 舞い上がったメタモンでは気付けなかった、アリスの瞳の奥にある虚無、真の暗闇。 そして、考え込む仕草と共に少女からとてつもなく嫌な気配を感じ取ったドラゴンは、気がつけば咄嗟に飛び出していた。 (全く、子守なんて慣れないことはするもんじゃねえな) どうせあの時俺は死んでいた。 それなのに命を助けられ、それまでの考えを改めさせられていた。 もう死ぬことでしか己のプライドを保てないと思っていたのを変えられたのだ。あのようなガキのモンスターに。 その結果がこのザマだ。 だけど、不思議と悪い心地はしなかった。 飛び出すと同時に吐いた、俺の炎は”アレ”には届かないだろう。 だから一刻も早くこれから離れろ。 (お前はこんなところにいつモンスターじゃねえ。だから、生きろ) そう心で呟いたのと、ドラゴンの視界が真っ赤に染まったのは、ほぼ同時だった。 &color(red){【ドラゴン@ドラゴンクエストシリーズ 死亡】} ◆ 「グォア…ッ!」 不意に突き飛ばされ、地面に倒れこむメタモン。 呻き声が聞こえた先に視線を戻すとドラゴンさんが全身を真っ黒に染め、血と炎を吹き出しながら崩れ落ちていた。 「じゃましないでよ。アリスはドラゴンさんにはきょうみないんだから」 そう言いながら、アリスは動かなくなったドラゴンの体を蹴り飛ばした。 何が起こっているのか、理性をもって理解できたものは一匹としていなかった。 しかし、グレイシアだけは咄嗟に傍にいたピクシーとソーナンスの前に飛び出した。 それと同時、アリスは3匹の存在に気付いたように視線を向けた。 「あ、そっか。じゃまするならけしちゃえばいいんだ」 そう呟くと同時、アリスの手からとてつもないエネルギーが噴出。 赤き魔力がピクシーを、ソーナンスを、グレイシアを飲み込んでいく。 思わずメタモンは叫ぶ。 「止めてええええええ!!!!」 地面を抉り、周囲の大気を振るわせる大出力の攻撃。 しかし、それでも彼らは形を保っていた。 グレイシアが守るを使ってそれを防いだのだ。 「ソーナンス!!ソーナンス!!」 しかしそれを受けた衝撃か、グレイシアは地面に倒れぐったりしている。 おそらくは守るでも防ぎきれないほどの衝撃を、アリスは放ったということなのだろう。 「あれ?まだ生きてるの?  ウサギさんやお人形さん、ハンプティダンプティさんはいらないのよ」 そう言って再び攻撃を加えようとするアリス。それを見て、メタモンは。 「アリス、こっち!!」 アリスに向けて叫んだ後、森の中へ向けて走り出した。 何も考えがなかったわけではない。 ただ、アリスは自分とは友達になろうとした。しかし皆を邪魔者扱いして殺そうともした。 もし自分とだけ友達になろうとするのならばきっと放っておかないはずだと。 分の悪い賭けだとは本人も思っていたが、メタモンの行動は功を奏した。 「あ、まってー。鬼ごっこするの?ならアリスが鬼ねー」 アリスはこちらに気を取られ、追いかけ始めたのだ。 遠ざかる足音。二人の姿は森の中に消えていく。 「メタモンちゃん!」 「…ぐ……」 「ソーーナンス!」 「だ、大丈夫です…。まだ歩けます…。それより、あの早くここから…。  でないとあの子も、戻って、来られない…」 「う、うん、分かった!ソーナンス、お願い!」 そう言われたソーナンスは、グレイシアを肩で支え、ピクシーが先導して歩き始めた。 メタモンの走り出した方とは逆の場所へ。 ◆ 「おにごっこはやめてかくれんぼにしたの~?」 森の中。 ワンピース姿の少女には酷であるはずの環境もものともせずにアリスは進んでいく。 木々や草花のせいで見通しはあまり利かず、足元も生身の人間には厳しいであろうその空間を、ひょいひょいとそれこそ無邪気な子供のように歩く。 いや、実際彼女は無邪気な子供だった。 だからだろう。 そんな彼女の目の前に、 「あれ?」 自分と同じ顔をした人間がいれば、興味を持つのも当然である。     アリス 「あ~!私だあ!