モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」まとめ@wiki
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2019-04-28T02:21:37+09:00
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5スレ目
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<ul><li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/445.html">>>4~>>42</a>(◆6osdZ663So氏)登場アイドル:小日向美穂、藤原肇</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/446.html">>>47~>>56</a>(◆hCBYv06tno氏)登場アイドル:川島瑞樹</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/447.html">>>63~>>72</a>(◆lhyaSqoHV6氏)登場アイドル:瀬名詩織、槇原志保、江上椿、</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/448.html">>>80~>>88</a>(◆zvY2y1UzWw氏)登場アイドル:横山千佳 ※憤怒の街</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/449.html">>>138~>>146</a>(◆zvY2y1UzWw氏)登場アイドル:多田李衣菜、木村夏樹、諸星きらり、神谷奈緒</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/450.html">>>150~>>158</a>(◆hCBYv06tno氏)登場アイドル:西園寺琴歌、塩見周子、柊志乃 ※憤怒の街</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/451.html">>>166~>>172</a>(◆IRWVB8Juyg氏)登場アイドル:西園寺琴歌、三船美優、兵藤レナ ※憤怒の街</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/452.html">>>190~>>194</a>(◆llXLnL0MGk氏)登場アイドル:東郷あい、古澤頼子、松原早耶</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/453.html">>>215~>>241</a>(◆6osdZ663So氏)登場アイドル:水木聖來、小日向美穂</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/455.html">>>265~>>277</a>(◆llXLnL0MGk氏)登場アイドル:大和亜季、西島櫂 ※憤怒の街</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/456.html">>>280~>>291</a>(◆zvY2y1UzWw氏)登場アイドル:ナニカ、北条加蓮、鷹富士茄子、松永涼、神谷奈緒 ※反転</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/457.html">>>300~>>308</a>(
◆yIMyWm13ls氏)登場アイドル:関裕美 ※憤怒の街</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/458.html">>>319~>>323</a>(◆mtvycQN0i6氏)登場アイドル:クラリス</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/459.html">>>329~>>334</a>(
◆zvY2y1UzWw氏)登場アイドル:木場真奈美 ※憤怒の街</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/460.html">>>341~>>352</a>(◆hCBYv06tno氏)登場アイドル:柊志乃 ※憤怒の街</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/461.html">>>360~>>369</a>(◆zvY2y1UzWw氏)登場アイドル:西園寺琴歌、三船美優、兵藤レナ 多田李衣菜、木村夏樹、諸星きらり、神谷奈緒 ※憤怒の街</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/462.html">>>380~>>407</a>(◆TAACIbOrYU氏)登場アイドル:塩見周子 ※憤怒の街</li>
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<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/464.html">>>434~>>443</a>(◆lhyaSqoHV6氏)登場アイドル:間中美里 伊集院惠</li>
<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/465.html">>>452~>>505</a>(◆6osdZ663So氏)登場アイドル:小日向美穂 藤原肇 渋谷凛 ※反転</li>
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<li><a href="//www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/467.html">>>528~>>540</a>(◆EBFgUqOyPQ氏)登場アイドル:アナスタシア 鷺沢文香 鷹富士茄子</li>
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<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/470.html">>>575~>>579</a>(◆llXLnL0MGk氏)登場アイドル:服部瞳子
古澤頼子 松原早耶</li>
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<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/472.html">>>609~>>618</a>(◆llXLnL0MGk氏)登場アイドル:涼宮星花 大和亜季 西島櫂</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/473.html">>>625~>>647</a>(◆6osdZ663So氏)登場アイドル:楊菲菲 櫻井桃華</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/474.html">>>656~>>670</a>(
◆IRWVB8Juyg氏)登場アイドル:ヘレン ※反転(終了)</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/475.html">>>676~>>688</a>(◆UCaKi7reYU氏)登場アイドル:相原雪乃</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/476.html">>>701~>>711</a>(◆zvY2y1UzWw氏)登場アイドル:道明寺歌鈴 市原仁奈 桃井あずき 松永涼 喜多見柚子 神崎蘭子 ※肝試し</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/477.html">>>716~>>729</a>(◆tsGpSwX8mo氏)登場アイドル:綾瀬穂乃香</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/478.html">>>735~>>749</a>(◆yIMyWm13ls氏)登場アイドル:相原雪乃 渋谷凛 上条春菜</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/479.html">>>756~>>764</a>(◆llXLnL0MGk氏)登場アイドル:古澤頼子 松原早耶 西島櫂
大和亜季 涼宮星花</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/480.html">>>770~>>777</a>(◆lhyaSqoHV6氏)登場アイドル:月宮雅</li>
<li><a href="https://www57.atwiki.jp/mobamasshare/pages/481.html">>>782~>>803</a>(◆6osdZ663So氏)登場アイドル:小日向美穂 藤原肇</li>
</ul><p> </p>
2019-04-28T02:21:37+09:00
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5スレ目>>782~>>803
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<p>782 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:40:21.25 ID:7bYZ6KqBo
[1/22]<br />
イベント「真夏の肝試し大作戦!」<br />
設定お借りして投下します</p>
<p><br />
前回までのあらすじ</p>
<p>『斬っても斬ってもカピバラ』</p>
<p>参考<br />
>>452 (美穂と超ハンテーン)<br />
>>700 (真夏の肝試し大作戦!)</p>
<p>783 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:40:50.32 ID:7bYZ6KqBo
[2/22]</p>
<p>私にとって今回の事はそれは一大事だった。</p>
<p><br />
昼間でも、外が夜みたいに薄暗い事だとか</p>
<p>テレビが付かなくなったとか、</p>
<p>電話が使えなくなったとか、</p>
<p>家の外の道で妖怪が騒いでるらしいだとか、</p>
<p><br />
そんな事よりも重大な事だ。</p>
<p><br />
肇ちゃんが倒れた。</p>
<p>784 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:41:16.94 ID:7bYZ6KqBo
[3/22]</p>
<p>肇「うぅ・・・・・・・あぅ・・・・・・。」</p>
<p>美穂「肇ちゃん・・・・・・。」</p>
<p><br />
急に倒れたから、今はお布団で寝てもらってる。</p>
<p>病院には電話が繋がらないので、</p>
<p>お父さんが近所のお医者さんを呼んでくると言っていた。</p>
<p>たぶん今頃出かける準備をしているところだと思う。</p>
<p><br />
肇「うぅ・・・・・・。」</p>
<p><br />
前にも妖力の枯渇と空腹で倒れた事はあったけど</p>
<p>今回はそうじゃないのは、すぐにわかった。</p>
<p>だって、苦しみ方が全然違う。</p>
<p><br />
美穂「今朝、起きてきた時は何ともなかったのに・・・・・・。」</p>
<p><br />
いや、何ともなかったはずがない。</p>
<p>きっと、前倒れた時みたいに、何でもない顔で無理してたんだ。</p>
<p><br />
肇「うぁ・・・・・・。」</p>
<p>美穂「どうして・・・・・・」</p>
<p><br />
気づいてあげられなかったのかな。</p>
<p>785 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:41:45.84 ID:7bYZ6KqBo
[4/22]</p>
<p><br />
ぴんぽーん</p>
<p><br />
そんな時だ。</p>
<p>玄関の呼び鈴が鳴った。</p>
<p>美穂「・・・・・・・?こんな時にお客さん?」</p>
<p><br />
玄関でお母さん達が話し合っているのが聞こえる。</p>
<p>一体誰だろう?</p>
<p><br />
そんな風に思っていると、足音がつかつかと</p>
<p>私達の居る客間に近づいてきて、</p>
<p>「どうぞ。」</p>
<p>と、お母さんが外からドアを開けた。</p>
<p>786 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:42:12.89 ID:7bYZ6KqBo
[5/22]</p>
<p>スラリと長身の和服を着た男の人が部屋に入ってきた。</p>
<p>知らない人だ。</p>
<p>だけど、すぐに肇ちゃんの関係者なんだなってわかった。</p>
<p>その男の人の頭には長い、曲がりくねった角があったから。</p>
<p><br />
「やれやれ、こんな事になっているだろうとは思っていたよ。」</p>
<p>「美穂さんの父君が、出かけてしまう前に来れて良かった良かった。」</p>
<p>「何しろ、外には妖怪悪霊共がうじゃうじゃ居る。人間が不用意に外に出るのはあまりよくない。」</p>
<p>「まあ、おかげで私がここまで来る道を堂々と歩いていても、誰にも不思議がられる事はなかったのだが。」</p>
<p><br />
美穂「あ、ああの、ど、どちら様ですか?」</p>
<p><br />
「ああ、いや失礼。申し遅れた。」</p>
<p>「はじめまして、こんにちは。美穂さん。」</p>
<p>「私は、肇の父だ。」</p>
<p><br />
その人は肇ちゃんのお父さんだった。</p>
<p>787 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:42:54.50 ID:7bYZ6KqBo
[6/22]</p>
<p>藤原父「娘が世話になっている身でありながら、不躾なお願いで大変恐縮なのだが、」</p>
<p>藤原父「ほんの少しの間だけ、お母君は部屋の外で待っていて頂けないだろうか。」</p>
<p>藤原父「少し、肇と大事な話がしたい。」</p>
<p><br />
その頼み事にお母さんは少しだけ難しい顔をしたけれど、</p>
<p>すぐに了承して、</p>
<p>「美穂。」</p>
<p>と、私にも部屋の外に出るように促した。</p>
<p><br />
藤原父「ああ、いや。美穂さんはそのままで。彼女はきっと知っておきたい話でしょう。」</p>
<p><br />
お母さんはやっぱり難しい顔をして、</p>
<p>少しだけ考えた後に、私の方を見た。</p>
<p>私が頷くと、軽く溜息をついたけれど、黙ってドアを閉めてくれた。</p>
<p>客間の中に居るのは、私と肇ちゃん、そして肇ちゃんのお父さんの3人だけだ。</p>
<p><br />
それを確認して、肇ちゃんのお父さんが話を始める。</p>
<p><br />
藤原父「さて、まずは美穂さんに、肇が倒れた理由から説明しようかな。」</p>
<p>788 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:43:30.65 ID:7bYZ6KqBo
[7/22]</p>
<p>藤原父「原因は今外で起こっている事と、そして刀にある。」</p>
<p>藤原父「『鬼神の七振り』、私の父が作り上げた、妖刀七本。」</p>
<p>藤原父「『小春日和』を持つ美穂さんも知ってのとおり、」</p>
<p>藤原父「この刀達は周囲から負のエネルギーを吸い上げる。」</p>
<p><br />
どうして、この人は私が『小春日和』を持っていることを知っているのだろう。</p>
<p>と言うか、名乗る前から私の名前も知っていた。</p>
<p><br />
藤原父「それについては、肇から何度か便りがあったのでな。」</p>
<p>美穂「えっ、今、私喋ってました!?」</p>
<p>藤原父「すまないが、心の声を聞かせてもらった。」</p>
<p><br />
聞こえちゃうの、これ?</p>
<p><br />
藤原父「聞こうとしてるのではなく、聞こえてしまうものなのだ。」</p>
<p>藤原父「私は肇よりも二倍鬼に近いからな。体質的なものだ。」</p>
<p>藤原父「悪気はまったくないので、許して欲しい。」</p>
<p><br />
そう言われても、心の声まで聞かれてしまうのはなんだかむず痒い。</p>
<p>789 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:44:11.91 ID:7bYZ6KqBo
[8/22]</p>
<p>藤原父「話を続けよう。」</p>
<p>藤原父「今現在、この街は祟り場の影響下に入っていてな。」</p>
<p>美穂「祟り場?」</p>
<p>藤原父「すまない、聞きなれぬ言葉であったな。」</p>
<p>藤原父「何らかの原因で特定地域の妖気が爆発的に増幅して出来る領域でな。」</p>
<p>藤原父「このような人里で、ここまで広範囲に祟り場が出来ることは珍しい事なのだが・・・・・・。」</p>
<p>私達が知らない間に、なんだか外はすごく大変な事になっていたらしい。</p>
<p>藤原父「なんにせよ、おかげで妖気に汚染された負のエネルギーが大気に満ちているのだ。」</p>
<p>藤原父「それが周囲から負のエネルギーを吸う、刀達に良くない・・・・・・。」</p>
<p>藤原父「いや、良すぎる影響を与えてしまうのだ。」</p>
<p>美穂「良すぎる影響ですか?」</p>
<p>そう言えば、今朝からヒヨちゃんはすごく元気な気がする。</p>
<p>カピバラさんと戦った時に、負のエネルギーをたくさん使ちゃったせいで、</p>
<p>最近は少し弱っていたのだけど。</p>
<p>790 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:45:00.19 ID:7bYZ6KqBo
[9/22]</p>
<p>藤原父「例えば『戟王丸』」</p>
<p>藤原父「日本一、キレるこの刀は周囲から常に『怒り』のエネルギーを吸い取っている。」</p>
<p>藤原父「祟り場の影響下ではな、その吸い取る速度が凄まじく速い。」</p>
<p>藤原父「鞘に収めて一週間で溜まる分の怒りが、わずか一日で溜まるほどにな。」</p>
<p>藤原父「負のエネルギーを汚染する妖力の影響でだ。妖刀であるが故の相乗効果と言う奴だな。」</p>
<p>藤原父「浄化の鞘による負のエネルギーの浄化速度などは、もはや焼け石に水であろう。」</p>
<p><br />
淡々と、肇ちゃんのお父さんは話しているが、</p>
<p>つまりそれは、</p>
<p><br />
美穂「刀の感情を制御できない・・・・・・。」</p>
<p>藤原父「そうだ。負の感情を吸いすぎれば、刀に取り付けられた核が暴走してしまう。」</p>
<p>藤原父「まあ、刀が一本であるならばどうにか制御できるだろう。」</p>
<p>藤原父「しかし、肇は、数本の刀を所有している。」</p>
<p>藤原父「祟り場の影響下でこれらの刀、全ての面倒を見切るのははっきり言って不可能に近い。」</p>
<p><br />
藤原父「ならば、肇はどうしたか。」</p>
<p>胸がざわめく。嫌な予感がする。</p>
<p>藤原父「刀に流れるはずの、負のエネルギーを自らが引き受けたのだ。」</p>
<p>791 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:45:50.00 ID:7bYZ6KqBo
[10/22]</p>
<p>美穂「えっ、そんな事したらっ・・・・・・」</p>
<p>今にも叫びそうになったけど、肇ちゃんが傍で眠っている事を思い出して、グッと堪えた。</p>
<p>そんな事してしまえば、どうなってしまうのかまではわからない。でも、すごく無茶しているのはわかった。</p>
<p>藤原父「引き受けているのは妖力に近い負のエネルギーだ、肇にもそれほど悪い影響は与えないよ。」</p>
<p>藤原父「それに、その判断はおおむね正しい。おかげで刀達を暴走させずにすんだ。」</p>
<p>美穂「悪い影響は与えないって言うなら・・・・・・じゃあ、なんで肇ちゃんは倒れたんですか?」</p>
<p>私の知りたかった事にようやく答えが出る。</p>
<p>藤原父「妖力の溜め込みすぎだ。」</p>
<p><br />
藤原父「妖力の枯渇を空腹とするならば、食べすぎて苦しんでいるようなものだな。」</p>
<p>藤原父「極端な子だ、まったく。」</p>
<p>藤原父「さて、美穂さん。ここまで聞いて何か質問はあるかな?」</p>
<p>美穂「・・・・・・。」</p>
<p>美穂「あのっ」</p>
<p>質問と言う訳ではないが、</p>
<p>ただ冷然と話し続けた彼に、私は一言だけ言いたかった。</p>
<p>美穂「肇ちゃんの事、心配じゃ無いんですか・・・・・・?」</p>
<p>美穂「肇ちゃん・・・・・・こんなに苦しんでてっ」</p>
<p>私の言葉に彼は少しだけ驚いた顔をした、</p>
<p>けれどすぐ真面目な顔になって</p>
<p>藤原父「・・・・・・勿論心配だとも。だからここまで駆けつけたんだ。」</p>
<p>そう言ってくれた。</p>
<p>792 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:46:38.52 ID:7bYZ6KqBo
[11/22]</p>
<p>藤原父「もし私が冷然と話している様に見えたなら、それは慌てる必要が無い事を知っていたからだ。」</p>
<p>美穂「えっ?」</p>
<p>藤原父「ちゃんと解決策がある。すぐに良くなるのだ、この症状は。」</p>
<p>美穂「あ、あれ?そうなんですか?!」</p>
<p>もしかしたら、とんちんかんな事を聞いてしまったのかもしれない。</p>
<p>藤原父「けど、そうだな。私にとっては大したこと無い症状に見えていても」</p>
<p>藤原父「知らない美穂さんにとっては一大事だった。そこには気づけなかったな。すまない、謝ろう。」</p>
<p>美穂「い、いえ!わ、私の方こそ、な、なんか失礼な事言っちゃってすみません・・・・・・。」</p>
<p>美穂「あっ!そ、それより解決策があるなら、肇ちゃんを!」</p>