こんにちは!!」 しかし、それ以上の疑問を持つことはなく、己と全く同じ顔をした存在がいるということをあっさりと受け入れていた。 同じ顔、同じ髪、服も形は全く同じ。違うところといえば、その瞳の中に闇が、虚無がないこと、そして服の色が若干薄くなっていることだろう。 「ねえ、ちょっとだけ、おはなししない…?」 「アリスとおしゃべり?いいよ、しようしよう!」 ◇ メタモンがアリスに変身したのにも理由はある。 この子が、一体何者なのかを確かめたかったのだ。 一見では人間にしか見えなかった少女。 しかしドラゴンを得体のしれない方法で殺し、皆に大威力の攻撃を放った。 ドラゴンを殺して。 アリスに変身するまでの間、彼女の目から逸れている間にメタモンはあの光景を思い出して嘔吐した。 まるで何か強力な呪いでも受けたかのような、あまりに無惨な死に様。 出会って数時間だったが、それでも友達だった彼の死はメタモンを深く傷つけていた。 それでも、だからこそ確かめなければならなかった。 あの時友達になろうと言ったのは嘘だったのか。どうしてドラゴンさんを殺したのか。 そのための変身だった。 が、変身後、自分の能力を分析したところでメタモンはこの少女がただ者ではなかったことに気付くまでそう時間は掛からなかった。 所持している技。 高威力、無属性かつ強力な特殊効果を持った特殊攻撃。こんなもの、特性:あまのじゃくのポケモンがVジェネレートを使うようなものだ。 相手のエネルギーを奪い取る技。メガドレインのようなものかと思ったが、この技が吸い取るのは生命力だ。 強力な火炎攻撃。はっきり言って、威力だけならドラゴンさんのものなど比べ物にならないほどの力を持っている。 そして、あのドラゴンさんを殺した技。強力な呪いを投げかける技で、特殊な耐性がなければ防ぐことは難しい。 こんな技を持っている少女は本当に人間なのか。 いや、人間ではなかった。 ポケモンで言うゴーストタイプ、いや、そんなものよりももっと恐ろしい存在だ。 昔聞いたことのある話で、悪い組織の人間に殺された、とあるポケモンの母親がずっと幽霊としてある建物の中に留まって誰も近寄らせないようにしたということがあったらしい。 嘘か本当かまでは分からないが、この少女もそれと似たようなものに思えた。 そして、だからこそ立ち向かわなければいけなかった。 もっと知りたいと思った。もっと、近付きたいと思った。 それがあのドラゴンさんを殺した相手であっても。 きっと私が復讐のためにこの子を殺すなんてことは、きっと彼も望まないと思ったから。 「ねえ、アリスちゃんはおともだちがほしいの?」 「うん!私ずっと一人っきりだったから、いっしょにあそべるお友だちがほしいの」 「じゃあ、どうしてドラゴンさんをころしたの?」 「べつにアリスころそうと思ったんじゃないもん。いきなりとび出してきたのドラゴンさんだもん」 「じゃあ、どうしてわたしをころそうとしたの?」 そう、それこそがきっかけ。 あの時のアリスの呪いが狙ったのは自分だった。 友達になってほしいという言葉、あれは嘘だったというのだろうか。 「だって、アリスとお友だちになるんでしょ?だったら死んでくれないとダメじゃない」 メタモンには、アリスが何を言っているのか分からなかった。 何故死ぬことが友達になることに繋がるのか。 「どうして?しんだらおともだちにもなれないよ?あそぶこともはなすこともできなくなるのよ?」 「どうして?死んだらずっといっしょにいられるのよ?アリスとおんなじにならないとお友だちになれないよ?  アリスのお友だち、みんな死んでるんだもん」 その言葉で、彼女の持つ友達という存在に少し踏み込めた気がした。 もしかしたら、彼女自身が死んだ存在であるためその死生観自体を狂わせているのではないか。 自分も死んでいるのだから、他の人も同じようにすることで仲間を増やせるのだと思っているのではないか。 しかし、いくらアリスがそうだからといってそれで友達になれるとは思えなかったし、何よりメタモンも死にたくはなかった。 「ちがうよ!しぬっていうのはかなしいんだよ!ほかのみんなともあえなくなるし、あそべなくなるの!  ともだちになりたいなら、わたしがなってあげるからそんなしんでほしいなんていっちゃだめなの!」  アリス 「私が何をいってるのかわかんない。  お友だちになってくれるっていうんだったらね、――――死んでくれる?」 その言葉、あの時ドラゴンの庇ったときと同じもの。それは、紛れもない死の宣告。 キーーーーーン 心臓を鷲掴みにでもされたかのような寒気、怖気が全身を襲う。 しかし、それだけだ。メタモンの肉体にも精神にも、大きな影響を及ぼすことはない。 メタモンの変身はただの姿を真似るだけの技ではない。 能力、技、耐性。その全てをコピーするのだ。 そして、アリスには呪殺は通じない。だから、その宣告はメタモンには無意味。 「あれ?死なないんだ。  じゃあしょーぶしようよしょーぶ!アリスまけないから!」 そう言って、アリスはあの莫大な攻撃を打ち出そうと手を翳した。 それを受けきるため、メタモンも同じ技を構える。 全く同じ魔力を持った、全く同じ、大威力の万能技。 森の中、二つの衝撃がぶつかり合った。 ◆ 「グォォ!!」 「きゃあっ!!!」 業火がほとばしり、周囲の木々を一瞬で消し飛ばす。 閃光と吹雪が走り、襲い来る炎を受け流す。 「グルルルル…」 アリスと遭遇した場所から逃げてきた3匹を待ち受けていたのは、一匹の巨大な猛獣だった。 そのモンスターはこちらを認識するや否や、突然攻撃を仕掛けてきた。 業火を吐き、巨大な爪でもってこちらを斬り割かんと振りかざしてきた凶獣に対し、3匹は迎え撃つしかなかった。 「アギダイン!!」 そして今また、彼の唱えた呪文は巨大な火柱を打ち出す。 グレイシアは守るでガードすると同時、吹雪を相手に向かって放つ。 炎を操るゆえ冷気には弱いのか、吹雪く寒い風に動きを止める猛獣。 「メガレイ!」 そこへ追撃をかけるように、ピクシーが光をその手から放出。猛犬を包み込む。 「やった?!」 「油断してはダメ!」 ピクシーの中では、その攻撃は相当のダメージを与えるはずの技。 しかし、グレイシアの警告どおり、猛犬は大したダメージを受けている様子もなく、その場に留まっていた。 「そんな…、だってさっきのは結構な技だったのに…」 「やっぱり。どうやら私達の力がどうしてか下がってるみたい」 先のアリスの発した技、それはジハード。 相手に無属性の高エネルギーをぶつけ、同時に相手の能力を下げる技。 彼らは守るをもってしても防ぎきれなかったあの一撃の、後者の効果による二次被害を受けていた。 グレイシアがそれに気付いたのはこの戦いの中。時間経過か何かしらの対策で戻すことが可能だったかもしれないがタイミングが悪すぎた。 相手はあのドラゴンに勝るとも劣らない強力なモンスター。 いくら2匹がかりとはいえ能力の下がった彼らには荷が重かった。 「グオオオオオオッ!!!」 虚空爪激がグレイシアに放たれる。 後ろに飛びのくことで回避しようとしたが、ジハードのダメージがグレイシアの反応を遅らせる。 結果、直撃こそ避けはしたものの、振り払われた腕に吹き飛ばされてしまう。 「うぁっ…!」 「グレイシア!」 吹き飛び、地面に倒れこんだグレイシアを逃さず、追撃をかけようと爪を振りかざし、 「…!」 その時だった。 グレイシアの目の前にソーナンスが飛び出してきたのは。 「ソーナンス!」 相手の攻撃を受けてから反射することが能力であるソーナンスには、この猛獣は強すぎる。 おそらくダメージを返す前に死ぬだろう。 ゆえに二匹はソーナンスを引かせていたのに。 そして爪が振り下ろされる瞬間、影のようなものが猛獣を包み込んだ。 咄嗟、猛獣は振り下ろした爪を直前で止め、ソーナンスを睨みつける。 「貴様、何をした?」 「ソーナンス」 「なるほど、呪いをかけたか。