<p>藤原父「そうだな、美穂さんへの説明も終えたし、寝ぼすけを起こすとしよう。」</p>
<p>そう言って、肇ちゃんのお父さんは、</p>
<p>寝ている肇ちゃんのところに近づいて、腰を下ろし、</p>
<p>肇ちゃんの頬をペチペチと叩きながら言った。</p>
<p>藤原父「ほら、起きたまへよ。肇。」</p>
<p>美穂「あ、あの、もう少し優しく起こせませんか?」</p>
<p>藤原父「これでも優しくやっている。」</p>
<p>この人は鬼なんだろうか、あっ、鬼だった。</p>
<p>793 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:47:25.42 ID:7bYZ6KqBo
[12/22]</p>
<p>肇「う、うーん。むにゃ・・・・・・あ、あれ?お父さん?」</p>
<p>藤原父「気がついたか?」</p>
<p>肇「・・・・・・?でも、ここ美穂さんのお家・・・・・・・あ、そっか夢か・・・・・・ふにゃ。」</p>
<p>藤原父「ニ度寝は感心しないぞ。」</p>
<p>そう言って再びぺちぺち頬を叩く。</p>
<p>鬼なのかな、この人。あっ、鬼だ。</p>
<p>肇ちゃんが今度こそ起きる。</p>
<p>肇「えっ・・・・・・嘘?本当にお父さん?でもなんで?」</p>
<p>藤原父「お前が倒れたから、お邪魔させていただいてるのだ。」</p>
<p>肇「あっ・・・・・・そっか。私、妖力を・・・・・・。」</p>
<p>藤原父「溜め込みすぎた妖力を少しだけ叩き出した。」</p>
<p>藤原父「しばらくは大丈夫だろう。」</p>
<p>どうやら、頬を叩いていたのはそのためだったらしい。</p>
<p>淡々と振舞っているけど、ちゃんと肇ちゃんのために行動してくれてるとわかって、安心する。</p>
<p>美穂「肇ちゃん、おはよう。」</p>
<p>肇「あっ・・・・・・えっと、おはようございます、美穂さん。」</p>
<p>そして、ちゃんと返事がかえってきてくれたのが、何より嬉しい。</p>
<p>794 名前: ◆6osdZ663So[sage] 投稿日:2013/08/12(月) 19:47:58.79 ID:7bYZ6KqBo
[13/22]</p>
<p>藤原父「しかし、まったく妖力の貯めすぎで倒れるものなどそうは居ないぞ。」</p>
<p>肇「うっ・・・・・・。」</p>
<p>肇ちゃんがすごくばつの悪そうな顔をした。</p>
<p>私が、肇ちゃんのお父さんの言葉の意味を考えていると、</p>
<p>藤原父「美穂さん、溜め込みすぎた力は使えば良いのだ。」</p>
<p>彼自身から説明してくれた。そっか、心が読めるんだった。</p>
<p>藤原父「何だって消費するのは大して難しいことではない。」</p>
<p>うーん、お金みたいな感覚なのかな?</p>
<p>貯めるのは難しいけれど、使っちゃうのは簡単みたいな?</p>
<p>藤原父「だから普通なら、自分自身が倒れてしまうまで妖力を溜め込むことはまず無いのだ。」</p>
<p><br />
じゃあ、どうして肇ちゃんはそうなってしまったのだろう。</p>
<p>藤原父「一つは、刀達に流れる妖力を引き受けた事で、肇に流れる妖力の供給量が莫大になってしまったこと。」</p>
<p>藤原父「消費するのは簡単だが、急に供給量が膨れ上がると使い切るのは大変だからな。」</p>
<p>お金で例えるなら、</p>
<p>急にお小遣いが十倍になったら何に使っていいのかわからなくなるのと同じ、かな?</p>
<p>うーん、ちょっと違う気もする。</p>
<p>藤原父「まあ、これだけならば、大した問題ではないのだ。」</p>
<p>藤原父「妖力をしっかり使っていれば、倒れるまでの事にはならないだろう。」</p>
<p>795 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:48:58.73 ID:7bYZ6KqBo
[14/22]</p>
<p>藤原父「問題はもう一つ、肇は溜まった妖力を一切使おうとしなかったことだ。」</p>
<p>美穂「えっ?」</p>
<p>藤原父「普段よりも数倍に供給量の増えた妖力を、少しも使おうとしなければ、それは倒れるだろうな。」</p>
<p>肇「お父さんっ・・・・・・。」</p>
<p>知られたくない秘密を知られてしまったみたいに、</p>
<p>肇ちゃんはちょっと怒りながら、言った。</p>
<p>美穂「肇ちゃん、どうして?」</p>
<p>だから、私は肇ちゃんに向き合って、肇ちゃん自身に聞くことにした。</p>
<p>肇「それは・・・その・・・。」</p>
<p>肇ちゃんが目をそらして、言いにくそうにしている。</p>
<p>なんだか珍しい光景で、不謹慎だけど、ちょっと可愛い仕種だと思った。</p>
<p>藤原父「美穂さん達に、迷惑をかけたくなかったのだろう。」</p>
<p>肇「お、お父さんっ!」</p>
<p>なかなか肇ちゃんが理由を話さなかったので、結局、彼が答えを出したのだった。</p>
<p>796 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:49:29.39 ID:7bYZ6KqBo
[15/22]</p>
<p>美穂「迷惑だなんて・・・・・・どうして?」</p>
<p>藤原父「祟り場において、妖術の行使と言うのはな。」</p>
<p>藤原父「我々にとってなかなか、どうしようもなく抗い難い一種の高揚感を生むのだ。」</p>
<p>藤原父「具体的に言えば、感情が昂ぶり、テンションが上がって、色々とやり過ぎてしまう。」</p>
<p>藤原父「そして、それは妖力を使えば使うほどに顕著だ。」</p>
<p>藤原父「どうしても近くに居る人間には、多少の、良くない影響を与えてしまうだろうな。」</p>
<p>肇ちゃんは、妖力を使う事で、私達に危害が及ぶことを気にしていたらしい。</p>
<p><br />
藤原父「だが、かと言って、肇は美穂さん達から離れることも出来なかった。」</p>
<p>藤原父「祟り場と言うのは妖怪にとっては良い場であっても、人間にとっては運気を下げる領域でな。」</p>
<p>藤原父「ああ、今思えばそれも悪かったのかもしれない。肇は一対三で人間に近い側だからな。」</p>
<p>藤原父「とにかく、そう言うわけで美穂さん達にも、どんな危険が及ぶかわからない。」</p>
<p><br />
藤原父「付くべきか離れるべきか迷い、付いて我慢しようと決めて、結果倒れてしまったと言う訳だ。」</p>
<p>美穂「それじゃあ、肇ちゃんが倒れちゃったのは私のせい?」</p>
<p>肇「それは違いますっ!」</p>
<p>私の言葉は、肇ちゃんに強く否定された。</p>
<p>797 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:50:19.50 ID:7bYZ6KqBo
[16/22]</p>
<p>藤原父「そう、肇の言うとおり。美穂さん達のせいではない。」</p>
<p>藤原父「今回の失敗は、肇の判断の誤りに他ならない。」</p>
<p>藤原父「迷惑を掛けたくなくてやった行動で、結果、迷惑を掛けてしまっているのだからな。」</p>
<p>肇「うっ・・・・・・・。」</p>
<p>痛いところを付かれたようだ。</p>
<p>藤原父「そして、このままでは同じ失敗を繰り返し、またすぐに倒れてしまうだろうな。」</p>
<p>藤原父「頑固者のお前はまた、我慢しようとするのだろう。」</p>
<p>肇「うぐっ・・・・・・・。」</p>
<p>しかも図星らしい。</p>
<p>美穂「肇ちゃん、私達の事を思ってくれるのは嬉しいし、」</p>
<p>美穂「それを迷惑だなんて私は思えないけど、でも無理しちゃダメだよ。」</p>
<p>肇「・・・・・・ですが」</p>
<p>それでも、肇ちゃんにも譲れないところはあるみたいだった。</p>
<p><br />
藤原父「まあ、今回の件、肇一人では落とし所を決めるのはなかなか難しいことだ。」</p>
<p>藤原父「祟り場の発生などは、想定外の緊急事態であるしな。」</p>
<p>藤原父「そこで私が、この板挟みの問題を解決するために、急遽駆けつけたのだ。」</p>
<p>肇「解決?お父さんが?」</p>
<p>藤原父「ああ、そうだ。」</p>
<p>つまりは肇ちゃんの事が心配で飛んできてくれたのだろう。</p>
<p>そんな彼が、肇ちゃんを悩ます問題の解決策を話し始めた。</p>
<p><br />
藤原父「まずは、肇の持つ、『鬼神の七振り』だが。」</p>
<p>藤原父「私が預かろう。」</p>
<p>肇「えっ。」</p>
<p>藤原父「いや、お前の使命を奪おうと言う訳ではない。刀の使い手を探すのはお前の役目だ。」</p>
<p>藤原父「だが、何も全ての使い手が見つかるまで無休で探す事も無いだろう。」</p>
<p>藤原父「いい機会だ、少し休め。」</p>
<p>798 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:51:22.68 ID:7bYZ6KqBo
[17/22]</p>
<p>肇「休むって言っても・・・・・・。」</p>
<p>藤原父「発生した祟り場を収束させようと活動している者達が居る。この事体もじきに収まる。」</p>
<p>藤原父「それまでの間だ。」</p>
<p>祟り場が発生している間、肇ちゃんには刀の使い手探しを休暇させるつもりらしい。</p>
<p>藤原父「刀を持っていなければ、刀に流れる妖力をお前が引き受ける必要も無い。」</p>
<p>藤原父「つまり、これで一つ目の問題は解決だ。」</p>
<p><br />
肇「でも、それだとお父さんが。」</p>
<p>藤原父「私が刀の面倒を見切れぬのではと心配しているのか?」</p>
<p>藤原父「なら、それは要らぬ心配だな。伊達に人と鬼の世、半々の道を歩んで来てはおらんつもりだ。」</p>
<p>藤原父「刀達の面倒くらい見切って見せるとも。」</p>
<p>藤原父「それに私はお前の二倍鬼だ。つまりお前の二倍は凄いし、二倍は無茶できるぞ。」</p>
<p>その言葉に、肇ちゃんはムッとした。</p>
<p>また珍しい表情を見れたな。</p>
<p>肇「でも私は、お父さんより一倍半、人としては凄いよ。」</p>
<p>肇ちゃんが対抗して言う。</p>
<p>こんな肇ちゃんが見れるなんて思わなかった。</p>
<p>藤原父「そうだな、だから祟り場での不運の影響も、私はお前の三分の二ですむ。」</p>
<p>言い返す言葉がないのか、肇ちゃんはさらにむぅーっとした。</p>
<p>美穂「ふふっ」</p>
<p>そのやり取りをみて私は思わず笑ってしまった。</p>
<p>それに気づいた肇ちゃんは少しだけ顔を赤らめていた。</p>
<p>799 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:52:14.67 ID:7bYZ6KqBo
[18/22]</p>
<p>藤原父「さて、もう一つの問題の方だが、」</p>
<p>藤原父「刀が無くても、貯めてしまった妖力が無くなる訳ではないし、吐き出さねば同じ事だ。」</p>
<p>藤原父「そこで、」</p>
<p>まさか、また叩き出すのだろうか。</p>
<p>藤原父「いやいや私はそこまで鬼畜ではない。」</p>
<p>藤原父「流石に娘を何度も叩くのは人として心が痛むよ。」</p>
<p>藤原父「だから別の方法、もっと簡単な解決法だ。」</p>
<p><br />
藤原父「肇、外で遊んでくるといい。」</p>
<p>肇「えっ。」</p>
<p>美穂「えっ。」</p>
<p>なんだか想像していたよりすごく簡単な解決法だった。</p>
<p>あ、でも今外は確か、</p>
<p>藤原父「そう、妖怪悪霊どもがうじゃうじゃいる。」</p>
<p>藤原父「しかし、私達にとってはお祭り騒ぎのようなもの。」</p>
<p>藤原父「そんな中で遊ぶのは楽しいぞ。」</p>
<p>藤原父「肇もお祭りは好きだっただろう?”おじいちゃん”がよく連れて行ったものだったな。」</p>
<p>肇「お祭りは確かに好きだけど・・・・・・。」</p>
<p>美穂「えっと遊ぶだけで、肇ちゃんの中に溜まってる妖力がどうにかなるんですか?」</p>
<p>藤原父「ああ、言ってみればストレスの発散のようなものだ。」</p>
<p>藤原父「外の連中がドンちゃん騒ぎしているのも、そのような理由もある。」</p>
<p>藤原父「妖力が漲って仕方ないから、その力を存分に使って楽しんでいる訳だな。」</p>
<p>800 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:53:00.01 ID:7bYZ6KqBo
[19/22]</p>
<p>藤原父「だから肇も、その妖力を使って存分に遊んでくればいい。」</p>
<p>肇「でも、私がこの家を空けてしまったら・・・・・・。」</p>
<p>私達家族に、どんな危険があるのかわからない。</p>
<p>肇ちゃんはそれを心配しているのだろう。</p>
<p><br />
藤原父「ああ、そうそう。遊びに行くのは美穂さんも一緒だぞ。」</p>
<p>美穂「えっ。」</p>
<p>肇「えっ。」</p>
<p>急にお鉢が回ってきた。</p>
<p>美穂「えっと、それはどう言う理由で?」</p>
<p>藤原父「決まっている、『小春日和』も漲って仕方ないはずだからだ。」</p>
<p>そう言えば、肇ちゃんの事で気が回っていなかったけど、</p>
<p>私の刀、ヒヨちゃんも、今日はずっと元気を持て余しているんだった。</p>
<p>確かに、このまま引きこもっていると不味いのかも。</p>
<p>801 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:53:34.10 ID:7bYZ6KqBo
[20/22]</p>
<p>藤原父「安心したまへ。美穂さんが外に出ても、危険はずっと低い。」</p>
<p>藤原父「この環境は『小春日和』にとっては、得意な環境。水を得た魚だ。」</p>
<p>藤原父「故に、肇の妖力の行使で、美穂さんに危険を及ぼす事もない。『小春日和』が守ってくれる。」</p>
<p>藤原父「妖怪悪霊共が襲ってきたとしても、お前達二人ならどうとでもなる。」</p>
<p>藤原父「むしろ襲ってきた妖怪達とも、一緒に遊ぶつもりで楽しめばいい。」</p>
<p><br />
藤原父「この家の事なら心配するな。私が残っているからな。」</p>
<p>藤原父「美穂さんの父君、母君とも、大人同士、親同士、積もる話もある。」</p>
<p>藤原父「肇が世話になっているお礼もしなければならないだろう。」</p>
<p><br />
藤原父「では、そう言うわけだ。」</p>
<p>一通り解決策を話し終えた彼は、立ち上がった。</p>
<p><br />
藤原父「私はここまでの経緯を、美穂さんの父君、母君に説明してくるとしよう。」</p>
<p>藤原父「二人とも、”夏休み”と”夏祭り”。存分に楽しんで来い。」</p>
<p>そう言い残すと、私達の返事も待たずに、部屋に置いていた刀達を持って、客間から出て行った。</p>
<p><br />
肇「な、なんだかすみません・・・・・・勝手な父で。」</p>
<p>美穂「ううん。ちゃんと肇ちゃんの悩みも、私の心配も全部解決してくれたよ。」</p>
<p>美穂「良いお父さんだね。」</p>
<p>肇「そ、そうかな?」</p>
<p>肇ちゃんは、照れたように笑った。</p>
<p>802 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:54:32.93 ID:7bYZ6KqBo
[21/22]</p>
<p>美穂「肇ちゃん、もう体は大丈夫?苦しくはない?」</p>
<p>肇「大丈夫と言うか、体の調子はもうずっといいです。」</p>
<p>肇「ご心配を掛けてしまい、すみません。」</p>
<p>美穂「ううん、いいよ。でも悩みがあったら、これからは相談して欲しいな。」</p>
<p>肇「・・・・・・はい。ありがとうございます、美穂さん。」</p>
<p>肇「ふふっ、なんだか、今日の美穂さんはすごくヒーローって感じですね。」</p>
<p>美穂「えっ、あ、そ、そうかな?」</p>
<p>美穂「けっ、結局、私自身は何にもできてない気がするけど。」</p>
<p>肇「いえ、美穂さんに心配して貰えて、私はすごく嬉しかったですよ。」</p>
<p>美穂「なっ、なんか照れくさいな。」</p>
<p>でも、人の悩みを聞こうとするなんて、今まで出来なかったかも。</p>
<p>ちょっとセイラさんっぽかったかな。あの人に近づけてるなら、ヒーローっぽくなれてる?</p>
<p>そうだったらいいなあ、って思う。</p>
<p><br />
美穂「えっと・・・・・・それじゃあ、肇ちゃんも大丈夫みたいだし。」</p>
<p>美穂「一緒に遊びに?行こっか?」</p>
<p>肇「はい、是非。お供させていただきます。」</p>
<p>薄暗い街の外には、何が待ち受けてるのかわからないけど、</p>
<p>とりあえず楽しんでみようかなって思います。肇ちゃんと一緒に。</p>
<p><br />
おしまい</p>
<p>803 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/12(月) 19:55:18.56 ID:7bYZ6KqBo
[22/22]</p>
<p>藤原父</p>
<p>職業:鬼の刀鍛冶の息子。肇の父。<br />
属性:鬼と人のハーフ<br />
能力:妖術、神通力。</p>
<p>藤原肇の父。鬼と人間のハーフ。娘の窮地に駆けつけた。<br />
妖怪と人間の間を生きているためか、誰に対しても遠慮なく要求するタイプ。<br />
たぶん出番このイベントだけ。</p>
<p><br />
◆方針<br />
小日向美穂・藤原肇 → 妖怪が跋扈する街の外に、特に目的もなく遊びに出るみたいです。</p>
<p><br />
肇ちゃんにとってはちょっと悪い要素が重なってた。<br />
そんなピンチにお父さんが襲来してきたお話でした。<br />
『鬼神の七振り』はこのイベントの間だけ、お父さんに預けてます。</p>
2019-04-27T20:27:36+09:00
1556364456
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5スレ目>>770~>>777
https://w.atwiki.jp/mobamasshare/pages/480.html
<p>770 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 08:47:10.05 ID:S3u6ofFeo
[2/10]</p>
<p>博士「(ん……あの娘……)」</p>
<p>龍崎博士は日用品の買い出しに街へと出てきていた。<br />
目的を果たすために方々を回っていたところ、ふと対面から歩いてくる一人の少女が目についた。</p>
<p>後になって思い返してみると、何か感じるものがあったのだと言えるかも知れない。<br />
だが、その時は本当に偶然目に留まっただけだった。</p>
<p>博士はすれ違いざまにちらと横目で少女を見る。<br />
するとその顔に驚愕の色が浮かんだ。<br />
……正確には、彼女が身に着けていた『ヘッドフォン』を見て。</p>
<p>博士「き、君! そのヘッドフォンは、一体!?」</p>
<p>「えっ!?」</p>
<p>往来のど真ん中で、少女の肩を掴み問いただす。<br />
普段は割と落ち着いた振る舞いを見せる博士だが、今は周囲の目を気にする余裕もない程に冷静さを欠いていた。</p>
<p>博士「この刻印は……月宮博士の……」</p>
<p>彼の興奮の原因は、少女の身に着けたヘッドフォンに、行方が知れなくなって久しい知人の『証』を見出したためだった。</p>
<p>「(見紛う筈もない……これは間違いなく彼女の制作物だ)」</p>
<p>龍崎博士と、彼がこのヘッドフォンを制作したと考える人物──月宮博士は、かつては科学者として共に切磋琢磨してきた仲であった。<br />
月宮博士と短くない時間を過ごしてきた龍崎博士は、彼女が自分の気に入った制作物に特別な印を施すことを知っていた。<br />
そして、その印がこのヘッドフォンにも刻まれているのを見つけたのだった。</p>
<p>博士「(しかしなぜ、今になって彼女に由来する物が出てきた……?)」</p>
<p>月宮博士が謎の失踪を遂げて以来、龍崎博士はあらゆる手段を尽くしてその行方を調べたが、一切の手掛かりは見つからなかった。<br />
警察や関係機関も捜索を打ち切り、高名な科学者であった彼女も世間からその存在が忘れられて久しい。<br />
しかし長い年月を経て、降って湧いたように彼女の存在を伝える品とその所有者が現れたのはどういう事なのか。</p>
<p>771 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 08:48:06.02 ID:S3u6ofFeo
[3/10]</p>
<p>「ちょっ、ちょっと! おじさん、なんなの!?」</p>
<p>少女の拒絶の反応で我に返る。<br />
周囲を行く人々も怪訝そうな顔を向けている。<br />
博士は、無思慮な行動を取ってしまったと少し後悔した。</p>
<p>博士「あ……す、すまない! 驚かせてしまったね」</p>
<p>見ず知らずの少女に掴みかかるという、国家権力の世話になりかねない行為だったが、<br />
長年探し続けてきた知人の行方を知れるかもしれない機会を逃す訳にはいかなかったのだ。</p>
<p>博士「私は、こういう者だ」</p>
<p>博士は白衣の内ポケットから名刺を取り出すと、それを目の前の少女に渡した。<br />
受け取った少女は訝しむような目で名刺と博士の顔を交互に見ている。</p>
<p>博士「君は……"月宮博士"という人を……知ってはいないかい?」</p>
<p>博士は努めて冷静に、核心を突く質問を突きつける。<br />
目の前の少女が月宮博士の失踪に関わっているとすれば、突然の問いに何かしらのボロを出すはずだ。</p>
<p>「っ!!」</p>
<p>質問を受けた少女は驚いたような、あるいは安堵したかのような複雑な表情を見せた。<br />
博士の読み通り、何某かの情報を持っているとみて間違いは無さそうだ。<br />
しかし、次にその口から出た言葉は、博士の予想の範疇を大きく飛び出たものだった。</p>
<p>772 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 08:49:59.12 ID:S3u6ofFeo
[4/10]</p>
<p>「おじさん、ママの事知ってるの?」</p>
<p>博士「ま、ママぁ!?」</p>
<p>予想外の言葉に思わず素っ頓狂な声を上げる。</p>