お前が死ねば、俺の命も共に奪うという呪いを」 「ソーナンス」 「だが、いいのか?もし俺が死を恐れなければ、お前は死ぬことになるのだぞ?」 「ソーナンス」 「そうか」 と、そう言って猛獣は、その爪を再び振り下ろし――― 「ダメーーーー!!!!!」 ピクシーの声が響き。 それが、もう少し動けばその頭を引き裂くであろう、その寸前で止めた。 「いいだろう、こちらとてまだ死にたいわけではない。  お前の勇気に免じて、今回だけは逃がしてやる」 「ソー、ナンス」 その言葉を受けて、それまで微動だにしなかったソーナンスが腰を落とした。 今の今までその恐怖を耐えていたのだろう。腰が抜けているようだった。 グレイシアがその傍に駆け寄り、その背に乗せる。先のお礼だろう。 アリスから受けた攻撃は、ピクシーの回復魔法によって若干ではあるがそのダメージを減らしていた。でなければ戦闘などこなせないだろう。 ともあれ、彼らに背を向けて進む猛獣。もう彼らには興味がないということなのだろう。 と、その方向はこっちの向かってきた場所だ。 グレイシアは一言、猛獣に告げる。 「そっちにはもう一体、私達の仲間が、友達がいます。  変身が得意で、グニャグニャしたピンク色の子です。  もし会うことがあれば、私達の向かった方を伝えてあげてください。お願いします」 あの場においてきた仲間への言伝。 猛獣は振り向いて、グレイシアを見つめる。 「伝えると思うのか?もしかしたら俺はそいつを殺すかもしれんのだぞ?」 「そう言ってもらえるなら、まだ信用できます。あなたは真っ直ぐな者のようです。人を騙したりするのは苦手でしょう?  なら、いきなりあの子に襲い掛かることもないかもしれない」 グレイシアにとって、もしダメでも言っておくだけで少しは違うかもしれないとそう思っただけだ。 万一襲うことがあっても、再度の合流への何かしらの希望は残しておきたかった。 猛獣は答えることもなく、背を向け、また振り返ってこう問うた。 「一つ聞かせろ。  お前達は一体何から逃げていた?  置いてきた仲間、その傷、ただ事ではないだろう?」 「アリス、という女の子に襲われて。仲間も一体殺されました…。  かなりの力を持っているみたいで、私達には手に負えませんでした」 「なるほどな。  いいだろう、お前の言う伝言、一応考えておいてやる」 それだけ言うと、猛獣は背を向け歩き出した。 今度は振り返ることはなかった。 ◆ あれは果たして悪魔だったのか。 ふと、ケルベロスはそう考えた。 悪魔は見つけ次第殺す。手心を加えては己の死にも繋がりかねない。 だからこそ戦闘中はその疑問は打ち捨ててきた。 しかし、あの水色の者は仲間のために己の命を賭した。 悪魔がそのようなことするだろうか。 少なくともそれは低級な悪魔の思考ではない、しかし彼が上級の悪魔にも見えなかった。 あの時の、通りすがりの悪魔を治療し殺された彼を思い出す。 いや、そんなことは関係ない。 今回彼らを逃がしたのは、あくまで身にかけられた呪いを解くため。 それ以上の理由などない。 「アリス、か。  このような場所にいる以上、人間ということは有り得まい。…まさか噂に聞くあいつか?」 ケルベロスは彼らの示した方角へ向かいながら思考を切り替えた。 噂に聞いたことはある。 謎の少女が、友達になろうと道行く人に死を懇願する、悪霊のような存在。 もし、あの魔人が存在するのであれば、奴を討伐するのは俺の役割。おそらく彼らの言っていた仲間に構う余裕はないかもしれない。 魔獣ケルベロス、デビルバスター。 悪魔を狩る。それだけが、俺の役割なのだから。 【C-7/森/一日目/昼】 【魔獣 ケルベロス@女神転生シリーズ】 [状態]:健康 肉体損傷(小) 魔力消費(小) [装備]:無し [所持]:ふくろ(空) [思考・状況] 基本:悪魔を殺して回る、慈悲はない。   