<p>月宮博士に子供が居たなどという話は聞いたことが無い。<br />
となれば、失踪中に出来た子供という線が強いが、それにしては甚だ大きすぎる。</p>
<p>博士「ママというのは……一体……?」</p>
<p>「月宮博士は、みやびぃのママなの!」</p>
<p>博士「……彼女は、今何処に?」</p>
<p>「おじさん……ママに会いたいの?」</p>
<p>少女が月宮博士を『ママ』と呼ぶことも気になるが、まずは彼女の所在を確かめる事の方が先決だ。</p>
<p>「──どう思う? ……うん……わかった」</p>
<p>博士の言葉を受けた自らをみやびぃと呼ぶ少女は、ヘッドフォンに手をやり誰かと話をしているようだった。<br />
やがてそれが終わると、博士に向き直り口を開いた。</p>
<p>「ママの所へ案内するから、ついてきて」</p>
<p>773 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 08:50:49.60 ID:S3u6ofFeo
[5/10]</p>
<p>月宮博士の居場所へと案内されている間、雅から(少女は月宮雅と名乗った)事の顛末を聞かされた龍崎博士は、<br />
あまりの出来事に言葉を失ってしまっていた。</p>
<p>悪逆非道な宇宙人……少女に偽装された殺戮兵器……それを作り出した月宮博士。<br />
あまりにも荒唐無稽な話だったが、月宮博士の失踪に関して辻褄は合っていた。</p>
<p>博士「(宇宙人に連れ去られていたとは……通りで見つからないわけだ)」</p>
<p>月宮博士は、彼女を連れ去った連中──宇宙犯罪組織から逃れる際重傷を負い、以来意識が戻らないという。<br />
共に逃れてきた雅は、月宮博士の生まれ故郷である地球に来れば、<br />
あるいは彼女の目を覚ますことが出来るかもしれないと思い立ちやって来たのだという。</p>
<p>龍崎博士はこの"母親"想いの少女の為にも、そして、月宮博士の友人としても、何とかしてやりたいと思うのだった。</p>
<p>774 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 08:52:00.72 ID:S3u6ofFeo
[6/10]</p>
<p><br />
ミヤビ「着いたよぉ」</p>
<p>雅に案内されて辿りついた場所は、住宅地の中にある何の変哲もない公園だった。</p>
<p>博士「(ここが……? 何もないじゃないか)」</p>
<p>ミヤビ「こっちこっち」</p>
<p>雅は躊躇うことなく草木をかきわけ雑木林の中へと入っていく、博士も言われるがままそれについていく。</p>
<p>ミヤビ「うん、誰にも見られてない……準備オッケーだよぉ♪」</p>
<p>雅の言葉が途切れると同時に眩い光に包まれ、博士は強い光量に反射的に目を閉じる。<br />
次に目を開けた時には辺りの景色が一変していた。</p>
<p>博士「ここは……?」</p>
<p>周囲を見渡してみたところ、どうやら建物の中に居るらしい。<br />
壁や天井や床は金属の様な材質で出来ている。</p>
<p>ミヤビ「ここはみやびぃたちが乗ってきた宇宙船『ノーティラス』の中だよぉ」</p>
<p>ミヤビ「これもママが作ったんだ♪」</p>
<p>博士「宇宙船……そうか、なるほど……」</p>
<p>どうやら、先の公園から転送装置の類によって瞬間的に移動してきたらしい。<br />
異星の技術であるならば、理解しがたい現象が起こっても原理はどうであれ得心が行く。</p>
<p>ミヤビ「ママはこっちで寝てるの……みてあげて?」</p>
<p>常に爛漫であった少女が、顔色を曇らせ遠慮がちに言う。<br />
その様子に博士は嫌な予感を募らせる。</p>
<p>博士「ああ……わかったよ」</p>
<p>775 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 08:53:33.55 ID:S3u6ofFeo
[7/10]</p>
<p>医務室へと通された龍崎博士は、円筒状の──地球の物で例えるなら、日焼けマシンの様な医療装置の中に横たわる月宮博士と対面した。<br />
少しやつれて見えるが、その面差しは別れた当時より変わっておらず、一目で本人だと分かった。</p>
<p>博士「もう、すっかり諦めていたというのに……」</p>
<p>博士が、誰にともなく呟く。</p>
<p>博士「また……君に会うことができるとは……」</p>
<p>装置の透明なカバーの縁をそっと撫でる。<br />
しかし、中の月宮博士は全く反応しない。</p>
<p>博士「折角会えたというのに……これではな……」</p>
<p>博士は泣き笑いのような表情を浮かべ、自嘲気味に呟く。</p>
<p>ミヤビ「ねえおじさん、ママは、起きられそう?」</p>
<p>雅から尋ねられて我に返る。</p>
<p>月宮博士の意識が戻らないからといって、死んでいるわけではない。<br />
まだ何か打つ手があるかもしれないし、そもそもそれを調べるために呼ばれたのだ。</p>
<p>博士「あ、ああ……診てみよう」</p>
<p>776 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 08:54:35.04 ID:S3u6ofFeo
[8/10]</p>
<p>月宮博士の様子を一通り確認してみるも、目立った外傷は見られなかった。<br />
となると、意識が戻らないのは内臓器官や脳の損傷が原因だろうか。</p>
<p>次に、船内のAIから寄越された医療装置の処置の結果に目を通してみる。<br />
しかし、体内の透過写真や心拍数・脈拍数や脳波、血液中の物質等のデータを調べてみても、<br />
適切な治療が施されたのだろう、やはり異常は見られなかった。</p>
<p>博士「身体の方は重傷を負っていたとは思えない程にまで回復しているようだが……」</p>
<p>雅から聞かされていた話から推測していた状況とは大きく異なり、月宮博士の身体は健常者のそれと違わないものだった。<br />
それでも意識が戻らないとなると、もはや原因を特定するのは困難だ。</p>
<p>医学は齧った程度の畑違いだったが、それでも現代医療では手の施しようが無い事が分かった。<br />
そもそも、地球の技術水準を大きく上回る異星の医療技術でさえ匙を投げる事態なのだ。</p>
<p>博士「残念だが、地球の医学で助けることは出来そうにない」</p>
<p>ミヤビ「そんなぁ……」</p>
<p>博士「だが、まだ諦めるには早い」</p>
<p>助けることが出来そうにないというのは、あくまで"医学的に"分析した結果である。<br />
地球には、ともすれば奇跡とも呼べるような現象を起こすことの出来る『能力者』が大勢存在している。<br />
彼らの中には、あるいは彼女の意識を呼び覚ます能力を持った者も居るかもしれない。</p>
<p>777 名前: ◆lhyaSqoHV6[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 08:56:21.68 ID:S3u6ofFeo
[9/10]</p>
<p>博士「私の知り合いに連絡してみよう」</p>
<p>ミヤビ「知り合い……?」</p>
<p>博士「ああ、科学では解明できない事象を引き起こす者達だ」</p>
<p>博士「彼らなら、もしかすると月宮博士を助ける事が出来るかもしれない」</p>
<p>ミヤビ「本当に!?」</p>
<p>雅が思わず顔を綻ばせるが、博士はすぐにそれを否定する。</p>
<p>博士「しかし、可能性があるというだけだ……上手くいくかはわからない」</p>
<p>ミヤビ「うぅ……」</p>
<p>落胆する雅の様子を気にしないようにしながら、博士は言葉を続ける。</p>
<p>博士「この宇宙船が秘匿されていたところを見るに、あまり存在を知られたくは無いのだろう?」</p>
<p>博士「彼らに協力を仰ぐとなると、この宇宙船もある程度人の目につくことになるかもしれない」</p>
<p>博士「私からは信頼できる者達だと言っておくが……どうするかは君の判断に委ねるよ」</p>
<p>多くの人間に存在が知られるという事は、情報の漏れるリスクが高まるという事を意味している。<br />
そうなると、宇宙犯罪組織の追手に勘付かれる危険もある……それはなるべく避けたい事態だった。</p>
<p>ミヤビ「……それでも」</p>
<p>博士の言わんとしている事を理解した雅は、俯きながらも意を決したような口調で答える。</p>
<p>ミヤビ「それでもみやびぃは、ママを助けたい!」</p>
<p>ミヤビ「例え上手くいくか分からなくても……悪い奴らに見つかる事になっても……!」</p>
<p>博士「そうか……分かった」</p>
<p>博士「我々が諦めなければ……月宮博士は助かると信じていれば、きっと上手くいくだろう」</p>
<p>雅の覚悟を受け取った博士は、馴染みの能力者組織『プロダクション』へと電話をかけるのだった。</p>
<p> </p>
2019-04-27T20:25:45+09:00
1556364345
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5スレ目>>756~>>764
https://w.atwiki.jp/mobamasshare/pages/479.html
<p>756 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:40:57.70 ID:3R8NXU9G0
[1/10]<br />
がむしゃらに書いてたらもうこんな時間<br />
よし、投下してすっきりしてから寝よう</p>
<p>直接名前が出ているわけでは在りませんが、実質リンちゃんと肇ちゃんをお借りしています。<br />
時系列は「嘘つきと本音」開始直後くらいです。</p>
<p>757 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:42:11.07 ID:3R8NXU9G0
[2/10]</p>
<p>――海皇宮。</p>
<p>サヤ「ヨリコ様ぁ、ただいま戻りましたぁ」</p>
<p>ヨリコ「ああ、いい所に帰ってきてくれましたサヤ」</p>
<p>サヤが帰還報告の為に海皇の自室を訪れると、携帯端末を片手にヨリコが出迎えた。</p>
<p>サヤ「どうかしたんですかぁ?」</p>
<p>ヨリコ「ええ。帰ってきて早々ですが、至急サヤに頼みたい仕事があるのです」</p>
<p>携帯端末を手放す事無く、ヨリコは少し興奮した面持ちで続ける。</p>
<p>ヨリコ「少し私用で地上へ行くので、護衛をお願いしたいのです。留守中の事は、参謀達に任せてあります」</p>
<p>サヤ「はぁ……」</p>
<p>ヨリコ「では、お願いしますね」</p>
<p>言うが速いか、ヨリコはテーブルの上にいくつか置いてある小箱の内一つを引っつかんで部屋を出て行った。</p>
<p>サヤ「……はぁ、まぁた地上の美術品ですか?」</p>
<p>足早についていきながら、半ば呆れ顔でサヤは尋ねる。</p>
<p>ヨリコ「はい。前々から目をつけていた品が、とうとうオークションに出品されるという情報があったのです」</p>
<p>海皇ヨリコは最近、地上の美術品に凝っている。最早部屋を埋め尽くさんレベルで。</p>
<p>持ってきた小箱の中身は、大方、あの傭兵への報酬と同じ大真珠だろう。</p>
<p>地上の通貨に換金して、オークションの軍資金にするつもりらしい。</p>
<p>ヨリコ「前回に出品された時は惜しくも手に入らなかったので、今度こそは……」</p>
<p>サヤ「……うふっ」</p>
<p>ヨリコ「……どうかしましたか?」</p>
<p>サヤ「いいえぇ?」</p>
<p>いつものヨリコからは想像もつかない、無邪気な表情。</p>
<p>こういう時ばかりは、「真面目で心優しい海皇」から、「年頃の女の子ヨリコ」に戻るのだ。</p>
<p>そのギャップに、思わずサヤは吹き出してしまった。</p>
<p>――――――――――――<br />
――――――――<br />
――――</p>
<p>758 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:43:13.27 ID:3R8NXU9G0
[3/10]<br />
――――<br />
――――――――<br />
――――――――――――</p>
<p>地上。</p>
<p>質屋から大量の札束入りトランクケースを引きずって出てきたのは、ヨリコだった。</p>
<p>しかしいつもの海皇としての正装ではない。地上人のファッションを研究し、完全に溶け込んでいる。</p>
<p>それは隣を歩くサヤも同様で、今の二人は完全に地上人古澤頼子と松原沙耶となっていた。</p>
<p>ヨリコ「さあ、急ぎましょうサヤ。オークションが始まってしまいます」</p>
<p>サヤ「まだ一時間ありますよぉ。っていうかぁ、お荷物ならサヤがお持ちしますよぉ?」</p>
<p>ヨリコ「いえ、護衛を頼んだのは私のワガママです。このくらいは自分でしないと」</p>
<p>さっきからそう言って聞かないヨリコは、とうとうオークション会場までトランクケースを放さなかった。</p>
<p>――――――――――――<br />
――――――――<br />
――――</p>
<p>759 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:44:00.88 ID:3R8NXU9G0
[4/10]<br />
――――<br />
――――――――<br />
――――――――――――</p>
<p>進行『さあこちらの品、十万からどうぞ!』</p>
<p>モブ達「十一万!」「十一万五千!」「十二万!」</p>
<p>ヨリコ「十五万!」 オォー</p>
<p>モブ富豪「……三十万!」 オオオー!?</p>
<p>ヨリコ「なっ……く、四十万!」</p>
<p>モブ達「四十一万!」「四十五万!」「五十万!」</p>
<p>モブ富豪「……六十万!」 ウオオオオオ!!</p>
<p>ヨリコ「むむ……」</p>
<p>サヤ「ヨリコ様ぁ、諦めませんか?」</p>
<p>ヨリコ「なんの! 八十万!」 ザワザワザワザワ</p>
<p>モブ達「……」「……」「八十……五万!」</p>
<p>モブ富豪「……ふん、百万!」 ウワアアアアアア!!!</p>
<p>ヨリコ「ぐ、うううう……二百万!」 オオオオオオオッッ!!!</p>
<p>モブ富豪「なにぃ!? ……三百万!」 オ、オオオ・・・</p>
<p>ヨリコ「四百万!」 ・・・・・・</p>
<p>モブ富豪「五百万!」 ・・・・・・ゴクリ</p>
<p>ヨリコ「…………」 ・・・・・・オ?</p>
<p>進行『五百万! ……ありませんか? ありませんか?』</p>
<p>モブ富豪「ふん……勢いに任せて危うく原価以上の額で買わされる所だっt」</p>
<p>ヨリコ「七百二十万!!」 ・・・エッ?</p>
<p>モブ富豪「なっ、なにぃぃぃ!?」</p>
<p>進行『……………………はい、105番の方、七百二十万で落札です! おめでとうございます!』</p>
<p>ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア・・・・・・</p>
<p>――――――――――――<br />
――――――――<br />
――――</p>
<p>760 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:44:59.60 ID:3R8NXU9G0
[5/10]<br />
――――<br />
――――――――<br />
――――――――――――</p>
<p>サヤ「……ヨリコ様ぁ、やっぱり大損ですよぉ? ちょっと周りから聞こえたんですけどそのお皿、<br />
よくても五百万チョイの価値だって……」</p>
<p>オークション会場からの帰り道、戦利品が入った桐箱を大事そうに抱えるヨリコにサヤが苦言を呈する。</p>
<p>ヨリコ「損とか得とかではありません。私はこの絵皿が欲しかったのですから」</p>
<p>しかし、目当ての物を手に入れたヨリコにとって、その忠告は最早無意味であった。</p>
<p>サヤ「あんなにあった地上のお金も、今や七万六千五百円……」</p>
<p>ヨリコ「私にとってはそれほどの価値があったのですよ。ん、少し休憩しましょうか」</p>
<p>そう言ってヨリコは公園内のベンチに歩み寄る。ベンチには既に先客がいるようだ。</p>
<p>ヨリコ「お隣、失礼してもよろしいです……か……」</p>
<p>カイ「あ、はい、大丈夫で……す……」</p>
<p>サヤ「もう、ちょっとヨリコ様ぁ。ごめんなさぁい、ご迷惑……を……」</p>
<p>三人がその場で凍りついた。目の前にいるのは、本来、こんな場所で会うはずのない人物。</p>
<p>ヨリコ・サヤ「「カイ!?」」</p>
<p>カイ「ヨリコ様!? サヤ!?」</p>
<p>ヨリコ「ど、ど、どうしてここに……」</p>
<p>カイ「い、いや、ヨリコ様こそ……」</p>
<p>サヤ「はぁ……美術品オークションの帰りなのぉ」</p>
<p>サヤの言葉を聞いたカイは、ふとヨリコが抱える荷物を見やる。</p>
<p>カイ「ああ……あはは、相変わらずお好きなんですね、ヨリコ様」</p>
<p>昔の事を思い出してか、思わず吹き出してしまうカイ。</p>
<p>ヨリコ「ふふ……ええ、今日はいい物が手に入りました」</p>
<p>つられてヨリコも口元を押さえてクスッと笑う。</p>
<p>761 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:45:54.27 ID:3R8NXU9G0
[6/10]<br />
サヤ「……で、カイはどぉして?」</p>
<p>カイ「あ、うん……ちょっと肌乾いてきちゃって……今友達が塩探してくれてて……」</p>
<p>言われてみれば、カイの表情は少しばかり陰っているように見える。</p>
<p>ヨリコ「いけない……サヤ、私の海水の予備を早く!」</p>
<p>サヤ「えっ、でもカイって今敵……」</p>
<p>ヨリコ「いいから早く!」</p>
<p>サヤ「はっ、はい!」</p>
<p>サヤから海水入りの小瓶を受け取ったヨリコは、それをカイの頭上で開封した。</p>
<p>ヨリコ「……カイ、平気ですか?」</p>
<p>やがてカイの顔に精気が戻り、ヨリコもよく知るカイの表情が戻ってきた。</p>
<p>カイ「あ、ありがとうございますヨリコ様。あたしなんかの為にわざわざ予備を……」</p>
<p>ヨリコ「袂を分かったとしても、苦しむ同族を放ってはおけません」</p>
<p>カイ「ヨリコ様……」</p>
<p>サヤ「…………」</p>
<p>少しの沈黙が三人の間を支配した。</p>
<p>亜季「カイー! 塩を分けてもらえたでありますよー!」</p>
<p>『キンキンキン!』</p>
<p>星花「お水もありますわ!」</p>
<p>ストラディバリ『レディ』</p>
<p>カイ「あ、皆……ありがと。でももう大丈夫になっちゃった」</p>
<p>塩と水を持ってきた仲間たちは、ケロッとしているカイと見知らぬ少女二人を交互に見比べた。</p>
<p>ヨリコ「カイのお仲間の方ですね。私、海底都市の指導者をしております、海皇ヨリコと申します」</p>
<p>亜季「……へ?」</p>
<p>うやうやしくお辞儀をするヨリコに、亜季は目を丸くした。一方、</p>
<p>星花「これはご丁寧に。わたくしは涼宮星花と申します。こちらはストラディバリ」</p>
<p>ストラディバリ『レディ』</p>
<p>星花とストラディバリは丁寧に挨拶を返した。</p>
<p>亜季「いや、あの、海皇って敵の、あれ? え? こんなフレンドリーなんでありますか?」</p>
<p>サヤ「ヨリコ様とカイは仲が良かったから。あ、親衛隊のサヤでぇす。相棒のペラちゃん」</p>
<p>『キリキリキリキリ』</p>
<p>空中を泳ぐ鉄のアカエイを指差しながら、サヤがウインクしてみせる。</p>
<p>亜季「あ、えっと、大和亜季です。上を飛んでるのは相棒のマイシスターであります」</p>
<p>762 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:46:55.81 ID:3R8NXU9G0
[7/10]<br />
互いに自己紹介が終わったところで、ヨリコが静かに切り出した。</p>
<p>ヨリコ「……カイ、やはりこちらに戻ってくる気はありませんか?」</p>
<p>カイ「……ヨリコ様が、地上侵攻を取りやめて下さるなら、喜んで」</p>
<p>それを聞いて、ヨリコは悲しそうに首を振る。</p>
<p>ヨリコ「……残念ですが、それは出来ません」</p>
<p>カイ「……何故……ですか……?」</p>
<p>ヨリコ「何故かは私にも分かりません……ですが、どうあってもそれはならないのです」</p>
<p>亜季「…………」</p>
<p>星花「…………」</p>
<p>サヤ「…………」</p>
<p>『…………』</p>
<p>『…………』</p>
<p>ヴン・・・</p>
<p>ストラディバリ『…………』</p>
<p>二人以外は、余計な口出しをするまいと、その様子を黙って見守っている。</p>
<p>カイ「……分かりました。なら……」</p>
<p>カイの言葉が、長い沈黙を切り裂いた。</p>
<p>カイ「改めて宣言します。ヨリコ様がお考えを改めて下さるまで、あたしは刺客を叩き続けます」</p>
<p>ヨリコ「……そうですか。……残念です、カイ。もう会えないかも知れないのですね……」</p>
<p>カイ「あたしも……残念です」</p>
<p>ヨリコ「…………」</p>
<p>カイ「…………」</p>
<p> </p>
<p>763 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:48:33.84 ID:3R8NXU9G0
[8/10]<br />
再び、長い沈黙が訪れた。</p>
<p>ストラディバリ『…………』</p>
<p>ヴン・・・</p>
<p>『…………』</p>
<p>『…………』</p>
<p>サヤ「…………」</p>
<p>星花「…………」</p>
<p>??「あば?」</p>
<p>亜季「……………………ん? あば……?」</p>
<p>誰だ今の、と言わんばかりの勢いで全員が振り返る。</p>
<p>??「あっばー!」</p>
<p>星花「きゃあ!?」</p>
<p>サヤ「ち、地上の生き物ぉ!?」</p>
<p>現れたのは、宇宙レベル犯罪者、ヘレンによって送り込まれた怪人、アバクーゾだった。</p>
<p>アバクーゾ「あばくぞー!」</p>
<p>ヨリコ「…………可愛い」</p>
<p>星花「確かに……撫でてもよろしいですか?」</p>
<p>言いながら恐る恐る頭を撫でる星花。と、次の瞬間。</p>