1:アリスという少女(高確率で悪魔と推測)を殺す  2:あの3匹は、今だけは見逃す   3:3匹の言う仲間に、彼らの向かった場所を伝えるかどうか―――? ◆ へんしん。 それは相手の能力、技を完全にコピーすることができるという技。 しかし、コピーできないものもある。 一つは体力。例えばメタモンがハピナスに変身してもHPは増えず、メタモンの状態のときそのままとなる。 もう一つは技を出せる回数。変身段階で大幅に使用可能回数が減少しており、今アリスに変身している状態においてもMPは本来よりかなり下がっていた。 だからこそ、メタモンには持久戦となったら圧倒的に不利となる。 そしてこの場においても、地面にはいつくばっているのはメタモンの変身したアリスだった。 「もう終わりなの?」 無論理由としてはそれだけではないだろう。 戦いの中で相手の命を奪おうとするものと、殺したくないと考えるもの。 結果など見え透いている。 「それじゃ、そろそろ死んでくれる?お友だちになれば、もっといっしょにあそべるんだし」 そう言って、地面で僅かに身動ぎするメタモンに近付くアリス。 と、そこでメタモンの体に異変が起きる。 アリスを模った体がグニャグニャと輪郭を崩し、少しずつ色合いを落としていく。 その光景を見つめて驚くアリスの目の前で、その体はさらに小さくなっていき、最終的に元あったメタモンの形にまで戻っていった。 そんな姿を見つめて、アリスはがっかりしたような声でこういった。 「そっかー、にんげんだってウソついてたんだー」 そして、そのまま手をかざす。 そこに顕現するのは地獄の業火というのも生ぬるい、まさに天が齎す裁きのごとき大火炎。 「それじゃ、やっぱりいらない。じゃあね」 トリスアギオン。 周囲の木々を焼失ではなく消滅させるほどの高熱が、メタモンを包み込んだ。 ◆ 3匹は安全な場所を探して逃走している最中も、メタモンのことを一時たりと忘れたりなどしなかった。 「大丈夫、だよね、あの子…」 「私が油断さえしなければ、メタモンさんもドラゴンさんも…、くっ…!」 「ソーナンス…」 だが、今の彼ら自身分かっていた。 己の体の状態も、その無力さも。 いくら闘技場でいい結果が残せる強さがあっても、ポケモンリーグを勝ち残ったという過去を持っても。 この場で、命の掛かった戦いの場での、仲間の危機の前では、ただひたすらに無力だった。 【C-7/森/一日目/昼】 【グレイシア@ポケットモンスターシリーズ】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身は不明) [思考・状況] 基本:誇りに懸けて、必ず主催者を倒す  1:アリスから離れる  2:メタモン… 【ピクシー@モンスターファーム】 [状態]:疲労(中)、能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(不明支給品1) [思考・状況] 基本:どうすればいいか分かんない、でも死にたくない。  1:皆と一緒に行動する   2:メタモンが気がかり 【ソーナンス@ポケットモンスター】 [状態]:能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(不明支給品1) [思考・状況] 基本:ソーナンス!  1:ピクシーのそばにいてあげたい。   2:ソーナンス… ※能力低下がいつまで継続するかは不明ですが、時間経過で解けるでしょう。 ◆ 炎は一瞬で全てを焼き尽くし、そのまま燃料を失って消滅。 その場に残っているのは、濛々と湧き上がる煙だけ。 炎を放った主は煙の外からその光景を眺め。 「じゃあ、アリスは行くね。ほかにあそんでくれる子はいないかなぁ」 そう言って、アリスは興味をなくしたようにその場を立ち去った。 煙の中を確かめることもなく、それまでと同じく鼻歌を歌いながら。 