<p>星花「たまには野宿でなく、ふかふかのベッドで眠りたいですわー! ……あ、あら? わたくしは今何を……?」</p>
<p>アバクーゾの体毛に仕込まれた本音薬が作用に、星花の隠れた本音を引き出したのだ。</p>
<p>カイ「星花……ごめんね」</p>
<p>亜季「私たちが不甲斐ないばかりに……」</p>
<p>ストラディバリ『レディ……』</p>
<p>星花「ち、違いますわ! 今のはきっと何かの間違いで……」</p>
<p>サヤ「なんだか危険そうですね、ヨリコ様、近寄らないように……あら?」</p>
<p>サヤが手で制した先には、既にヨリコの姿は無かった。</p>
<p>ヨリコ「し、失礼しますね……」</p>
<p>ヨリコは既にアバクーゾの頭を撫でる体勢に入っていた。</p>
<p>サヤ「よ、ヨリコ様ぁ!?」</p>
<p>サヤの叫びもむなしく、ヨリコはわしゃっとアバクーゾの頭を撫でた。そして、</p>
<p>764 名前: ◆llXLnL0MGk[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 03:49:26.61 ID:3R8NXU9G0
[9/10]</p>
<p> </p>
<p>ヨリコ「地上侵攻だなんて……本当はしたくない……!」</p>
<p> </p>
<p>カイ「え……?」</p>
<p>ヨリコの口から、信じられない言葉が飛び出した。</p>
<p>サヤ「今の……は……?」</p>
<p>星花「もし、あれが撫でて本音を吐露してしまう生物だとすれば……」</p>
<p>亜季「今のが……海皇殿の本音……?」</p>
<p>みな、呆然と立ち尽くす。</p>
<p>しかし、一番それを信じられないのは、他ならぬヨリコ自身だった。</p>
<p>ヨリコ「……今の……言葉が……私の、本音……? 嘘……でしょう?」</p>
<p>アバクーゾ「あっばー♪」</p>
<p>この事態を引き起こした当人(獣?)は、空気を読まずに愉快そうな声を上げてその場を去る。</p>
<p>ヨリコ「…………サヤ、帰りましょう」</p>
<p>しばらく黙って震えていたヨリコだったが、突然気を取り直し、きびすを返した。</p>
<p>サヤ「あっ、は、はい! おいで、ペラちゃん」</p>
<p>『キリキリ』</p>
<p>カイ「よ、ヨリコ様! 待っ……」</p>
<p>カイの制止の言葉も聞かず、ヨリコ、サヤ、ペラは、目の前に出現した水柱の中へ姿を消した。</p>
<p>カイ「ヨリコ……様……」</p>
<p>亜季「カイ…………その、上手く言えませんが……私たちがついているであります」</p>
<p>『キィン……』</p>
<p>星花「辛いのであれば、いつでも胸をお貸ししますわ。ね?」</p>
<p>ヴーン・・・</p>
<p>ストラディバリ「……レディ」</p>
<p>カイ「みんな………………ありがとぉ……うっ、うぐっ……ぐずっ……」</p>
<p>その日、カイは泣き疲れて眠るまで、ずっと星花の胸の中で泣きじゃくっていた。</p>
<p>かつて憧れた相手との、あまりに辛い別れを、押し殺すかのように。</p>
<p>余談ではあるが、あのアバクーゾはこの日以降、鬼の孫娘や地底のテクノロジスト等を筆頭に、加速度的に被害を広げていったという。</p>
<p>続く</p>
2019-04-27T20:24:16+09:00
1556364256
-
5スレ目>>735~>>749
https://w.atwiki.jp/mobamasshare/pages/478.html
<p>735 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 00:55:55.05 ID:JTBMxD540
[2/31]<br />
摩訶不思議な品物を扱うお店があるらしい。</p>
<p><br />
昔アコから聞いた話だ。<br />
私も最初はとんだ与太話だと笑い飛ばしていたが『現物』を見て驚いた。</p>
<p>それはなんてことない木製の丸椅子だった。<br />
しかし、その丸椅子は不思議なことに『芽吹く』丸椅子だった。</p>
<p>あの時の衝撃は忘れない。<br />
訝しむ私をニヤニヤとした笑みを浮かべて見ていたアコ。<br />
私がその丸椅子に恐る恐る腰掛けてみた。<br />
すると、私の座った丸椅子の脚が台座を貫き、私の背中に沿うように、成長した。<br />
成長した椅子の脚から枝葉が広がり背もたれになり、まるで樹木そのものが椅子となったのではないかと錯覚してしまうほどだった。</p>
<p>驚いた私が椅子から慌てて立ち上がると成長した枝葉も伸びた椅子の脚も静かに引っ込んでいった。</p>
<p>アコがスカベンジングによって入手した椅子だが、結局、私がアコから買い取ることになって不思議な椅子は私の愛用品になっている。</p>
<p>736 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 00:56:53.50 ID:JTBMxD540
[3/31]<br />
リン「結局お店の情報コミコミで結構持っていかれちゃったけどね…」</p>
<p>春菜「…それでこれからそのお店に行くんですよね?」</p>
<p>リン「行くんだけど…なんで春菜がついてくるの?」</p>
<p>春菜「…不思議な眼鏡とか魔法の眼鏡とかもありそうじゃないですか!」</p>
<p>リン「いや、無い……どうだろう?」</p>
<p>正直あまり自信はない。<br />
その前にそのお店がもしも一見様お断りなお店だったら入れないかもしれない。</p>
<p>春菜「ふふふ、期待が持てますね!」</p>
<p>私はスマートフォンをタップしてカピバラを模したアイコンに触れる。</p>
<p>リン「ハンテーン、道はこっちで合ってる?」</p>
<p>『てーん!てーん!』(この先300m先みたいだぞ)</p>
<p>私のスマートフォンからハンテーンの鳴き声と共に翻訳が表示される。</p>
<p>737 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 00:58:10.96 ID:JTBMxD540
[4/31]<br />
春菜「それにしてもなんでカピバラの頭の中身、全部移しちゃったんです?」</p>
<p>スマートフォンに映るデフォルメされたカピバラをじっと見つめる春菜。</p>
<p>リン「いや、最初は生首のまま『製作室』に置いてたんだけどさ…」</p>
<p>春菜「置いてたんだけど……?」</p>
<p>リン「朝起きたら私の研究用のメー君の友達に囲まれててピンチだったからハンテーンの<br />
メモリーを全部PCに移動してスマートフォンで呼び出せる様にしてみたんだ」</p>
<p>春菜「メー君の友達ってことは害はないんじゃない?」</p>
<p>リン「…そう思う?」</p>
<p>春菜「…?」</p>
<p>リン「最近、イワシ型のロボットが街で暴れてるって話聞いたことあるでしょ?」</p>
<p>春菜「…ありますねぇ」</p>
<p>リン「……も、もし…もしも戦うことがあったらサンプルが欲しいなぁ……?」</p>
<p>春菜「…もっとメー君の友達が世界中にもっと増えないでしょうかね?」</p>
<p><br />
738 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 00:58:44.76 ID:JTBMxD540 [5/31]<br />
リン「…これは地上のカース浄化に貢献してるだけだよね」</p>
<p>春菜「…もちろんですよ♪」</p>
<p>私と春菜の間で契約が成立した瞬間だった。</p>
<p>739 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 00:59:44.86 ID:JTBMxD540
[6/31]<br />
リン「……話逸れたね、そのイワシ型のロボットなんだけど、カースで汚染された個体が居るみたいなんだ」</p>
<p>春菜「…まさかメー君を使って私の眼鏡もパワーアップ出来るんじゃ……!」</p>
<p>春菜「マスク・ド・メガネ with メー君!?」</p>
<p>リン「…いや、そっちの実験もしたいんだけど今はそうじゃなくて……」</p>
<p>春菜、眼鏡が関わると恐ろしく脳の回転早くなるなぁ…。</p>
<p>リン「無機物にもカースが干渉出来るってことは春菜の言うとおりメー君たちも例外じゃないみたいで……」</p>
<p>春菜「ですよね、ですよねっ!」</p>
<p>リン「ハンテーンをそのまま『研究所』に置いてたら眼鏡のカースに半ばズブズブって……」</p>
<p>あの時のハンテーンの首の絶望に満ちた表情は忘れられない。頭だけになった時以来だろうか。</p>
<p>リン「慌てて救出したから平気だったんだけど…」</p>
<p>『はんてーん!』(あのジワジワと自我が削られていく感覚は忘れられない)</p>
<p>リン「ボディも大破してたし首だけじゃ活動停止しちゃうからデータ化したんだ」</p>
<p>『てーん!』(その点は感謝してるよ)</p>
<p>そう言ってデフォルメされたカピバラは背中を向けてスマートフォンの画面から去っていく。</p>
<p>春菜「居なくなっちゃいましたけど」</p>
<p>春菜はカピバラが画面から消えたのを見て不思議そうな顔をしている。</p>
<p>740 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:01:51.80 ID:JTBMxD540
[7/31]<br />
リン「…ハンテーンの思考とかは何も弄ってないからね」</p>
<p>リン「それにハンテーンがこれ以上のナビゲートは不要だって思ったんじゃない?」</p>
<p>ハンテーンをデータ化する時に気づいたが、ハンテーンの意思には元から何の枷も施されていなかった。<br />
ならば製作者の意思を無視する訳にはいかない。<br />
私が枷を追加してしまうことは製作者への侮辱にほかならないからだ。</p>
<p>リン「だから今回その不思議なお店に行くのもハンテーンの新しいボディの製作ヒントになればいいなって……」</p>
<p>まぁ本当の目的は別にあるのだが。</p>
<p>春菜「わぁ!『アンティークショップ ヘルメス』このお店じゃないですか?」</p>
<p>うん、聞いてないね。<br />
カランとベルの音を鳴らして春菜はヘルメスに入っていく。<br />
春菜に続いてお店に入っていくことにする。</p>
<p><br />
741 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:03:46.58 ID:JTBMxD540 [8/31]<br />
リン「…これは…」</p>
<p>驚いた。<br />
ヘルメスに一歩足を踏み入れた瞬間気づく。</p>
<p>この感覚。<br />
この『違和感』私は知っている。<br />
清潔に保たれ、洋風な雰囲気が漂う店内で感じる『違和感』。<br />
これの『違和感』は一体なんだ。</p>
<p>春菜「お洒落なお店ですねぇ」</p>
<p>一足先に入った春菜は燭台付きの鏡に見入っている。</p>
<p><br />
雪乃「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」</p>
<p>ひと目で分かるような気品を漂わせた女の人が店の奥からゆったりと歩いてくる。</p>
<p>リン「いえ、今日は……」</p>
<p>今更になって気づく。<br />
気付かされる。<br />
このお店の『違和感』の正体に。</p>
<p>742 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:05:04.08 ID:JTBMxD540
[9/31]<br />
リン『魔力……?』</p>
<p>確証は無い。<br />
けれど似ている。<br />
ボールペン型の杖の持ち主と、その師匠、イヴ・サンタクロースから感じたものと。<br />
このお店のアンティークを見た時に感じたものと懐にある魔法のビー玉を使う時に感じるもの。</p>
<p>雪乃「…普通のお客様ではないみたいですね?」</p>
<p>どちらにせよ試してみれば分かることだ。</p>
<p>リン「これを」</p>
<p>私は懐から殆ど中身を使い果たしてしまった巾着を取り出し、彼女に手渡す。</p>
<p>彼女は巾着の紐を緩め、中を見る。</p>
<p>雪乃「…なるほど、面白いものをお持ちのようですね、こちらへどうぞ」</p>
<p>彼女は店の奥、大きなテーブルを指差す。</p>
<p>リン「うん、ありがとう」</p>
<p>リン「春菜、行くよ?」</p>
<p>743 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:06:13.26 ID:JTBMxD540
[10/31]<br />
―</p>
<p>春菜「凄いですよ!これ、お皿の中で馬がくるくる走り回ってますよ!」</p>
<p>リン「うわっ、どうなってるのこれ!?」</p>
<p>ただの模様かと思っていた一頭の馬のシルエット。<br />
しかし、皿の縁に沿ってシルエットが駆けていく。</p>
<p>雪乃「私の作った少し不思議なお皿です♪」</p>
<p>雪乃「ふふ、楽しんで頂けてるみたいで嬉しいですわ」</p>
<p>リン「…一体どうなってるんだか全く分からないよ」</p>
<p>さっきからワクワクが止まらない。</p>
<p>雪乃「自己紹介が遅れましたね、私がアンティークショップ『ヘルメス』、店長の相原雪乃ですわ」</p>
<p>春菜「上条春菜です、とりあえず眼鏡いかがですかっ!」</p>
<p>雪乃「め、眼鏡……?」</p>
<p>744 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:07:10.16 ID:JTBMxD540
[11/31]<br />
リン「…春菜、雪乃さんを困らせない」</p>
<p>リン「私は…しぶ…やっぱりリンでいいです…」</p>
<p>私、苗字なんて滅多なことじゃ使わないしなぁ。</p>
<p>そんなことよりこの皿の秘密や、雪乃さんについて、聞きたいことは山ほどあった。<br />
雪乃さんはビー玉を天井に翳しては別の色のビー玉を摘んで同じ事を繰り返しいる。</p>
<p>雪乃「これは……魔力が完全に密封されてますね…面白いマジックアイテムですわ♪」</p>
<p>リン「…魔法のビー玉色ごとに別の魔法が込めてあります」</p>
<p>リン「一度開放すると無色透明のただのガラス玉に戻っちゃうんですけど…」</p>
<p>雪乃「限りなく錬金術寄りの魔法ですね、付与の力の発展形なのでしょうか?」</p>
<p>リン「…錬金術…?」</p>
<p>魔法や魔術……あと眼鏡があるのだから今更驚かないけど…。<br />
……いや、ほんと、眼鏡があるからなぁ……。<br />
研究しても未だに全然分からないし。</p>
<p>745 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:07:58.59 ID:JTBMxD540
[12/31]<br />
雪乃「…失礼しました、少し夢中になってしまいましたわ」</p>
<p>リン「錬金術師さんなんだね?」</p>
<p>雪乃「えぇ、ここにある不思議な品物全て私の作品ですわ」</p>
<p>リン「…見つけた」</p>
<p>春菜「錬金術師が作る究極の眼鏡……!」</p>
<p>違う、そうじゃない。</p>
<p>リン「春菜、ステイ」</p>
<p>春菜「きゅうん……って私犬じゃないですよっ!?」</p>
<p>リン「知り合いへのお土産にしようと思ってるんだけど魔力と相性の良い装飾品とかってある?」</p>
<p>待ってましたとばかりに雪乃さんが微笑む。</p>
<p>746 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:09:02.56 ID:JTBMxD540
[13/31]<br />
雪乃「魔力と仰ってるということは…」</p>
<p>リン「うん、魔法使い、今ちょっと出払ってるみたいだけど便利だから<br />
この魔法のビー玉を追加で貰うんだけど手ぶらじゃなんだなと思って」</p>
<p>雪乃「このマジックアイテムの製作者なら面白いものが使えそうですわね♪」</p>
<p>リン「…面白いもの…?」</p>
<p>そう言って彼女は棚の上に飾ってあったものから装飾の一切無い銀の指輪を取り出す。</p>
<p>雪乃「この指輪は魔力を持つ装着者の最も得意とする力が強化されます」</p>
<p>雪乃「このマジックアイテムの製作者なら一体何が強化されるんだか興味は無いですか?」</p>
<p>リン「…これ、貰おうかな?」</p>
<p>これは面白そうだ。</p>
<p>雪乃「ふふ、お買い上げ有難う御座います♪」</p>
<p>747 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:09:41.02 ID:JTBMxD540
[14/31]<br />
―</p>
<p><br />
雪乃「とても有意義な時間でしたわ」</p>
<p>リン「錬金術の話、面白かった」</p>
<p>雪乃「次いらっしゃる時はご連絡頂ければお茶菓子を用意しておきますわ」</p>
<p>雪乃「ゆっくりお話しましょう♪」</p>
<p>リン「うん」</p>
<p>春菜「うぅ、何の話してたんだかちんぷんかんぷんなんですけど……」</p>
<p>リン「春菜、帰ったらメー君とマスク・ド・メガネの強化実験しようか?」</p>
<p>春菜「…ふふふ、来てしまいましたか…私の時代!いえ、眼鏡の時代!」</p>
<p>……春菜、切り替え早いね。</p>
<p>748 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:11:21.38 ID:JTBMxD540
[15/31]<br />
――その頃の裕美</p>
<p>裕美「一番得意な魔法で行くよっ!」</p>
<p>裕美は足元に転がっていた瓦礫から一欠片摘み上げると翼竜目掛けて放る。</p>
<p>『元ある形に戻れ! 』</p>
<p>すると翼竜の上空で裕美が放った欠片を中心に辺り周辺から瓦礫の粒が、塊が見る見るうちに集まる。</p>
<p>裕美「細かい欠片は無視でいいから重くて硬いのを中心に…!」</p>
<p>翼竜の上空には荒削りではあるが中小サイズのビルが出来上がっていた。</p>
<p>――</p>
<p><br />
一体裕美の最も得意とし、強化される力とは一体何なのか!</p>
<p>749 名前: ◆yIMyWm13ls[saga] 投稿日:2013/08/12(月) 01:12:02.84 ID:JTBMxD540
[16/31]<br />
終わりです。</p>
<p>錬金術師来たらいいなー!<br />
来たらいいなー!って思ってたら書いてくれたので嬉しい。<br />
凛ちゃんが歓喜して飛びつきそうとか言った人、当たり前のように飛びつきました。<br />
あと裕美ちゃんが斜め上の方向で強化されそうです。</p>
2019-04-27T20:23:10+09:00
1556364190
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5スレ目>>716~>>729
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<p>716 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:15:28.69 ID:4OqnkOPCo
[3/16]<br />
とある山の麓には広大な樹海がある。</p>
<p>この樹海の奥には、とんでもないお宝が隠されているという伝承が残されている。それを求めて様々な人物が宝を取りに行った。</p>
<p>能力者や権力者、本当にいろんな人が、こぞってこの森の奥に行った。</p>
<p>そして、それを取りに行った人は誰一人として、戻ってくることはなかった。</p>
<p>協力な能力をもったものも、強い用心棒を雇ったものも、全員だ。その数なんと五百人。</p>
<p>彼らがどうなったかは、誰も知らない。</p>
<p>そしていつしか、この樹海には恐ろしい化け物が潜んでいるという噂がたつようになり、樹海を訪れる人間はいなくなった。</p>
<p>717 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:17:22.88 ID:4OqnkOPCo
[4/16]<br />
そんな樹海の中に三人の男性がいた。</p>
<p>一人、は手に大きな斧を持った、大柄な男。</p>
<p>一人は、長い槍を背負った、長身の男。</p>
<p>一人は、一本の刀を腰にさしたどこか嫌な雰囲気をまとった男だ。</p>
<p>斧を持った男が言う。</p>
<p>「昼間だってのに薄暗くて不気味なとこじゃのう」</p>
<p>槍を持った男が神経質そうな甲高い声を出す。</p>
<p>「ちょっと変なこと言わないでくださいよ、斧Pさん。只でさえ化け物がいるって噂なのに」</p>
<p>槍を持った男の不安そうな台詞を聞いた斧Pが盛大に笑い出す。</p>
<p>「ガハハハハハハ!!槍P、お前まさかびびってんのか?!カッコわりぃなぁ!」</p>
<p>「そうだぞ槍P」</p>
<p>刀を持った男が口を開いた。</p>
<p>二人はハっとなって、刀を持つ男、刀Pを見た。この男は滅多な事では喋らない。喋るとすれば、それは人を殺すときだけだ。</p>
<p>718 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:19:15.15 ID:4OqnkOPCo
[5/16]<br />
「化け物ごときに恐れをなすとは、我ら闘剣衆の名折れだ」</p>
<p>
闘剣衆。日本のどこかに存在すると言われる、戦闘集団だ。基本三人のチームで動き、一組で町を滅ぼすほどの強大な戦闘力を持つ。そして、この三人の男はその闘剣衆の中でもエリートだ。</p>
<p>「真に恐ろしいのは、我ら闘剣衆だ」</p>
<p>刀Pはそう言うと再び口を閉ざした。</p>
<p>「だ、だよなぁ!俺ら闘剣衆より怖ぇものなんてねぇよなぁ!」</p>
<p>慌てたように斧Pが言った。槍Pも慌てたように、</p>
<p>「で、ですよねぇ」</p>
<p>と言って笑った。斧Pも笑った。刀Pは笑わなかった。</p>
<p>719 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:20:12.84 ID:4OqnkOPCo
[6/16]<br />
三人は無言で道なき道を歩き続ける。</p>
<p>ふと、斧Pが言った。</p>