【B-6/草原/一日目/昼】 【アリス@女神転生シリーズ】 [状態]:健康 、魔力消耗(小) [装備]:チェーンソー [所持]:ふくろ(空) [思考・状況] 基本:遊ぶ ◆ アリスが去り、さらにしばらく経った後煙が晴れた、黒こげの地面。 本来であれば動くものがいるはずもないその場所に、つぶれたピンク色のスライム状の物体は残っていた。 『これはお前が持っていけ。薬の礼だ』 『そんな、わるいです!おともだちになれたんだから、そんなきづかいいらないですよ!』 『いいから、持っていけ。俺はそこそこ強いが、お前は色々と危なっかしい。  それに友達だとか認めたわけじゃないが、されっぱなしってのも気分が悪いんだよ』 あの時ドラゴンが渡してくれた、彼の道具、復活玉。 それがメタモンの命をどうにか繋ぎとめていた。 しかし、命を繋ぎとめたとは言っても、体に受けた、致命傷にはならないほどのダメージまでは回復してはくれなかった。 今はもう動くこともできない状態だ。 (もしこれをドラゴンさんがもってたら、ドラゴンさんはしなずにすんだのかな…) 掠れる意識の中、ふとそんなことを思ってしまった。 (ドラゴンさん…) 彼の最後を思い出し、悲しさと悔しさに押しつぶされそうになる。 それでもあのアリスという少女が、メタモンはずっと気になっていた。 『死んだらずっといっしょにいられるのよ?アリスとおんなじにならないとお友だちになれないよ?  アリスのお友だち、みんな死んでるんだもん』 (そんなの…違う…) 友達になりたいと言い、そして死んでくれないかとも言った少女。 メタモンにとって相反する2つの言葉。 それが頭の中でリフレインする。 (死ぬっていうのは、辛いんだよ、悲しいんだよ…?  そんなので友達なんか、できないよ…) 体のダメージに、頭が限界を迎えつつある。 朦朧とする頭が、さらに薄れていく。 そんな中でも、メタモンは己をここまで傷つけた少女のことを思い続け、 (だから、しねばともだちになれるって…、そんなの、ぜったいおかしいよ――――) その思考を最後に、メタモンの意識は休息を求めて沈んでいった。 【B-6/草原/一日目/昼】 【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】 [状態]:意識無し、疲労(大)、ダメージ(大)、能力低下 [装備]:なし [所持]:ふくろ(中身なし) [思考・状況] 基本:みんなを笑顔にして、幸せにする  1:殺すことは仕方ないこともあるかもしれないけれど、そうでなかったら反論する  2:”ともだち”をつくる   3:アリスが気にかかる 《支給品紹介》 【復活の玉@ドラゴンクエスト】 ドラゴンに支給。 戦闘不能になった際、一度だけ復活することができる。 |No.27:[[ティラノモンさん究極体おめでとうございます]]|[[時系列順]]|No.16:[[価値観]]| |No.27:[[ティラノモンさん究極体おめでとうございます]]|[[投下順]]|No.29:[[眠ったままで]]| |No.11:[[human in the box]]|魔人アリス|No.33:[[タチムカウ-狂い咲く己の証明-]]| |No.07:[[Fantastic Future]]|ドラゴン|&color(red){死亡}| |No.07:[[Fantastic Future]]|グレイシア|No.46:[[命の価値は?]]| |No.07:[[Fantastic Future]]|メタモン|No.50:[[escape]]| |No.02:[[本当に逃がしますか? →はい]]|ピクシー|No.46:[[命の価値は?]]| |No.02:[[本当に逃がしますか? →はい]]|ソーナンス|No.46:[[命の価値は?]]| |No.13:[[I Wanna Be Your Dog]]|魔獣ケルベロス|No.33:[[タチムカウ-狂い咲く己の証明-]]|

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