<p>「嫌に静だな」</p>
<p>「確かに。まるで森全体が死んでるみたいです」</p>
<p>槍Pと斧Pの言う通り、樹海の中は本当に何の音もしなかった。風も吹かないので、木々のざわめきすらも聞こえない。</p>
<p>「化け物が、命と言う命を、すべて食い尽くしてしまったのかもしれぬな」</p>
<p>刀Pがまた口を開く。</p>
<p>「えぇ?!刀Pさん、さっき化け物なんていないって」</p>
<p>「拙者は化け物がいないなどとは言っておらぬ。それに……」</p>
<p>そこで区切ると、刀Pは続けて言った。</p>
<p>720 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:23:23.79 ID:4OqnkOPCo
[7/16]<br />
「化け物がいた方が、楽しそうではないか」</p>
<p>そう言って刀Pは笑った。</p>
<p>刀Pの笑顔を見て、二人はゾッとした。それはけっして、親しみの持てるようなものではなく、それこそ化け物のような笑顔だった。</p>
<p>721 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:24:16.82 ID:4OqnkOPCo
[8/16]<br />
「ん?」</p>
<p>刀Pが笑うのをやめて、歩みを止めた。</p>
<p>「ど、どうしたんだ?」</p>
<p>斧Pがおずおずと聞く。</p>
<p>刀Pは斧Pの問いに答えず、突然走り出した。</p>
<p>「あ、おい!」</p>
<p>「刀Pさん、待ってください!」</p>
<p>二人も刀Pの後を追って走り出す。</p>
<p>
刀Pは常に強いものとの戦いを求めている。故に、何処に強いものがいるかがわかるのだ。もしかしたら、刀Pの行く先に強者が、化け物がいるのかもしれない。</p>
<p>二人が走っていると、突然視界が開けた。</p>
<p>今まで薄暗い森の中を歩いていた二人は突然差し込んできた光に思わず顔をしかめる。</p>
<p>光に目がなれた二人の目には言ってきたのは二人の人間だった。</p>
<p>722 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:26:43.49 ID:4OqnkOPCo
[9/16]<br />
一人は刀P。</p>
<p>そしてもう一人は、腰に二本の刀を帯びた若い少女だ。</p>
<p>そして、その少女の脇にはには、洞窟があった。少女はその洞窟の少し前にある切り株の上に目を閉じて座っていた。</p>
<p>刀Pの後ろにつく斧Pと槍P。</p>
<p>「だ、誰だてめぇ!」</p>
<p>斧Pが声をあげる。</p>
<p>少女は目を開けると、言った。</p>
<p><br />
723 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:28:25.51 ID:4OqnkOPCo
[10/16]<br />
「そんな大きな声を出さなくても、聞こえますよ」</p>
<p>少女の声はよく聞こえた。まるで、耳元で囁かれたようだった。</p>
<p>「私は綾瀬穂乃香。宝の番人です」</p>
<p>「番人?あなたのような少女がですか?」</p>
<p>槍Pがもっともな質問をした。今、槍P達の目の前にいるのは、どう見たってただの少女だ。</p>
<p>「えぇ。代々ここの宝を守ってきた、綾瀬一族の番人」</p>
<p>そう言って、少し間を開けたあと言った。</p>
<p>「宝はこの洞窟の奥ににありますよ。」</p>
<p>724 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:29:15.29 ID:4OqnkOPCo
[11/16]<br />
「そうか」</p>
<p>刀Pはそう言って、刀を抜いた。</p>
<p>「一つ聞きたい」</p>
<p>刀を向けながら刀Pは問う。</p>
<p>「何でしょう」</p>
<p>「今までやって来た者を切ったのはお前か?」</p>
<p>「はい」</p>
<p>少女は素っ気なく答えた。</p>
<p>725 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:30:19.03 ID:4OqnkOPCo
[12/16]<br />
「そうか」</p>
<p>刀Pは落ち着いていたが、後ろの二人は驚愕した。</p>
<p>「じゃ、じゃああいつが……」</p>
<p>「五百人を殺したって言う化け物……」</p>
<p>斧Pが斧を握る手に力をいれ、槍Pが背中の槍を手に持った。</p>
<p>「悪いが、そこを通らせてもらうぞ」</p>
<p>刀Pが刀を構える。</p>
<p>726 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:31:55.21 ID:4OqnkOPCo
[13/16]<br />
だが、綾瀬穂乃香は三人の男に武器を向けられても、微動だにしない。</p>
<p>「冥土の土産に見せてやろう。闘剣衆最終奥義、三位一体『妖刀苦肉』!」</p>
<p>そう、刀Pが行った瞬間、風が吹き刀Pのすぐ真後ろで声が聞こえた。</p>
<p>「三位一体?残りの二人は何処にいるのですか?」</p>
<p>「え?」</p>
<p>思わず振り替える刀P。そこには二本の刀を抜いた綾瀬穂乃香がいた。そしてその脇には、首を切り離された斧Pと槍Pの死体があった。</p>
<p>727 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:32:43.48 ID:4OqnkOPCo
[14/16]<br />
「な、貴様いつのまに」</p>
<p>慌てる刀Pに向かって穂乃香は言った。</p>
<p>「冥土の土産に見せて差し上げます」</p>
<p>刀Pは思った。真に恐ろしいのは、我々でも化け物でもない。</p>
<p>「綾瀬流『疾風怒刀』」</p>
<p>この、女……。</p>
<p>宝の番人によって切り刻まれた刀Pの意識は闇に落ちていった。</p>
<p>728 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:33:22.18 ID:4OqnkOPCo
[15/16]<br />
「ふぅ。この死体も埋めてあげないと」</p>
<p>死体を見下ろし、呟く穂乃香。</p>
<p>その時、一陣の風が吹いた。</p>
<p>気持ちのいい風を全身に浴びて、穂乃香は呟いた。</p>
<p>「ふふっ。今日も平和ね♪」</p>
<p>こうして、綾瀬穂乃香にとっての日常は過ぎていく。</p>
<p>729 名前: ◆tsGpSwX8mo[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 23:35:00.51 ID:4OqnkOPCo
[16/16]<br />
綾瀬穂乃香</p>
<p>職業 宝の番人</p>
<p>能力 綾瀬流剣術</p>
<p>詳細説明 とある樹海の奥に眠る宝を守る番人。相当の手練れであり、今のところ無敗。</p>
<p>疾風怒刀 綾瀬流剣術の一つ。目にも止まらぬ早さで敵を切り刻む。</p>
<p>宝 とんでもないお宝。そ例外の情報は綾瀬一族の者しか知らない。</p>
<p>綾瀬一族 宝を守護してきた一族。</p>
<p>闘剣衆
日本のどこかにあると言われている戦闘集団。基本的に三人一組のチームで動く。そして、その中でもより戦闘能力の高いチームにのみ、最終奥義『妖刀苦肉』を使うことができる。</p>
<p> </p>
2019-04-27T20:21:41+09:00
1556364101
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5スレ目>>701~>>711
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<p>701 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:20:04.40 ID:MUXmzIE50
[4/16]<br />
「ハァ…ハァ…」</p>
<p>深夜。殆ど人も生物も寝静まった時間。着ぐるみのウサギの耳を揺らしながら、小さな少女が歩いていた。</p>
<p>彼女は仁奈。彼女は真夜中に里を抜け出し、森を超えて街へ向かっていた。</p>
<p>…もちろん徒歩で。実際の小さな少女なら無理だろうが、彼女は一応妖怪だ。疲労してはいたが全く無理というわけでもない。</p>
<p>実際、こっそり鈴帆に会いに行ったことは数回ほどある。後でこってり怒られるのだが。</p>
<p>しかし、今回の目的は鈴帆に会いに行くことではない。</p>
<p>「重い…ですよ…」</p>
<p>…それに、彼女の体は普段よりもまるで誰かもう一人をおんぶしてる様に重くなっていた。</p>
<p>割と近くにあった憤怒の街から里を守る為にカースが来ないようにしていた為、あまりにも厄をため込みすぎていたのだ。</p>
<p>「でも…いかないと…」</p>
<p>頭に響き渡るのは誰かの声。</p>
<p>『聞コエルカ我ガ『核』トナル者ヨ…我ガ『力』ノ所ヘ行クノダ…サモナクバ貴様ノ大切ナ人間ヲ殺シテヤル…』</p>
<p>大切な人はたくさんいる。みんながいなくなるのは嫌だ。だから声が導くままに街へ向かって仁奈は歩いていた。</p>
<p>702 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:20:45.56 ID:MUXmzIE50
[5/16]<br />
そしてあずきもまた、奇妙な声に言われるがままに街を彷徨っていた。</p>
<p>『核』と会わなければ大切な人を殺すと言われたのだ。</p>
<p>「…あれ?」</p>
<p>広い広場に出ると、ウサギの耳を揺らして小さな女の子がふらふらと歩いていた。</p>
<p>「ハァ…お…ねぇ…ハァ…さん…」</p>
<p>「だ、大丈夫!?」</p>
<p>時間帯・虚ろな目・荒れている呼吸・千鳥足のような足取り。何もかもが明らかにおかしい。</p>
<p>「おもい…ハァ…です…よ…」</p>
<p>すぐに駆け寄り体を支えようとしたが、あまりにもその体は冷たく、そして重かった。</p>
<p>予想外の重さに動揺し、手が滑る。そして仁奈は地面に倒れた。</p>
<p>「おねえさん…仁奈から…逃げてくだせー…」</p>
<p>「え?…!」</p>
<p>仁奈がその言葉を発したのと同時に、地面に仁奈が沈み出した。まるでその部分だけが沼になってしまったかのように。</p>
<p>そして仁奈の中の厄が、黒い波紋となって広がっていった。</p>
<p>703 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:21:28.53 ID:MUXmzIE50
[6/16]<br />
「は、早く引き上げないと…!」</p>
<p>「ダメです…逃げて…くだせー…」</p>
<p>仁奈の警告を聞かずにあずきは仁奈の手を掴んだ。</p>
<p>「…え?あ…れ…力が…ぬけ…て…」</p>
<p>仁奈の厄に引きずられるようにあずきの妖力も波紋となって広がってしまう。</p>
<p>『ククク…フハハハハ!核ト力ガ一カ所ニ集マッタ!』</p>
<p>黒い靄のような何かが、二人に近づいてくる。</p>
<p>『コノ世界デ再ビ我ガ頂点ニ立ツ!』</p>
<p>「こないで!何をする気なの!」</p>
<p>あずきが仁奈を庇うように抱きしめる。</p>
<p>『フフフ…力ヲ失ッタ我ハ消滅寸前ダガ…厄を溜メタ土地神ヲ核トシテ、復活スルダケノ事。何モ恐レル事ハナイ…!』</p>
<p>「い、いや…!」</p>
<p>仁奈はもうすでに意識を失っている。怯えるあずきに容赦なく靄のような腕がゆっくり近づいてくる。</p>
<p>「き、急急如律令!」</p>
<p>『!?』</p>
<p>背後から、光を纏った矢が放たれ、黒い靄は慌てて避ける。</p>
<p>そこにいたのは巫女服の少女。巫女服と似た色合いの小さな腰巾着を付けていて、矢筒を背負い、弓を黒い靄に向けていた。</p>
<p>704 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:22:04.27 ID:MUXmzIE50
[7/16]<br />
『キサマ!道明寺ノ娘カ!』</p>
<p>「ふぇ!?は、はい!道明寺歌鈴です!」</p>
<p>『ソンナ事ハ聞イテイナイ!何故ココニ来タ!貴様ノ様ナへっぽこガ、ドノヨウナ手段デ来タ!』</p>
<p>怒りを露わにして黒い靄が少女…歌鈴に問いかける。</p>
<p>「そそ、そのー…私、貴方を倒したと思ったらこの辺りにいて…!」</p>
<p>『コノへっぽこ巫女ガアアアア!!何故ダ!我ノ転移術ハ完璧ダッタハズダ!』</p>
<p>「すみませんっ…術を発動した後…時に足を滑らせて近寄りすぎたみたいで…!」</p>
<p>『モウヨイ!邪魔ヲサレルマエニ力ヲ取戻シテヤル!』</p>
<p>「あっ!さ、させません!鬼魔駆逐 急々如律令!」</p>
<p>腰巾着から折り鶴を取り出し、式神として使役し飛ばす。続けて矢筒から破魔矢を取り出し、光を纏わせて放った。</p>
<p>折り紙の式神は自らが燃えない炎を纏い、矢は魔を打ち破る光を纏って真っ直ぐに飛んでいく。</p>
<p>『邪魔ヲスルナ!』</p>
<p>靄は矢を回避しようとするが、式神の力で少々強引に矢の軌道を変える。</p>
<p>705 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:22:44.07 ID:MUXmzIE50
[8/16]<br />
「力を失った貴方なら…わわわ、私でも…っ!」</p>
<p>少し頼りなさげではあるが、しっかりとした意思を持った声で叫ぶ。</p>
<p>「急々如律令 奉導誓願可 不成就也!」</p>
<p>矢の周りを飛行していた折り鶴の炎がさらに輝きを増す。</p>
<p>「燃え上がれ、業火!」</p>
<p>矢の光も白から赤に変わる。</p>
<p>「お願い!」</p>
<p>叫ぶと同時に先ほどのスピードよりも速く赤い光が走った。</p>
<p>そして黒い靄を貫き、あっという間に火だるまになった。</p>
<p>『グオオオオオオオオオオオ!』</p>
<p>706 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:23:22.46 ID:MUXmzIE50
[9/16]<br />
「やった!できた!…あっ式神集合!」</p>
<p>敵が完全に燃え尽きたのを確認して、巾着に式神をしまう。</p>
<p>「大丈夫ですかー!ってきゃあ!」</p>
<p>そしてあずき達に駆け寄ってきたが盛大に転んでしまう。</p>
<p>「そっちこそ大丈夫!?」</p>
<p>「いたた…ご、ごめんなさい…えっと、ととと取りあえず引き上げないと…!」</p>
<p>先程とは違い、普通の重さになった仁奈を引き上げる。本人が言うにはもう大丈夫らしい。</p>
<p>「…そういえばなんで巫女服を着てるの?」</p>
<p>「コスプレでごぜーますか?」</p>
<p>「えっ…えっと…実はですね…」</p>
<p>彼女が言うには、黒い靄の本当の姿…大妖怪の討伐を行っていた部隊の一人だったのだが、止めを刺す時に空間移動に巻き込まれてしまったらしい。</p>
<p>「…つまり別世界の人間さんってこと?」</p>
<p>「多分そうなんでしょうね…私の住んでいた場所では少なくともこんなに夜はぴかぴかしていませんよぉ…」</p>
<p>その言葉を聞いて思わずあずきは辺りを見渡す。</p>
<p>「…あれーおかしいなーあたしの知ってる街はこんなに禍々しいところだったっけー?」</p>
<p>全体的に街が薄暗くなっている。霧が漂い、暗闇が強く自己主張している。</p>
<p>「こえーですよ…」</p>
<p>仁奈が思わず二人に抱き着く。</p>
<p>707 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:24:37.42 ID:MUXmzIE50
[10/16]<br />
「か、かなりの広範囲が祟り場になってますね…」</p>
<p>少し震えた声で歌鈴が説明する。</p>
<p>「祟り場?」</p>
<p>「妖気で汚染された、妖怪や悪霊が活発になる環境です…清めの符をあちこちに貼れば戻ると思いますけど…その、私ここら辺よく分からなくて…」</p>
<p>「ならあずきにお任せ!あずきが…えっと名前なんだっけ?」</p>
<p>「私、えっと、ど、道明寺歌鈴です!」</p>
<p>「よーし歌鈴ちゃん護衛大作戦!つまり、プロジェクトKを始動しちゃうよ!」</p>
<p>「なんだかかっけーでごぜーます!仁奈もやるです!」</p>
<p>「仁奈ちゃんもじゃあ行こうか?」</p>
<p>「はい!お迎えが来るまで一緒でごぜーますよ!」</p>
<p>妖気が満ちているからか、二人のテンションがやけに高い。</p>
<p>(だ、大丈夫かな…ダメ、後ろ向きになっちゃだめよ歌鈴!)</p>
<p>空を見れば、もうすぐ夜が明けようとしていた。</p>
<p>708 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:25:45.87 ID:MUXmzIE50
[11/16]<br />
人々が何も知らないまま朝が来た。</p>
<p>涼はいつも通りの時間に目を覚ましていた。夏休みだからそこまで時間に悩まされることも無い。</p>
<p>「あずき?」</p>
<p>ふと、あずきがいない事に気付く。…部屋がやけにがらんとしている気がした。</p>
<p>カーテンを開けて、窓の外を見る。</p>
<p>「…は?」</p>
<p>霧が街を覆い尽くしていた。…それに、なんと言えばいいのだろう、不気味な感じがする。</p>
<p>…今の景色と何故かあずきがいないことが関係ある気がしてきた。</p>
<p>「…そうだニュース!こんな異常気象なんだし…!」</p>
<p>急いでリモコンのボタンを押す。</p>
<p>…しかし、映っているのは砂嵐だけだった。</p>
<p>嫌な予感がして携帯を見ると予想どおり圏外。</p>
<p>「まんまホラーじゃん…。」</p>
<p>部屋を漁って武器になりそうなものを探す。こんな時にあのバカはどこに行ったのやら。</p>
<p>…いろいろ探した結果、アパートに入居した時になぜか前の入居者が物置に入れっぱなしだったバールくらいしかないようだ。</p>
<p>あずきがいれば物を強化できるから割と適当な物でもよかったのだが…。</p>
<p>大きめのバックのすぐに取り出せる位置に入れる。他のは応急処置用の薬や包帯等だ。危険な予感しかしないから念のために。</p>
<p>玄関を開けて鍵をかけて、アパートから飛び出した。</p>
<p>「でろでろば~!」</p>
<p>「ぎゃあああああああ!」</p>
<p>「きゃははは!」</p>
<p>いきなり出てきた一つ目妖怪に悲鳴を上げる。</p>
<p>…割と前途多難の様だ。</p>
<p>709 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:28:14.85 ID:MUXmzIE50
[12/16]<br />
「…死神長様から連絡がありまして、異常な妖気が溢れかえっているこの周辺に、複数の死神が派遣されたようです。」</p>
<p>ユズが布団をかぶって震えている蘭子と昼子に告げる。</p>
<p>「忌々しき霊魂どもが、神に仕える農夫の軍によって魔の地へ還る刻か…!」</p>
<p>「幽霊とか妖怪とか、死神さんたちが魔界に連れて帰ってくれるんですかぁ!」</p>
<p>(ヤバイなぁ姫様がなに言ってるのか全然わからない…)</p>
<p>妖気にそこまで関係がない魔族でも少なからず影響を受ける者もいる。…昼子は訳の分からないテンションになっているようだ。</p>
<p>「…えー死神が狩るのは悪霊とか地縛霊ですね。どちらも何らかの理由で狩り損ねた魂が何かに執着した成れの果てですからねぇ…妖怪は専門外です。」</p>
<p>
「死神でもあまりに弱ってたり、呪われた魂は下手に狩れません。でも今なら意思が強く、それなりの魂になってる筈です。呪われた魂は専門家が来るそうですし。」</p>
<p>「…それに悪霊はタチが悪いんですよ。普段はそこまで力がないから騒ぎになることも少ないのですが、生者の魂を道連れにしようとしてきますから。」</p>
<p>「…神崎家には一応結界貼りましたけど…あたしも助っ人として行かなきゃならないんですよ。…大丈夫ですか?」</p>
<p>「魔力を司る選ばれし風よ!我を地獄の釜へ置いて行くというのか!」</p>
<p>「そんなぁ!ユズさん!こんな怖いところに置いていかないでください!」</p>
<p>「…てへっ☆」</p>
<p>ペロっと舌を出してごまかすと、ユズは逃げるように出て行ってしまった。</p>
<p>「ユズさあああああああああああああああああん!」</p>
<p>蘭子の悲鳴は霧と闇に飲まれただけだった。</p>
<p>710 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:29:11.08 ID:MUXmzIE50
[13/16]<br />
道明寺歌鈴<br />
職業:巫女<br />
属性:平行世界のヘッポコ巫女<br />
能力:破魔矢による退魔、式神操作、符の作成・使用</p>
<p>平行世界の妖怪が人類の敵となっている世界からうっかりやってきてしまった少女。それでも悪い妖怪しか退治しようとはしない。<br />
大妖怪の転移術に巻き込まれたが、大妖怪よりも後の時間の世界にほんの少し前に来たばかり。<br />
現代よりも科学がかなり発展していない世界から来たらしい。<br />
まだまだひよっこ巫女なのだが、潜在能力を買われ、さらに家の名誉の為に怪我を負った両親の代わりに精鋭部隊にねじ込まれた。<br />
破魔矢は魔に対して強力な威力を持っており、光を纏って飛ぶ。<br />
矢は矢筒にいつの間にか補充されているらしい。先が尖っていないので、魔の者以外にはほぼ無効。<br />
式神は基本的に折り紙で作ったものを使役する。炎を纏わせることも可能。<br />
腰巾着は見た目よりも多めに物が入る術がかかった物。母親の手作りでとても大切にしている。中身は今のところ式神と符と携帯用の筆のみ。<br />
筆に力を込めて墨なしで符を作ることができ、簡単な封印や浄化などができる。和紙を必要とするがある程度のストックはある模様。<br />
取りあえず今は元の世界に帰る方法も探さないといけないと思っている。<br />
呪文は「急々如律令」って言わせておけばいいってばっちゃが(ry</p>
<p>711 名前: ◆zvY2y1UzWw[saga sage] 投稿日:2013/08/11(日) 22:30:16.95 ID:MUXmzIE50
[14/16]<br />
イベント「真夏の肝試し大作戦!」<br />
・あずきの妖力と仁奈の厄がかなりの広範囲にばらまかれ、祟り場となりました。霧が漂い、全体的に暗い風景に…<br />
・妖気で汚染された負のエネルギーにより魔族、妖怪、幽霊、精霊の類のテンションがおかしくなりやすく、一部は暴走してしまったようです<br />
・妖気が満ちている為カースは生まれず小さな妖怪が生まれている模様<br />
・基本的に妖怪は軽い悪戯程度の被害が多いですが、悪霊には気を付けて。…魂を連れていかれないように…ね?<br />
・モブ死神とユズがこの機会に悪霊を狩る為、それなりに徘徊しています。運が良ければ助けてもらえるかも<br />
・テレビ、電話等が使えない状態です。他に何が使えないかは不明<br />
・歌鈴・あずき・仁奈が清めの符を貼って回っています。手伝うのも妨害するのもお好きにどうぞ<br />
・涼さんがあずきを捜索中です<br />
・また、人間の運気がかなりダウンしています。お気をつけて…</p>
<p> </p>
2019-04-27T20:20:38+09:00
1556364038
-
5スレ目>>676~>>688
https://w.atwiki.jp/mobamasshare/pages/475.html
<p>676 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 18:50:40.36 ID:zbiALpK30
[2/13]</p>
<p>『―――続いてのニュースです。今現在も緊迫している、通称「憤怒の街」について新たな動きがあったと見られます』</p>
<p>憤怒の街から、そう遠くない別の街。</p>
<p>その街の小さな通りにある一つの店、「アンティークショップ・ヘルメス」。</p>
<p>
周りの建物から比べると少々古臭いつくりに見える店構えであり、尚且つ決まった日に開店している事は少ないため相当な物好きが店を開いているのであろう、というのが周辺住民の考えであった。</p>
<p>しかしそんな店構えに反して店長たる人物は若く、またそろえている品物も不思議な物ばかりであるためリピーターも一定人数存在している。</p>
<p>そんなアンティークショップの中庭に、店主である彼女の姿はあった。</p>
<p>「……ふぅ、今日も美味しいですわね」</p>
<p>グラマラスな肢体を強調するようなコルセットにスカート、そしてそれとは少々合わない銀細工の腕輪や首飾り・チェーンに繋がれた数々のアクセサリー類。</p>
<p>しかし、片手に紅茶が注がれたカップを持つその姿はどこか中世の上流貴族を思わせる気品に溢れている。</p>
<p>一口飲んだカップをテーブルに置き、傍らに置いてあった携帯端末を覗き込む。</p>
<p> </p>
<p>677 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 18:52:43.35 ID:zbiALpK30
[3/13]</p>
<p>「……ふふ、星花も変わらないですわね。一度決めたことは絶対に曲げようとしない……確かにそういう子ですわ」</p>
<p>そこには、一般人ではまず知り得ることのできない情報。</p>
<p>―――日本有数の財閥である涼宮財閥、その当主の一人娘が家出したという旨の文が表示されていた。</p>
<p>「まぁ、変わらないという点ではあの子も同じですわね」</p>
<p>更に視線をテーブルの向かい側―――ほんの数刻前まで飲み手が居たであろうティーカップへと移す。</p>
<p>「何も知らない様でいながら、それでいて核心は見逃さない。間違いなくあの子も『榊原』の血筋なのでしょう」</p>
<p>置いた紅茶を再び手に取り一口。</p>
<p>それはいつの日からか奇妙な護衛を連れて歩いて、そして先刻友人の所に行くと言って別れた少女の事を思う。</p>
<p>「……本当なら、もう一人……『西園寺』であるあの子も居るはずでしたのに……やはり、見つかりませんわね」</p>
<p>678 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 18:53:32.98 ID:zbiALpK30
[4/13]</p>
<p>もう一啜り。</p>
<p>若干、顔に陰りを覗かせながら思うは、彼女たちと同じ『名家』である一人の少女の存在。</p>
<p>そして、更にもう一人。</p>
<p>「桃華も、どうやら今は違うらしいですわね…あの子とはいいお茶の話ができましたのに」</p>
<p>『西園寺』に取って代わった『櫻井』の令嬢にも思いを寄せる。</p>
<p>「皆が皆、それぞれの目的のために動いていますのね…」</p>
<p>クイッと、中身を全て飲み干したカップをテーブルに置く。</p>
<p>「ならば、私もまた動くべきなのでしょうね……そのためには」</p>
<p>すっと、席を立ち店内に戻る彼女。</p>
<p>「『相原』としてではなく、『雪乃』として私自身が戦う力があるか、今一度確かめねばなりませんわね」</p>
<p>そうして彼女―――相原雪乃は、そのままにわかに騒々しくなっていた店の外へと出て行った。</p>
<p>679 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 18:55:11.89 ID:zbiALpK30
[5/13]<br />
―――店外、大通り。</p>
<p><br />
「ニクイ…ネタマシイ……アンナヤツガオレヨリモ…」</p>
<p>そこには、一つの呪いが現れていた。</p>
<p>その内から負の叫び声を放ち、赴くままに害なす黒い呪い。</p>
<p>逃げ出す人々には目もくれず、ただただ破壊だけを繰り返す存在。</p>
<p>「ごきげんよう、嫉妬の呪い様」</p>
<p>「アァン?……ナンダオマエ」</p>
<p>そこに、まるで旧知の友人にでも挨拶するかのように雪乃が声をかけた。</p>
<p>「私、相原雪乃と申します……これから貴方様を討つ者の名ですわ」</p>
<p>「フザケヤガッテ……ヤッテミロヨオオ!」</p>
<p>そして次に発するは、毅然とした挑発。</p>
<p>680 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 18:56:00.53 ID:zbiALpK30
[6/13]<br />
それを受けたカースは激情に身を任せるように震い上がり、雪乃に襲いかかる。</p>
<p>「…参ります!……破滅の枝―――《レーヴァテイン》よ!」</p>
<p>同時に、雪乃は数あるアクセサリーの中から一つを手に取りその名を呼ぶ。</p>
<p>
次の瞬間には、僅かな赤い閃光と共に周囲一帯の気温を一瞬ではね上げるような熱量を持った、振るうだけで陽炎さえ生じる深紅のランスが雪乃の手に握られていた。</p>
<p>「クライヤガレ!」</p>
<p>泥の腕を振り回し、なぎ払おうとするのを雪乃はあえて正面からランスで受け止める。</p>
<p>普通ならば軽く弾き飛ばされても不思議ではない一撃を、しかし雪乃はしっかりと受けきっていた。</p>
<p>「《メギンギョルド》……装着者に怪力を授ける帯…これなら充分ですわね」</p>
<p>「ナンダト…」</p>
<p>「さぁ、次は私の番ですわ!」</p>
<p>受け止めていた腕を、ひと思いに押し返しがら空きの胴体にランスを叩きつける。</p>
<p>681 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 18:56:30.62 ID:zbiALpK30
[7/13]<br />
それだけではなく、ランス自身が灼熱の炎を纏って触れたそばから焦がし、カースの体を灰に変えていく。</p>
<p>「ナニシヤガル!」</p>
<p>「逃がしは致しませんわ!」</p>
<p>慌てたようにカースが暴れ、雪乃を引き剥がす。</p>
<p>しかし一旦離れてもすぐに、今度は真っ直ぐに突き刺す。</p>
<p>それだけで、ランスは触れた瞬間に灰塵えと変えながらカースの内部へと入り込む。</p>
<p>「チョウシニ……ノッテンジャネェゾ!」</p>
<p>「!こんなこともできるのですね…」</p>
<p>そこに、業を煮やした様にカースの体から槍のように幾つもの触手が飛び出す。</p>
<p>それを避けながら雪乃は冷静に一旦距離をとり、</p>
<p>「ならば、私も次の手をお見せしましょう」</p>
<p>682 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 18:58:25.03 ID:zbiALpK30
[8/13]</p>
<p>「ならば、私も次の手をお見せしましょう」</p>
<p>ガキンッと音を立て、ランスが二つに割れ下がると共に内側から刃が飛び出る。</p>
<p>再びガキンッと音が鳴った時には、ランスは両刃の長剣へと変わっていた。</p>
<p>「焼き切らせていただきますわ!」</p>
<p>「ナンダトォ!?」</p>
<p>その長剣を、明らかに届かない距離で振り下ろすと同時にその軌跡をなぞる様に炎の刃が出現、カースの触手を切り裂きながら本体の一部をまた灰へと変える。</p>
<p>「動作は良好、違和感も無し…行けますわね」</p>
<p>一つ一つ、確認するように確かめながらも確実にカースを追い詰める。</p>
<p>既にカースの体の半分は灰となって風に飛ばされ、残った半分から飛び出す触手にも動きのキレはなくなっていた。</p>
<p>「そろそろ幕引きと致しましょう…私の傑作の力、見せて差し上げますわ!」</p>
<p>ガキンッと、更に音を立てたかと思えば今度は刃とランスであった部分が更に別れ、内側から紅い宝石のようなものが現れる。</p>
<p>そしてそれを中心に、先端に集まるように別れた部分がスライドして固定。</p>
<p><br />
683 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 18:59:14.98 ID:zbiALpK30 [9/13]<br />
再度音を立てた時には、剣から灼熱の炎を放つ杖へと姿を変えていた。</p>
<p>「破滅の枝……とある神話に語られるその形は、槍とも剣とも杖とも言われておりますわ」</p>
<p>「オレガ、コンナモノデェエ!!」</p>
<p>「ですから私は思いましたの。ならばそれは、そのすべての形を持っていたのではないかと」</p>
<p>カースに話しかけるように、雪乃は言葉を紡ぐ。</p>
<p>カースはそれを挑発と捉えたのか、それともこの後に起こる事態を予感したのか一気に触手を張り巡らせ襲いかかる。</p>
<p>「一点集中の槍、指向性の剣、そしてこれが最後の…」</p>
<p>杖を地面に叩きつける。</p>
<p>ただそれだけの動作で灼熱の炎が立ち上り、壁となって触手を阻む。</p>
<p>「―――放出の杖、ですわ!」</p>
<p>「バカn―――………」</p>
<p>一閃、炎の壁が膨れ上がりさながら洪水のようにカースを飲み込んだ。</p>
<p>―――カースは、最期の言葉を発することなく塵へと姿を変えたのだった。</p>
<p>684 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 19:00:13.90 ID:zbiALpK30
[10/13]</p>
<p>「ふぅ……年甲斐もなく熱くなってしまいましたわね」</p>
<p>レーヴァテインをアクセサリーに戻し、自らの行動を多少反省する。</p>
<p>―――戦場となった大通りは、あちこちが焼き焦げたり信号が溶けたりしてしまっていた。</p>
<p>「……まぁ、このくらいならばすぐに直せると考えておきましょう」</p>
<p>しかし深く考えるのはやめ、ゆったりと自らの店に戻ることにする。</p>
<p>「…ふふ、それに、家の反対を押し切ってまで作った甲斐はありましたわ」</p>
<p>今でも鮮明に感じ取れる炎の感触、雪乃自身が最高傑作とまで言い切った一品―――レーヴァテイン。</p>
<p>そして、それを作成した雪乃の正体、それは………</p>
<p>「…さぁ『軍事』の『相原』の本気、そして『錬金術師』である私自身の力、これからは存分に振るいましょう」</p>
<p>日本が誇る『四大名家』の一角、軍事を司る相原家の当主にして稀代の錬金術師でもある相原雪乃が、行動を開始する瞬間であった。</p>
<p>続く?</p>
<p>686 名前:@設定 ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 19:01:39.09 ID:zbiALpK30
[11/13]<br />
「アンティークショップ『ヘルメス』」<br />
相原雪乃が自らの作品を世に送り出す事が目的で開いた店。<br />
作品といっても、主に観賞用・日常雑貨のマジックアイテムがほとんどである。<br />
ただし店の奥には強力な物もあり、さらには錬金術の工房まで存在する。<br />
決まった日に営業していなく、ほぼ趣味でやってる店でもある。</p>
<p>「四大名家」<br />
相原・榊原・西園寺・涼宮の四つの家系のこと、古くから日本の行く末を守ってきた。<br />
それぞれが軍事・教育・経済・政治を司っていたが、ある日西園寺が櫻井に取って代わられた。<br />
それによってパワーバランスが崩れており、一時期は軍事以外は全て櫻井が手に入れてしまっていた。<br />
現在は、櫻井が弱体化した隙をついてなんとかパワーバランスを回復させることに成功している。</p>
<p>「錬金術」<br />
古くは化学の基盤ともなった、れっきとした学問。<br />
現代では魔術・魔法と一部混同・融合されており、主にマジックアイテムを生み出す手段となっている。<br />
しかし、それでも錬金術の最終目標とも言われる「賢者の石」の製作を成し遂げたものは存在しないらしい。<br />
ちなみに結構材料費がかさむため、錬金術一本で食べていける人物はあまりいないとか。</p>
<p>「レーヴァテイン」<br />
元々は北欧に語られる神話に出てくるアイテム。<br />
その名は「破滅の枝」を意味する。<br />
槍とも剣とも杖とも伝えられるが、雪乃は作成した際にこの三形態全てに切り替えられるようにした。<br />
雪乃が作成したマジックアイテムの中でも最上級の出来であり、本人曰く「傑作」とのこと。<br />
ちなみに制作費用は最低でも空母が一隻作れるレベルとかなんとか。</p>
<p>「メギンギョルズ」<br />
北欧神話に語り継がれるアイテムの一つ。<br />
元々は装着者に怪力を授ける帯であり、雪乃はそれを参考に紐として作った。<br />
実は結構余ってたりする。</p>
<p>687 名前:@設定 ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 19:02:51.62 ID:zbiALpK30
[12/13]<br />
相原雪乃<br />
職業:相原家当主、兼「アンティークショップ『ヘルメス』」店主。<br />
属性:錬金術師<br />
詳細説明<br />
日本を古くから支えてきた「四大名家」の家系である相原家の若き当主。<br />
その年齢に反して、政治的・外交的手腕は目を見張るものがある。<br />
また、相原家は主に「軍事」を統括する家系であり直接的な力を持つ分他の名家とは一線を画している。<br />
その力は軍事関係だけで見れば国内に留まらずアジア地域、下手したら欧米諸国にさえ強い影響力をもっている。<br />
実はサクライPが世界制覇目前まで行きながらも後一歩届かなかった遠因でもあるとかなんとか。<br />
また有能な錬金術師でもあり、ことマジックアイテムの作成にかけては希代の天才とも呼ばれている。</p>
<p>688 名前: ◆UCaKi7reYU[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 19:06:41.59 ID:zbiALpK30
[13/13]<br />
情報<br />
・アンティークショップ『ヘルメス』が登場しました、色々置いてあって売ってますよ!</p>
<p><br />
という訳で投下終了です…なんか凄い事になったな…<br />
とりあえず今まで温めてきたネタやらなんやらを一気に詰め込んでみました;</p>
<p>ちなみに時間軸はだいたい憤怒の街で翼竜が空から叩き落とされたぐらいです。</p>
<p>それではおめ汚し失礼しました。</p>
2019-04-27T20:19:10+09:00
1556363950
-
5スレ目>>656~>>670
https://w.atwiki.jp/mobamasshare/pages/474.html
<p>656 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:09:56.94 ID:DSeWe+fJo
[2/18]<br />
無事に朝食を終え、ヘレンたちはハンテーンたちの回収準備を始めた。<br />
帰還命令を出し、指定した場所へと来るのを待つ。</p>
<p>たどり着きさえすれば、一瞬にして船内へと引き込めるように。<br />
労う意味での食事。ケガがあればそこを修復できるよう、さらに強化の準備も進めている。<br />
直接彼らの元へと向かうことをしないのは、その自信の表れか。</p>
<p>ヘレン「準備は?」</p>
<p>マシン「順調です、マム。彼らには帰還命令を出しました……アバクーゾは追われているようですね」</p>
<p>アバクーゾからの返信は救難信号のようだ。<br />
視界データをリンクしてみれば秘密を暴かれたらしき女が憤怒の表情を浮かべて空を駆け、アバクーゾを追いかけている。</p>
<p>表示ディスプレイを拡大し、ヘレンにも分かるようにとマシンが操作すると画面が目の前へと移動する。<br />
しばらくその光景を眺めていたヘレンだったが毛を刈られつつも攻撃を避けられているのを確認すると、ディスプレイを閉じた。</p>
<p>ヘレン「ふむ……問題ないわ」</p>
<p>マシン「かしこまりました、マム」</p>
<p>657 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:10:27.83 ID:DSeWe+fJo
[3/18]<br />
ヘレンが「問題ない」と判断したのにはいくつか理由がある。</p>
<p>ひとつは既に回収の準備ができていて、目的の地点へ到着さえできればいいということ。</p>
<p>致命傷を受けるほどの強烈なダメージはなく、毛を刈られてこそいるがそれは新たなサンプルを集める程度の意味しかない。<br />
アバクーゾ自身の速度もあり、ギリギリではあるが間に合うだろうという判断が下された。</p>
<p><br />
ふたつめは追いかけている女の能力が強力とは言えないこと。</p>
<p>どうやら物質を操作する能力のようだが、アバクーゾとてヘレン特性の怪人。<br />
あの程度の破壊力ならば完全に破壊されてしまうことはない。</p>
<p>転送するときに追いすがっている人間を連れてきてしまう可能性も無きにしも非ずであっても、<br />
どうとでも始末できる荷物がついてこようと問題はないというのも、理由の一つだ。</p>
<p>――だが、その判断は謎の乱入者によって崩される。</p>
<p>658 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:10:57.96 ID:DSeWe+fJo
[4/18]<br />
ヘレンがハンテーンの確認のために画面を切り替えようとしたとき。<br />
アバクーゾの視界カメラに黒い『なにか』が降って来た。</p>
<p> </p>
<p>それは黒く、まるで呪いの泥にそっくりで。</p>
<p> </p>
<p>それは暗く、まるで夜の闇にそっくりで。</p>
<p> </p>
<p>それは昏く、まるで――</p>
<p> </p>
<p><br />
何も知らないまま、何も見ようとしないまま。<br />
――目を塞いだ風景にそっくりだった。</p>
<p><br />
659 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:11:39.01 ID:DSeWe+fJo [5/18]<br />
その泥の中から『なにか』が生えてくる。</p>
<p><br />
少女のようだが、シルエットは不自然で。<br />
目は不自然に赤く光り、笑う口は左右に裂けて恐怖を煽る。</p>
<p>黒く暗い泥の表面には次々に様々な生物の瞳が、口が、腕が、脚が生えていく。<br />
見ているだけで恐怖を掻き立てられるようなおぞましい姿へと姿が変わる。</p>
<p>その『なにか』はアバクーゾを追いかけていた女へとわざとおどけた声をかけ、消えるように促した。</p>
<p>マシン「マム、想定外の事態です。これは……マム?」</p>
<p>ヘレン「……」</p>
<p><br />
アバクーゾが捕らえられ、ズルズルとその巨大な口へと引きずりこまれていく。<br />
マシンがヘレンの指示を仰ごうとするも、ヘレンはただ無表情でそれを見つめているだけだった。</p>
<p>660 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:12:11.75 ID:DSeWe+fJo
[6/18]<br />
噛み砕かれ、啜られる音。</p>
<p>『拒絶しないで』</p>
<p>アバクーゾの反応が急速に消失していく。</p>
<p>『受け入れて』</p>
<p>たとえアバクーゾ自身が破壊されつくそうと、データを送り続けるはずの計器がエラーを吐く。</p>
<p>『認めて』</p>
<p>視界データは完全に消え、真っ黒な暗闇だけが送られる。</p>
<p>『あいして』</p>
<p>音声データが劣化し、嘆きの声がかすれていく。</p>
<p>『つ…いよ』</p>
<p>ヘレンの表情は変わらない。</p>
<p>『くるし…よ』</p>
<p>ただ、減っていくデータを1つとして見逃さないように目を通している。</p>
<p>『しに………』</p>
<p>そして、送られてくるデータも、アバクーゾの反応も。</p>
<p>『……から……たしを………』</p>
<p>――完全に、消失した。</p>
<p>661 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:12:46.15 ID:DSeWe+fJo
[7/18]<br />
ヘレン「……この星に、こんなテクノロジーが? ありえない」</p>
<p>マシン「………」</p>
<p>残されたデータすべてにバックアップを取り、ヘレンが忌々しげにつぶやく。<br />
マシンはただそのそばに立ち、彼女の次の言葉を待った。</p>
<p>話す必要があるのならば、話すのだろう。<br />
そう彼は知っていたから。</p>
<p>しばらくの沈黙が流れる。ハンテーンへの帰還命令は無事届いたようで、リターンがあった。</p>
<p>ヘレン「……ねぇ、あなた」</p>
<p>マシン「イエス、マム」</p>
<p>その反応を受けて、ヘレンが口を開く。<br />
ぽつりと、つぶやくように。彼へと投げかけるように。</p>
<p>ヘレン「あれが何か……理解はできた?」</p>
<p>662 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:13:26.34 ID:DSeWe+fJo
[8/18]<br />
マシン「……データに一致するものはありませんでした。カースに近い性質かと思いましたが、しかし生物的すぎます」</p>
<p>ヘレン「そう……流石に賢いわ。あれは別物……生物の範疇を越えた、ね」</p>
<p>ヘレンがこめかみを指で叩く。<br />
大きくため息をつき、いらだちを隠さない。</p>
<p>主人のあまりにも珍しい行動に、マシンも困惑する。<br />
彼女はいつも堂々と、そして楽しげに生きているはずだと思ったからだ。</p>
<p>ヘレン「ベースはこの星の生物……地球人かしら。美しくないわ」</p>
<p>だから、彼は聞くことに徹した。主人の全てを受け止めるのが自身の役割であると理解していたから。</p>
<p>ヘレン「私は、私自身の手でもって創造した存在しか信用しない」</p>
<p>マシン「……」</p>
<p>ヘレン「あなたも、そう。そして、私が生み出したものへ枷をつけることはしない」</p>
<p>663 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:14:11.06 ID:DSeWe+fJo
[9/18]<br />
ヘレン「私の命令だけを聞く、機械人」</p>
<p>彼女が作ったものは、決して従うことを無理強いされるわけではない。<br />
そして、行動に対して一切の制限は設けられない。</p>
<p>たとえば、音声でもって動く『コワスーゾ』がヘレンを殴れたように。<br />
コワスーゾ自身は完全に機械で作られた体と簡易なプログラムで動いていたため自我はなかったが。</p>
<p>ヘレン「彼らだって、進化するのならば。私は喜んで反逆を受け入れる」</p>
<p>その想定を超えることをいつでもヘレンは望んでいる。<br />
彼女自身の手で、彼女を越えることが可能な存在が生まれることを。</p>
<p>ヘレン「生物を。この手でゼロから作り上げる……それもまた、面白い」</p>
<p>機械の素体と思考プログラム。タンパク質で肉付けされた二匹。<br />
可愛らしい見た目と、単純な使命。それを果たそうとするのはプログラムからか、それとも。</p>
<p>ヘレン「でも……アレは違う」</p>
<p>664 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:14:41.84 ID:DSeWe+fJo
[10/18]<br />
マシン「……違う、とは?」</p>
<p>ヘレンがまた、大きなため息を吐いたのを見てマシンが聞く。<br />
それを望んでいるように見え、そうすべきだと『思考』したからだ。</p>
<p>ヘレン「あれに込められた望みは、生き物の範疇を超えている。私であろうと、生み出さないモノ」</p>
<p>マシン「マムに不可能があるとは思えません」</p>
<p>ヘレンらしからぬ言葉にマシンは即座に反論する。<br />
それを受けてヘレンは微笑み、そのボディを一撫でした。</p>
<p>ヘレン「落ち着きなさい……生み出すのは、私であってはならないの。終わらない存在、永遠ということはね……」</p>
<p>マシン「永遠……とは、なんでしょう」</p>
<p>ヘレン「……永遠とは、不変であるということ……それほどつまらないものは存在しない」</p>
<p>飲み込まれる直前に必死に送ったのであろうデータ。<br />
消えてしまった『いのち』の遺したもの。</p>
<p>それを見つめ、ヘレンがまたひとつため息を吐く。</p>
<p>665 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:15:11.17 ID:DSeWe+fJo
[11/18]<br />
マシン「マム……?」</p>
<p>ヘレン「……あれは、もともとあるものを繋げて作ったメビウスの輪」</p>
<p>理解させるための言葉か、それとも整理のための独り言か。<br />
判断しかねるトーンでヘレンが呟く。</p>
<p>ヘレン「そんな歪なものを。なんの意味もなく生み出す……本当に、美しくない」</p>
<p>マシン「……」</p>
<p>ヘレン「奪い、繋ぐ。積み木遊びと同じね。いずれ崩れて滅びる」</p>
<p>ヘレン「……既に、生み出したもの達は滅んだはず。『制御』に失敗でもしてね」</p>
<p>ヘレン「永遠など、そんなもの。私が望むのは――」</p>
<p>そこまでヘレンが言ったところで、ハンテーンからの救難信号が届く。<br />
ディスプレイに映し出されたのは、一度撃退し引き分けたはずの少女からの一撃で装甲を抉られる映像だった。</p>
<p><br />
666 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:15:51.83 ID:DSeWe+fJo
[12/18]<br />
マシン「これは……刺突。斬撃ではなく、抉ることにより機動力と防御力を下げることを目的としているようです」</p>
<p>状況を分析し、マシンが言う。ヘレンはただディスプレイを見つめている。</p>
<p>マシン「いかがしましょうか、マム。どうやら逃走経路を予測されているようです」</p>
<p>ヘレン「……いいえ。このままでいいわ」</p>
<p>逃走ルートの変更、提案。強制回収などの手段をあえて選ばず、ヘレンは静観を決めた。<br />
その指示にマシンはただ従い、追い詰められていくハンテーンの様子とデータを計測し続ける。</p>
<p>何度目かのやり取りがすぎ、ハンテーンの左腕はもげる寸前。<br />
胴体へと手痛い一撃を受けて動きはさらに鈍り、それでも必死に逃げようとあがいている。</p>
<p>ヘレン「……私の望むもの。それは決して永遠であってはならない」</p>
<p>速度も落ち、逃げ場はない。<br />
終わりだろうか、とマシンが判断し今回のデータのまとめに入ろうとしたときヘレンが呟いた。</p>
<p>ハンテーンは自らの外れかけた腕を逆立て、外して――</p>
<p><br />
――その胸へと突き立てた。</p>
<p>667 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:17:15.08 ID:DSeWe+fJo
[13/18]<br />
マシン「これは……?」</p>
<p>送られてくるデータがことごとく反転していく。<br />
色調も、音声も、正常なものとは言えない。データ内容にエラーが交じる</p>
<p>ヘレン「それがあなたの感情。いいわ、ハンテーン……いきなさい」</p>
<p>本来存在しないはずの凶暴性。本来ありえないはずの勇猛さ。<br />
目的を同じくしていた友の『死』を受け止め、悲しみ、怒り、自ら思考してたどり着いた『戦う』という選択肢。</p>
<p>ヘレン「私が望むものは……永遠などではないわ。そうでなくては、面白くない」</p>
<p>ヘレンが楽しそうに笑う。<br />
子供のように無邪気で、狂ったように恐ろしく。</p>
<p>ヘレン「生み出したもの自身の進化。それこそが私の望むもの……永遠などでは、決してない」</p>
<p>その声を聴きながら、エラーを受けるデータのバグをとりマシンはハンテーンの最期の戦いをすべて記録し始めた。<br />
毛の鎧も想定していたものよりも遥かに早く再生し、鋼よりも硬く体を守っている。<br />
パワーはその体に見合ったものではなく、長く運用すればそのまま滅びてしまうだろう。</p>
<p>それでも、ハンテーンは戦う。自己生存の命令を無視し、帰還の命令に背いて。</p>
<p>668 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:18:29.37 ID:DSeWe+fJo
[14/18]</p>
<p> </p>
<p><br />
――結果から言えば、ハンテーンは負けた。<br />
進化し、強化し、狂化し。そのパワーと能力では圧倒的に有利であったはずの相手に。</p>
<p>油断ではない。確実にしとめようとしたうえで、負けたのだ。<br />
感情をエネルギーにする刀と少女に。街に渦巻く嘆きを束ねた一撃でもって、怒りを受けて。</p>
<p>ヘレン「……そう。やはりこの星は面白い」</p>
<p>データをまとめ、ヘレンが呟く。</p>
<p>ハンテーンは想定されていた能力以上を発揮した。<br />
その力を引き出した少女は、さらにそれ以上の能力でもってハンテーンを撃退した。</p>
<p>想定外に想定外が重なるということ。それこそが彼女が望むこと。<br />
何もかもが変わらない永遠ではなく、何もかもが変わり続けること。</p>
<p>先へと進む、進化の奇跡。</p>
<p>その可能性をこの星に見たヘレンは、ハンテーンの生体反応が完全に消失するのを確認してからモニタを切った。</p>
<p>669 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:19:16.29 ID:DSeWe+fJo
[15/18]</p>
<p>――気まぐれで訪れた星だが、面白い。</p>
<p>彼女自身の指示とはいえ、彼女への忠誠を誓う機械人による支配者への殴打。<br />
彼女が作り上げた、非戦闘用の生物型怪人自身の自己進化。</p>
<p>自身の作り上げた宇宙レベルの存在が、さらに上の高みへと昇る感覚。<br />
この星ならば、あるいは生み出せるのかもしれない、と彼女は思った。</p>
<p>ヘレン「そう……永遠ではなく、完全。永久ではなく、完璧。全てを超え続ける存在……」</p>
<p>そのつぶやきを、マシンはただ聞いていた。</p>
<p>彼の創造主が望むものが生み出されることがどういう意味なのか。<br />
それを思考しながら。</p>
<p>670 名前: ◆IRWVB8Juyg[saga] 投稿日:2013/08/11(日) 15:22:38.92 ID:DSeWe+fJo
[16/18]<br />
!イベント情報</p>
<p>『嘘つきと本音』の全行程が終了しました。<br />
ハンテーンとアバクーゾは完全にロストし、ヘレンには確認できなくなっています。</p>
<p>ヘレンが究極生命体である『なにか』の存在を知りました。<br />
その存在のあり方と生み出したものへ嫌悪を向けているようです。</p>
<p>ハンテーンの自己進化によって新しいデータが生み出されました。<br />
地上へとさらに興味を持ち、適当な怪人や機械人を送り込んだりもするようになるようです。</p>
2019-04-27T19:59:15+09:00
1556362755
-
5スレ目>>625~>>647
https://w.atwiki.jp/mobamasshare/pages/473.html
<p>625 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:27:24.30 ID:1VZRnrdlo
[2/26]</p>
<p>~前回までのあらすじ~</p>
<p><br />
その日、櫻井財閥党首サクライPは、驚くべき街の声を耳にした。</p>
<p>子供「櫻井財閥なんてだっせーよなっ!」<br />
子供「ユズちゃんが一番可愛いよな!」<br />
子供「財閥なんていらないよっ!」<br />
子供「帰ってユズちゃん応援しようぜっ!」</p>
<p>サクライP「・・・・・・なんて事だ。」</p>
<p>立つんだ!サクライP!</p>
<p>サクライP(どう考えても桃華の方が可愛い)</p>
<p>――</p>
<p>626 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:28:00.33 ID:1VZRnrdlo
[3/26]</p>
<p><br />
サクライP「初代の強欲の悪魔でございますか?」</p>
<p>桃華「ええ、それをこれから叩き起こしに行きますわ。」</p>
<p><br />
世界の果て、人々が忘れてしまったある遺跡。</p>
<p>その様な場所に『強欲』の親子は来ていた。</p>
<p><br />
桃華「まったく、久しぶりにPちゃまと会えましたと言いますのに」</p>
<p>桃華「ゆっくりとお茶を飲むこともできませんのね。」</p>
<p>桃華「長期休暇を利用してのハワイ旅行の予定も急遽中止になりましたし・・・・・・。」</p>
<p>サクライP「私の不徳が致すところです。申し訳ございません。」</p>
<p>桃華「いいのですわ、Pちゃま。これも仕方の無いことですもの。」</p>
<p><br />
財閥を立て直す為に、サクライPは各地を駈けずり回り、</p>
<p>未だに完全に財閥の信頼を取り戻すには至っていないものの、</p>
<p>この頃はサクライPにもある程度、時間に余裕はできたようだ。</p>
<p>しかし、その隙間の時間、</p>
<p>本来であれば、娘とゆっくりお茶でも飲みながら過ごすための時間を、</p>
<p>このような場所で迎えることになったのは、『強欲』の悪魔の要望のためである。</p>
<p><br />
桃華「この鬱憤は、そのうち死神ちゃまに何か仕掛けて晴らすとして・・・・・・」</p>
<p>桃華「落ち着いたらまた屋敷で一緒に紅茶を飲みましょう、お父様♪」</p>
<p>サクライP「勿論だよ。桃華。」</p>
<p>627 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:29:33.51 ID:1VZRnrdlo
[4/26]</p>
<p>遺跡の階段を下りながら、強欲の悪魔は語る。</p>
<p><br />
桃華「正確には、あの方を初代強欲の悪魔、」</p>
<p>桃華「あるいは初代マンモンと呼ぶのは、少し違いますわね。」</p>
<p>桃華「何しろ”強欲の悪魔”と言う役職が成立したのは、いささか複雑な経緯がありましたもの。」</p>
<p>桃華「まあ、その辺りのお話は今回は省かせていただきますわ。」</p>
<p><br />
目の前には岩で出来た扉。</p>
<p>強欲の悪魔が軽く手を触れるだけでそれは大きく開いた。</p>
<p><br />
桃華「彼女の名前は”アモン”」</p>
<p>桃華「その意味は”計り知れぬ者”。」</p>
<p>桃華「かつての魔界では、最強の悪魔の一角と恐れられていた存在。」</p>
<p>サクライP「・・・・・・そのような者がこの地上の遺跡に眠っているのですか?」</p>
<p>桃華「経緯はわかりませんが、そのようですわ。」</p>
<p>サクライP「よくこれまでに他の勢力に・・・・・・特に『イルミナティ』に見つかりませんでしたね。」</p>
<p>桃華「”強欲の証”を持つ者にだけ理解できる感覚ですわ。」</p>
<p>桃華「それに、この遺跡に漂う魔力の濃度は、あまりにも自然ですから。」</p>
<p>桃華「彼女達も見落としたのでしょう。」</p>
<p>桃華「とても”計り知れぬ者”が眠っているとは思えないほど、」</p>
<p>桃華「この場所には何も無いとしか思えないほど、」</p>
<p>桃華「それほどまでに、静かな魔力の流れですわね。」</p>
<p>628 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:30:27.44 ID:1VZRnrdlo
[5/26]</p>
<p>何かを祀る祭壇のような広間を横切るように、強欲の親子は歩く。</p>
<p>『ゲッゲッゲ』</p>
<p>『ギャッギャッギャ』</p>
<p>親子の回りには、数体の小型の蝙蝠のような『強欲』のカースがバタバタと飛び回り、</p>
<p>その煌びやかな眼光で、辺りをサーチライトの様に照らしていた。</p>
<p>言うまでも無く、マンモンの配下のカースである。</p>
<p><br />
サクライP「どうか足元にはお気をつけ下さい。」</p>
<p>桃華「ウフ、心配してくださるのね♪では、手を引いてくださるかしら。」</p>
<p>サクライP「お安い御用です。」</p>
<p><br />
サクライは娘のシルクのような手を取り、</p>
<p>エスコートするように、彼女が躓かないように、石造りの道を歩むのに付き添う。</p>
<p>629 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:31:03.19 ID:1VZRnrdlo
[6/26]</p>
<p>迷路の様な通路に出てきた。</p>
<p>道は数多に枝分かれし、右も左も、北も南もわからない。</p>
<p>桃華「Pちゃま、そっちですわ。」</p>
<p>そんな通路を、まるで通い慣れた道であるかのように、</p>
<p>『強欲』の悪魔は行く先を、次々と決めていく。</p>
<p><br />
桃華「”アモン”は”神喰い”と呼ばれる、神と同化して吸収する力を持っていたと聞きますわ。」</p>
<p>桃華「海王神、太陽神、豊穣神、あらゆる神々を手中にし、己の力へと変えた。」</p>
<p>桃華「『強欲』なる”計り知れぬ者”」</p>
<p>サクライP「なるほど、神すら食らうもの。」</p>
<p>サクライP「財閥のこれからの計画には必要となるコマ、と言う訳でしょうか。」</p>
<p>桃華「・・・・・・。」</p>
<p>桃華「残念ですけれども、”計り知れぬ者”をコマにできるほどの力は、わたくしにはありませんわ・・・・・・。」</p>
<p><br />
『強欲』の悪魔の力は、相手とのレベル差とも言うべき”魂の格の違い”が非常に強く影響する。</p>
<p>”計り知れぬ者”はその名の通り、霊格の高さが凄まじく、計り知れない。レベルの上限が見えないのだ。</p>
<p>多才なスキルを持つマンモンの如何なる能力も、そのほとんどがアモンには通用しないだろう。</p>
<p><br />
サクライP「・・・・・・では、その悪魔を目覚めさせるのは、大きなリスクを負う事になりますね。」</p>
<p>桃華「ええ、出来れば渡りたくはない危ない橋ですわ。」</p>
<p>630 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:32:10.58 ID:1VZRnrdlo
[7/26]</p>
<p>桃華「ですが、これからの時代。きっと”計り知れぬ者”の力は必要となりますわ。」</p>
<p>桃華「そして、あの方を起こすのなら今しかあり得ませんのよ。」</p>
<p>桃華「皮肉にも今はどの陣営も、わたくしや財閥に対しては無警戒ですもの。」</p>
<p>桃華「失墜した財閥よりも、他に脅威は山ほどありますから。」</p>
<p>桃華「私達がここに居ることも、誰が知ることも無いはずですわ。」</p>
<p><br />
桃華「ああ、次はこっちですわよ」</p>
<p>迷路の途中、何も無いように見える壁を指差す桃華。</p>
<p>サクライPは桃華の手を引き、疑問にも思わず壁に向かって進み、</p>
<p>その壁をすり抜けた。</p>
<p><br />
進入した先は殺風景な小さな部屋。</p>
<p>部屋の中心には直径にして2mほどの、円形のくぼみがある</p>
<p><br />
サクライPと桃華はその上に立った。</p>
<p>途端に世界の上下が反転する。</p>
<p>二人は先ほど立っていた床の下に立っていた。</p>
<p>小さな部屋の下に広がっていたのは、真っ黒な空間。</p>
<p>上下が反転したときに、カース達を連れて来れなかったため、</p>
<p>灯りは一つもない。</p>
<p>だが強欲の親子はお互いを視覚的に認識することができた。</p>
<p>真っ黒な空間でありながら、暗闇ではないようだ。</p>
<p>桃華「ここからは異界、あの方の領域のようですわね。」</p>
<p>631 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:33:15.17 ID:1VZRnrdlo
[8/26]</p>
<p>『強欲』の悪魔は真っ黒な空間に歩を進める。サクライもそれに続いた。</p>
<p>桃華「アモンを起こして、その協力を仰ぐ。」</p>
<p>桃華「いえ、協力を仰げなくとも良いですわ。」</p>
<p>桃華「あの方が再び復活すれば、神々も天使もその存在に恐れをなす。」</p>
<p>桃華「そうして脅威の目をそちらに向けさせることができれば良いですの。」</p>
<p>サクライP「囮作戦のようなものですね。」</p>
<p>桃華「ただ、そのためには、今回、わたくし達は”計り知れぬ者”の前から生き残れなければなりませんわ。」</p>
<p><br />
しばらく歩むと、黒い空間に無数の目が現れる。</p>
<p>それは大きかったり、小さかったり、近かったり、遠かったりした。</p>
<p>中空に浮かぶ無数の目はギョロギョロと二人を見ている。</p>
<p><br />
サクライP「これは?」</p>
<p>桃華「あの方の集めた神々の目ですわね。こちらを観察しているだけですわ。」</p>
<p>桃華「危害を加える事はないですから、心配することはありませんわよ。」</p>
<p><br />
二人は気にする事無く、異空間を進む。</p>
<p>632 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:34:08.21 ID:1VZRnrdlo
[9/26]</p>
<p>歩みに合わせて、景色が幾度と無く変わる。</p>
<p>砂の舞う砂漠。</p>
<p>風香る豊かな大草原。</p>
<p>怒り荒れ狂う海の上。</p>
<p>突き抜ける様な天空に浮かぶ雲の道。</p>
<p>地上の何処の国とも違う都市。</p>
<p>凍てつく氷の山脈。</p>
<p>灼熱の地獄の様な渓谷。</p>
<p><br />
桃華「あの方に取り込まれ、同化した神々の記憶が作り出す景色ですわ。」</p>
<p>サクライP「次々と景色が変わる様は、幻想的でございますね。」</p>
<p><br />
景色が幾度と変わろうとも、二人を観察する目は、</p>
<p>まるで空に浮かぶ星の様に位置も変えずに付いてきていた。</p>
<p><br />
そして再び真っ黒な空間に辿りつく。</p>
<p>真っ黒な空間には、大小様々な目の星が浮かび、</p>
<p>それはまるで宇宙空間の様にも見えた。</p>
<p>633 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:34:48.14 ID:1VZRnrdlo
[10/26]</p>
<p>桃華「もう間もなくですわ。」</p>
<p>”計り知れぬ者”が近いと”強欲の証”が、</p>
<p>反応するのを感じて、『強欲』の悪魔は呟いた。</p>
<p>桃華「そうそう。Pちゃま、わたくしが彼女の前で生き残れる確率は」</p>
<p>桃華「せいぜい10%程度だと思っているとよろしいですわよ。」</p>
<p>サクライP「ああ、なるほど。それで私もここに呼ばれたのですね。」</p>
<p>アモンを起こすだけなら、サクライPがここまで共に来る必要などない。</p>
<p>なら、彼が呼ばれた理由はと言えば、</p>
<p>桃華「ええ、だってPちゃま。」</p>
<p>桃華「わたくしが死んでしまった時、傍に居られないのは嫌でしょう?」</p>
<p>サクライP「御心遣い、感謝いたします。」</p>
<p><br />
そして、真っ黒な宇宙に、一つに扉が現れる。</p>
<p>二人はその扉の前に立った。</p>
<p>634 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:35:58.04 ID:1VZRnrdlo
[11/26]</p>
<p>桃華「さて、ここからが10%の賭けですわ。」</p>
<p>桃華「Pちゃま、10%を引ける自信はありまして?」</p>
<p>サクライP「当然でございます。全ては貴女様のために。」</p>
<p>桃華「ウフ♪いいお返事ですわ、Pちゃま♪」</p>
<p> </p>
<p>桃華「・・・・・・。」</p>
<p><br />
桃華「それでは、開けますわよ。」</p>
<p><br />
『強欲』の悪魔は扉の前に立つ。</p>
<p><br />
それと同時に『強欲』の証である、彼女の翼が現れ、</p>
<p><br />
証に反応して、扉に開放の魔方陣が描かれる。</p>
<p><br />
桃華「我は”強欲”を司る大悪魔マンモン。」</p>
<p>桃華「我が命を聞き、悠久の時を閉ざす扉、王への道を開くが良い。」</p>
<p><br />
ギィっと音を立てて、扉が開く。</p>
<p>真っ黒な宇宙空間に光が洩れる。</p>
<p>635 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:36:31.01 ID:1VZRnrdlo
[12/26]</p>
<p>扉の奥には、円柱状の部屋があり、中央には玉座。</p>
<p>玉座には一人の少女が座っていた。</p>
<p><br />
俯く少女の顔は伺えない。</p>
<p>眠っているのだろうか。</p>
<p><br />
桃華「”計り知れぬ者”よ。」</p>
<p><br />
部屋に入った『強欲』の悪魔が少女に呼びかける。</p>
<p><br />
桃華「お迎えに上がりましたわ。」</p>
<p><br />
『強欲』の悪魔の言葉を聞いてだろうか、</p>
<p><br />
玉座の少女が立ち上がった。</p>
<p><br />
ゴクリとサクライPが息を呑む。</p>
<p><br />
”計り知れぬ者”と呼ばれた少女は</p>
<p><br />
顔を上げて、口を開く。</p>
<p>636 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:37:05.08 ID:1VZRnrdlo
[13/26]</p>
<p> </p>
<p>菲菲「どもー!マンモンちゃん!」</p>
<p>菲菲「”計り知れぬ者”アモンこと、ふぇいふぇいだヨー!」</p>
<p> </p>
<p>桃華「・・・・・・・。」</p>
<p>サクライP「・・・・・・・。」</p>
<p><br />
菲菲「?」</p>
<p><br />
桃華「・・・・・・・。」</p>
<p>サクライP「・・・・・・・。」</p>
<p><br />
菲菲「・・・・・・・。」</p>
<p><br />
桃華「すみません、お部屋を間違えたみたいですわ。」</p>
<p>バタン。</p>
<p>と扉が閉められた。</p>
<p>637 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:37:30.80 ID:1VZRnrdlo
[14/26]</p>
<p>――</p>
<p>遺跡の入り口</p>
<p>来た道を引き返したが、途中に他には特にそれっぽい扉は無かったので、</p>
<p>『強欲』の親子はここまで戻ってきたのでした。</p>
<p><br />
桃華「無駄足でしたわね。」</p>
<p>サクライP「”強欲の証”にも勘違いはあると言う事でしょう。仕方ないことです。」</p>
<p>桃華「そうですわね。今回の事は諦めて、他の方法を取ることにしましょう。」</p>
<p>桃華「そう言えば、カースドウェポン計画の方はどうなっていますの?」</p>
<p>サクライP「既に、エージェントを送り込んでおります。」</p>
<p>桃華「流石、Pちゃまですわ。製作の方も順調に材料が集まっているようですし、」</p>
<p>桃華「問題はと言えば、」</p>
<p><br />
菲菲「ちょっ、ちょっと待つヨー!!」</p>
<p>桃華「あら、貴女も出てきましたの?」</p>
<p>菲菲「なんで扉閉めたネ!!ふぇいふぇいに用があったはずダヨー!!」</p>
<p>桃華「ごめんなさい、人違いで寝ているところを起こしてしまいまして・・・・・・。」</p>
<p>菲菲「人違いじゃないヨ!ふぇいふぇいが”計り知れぬ者”ダヨー!」</p>
<p>桃華「わたくし、アモンと呼ばれる方を探してますの。貴女、お名前は?」</p>
<p>菲菲「ふぇいふぇ・・・・・・じゃなかった、アモンダヨー。」</p>
<p>桃華「やはり人違いでしたわ。おほほ、それでは御機嫌よう。」</p>
<p>菲菲「アモンって言ってるヨ!!帰ろうとするのやめるネ!!」</p>
<p>638 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:38:21.23 ID:1VZRnrdlo
[15/26]</p>
<p>桃華「・・・・・・まあ確かに状況から言えば、」</p>
<p>桃華「認めたくはありませんが、貴女がアモンなのでしょう。認めたくはありませんが」</p>
<p>菲菲「なんで2回言ったヨ。」</p>
<p>桃華「ですが、その纏う魔力は何なんですの?」</p>
<p>桃華「悪魔としてそれなりに強力ではあるみたいですけれど、」</p>
<p>桃華「とても最強の悪魔の一角と呼ばれていたとは思えませんわ。」</p>
<p>菲菲「ずっと寝てたから、体が鈍っちゃったみたいダネ!」</p>
<p>桃華「あと、一人称ふぇいふぇいなのはどうしてですの?」</p>
<p>菲菲「地上では楊菲菲って名乗ってるヨ!!」</p>
<p>桃華「喋り方とか全体的に中国人っぽいのはどう言った理由がありますの?」</p>
<p>菲菲「中国じゃなくって香港ダヨー!」</p>
<p>桃華「一緒じゃありませんのっ!!」</p>
<p>菲菲「あまり知られてないことだけど、アモンの出身地は実は香港なんダヨー」</p>
<p>桃華「もう少し嘘っぽくないマシな理由はありませんのっ!?」</p>
<p>桃華「だいたい貴女10%チケットで引けるSRどころか、むしろハズレっぽい雰囲気が出てますのよっ!」</p>
<p>菲菲「ひ、ひどいヨー!そこまで言う事無いネ!ふぇいふぇいが何したヨー!」</p>
<p>639 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:38:57.71 ID:1VZRnrdlo
[16/26]</p>
<p>サクライP「マンモン様。」</p>
<p>桃華「はっ!おほん、失礼しましたわ、少し取り乱してしまいました。」</p>
<p>桃華「なら、フェイフェイさんがアモンであると言う、何か証拠は見せて頂けますの?」</p>
<p>菲菲「それなら、ふぇいふぇいの能力を見せるヨー!」</p>
<p>桃華「アモンの能力と言えば、他の神々を喰らい同化したと言う」</p>
<p>桃華「”神喰い”ですの?」</p>
<p>”計り知れぬ者”を名乗った少女は首を振る。</p>
<p>菲菲「ふぇいふぇいと同化した神は、神とは呼べなくなって、堕天使って事になるネ!」</p>
<p>菲菲「だから能力名は”天使喰い”ダヨー!」</p>
<p><br />
『天使喰い』</p>
<p>神や天使またはそれに順ずる者を喰らい、そのまま自身の力に変えてしまう『強欲』なる力。</p>
<p><br />
菲菲「あっ、でもこの場には対象にできるのはマンモンちゃんだけダネ!」</p>
<p>桃華「ふざけないでくださ・・・・・・っ!?」</p>
<p>桃華(な、なんですのっ!今の悪寒は!)</p>
<p><br />
目の前の、アモンを名乗る少女に変わった様子は無い。</p>
<p>表情が変わった訳でもない。纏う魔力が変わった訳でもない。</p>
<p>ただの言葉のやり取り、冗談交じりの言葉だけであるはずなのに、</p>
<p>何故、『強欲』の悪魔である自分が恐怖しているのだ。</p>
<p><br />
彼女が”計り知れぬ者”だと言う根拠は何も無い。</p>
<p>『天使喰い』と言う能力を持っていると決まったわけではない。</p>
<p>なのに、どうして自分が食われてしまう未来を鮮明に想像できてしまったのだ。</p>
<p>640 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:39:46.95 ID:1VZRnrdlo
[17/26]</p>
<p>菲菲「それじゃあ、さっそく」</p>
<p>サクライP「マンモン様っ!」</p>
<p>桃華「はっ!お、お待ちになって!」</p>
<p>サクライPの呼びかけで、我に返った『強欲』の悪魔は、慌てて少女を制止した。</p>
<p>菲菲「どうしたのカナ?」</p>
<p>それに少女が応じたのを見て、ほっと胸をなでおろす。</p>
<p>桃華(助かりましたわ、Pちゃま。)</p>
<p>サクライP(いいえ、この程度の事。守ったうちにも入りません。)</p>
<p><br />
桃華「こほん、フェイフェイさん。わたくしを食べても美味しくありませんわよ。」</p>
<p>菲菲「そんな事ないヨ!きっと美味しいから、もっと自信持ってもいいと思うネ!」</p>
<p>桃華「そんな自信は持ちたくありませんわっ!!」</p>
<p>サクライP「・・・・・・・。」</p>
<p>桃華「Pちゃま、何ですの。その”話のわかる方”を見つけたような目は。」</p>
<p>サクライP「いえ、どうかお気になさらず。」</p>
<p>641 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:40:29.55 ID:1VZRnrdlo
[18/26]</p>
<p>桃華「・・・・・・仕方ありませんわね。」</p>
<p>桃華「フェイフェイさん、わたくしは貴女をアモンであると信用しますわ。」</p>
<p>サクライP「よろしいのですか?」</p>
<p>桃華「・・・・・・先ほどの予感、私が殺されて食べられてしまう様な予感。」</p>
<p>桃華「あの予感はどうしようもなく本物である気がしますもの。」</p>
<p>菲菲「だから、ふぇいふぇいが”計り知れぬ者”だってずっと言ってるヨー!」</p>
<p>菲菲「それに殺すわけじゃないヨ!ふぇいふぇいが食べたモノはふぇいふぇいの中で息づくネ!」</p>
<p>菲菲「マンモンちゃんもふぇいふぇいの力として存在している事が出来たヨー。」</p>
<p>桃華「・・・・・・。」</p>
<p>その無邪気な言葉を聞いて、</p>
<p>やはりこの存在を目覚めさせたのは間違いだったのでは、と『強欲』の悪魔は後悔しそうになる。</p>
<p><br />
桃華(らしくありませんわね。)</p>
<p>桃華(目覚めさせてしまったものは目覚めさせてしまったもの。)</p>
<p>桃華(引き返せないのなら、割り切って行動しなければなりませんわ。)</p>
<p>桃華(それに、わたくしはいずれ全てを手に入れる『強欲』なる悪魔。)</p>
<p>桃華(たとえ”計り知れぬ者”でも、必ず手中に収めて見せますわっ!)</p>
<p><br />
菲菲「ところで、ふぇいふぇいを起こしたのは結局、何の用だったヨー?」</p>
<p>桃華「用があるといえばありますし、無いと言えば無いのですけれど、」</p>
<p>桃華「これからの時代に、貴女の力が必要になると、わたくしは考えたのですわ。」</p>
<p>桃華「”計り知れぬ者”アモン、どうかわたくし達に手を貸してはいただけませんか?」</p>
<p>彼女にしては、非常に珍しい、純粋な頼み事であった。</p>
<p>菲菲「・・・・・・。」</p>
<p>642 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:41:24.88 ID:1VZRnrdlo
[19/26]</p>
<p>計り知れぬ魔神は、しばらく考えてから口を開いた。</p>
<p><br />
菲菲「マンモンちゃんは、魔界出身の仲間だカラ、何かあった時は手伝ってもいいヨー。」</p>
<p>桃華「本当ですのっ!?」</p>
<p>菲菲「だけど、代わりにふぇいふぇいの手伝いもして欲しいナっ!」</p>
<p>桃華「フェイフェイさんの手伝いですの?」</p>
<p><br />
菲菲「一つ目は、今の地上の事を教えて欲しいヨ!」</p>
<p>菲菲「ずっと寝てたから、ふぇいふぇいにはわからない事だらけネ!」</p>
<p>桃華「それはお安い御用ですわ。この世界の事、財閥の知る隅から隅までお伝えいたしますわよ♪」</p>
<p>と、言いつつ全てを教える気は無いのだが。</p>
<p><br />
菲菲「二つ目は、昔の友達を探すのを手伝って欲しいヨ!」</p>
<p>桃華「・・・・・・昔の友達?」</p>
<p>流石にその要求は訝しむ。彼女にとって昔の友達と言うのは、何時の時代の友達だと言うのだろう。</p>
<p><br />
菲菲「マンモンちゃんも知ってると思うヨ!」</p>
<p>菲菲「ふぇいふぇいの昔の友達。」</p>
<p>菲菲「それはルシフェルちゃんの事ダヨー!」</p>
<p>桃華「ルシフェル・・・・・・?」</p>
<p>643 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:41:56.25 ID:1VZRnrdlo
[20/26]</p>
<p>ルシフェル、よく聞き覚えのある傲慢の悪魔の名前だ。</p>
<p>しかし、死神ユズに敗れたルシファーの方ではなく。</p>
<p>初代『強欲』の悪魔とも呼ばれるアモンの親友なのだから、</p>
<p>それは、初代『傲慢』の悪魔の方なのであろう。</p>
<p><br />
桃華(初代ルシファーは全能なる神にニ度挑み、敗れてからは消息不明のはずですわ。)</p>
<p>桃華「初代『傲慢』の悪魔である彼女が生きていると言いますの?」</p>
<p>菲菲「生きているも何も、今地上に居るはずダヨ?」</p>
<p>桃華「なっ!?」</p>
<p>サクライP「なんと。」</p>
<p>寝耳に水の情報。後ろで黙って聞いていた、サクライPまでもが驚く。</p>
<p>菲菲「何処に居るかはわからないけど、ふぇいふぇいには何となくわかるヨー。」</p>
<p>彼女の感覚だけが情報源であるが、他ならぬ彼女が言うのであれば、信憑性は高い。</p>
<p>サクライP「おそらくは、いえ確実に『イルミナティ』でしょうね。」</p>
<p>桃華「妙な勢力だとは思ってましたけれど、随分な大物が裏に居たではありませんの。」</p>
<p>644 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:42:39.64 ID:1VZRnrdlo
[21/26]</p>
<p>サクライP「如何致しましょう。」</p>
<p>サクライPは問う。今後の『イルミナティ』に対する接し方をだ。</p>
<p>桃華「・・・・・・できるだけ関わるのは控えるべきですわね。」</p>
<p>桃華「少なくとも、現在の財閥の計画を成し遂げ、新たな力を獲得するまでは・・・・・・ですのよ。」</p>
<p><br />
菲菲「ちょっと待つヨー!」</p>
<p>菲菲「その、いるみなてぃにルシフェルちゃんが居るなら、関わって貰わないとふぇいふぇい困るヨー!」</p>
<p>計り知れぬ魔神は、今の会話で、だいたいの事は察したらしい。</p>
<p>桃華(わたくしとしては、この方が『イルミナティ』に接触するのも控えて欲しいのですけれど。)</p>
<p>桃華「フェイフェイさんの都合もわかりますけれど、」</p>
<p>桃華「『イルミナティ』はどちらかと言えば裏で暗躍されている組織ですから、」</p>
<p>桃華「こちらから接触してのルシフェルの捜索は、どちらにしても難しいと思いますわ。」</p>
<p>菲菲「うーん、困ったネー。」</p>
<p>桃華「彼女達が表に出てきたとき、何か情報を掴めたなら提供いたしますわ。」</p>
<p>桃華「わたくし達にはそこまでしか出来ませんけれど、それでもよろしくて?」</p>
<p>菲菲「そうダネ、じゃあふぇいふぇいの手伝いはそれでいいヨー!」</p>
<p>あっさりと彼女が譲歩して、</p>
<p>桃華「それでは、これからよろしくお願いいたしますわ。」</p>
<p>菲菲「こっちこそよろしくダヨー!」</p>
<p>『強欲』なる悪魔達は手を取り合ったのだった。</p>
<p>645 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:43:31.70 ID:1VZRnrdlo
[22/26]</p>
<p>――</p>
<p><br />
その後、父が次の仕事に向かうまでのわずかな時間、親子は語り合う。</p>
<p><br />
桃華「まったく、わたくし達の野望には、何かと障害が多すぎますわ。」</p>
<p>桃華「目的が世界の全てでは当然かもしれませんわね。」</p>
<p>サクライP「今もなお、広がり続ける世界の全てを手に入れる。」</p>
<p>サクライP「人の手には、途方も無い夢の様にも思えます。」</p>
<p>サクライP「ですが、だからこそ私はそこまで手を伸ばしたい。」</p>
<p>桃華「ウフ♪珍しく語りますわね、Pちゃま。」</p>
<p>サクライP「・・・・・・近頃は、こうして貴女様と語らう時間すら取れず申し訳なく思います。」</p>
<p>桃華「Pちゃまが頑張ってることは、わかってますのよ?」</p>
<p>桃華「だからこう言った時間は時々でもいいのですわ♪」</p>
<p>桃華「この次の機会には、ゆっくりとお茶でも飲みながら、これからのお話でもしましょう?」</p>
<p><br />
おしまい</p>
<p>646 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:44:19.44 ID:1VZRnrdlo
[23/26]</p>
<p>楊菲菲/アモン</p>
<p>職業:悪魔、魔神<br />
属性:計り知れぬ者<br />
能力:『天使喰い』</p>
<p>かつては強大すぎる力を持っていた神々の王であった魔神。”計り知れぬ者”。<br />
しかし親友のルシフェルの反乱を手伝ったために、魔界に追放される。<br />
魔界に堕ちた際、力の大部分を失ったが、それでも当時の魔界最強の一角だったようだ。<br />
そんな彼女が地上で寝ていた理由は不明。長く寝ていたことで、残った力もさらに大部分失ったらしい。</p>
<p>魔界でも屈指の優しい娘で、魔界出身者は全員仲間だと思ってる節さえある。<br />
そんな娘なので、この混沌とした地上で魔界出身者が不自由なく生活できているかがこの頃の気がかり。<br />
現在の目的は、来るべきの時のために力を取り戻しながら、かつての親友ルシフェルの捜索。</p>
<p>起こしてもらった事と、仮の拠点を提供して貰った恩があるので、櫻井桃華の要望があれば多少の協力はする。<br />
とは言え、特に現在の『強欲』の悪魔に肩入れしている訳ではなく、そもそも魔界出身者にはだいたい協力的。<br />
現在は財閥を拠点にしているが、かなり自由に行動しているようだ。</p>
<p>地上では楊菲菲を名乗る。全体的に中華風な理由は一身上の都合。</p>
<p><br />
『天使喰い』</p>
<p>計り知れぬ者アモンの能力。後に『強欲』なる力と呼ばれる。<br />
神々、天使、悪魔などを喰らい、その力を一切の劣化無くまるっとそのまま自分の力へと変える。<br />
全盛期はこの力で、海王神、豊穣神、太陽神を吸収し、強大な力を得たとか。<br />
”臆病な天使”を食べたと言う伝説もある。<br />
今ではそれほど強大な力は飲み込めないが、下級の神程度ならむしゃむしゃ食べる。<br />
神霊に対する特攻能力であるため、霊体が彼女に捕まると抵抗する術が無い。<br />
肉体を持つ者に対しては、その肉体に憑依した霊魂や、霊的存在に由来する力、だけを取り込む事ができるが、<br />
肉体本来の魂に対しては害を与えることができず、<br />
霊体に対して発動した時より抵抗されやすいため、成功率が著しく下がる。</p>
<p><br />
『計り知れぬ者/隠された者』</p>
<p>アモンは”計り知れぬ者/隠された者”と言う意味を持つ名前。<br />
彼女は自然体に存在する能力を有する。強大な力を周囲に溶け込ませ隠す才能。<br />
あまりに当然の様にそこに居るため、どれほど観察眼に優れた者でも、<br />
あどけない仕種を見せる彼女の、その本来の実力を見極めるのは難しい。</p>
<p>647 名前: ◆6osdZ663So[sage saga] 投稿日:2013/08/11(日) 08:45:30.08 ID:1VZRnrdlo
[24/26]</p>
<p>◆方針<br />
櫻井桃華 … 財閥は新しい力の獲得に向けて頑張る<br />
楊菲菲 … ルシフェル探しつつも、自由行動</p>
<p><br />
神様対策どうにかしておきたい<br />
→アモンさんが神を取り込む力を持ってたらしい、コレだ<br />
→神を取り込む・・・神を食べる・・・天使食べる・・・天使食い・・・<br />
→フェイフェイダヨー!</p>
<p>と言うお話でした。<br />
でもフェイフェイでシリアスな事する気はあまり無いヨー</p>
2019-04-27T19:51:49+09:00
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